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エルフの国と闘技大会編
可愛くない
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長かった。やっとここまできた。試行錯誤の末、僕は完璧なミルクチョコレートの配合を編み出した。そもそも固形チョコレートに牛乳を混ぜるために、粉乳を作るところから始めたのも時間がかかる原因だった。
それに加えカカオ豆や砂糖のざらつきをなくすため、長時間チョコレート生地を練り上げて粒子を細かくする魔法を開発していた。そのことも完成が遅れた原因の一つだ。
作業の手を止めて窓の外を眺める。照りつけていた太陽が和らぎ、風がさりげなく吹き抜ける。夏の終わりを告げる風と共に、秋の訪れを胸に感じる。
ミルクチョコレートの配合がわかれば、あとは魔法で加工して完成させるだけなので、実質チョコレート作りは終わったようなものだ。
僕は鍛練を終えてリビングに入ってきた兄さんに満面の笑みで話しかけた。
「兄さんごめんね。ちょっとお願いがあって——」
空には深い青色が広がっていて、柔らかいオレンジ色の太陽が浮かんでいる。僕達はリトレの街から遠く離れた森で魔物討伐をしていた。
「まさかチョコレートのために遠出の依頼を受けるとは思わなかった」
「ごめんね。どうしても3日間家を空けたくて」
「なぜ3日も?そういえばきちんと理由を聞いてなかったな」
「笑わない?」
「内容による」
「チョコレートを美味しくするために原材料を魔法で3日間練り上げる必要があって」
「それだけなら留守にする理由にはならないと思うが」
「……我慢できそうにないから」
「え?」
「目の前にあったら完璧に練り上げる前に無理やり完成させて全部食べそうな気がして」
自分でも呆れるくらい食い意地の張った理由だ。でも目の前にチョコレートがあったら2日くらい練り込んだ時点で間違いなく冷やし固めて食べる自信がある。
気恥ずかしくて足元から広がる枯葉のカサカサという音を楽しんでいると、兄さんの笑い声が森に響いた。
魔物討伐が終わり拠点に帰ると、練り上げがすでに終わっていた。
流動性のあるなめらかなチョコレート生地を見て口角が上がる。味見をすると酸味が抜けていていい感じだ。カカオ豆は発酵の過程で酢酸が生じるが、練り上げている間に蒸散されていく。すでに何回か試していたので予想はできていたが、うまくいってよかった。
「味見しすぎるなよ」
「わかってる」
兄さんが揶揄うように笑いながら話しかけてきた。僕が拗ねた声で返事をすると、兄さんの笑みがさらに深まった。
その表情を見て顔を顰めると、兄さんが慌てて謝罪した。
「すまない。揶揄いすぎた」
「兄さんってさ、僕が子どもっぽいこと言うと喜ぶよね……今度からお兄様って呼ぶことにするからよろしく。好きでしょ?そういうの」
「それは本当に勘弁してくれ。すまなかった」
兄さんがあまりにも必死に謝るので、冗談だと伝えると、安堵したような顔になった。続けて兄さんに「明日チョコレートが完成するから一緒に食べよう」と約束すると嬉しそうに了承してくれた。
兄さんと一緒に洗濯やシーツの入れ替えなどの家事を終わらせたので、チョコレートの加工を進めることにする。
チョコレートを練り上げたら、次にテンパリングを行う。これはチョコレートに含まれるカカオバターを分解し、結晶を安定させる作業だ。練り上げたチョコレートを固めるうえで必要な工程なので気が抜けないけど、魔法を使えば失敗することはない。魔力消費量がものすごいことになったけど許容範囲だ。これで艶のある口溶けのよいチョコレートの出来上がりだ。あとは型に詰めて冷却したら完成だ。本当はこの後も冷却したチョコレートを一定期間熟成させる必要があるが、それはまた今度作る時に試してみよう。
