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エルフの国と闘技大会編
説教
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ドラゴンステーキを食べた衝撃が頭から抜けないまま数日が経過した。僕達はドラゴンの素材を売却した代金を受け取るため、ウォーロックの家を訪れていた。
「大変申し訳ございません。実は——」
ウォーロックの従者が気まずそうに頭を下げた。どうやら急に仕事が入ってしまい、終わるまであと2時間ほどかかるらしい。
お金のやり取りを先送りにするのも心苦しいので、申し訳ないが主人が帰ってくるまでお待ちいただきたいとのことだった。金額がそれなりに高額であるため、ウォーロックが直接手渡しするという約束が裏目に出てしまった。
今日はウォーロックの家を訪問する以外特に予定もなかったので、兄さんと相談して待つことにした。自由に寛いでいいと言われたので応接室で紅茶を楽しんでいたが、すぐに飽きてしまった。従者に断りを入れ、庭の隅で魔法の鍛練をすることにした。兄さんも当たり前のようについてきてくれるのが嬉しい。
庭に出てみると夏の日差しが容赦なく照りつけ、蒸し暑い空気がまとわりつく。しかし、木陰に身を置くと風が葉っぱをそっと揺らし心地よい涼しさに包まれた。
「俺は近くで剣の素振りをしてるから、何かあったら呼んでくれ」
「わかった。ありがとう」
兄さんの背を見送ってから正面の的に向き合う。最近はもっぱら同属性魔法の同時発動の鍛練をしている。
一度ウォーロックにコツを聞いたら、魔力を重ねるように循環させて放つイメージを持てと言われ、余計混乱してしまった。
エルフは種族特性として魔力を識別する能力が高く、魔力の流れがどんなに複雑でも自身のものなら感覚で掴めるらしい。
エルフの中でも特にその能力に優れている者は、他人の魔力も自身のものと同じように掴めるそうだ。そのため他種族を見た目ではなく魔力で見分けるエルフもいるらしい。
僕はひたすら土属性魔法《土弾》を生成したと同時に土属性魔法《硬化》を重ね、的に放つ鍛練をしていた。
しかしなかなか上手くいかない。中途半端に硬化された土弾が、的を一切傷つけることなく着弾していく。
「ん……?」
ふと視界の端に見覚えのない人物が映った気がして顔を上げる。視線の先にいたのは、僕と同じ年くらいに見える男の子だった。
緑みがかかった青い髪とエメラルドグリーンの瞳。神経質そうに眉を寄せこちらを値踏みする視線は、高い身長と相まって実年齢よりも大人びて見える。服装は上等そうな白を基調としたローブで、胸元にはシュッツァリア国立魔法学院のブローチが輝いている。
ウォーロックから聞いた特徴とぴったり一致している。この子は間違いなくウォーロックの一人息子のシアンくんだろう。
「おい」
どう挨拶しようかと思案しているとシアンくんの方から声をかけてきた。
「お前が最近父が目をかけている冒険者か」
「はじめまして。君の父親にはお世話になってるよ。銀級冒険者のルカです」
「シアンだ。父が冒険者と付き合うなど珍しいこともあると思ったが……お前の目的は?なんのつもりで父に接近した?」
「それはいろいろあって今の仲になったとしか言いようが……」
さすがにシアンくんを闘技大会で負かすために取引をしただなんて言うつもりはない。誓約魔法を交わしていないとはいえ、そこは僕なりにウォーロックに誠意を尽くしたい。
「その程度の実力しかないのに父が目をかけるなんて……どんな卑怯な手を使った?金輪際この家に近寄るな」
「それは難しいというか……。君も初対面の相手にずいぶんな挨拶だね」
「お前のような貧弱な魔法使いを贔屓していると噂が立ってみろ。父の、ひいては僕の実力まで疑われる」
「そんなことないと思うけど。ウォーロックは素晴らしい魔法使いだからその程度で評価が揺らぐはずがない」
僕の言葉にシアンくんが怒りを露わにして大声を上げた。
「知ったような口を聞くな!お前になにがわかる!」
シアンくんが拳を握りしめて僕を睨みつけている。その様子に近くでずっと警戒していた兄さんが動き出した。僕はそれをアイコンタクトで止めて、シアンくんに問いかける。
「ずいぶんと周りの評価を気にしているみたいだね。誰かに嫌なこと言われた?」
「うるさい!」
次の瞬間、膨大な魔力を感じたかと思うとシアンくんが的に向かって魔法を放った。
「火土複合魔法《火球撃》」
炎を纏った土の塊が的に命中した瞬間、爆音と熱風が僕達を襲う。シアンくんがとっさに魔法で防御したので規模の割にこちらに被害はなかった。興奮しているのか冷静なのかシアンくんの感情はよくわからないが、この状況でこれほどの魔法を発動できるところに才能を感じる。
的は魔法が当たったところを中心に大きくへこんでおり、もう使い物にならないだろう。
「おー、さすが学院生。冒険者してると爆発系の魔法使えないからなぁ。すごい威力だ」
思わず感心していると、兄さんとシアンくんから咎めるような視線を向けられた。
「この程度の魔法も使えないくせに父に近寄るな。さっさとこの家から去れ」
シアンくんが発言した瞬間、ピリついた空気が漂い無意識に背筋が伸びる。発生源の兄さんを見ると、無表情なのに凄みを感じてすごく怖い。
正面からそれを受けたシアンくんは腕を組みながら兄さんを睨んでいたが、その表情は強張っていた。
「ルカ、今は魔法に感心している場合じゃないだろう。シアンと言ったか。この件はお前の父親に、厳重に抗議させてもらう」
「父は関係ない!」