より美味しくするために中に詰める物を作ろうかと思ったが、今回はシンプルな板チョコにした。そのほうが口溶けの違いがわかりやすいだろう。
この世界の店で売っている固形チョコレートより美味しいものができて満足感に浸る。これは前世の知識と魔力量によるごり押しで出来たズルみたいなものだが、個人で楽しむ分には許されるだろう。
しかし、一からチョコレートを作るのは魔法があっても大変だった。それでもこの世界にはない前世の食べ物を再現するのがどうしてもやめられない。
なぜなら前世の食べ物を兄さんと一緒に食べると、ふたりだけの秘密を共有できた気分になって、それがたまらなく嬉しいからだ。単純に美味しいものを食べたいという欲求ももちろんあるけど。
次の日、約束通り兄さんとチョコレートを食べるためコーヒーを淹れた。
コーヒーを準備している間に兄さんは椅子に座って待っていた。心なしかそわそわしているように見える。チョコレートをどういう風に出そうか迷ったが、小さめの板チョコだし1枚全部食べ切れるだろうと思いそのままお皿に載せて出すことにした。
「お待たせ。チョコが甘いからコーヒーは砂糖抜きだよ」
「ああ……ありがとう」
兄さんの前に陶器のカップを置くと僕はその隣にある椅子に座った。普段は向かい合わせに座るけど、今は兄さんの反応を近くで見たい気分だからだ。
兄さんが険しい顔でカップを見つめて口をつける。一口飲んですぐ眉間のしわが深まった。いつもは砂糖入りのコーヒーを飲んでいるから強い苦味に慣れないのだろう。
兄さんの横顔を微笑ましく見守っていると、拗ねたような声で名前を呼ばれた。
「ごめん、思わず」
「ルカも俺が子どもっぽいところ見せると喜ぶよな」
「うん、兄さんの気持ちわかった。普段とのギャップが、こう……可愛いよね」
「ルカはともかく俺は可愛くない」
まずい、この会話の着地点がわからない。冷静に考えたら成人男性ふたりが可愛い可愛くないと言い争うのはあまりにも不毛だ。兄さんに可愛いと言われるのは満更でもないけど、さっさと話を終わらせよう。
「笑ってごめんね。自信作だからさ、チョコ食べてよ。口溶けがすごいから」
「ああ」
兄さんは一瞬納得いかないという顔をしたが、すぐに表情を切り替えてチョコを一口齧った。そして驚いたように目を見開く。
「美味いな」
「よかった!頑張った甲斐があったよ。兄さんに食べてほしかったから」
「俺のためにありがとう」
兄さんが嬉しそうにはにかんでいる。それだけで今までの苦労が吹き飛んだ気がするから不思議だ。
昔の兄さんならこんな時「俺のために無理させて悪かったな」と言って申し訳なさそうな顔をしただろう。でも今はそんなことを言わないで、僕の好意を真正面から受け止めてくれる。その変化がすごく嬉しくて愛おしい。
兄さんに続いて僕もチョコを食べようと手に持って一口大に割ってみた。分厚めの板チョコがパキッと割れる感触に懐かしさを覚える。口に入れると最初にカカオの香りとほのかな酸味を感じ、後からミルクの包み込むような優しい甘さが広がった。上品な甘さながらミルクの濃厚さはずっと口の中に残っている。それをコーヒーの苦味がすっきりと洗い流してくれて、またすぐにもう一口食べたくなる。
「美味しいね。次はもっと大量に作ってチョコを使ったお菓子でも作ろうかな」
「もう完成品だと思っていたが……これをさらに加工するのか?」
「うん。前世では——」
チョコレートを使ったお菓子について熱弁していると、板チョコが柔らかくなっていることに気づいた。そんなに長いこと話し込んでいたのかと急に恥ずかしくなってきた。証拠を隠すように残りのチョコを一気に口に入れる。
指についたチョコを舐め取ろうか悩んでいると、いきなり兄さんが僕の後頭部に手を回して唇を奪った。舌先で歯列や上顎をなぞられる感覚に身体がビクッと震える。
「んっ……ふぅ……はぁ」
口に残っていたチョコの甘さが舌を合わせるたびに失われていく。ようやく唇が離れた頃にはチョコを食べた余韻が指先にしか残っていなかった。
その指先も兄さんの舌で絡め取られるようにして奪われる。触れたところからゾクゾクと痺れに似た何かが全身に広がっていくようだった。指先から伝わる体温はいつもより少し高い気がした。
「ごちそうさま」
「なっ、どうしていきなり?」
「指にチョコがついてたから、口の中でどうなっているのか気になってつい」
目を細めて笑う兄さんを直視できない。この人はどうしてこう僕をドキドキさせるようなことばかりするのだろう。
さっきまで食べていた板チョコの甘さを思い出せないくらい、僕の頭は兄さんのことで占められている。
「よく考えたら兄さんってたまに可愛いだけで普段はそうでもなかった」
「突然どうした?」
「ごめん。兄さんの顔見たら考えてたことが口に出てた」
「それで?普段の俺はどうなんだ?」
「すごくいじわる……だけど」
「だけど?」
僕の頬を撫でていた手を引き寄せ、油断して体勢を崩した兄さんの耳元に口を寄せて囁く。
「すごくかっこいい。ドキドキする」
そのまま左耳に口付けると兄さんの身体がビクッと震えた。やられっぱなしでは悔しいので反撃成功だ。すると体勢を立て直した兄さんが僕の両肩を掴み、勢いよく唇に噛み付いてきた。そのまま舌を差し入れられて絡め合う。やりすぎたかもと後悔したのは一瞬で、すぐに兄さんとのキスに夢中になる。
そういえば前世でチョコレートはかつて媚薬として用いられていたんだったなと頭の片隅で思い浮かべる。科学的根拠があったか思い出そうとしたけど、兄さんの熱を帯びた目を見たらどうでもよくなった。
しばらく見つめ合っていると兄さんが僕の手を引っ張り上げて立たせてきた。
「どこ行くの?」
「それは……言わないとだめか?」
「うん。言ってくれないと分からないかな」
さて目の前の不器用な男がどう出るのか楽しみである。どんな誘い文句でも答えは決まっているのに、なかなか口を開いてくれない兄さんに痺れを切らしてもう一度キスをねだることにした。
それに加えカカオ豆や砂糖のざらつきをなくすため、長時間チョコレート生地を練り上げて粒子を細かくする魔法を開発していた。そのことも完成が遅れた原因の一つだ。
作業の手を止めて窓の外を眺める。照りつけていた太陽が和らぎ、風がさりげなく吹き抜ける。夏の終わりを告げる風と共に、秋の訪れを胸に感じる。
ミルクチョコレートの配合がわかれば、あとは魔法で加工して完成させるだけなので、実質チョコレート作りは終わったようなものだ。
僕は鍛練を終えてリビングに入ってきた兄さんに満面の笑みで話しかけた。
「兄さんごめんね。ちょっとお願いがあって——」
空には深い青色が広がっていて、柔らかいオレンジ色の太陽が浮かんでいる。僕達はリトレの街から遠く離れた森で魔物討伐をしていた。
「まさかチョコレートのために遠出の依頼を受けるとは思わなかった」
「ごめんね。どうしても3日間家を空けたくて」
「なぜ3日も?そういえばきちんと理由を聞いてなかったな」
「笑わない?」
「内容による」
「チョコレートを美味しくするために原材料を魔法で3日間練り上げる必要があって」
「それだけなら留守にする理由にはならないと思うが」
「……我慢できそうにないから」
「え?」
「目の前にあったら完璧に練り上げる前に無理やり完成させて全部食べそうな気がして」
自分でも呆れるくらい食い意地の張った理由だ。でも目の前にチョコレートがあったら2日くらい練り込んだ時点で間違いなく冷やし固めて食べる自信がある。
気恥ずかしくて足元から広がる枯葉のカサカサという音を楽しんでいると、兄さんの笑い声が森に響いた。
魔物討伐が終わり拠点に帰ると、練り上げがすでに終わっていた。
流動性のあるなめらかなチョコレート生地を見て口角が上がる。味見をすると酸味が抜けていていい感じだ。カカオ豆は発酵の過程で酢酸が生じるが、練り上げている間に蒸散されていく。すでに何回か試していたので予想はできていたが、うまくいってよかった。
「味見しすぎるなよ」
「わかってる」
兄さんが揶揄うように笑いながら話しかけてきた。僕が拗ねた声で返事をすると、兄さんの笑みがさらに深まった。
その表情を見て顔を顰めると、兄さんが慌てて謝罪した。
「すまない。揶揄いすぎた」
「兄さんってさ、僕が子どもっぽいこと言うと喜ぶよね……今度からお兄様って呼ぶことにするからよろしく。好きでしょ?そういうの」
「それは本当に勘弁してくれ。すまなかった」
兄さんがあまりにも必死に謝るので、冗談だと伝えると、安堵したような顔になった。続けて兄さんに「明日チョコレートが完成するから一緒に食べよう」と約束すると嬉しそうに了承してくれた。
兄さんと一緒に洗濯やシーツの入れ替えなどの家事を終わらせたので、チョコレートの加工を進めることにする。
チョコレートを練り上げたら、次にテンパリングを行う。これはチョコレートに含まれるカカオバターを分解し、結晶を安定させる作業だ。練り上げたチョコレートを固めるうえで必要な工程なので気が抜けないけど、魔法を使えば失敗することはない。魔力消費量がものすごいことになったけど許容範囲だ。これで艶のある口溶けのよいチョコレートの出来上がりだ。あとは型に詰めて冷却したら完成だ。本当はこの後も冷却したチョコレートを一定期間熟成させる必要があるが、それはまた今度作る時に試してみよう。
より美味しくするために中に詰める物を作ろうかと思ったが、今回はシンプルな板チョコにした。そのほうが口溶けの違いがわかりやすいだろう。
この世界の店で売っている固形チョコレートより美味しいものができて満足感に浸る。これは前世の知識と魔力量によるごり押しで出来たズルみたいなものだが、個人で楽しむ分には許されるだろう。
しかし、一からチョコレートを作るのは魔法があっても大変だった。それでもこの世界にはない前世の食べ物を再現するのがどうしてもやめられない。
なぜなら前世の食べ物を兄さんと一緒に食べると、ふたりだけの秘密を共有できた気分になって、それがたまらなく嬉しいからだ。単純に美味しいものを食べたいという欲求ももちろんあるけど。
次の日、約束通り兄さんとチョコレートを食べるためコーヒーを淹れた。
コーヒーを準備している間に兄さんは椅子に座って待っていた。心なしかそわそわしているように見える。チョコレートをどういう風に出そうか迷ったが、小さめの板チョコだし1枚全部食べ切れるだろうと思いそのままお皿に載せて出すことにした。
「お待たせ。チョコが甘いからコーヒーは砂糖抜きだよ」
「ああ……ありがとう」
兄さんの前に陶器のカップを置くと僕はその隣にある椅子に座った。普段は向かい合わせに座るけど、今は兄さんの反応を近くで見たい気分だからだ。
兄さんが険しい顔でカップを見つめて口をつける。一口飲んですぐ眉間のしわが深まった。いつもは砂糖入りのコーヒーを飲んでいるから強い苦味に慣れないのだろう。
兄さんの横顔を微笑ましく見守っていると、拗ねたような声で名前を呼ばれた。
「ごめん、思わず」
「ルカも俺が子どもっぽいところ見せると喜ぶよな」
「うん、兄さんの気持ちわかった。普段とのギャップが、こう……可愛いよね」
「ルカはともかく俺は可愛くない」
まずい、この会話の着地点がわからない。冷静に考えたら成人男性ふたりが可愛い可愛くないと言い争うのはあまりにも不毛だ。兄さんに可愛いと言われるのは満更でもないけど、さっさと話を終わらせよう。
「笑ってごめんね。自信作だからさ、チョコ食べてよ。口溶けがすごいから」
「ああ」
兄さんは一瞬納得いかないという顔をしたが、すぐに表情を切り替えてチョコを一口齧った。そして驚いたように目を見開く。
「美味いな」
「よかった!頑張った甲斐があったよ。兄さんに食べてほしかったから」
「俺のためにありがとう」
兄さんが嬉しそうにはにかんでいる。それだけで今までの苦労が吹き飛んだ気がするから不思議だ。
昔の兄さんならこんな時「俺のために無理させて悪かったな」と言って申し訳なさそうな顔をしただろう。でも今はそんなことを言わないで、僕の好意を真正面から受け止めてくれる。その変化がすごく嬉しくて愛おしい。
兄さんに続いて僕もチョコを食べようと手に持って一口大に割ってみた。分厚めの板チョコがパキッと割れる感触に懐かしさを覚える。口に入れると最初にカカオの香りとほのかな酸味を感じ、後からミルクの包み込むような優しい甘さが広がった。上品な甘さながらミルクの濃厚さはずっと口の中に残っている。それをコーヒーの苦味がすっきりと洗い流してくれて、またすぐにもう一口食べたくなる。
「美味しいね。次はもっと大量に作ってチョコを使ったお菓子でも作ろうかな」
「もう完成品だと思っていたが……これをさらに加工するのか?」
「うん。前世では——」
チョコレートを使ったお菓子について熱弁していると、板チョコが柔らかくなっていることに気づいた。そんなに長いこと話し込んでいたのかと急に恥ずかしくなってきた。証拠を隠すように残りのチョコを一気に口に入れる。
指についたチョコを舐め取ろうか悩んでいると、いきなり兄さんが僕の後頭部に手を回して唇を奪った。舌先で歯列や上顎をなぞられる感覚に身体がビクッと震える。
「んっ……ふぅ……はぁ」
口に残っていたチョコの甘さが舌を合わせるたびに失われていく。ようやく唇が離れた頃にはチョコを食べた余韻が指先にしか残っていなかった。
その指先も兄さんの舌で絡め取られるようにして奪われる。触れたところからゾクゾクと痺れに似た何かが全身に広がっていくようだった。指先から伝わる体温はいつもより少し高い気がした。
「ごちそうさま」
「なっ、どうしていきなり?」
「指にチョコがついてたから、口の中でどうなっているのか気になってつい」
目を細めて笑う兄さんを直視できない。この人はどうしてこう僕をドキドキさせるようなことばかりするのだろう。
さっきまで食べていた板チョコの甘さを思い出せないくらい、僕の頭は兄さんのことで占められている。
「よく考えたら兄さんってたまに可愛いだけで普段はそうでもなかった」
「突然どうした?」
「ごめん。兄さんの顔見たら考えてたことが口に出てた」
「それで?普段の俺はどうなんだ?」
「すごくいじわる……だけど」
「だけど?」
僕の頬を撫でていた手を引き寄せ、油断して体勢を崩した兄さんの耳元に口を寄せて囁く。
「すごくかっこいい。ドキドキする」
そのまま左耳に口付けると兄さんの身体がビクッと震えた。やられっぱなしでは悔しいので反撃成功だ。すると体勢を立て直した兄さんが僕の両肩を掴み、勢いよく唇に噛み付いてきた。そのまま舌を差し入れられて絡め合う。やりすぎたかもと後悔したのは一瞬で、すぐに兄さんとのキスに夢中になる。
そういえば前世でチョコレートはかつて媚薬として用いられていたんだったなと頭の片隅で思い浮かべる。科学的根拠があったか思い出そうとしたけど、兄さんの熱を帯びた目を見たらどうでもよくなった。
しばらく見つめ合っていると兄さんが僕の手を引っ張り上げて立たせてきた。
「どこ行くの?」
「それは……言わないとだめか?」
「うん。言ってくれないと分からないかな」
さて目の前の不器用な男がどう出るのか楽しみである。どんな誘い文句でも答えは決まっているのに、なかなか口を開いてくれない兄さんに痺れを切らしてもう一度キスをねだることにした。
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