「関係あるに決まってるだろう!シアン!お前は私の友人になんて失礼なことを」
ウォーロックの大声を初めて聞いた。普段は冷静な彼も息子のことになると話は別らしい。暑い中走ってきたのだろう。大量にかいた汗のせいで、いつも綺麗に整えられている髪型が今は崩れている。
「ふたりに謝罪しなさい」
「あんたに命令されたくない」
「シアン」
ウォーロックが有無を言わさぬ迫力で息子の名前を呼ぶ。シアンくんは悔しそうに唇を噛み締めながら頭を下げた。
「……申し訳ございませんでした」
シアンくんが謝罪した後もウォーロックは淡々とした、だけど心にくる説教をしていた。そばで聞いているだけで胃が痛くなる。その光景にいたたまれないものを覚え、つい口を挟んでしまった。
「もう本人から謝罪されたからそれで十分だよ。兄さんもそうだよね」
「ああ」
兄さんも同じ気持ちのようだ。あんなに怒っていたのに今はすっかり落ち着きを取り戻している。
ウォーロックは渋々といった様子で引き下がったものの、厳しい目つきのままだ。これは僕達が帰った後も、しばらく説教が続くかもしれない。そして何故かシアンくんからも鋭い眼差しを向けられている気がする。
今のウォーロックと大金のやり取りができるように思えず、後日改めて訪問することにした。
ウォーロックの家への帰り道、自然と話題は今日の出来事になった。
「なんか複雑な事情を抱えてそうだね。闘技大会で関係が変わればいいんだけど」
「それはあの親子次第だろう」
「兄さん怒ってる?」
「ああ。ルカが無防備にあいつの魔法を眺めていたからな。何か発見があったのだろうが、せめて身を守る魔法を使ってほしかった」
兄さんは鋭い。実はシアンくんが魔法を発動させた時、魔力循環の観察に夢中になって防御をシアンくん任せにしてしまったのだ。
もちろん兄さんに被害がいく前に防御魔法を発動させる予定だったが、シアンくんのおかげで不発に終わった。
「ごめんなさい。つい観察に夢中になって」
「あの時ルカが怪我をしていたらと思うと冷静でいられなかった。ウォーロックの叱責が思った以上に厳しかったから身を引いただけで、俺もシアンに言いたいことは山ほどあったぞ」
「本当にごめんなさい」
「反省してくれればそれでいい。ただ今後は気をつけてくれ」
「はい」
兄さんに心配をかけてしまった。大切な人が、自分の身を顧みない行動をしていたらと想像すると怒るのも当然だ。
逆の立場で考えたらすぐ理解できるのに、夢中になるとそのことが頭から抜ける自分が情けない。
申し訳なくて反省しながら歩いていると、兄さんが気まずそうに声をかけた。
「……すまない。半分八つ当たりだ。ルカがあれくらいで怪我をしないのはわかっているのに、冷静になれなくて。ルカを守りたいのに、魔法では守れない現実を突きつけられて焦ってしまった」
申し訳ないと思う反面、兄さんが僕を心配する言葉をかけてくれたことが嬉しくて顔が緩んでしまう。
ハイエルフ以上の魔力量がある魔法使いと知っていてなお、僕のことを守りたいと思ってくれる。そのことに僕がどれだけ救われているか、兄さんは知らないだろう。
「兄さん」
「どうした?」
「ありがとう。大好きだよ」
少しでも僕の気持ちを伝えたくて兄さんの手を握る。兄さんが嬉しそうに力強く握り返してくれるから、離すタイミングを失ってしまった。
探知の魔法を拠点まで広げて人の気配を確認する。この様子だと、誰にも目撃されずに帰ることができそうだ。
今日は兄さんの手を離してやれないかもしれない。とりあえず拠点に帰るまで誰にも見つからなければ僕の勝ちということにしよう。
僕は兄さんと手を繋いだまま走り出す。兄さんは突然のことに驚きながらも一緒に走ってくれた。
「ルカ?突然どうした」
「今なら誰にも見つからずに帰れそうだから。なんとなく今は手を離したくなくて……だから急いで帰ろう」
「わかった」
帰ったら何をしてもらおうか。勝利のご褒美について考えると自然と笑みが溢れる。ここからしばらくは木陰が続く道だ。涼しげな風が僕達を応援してくれたような気がして、さらに走る速度を上げた。
「大変申し訳ございません。実は——」
ウォーロックの従者が気まずそうに頭を下げた。どうやら急に仕事が入ってしまい、終わるまであと2時間ほどかかるらしい。
お金のやり取りを先送りにするのも心苦しいので、申し訳ないが主人が帰ってくるまでお待ちいただきたいとのことだった。金額がそれなりに高額であるため、ウォーロックが直接手渡しするという約束が裏目に出てしまった。
今日はウォーロックの家を訪問する以外特に予定もなかったので、兄さんと相談して待つことにした。自由に寛いでいいと言われたので応接室で紅茶を楽しんでいたが、すぐに飽きてしまった。従者に断りを入れ、庭の隅で魔法の鍛練をすることにした。兄さんも当たり前のようについてきてくれるのが嬉しい。
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「俺は近くで剣の素振りをしてるから、何かあったら呼んでくれ」
「わかった。ありがとう」
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一度ウォーロックにコツを聞いたら、魔力を重ねるように循環させて放つイメージを持てと言われ、余計混乱してしまった。
エルフは種族特性として魔力を識別する能力が高く、魔力の流れがどんなに複雑でも自身のものなら感覚で掴めるらしい。
エルフの中でも特にその能力に優れている者は、他人の魔力も自身のものと同じように掴めるそうだ。そのため他種族を見た目ではなく魔力で見分けるエルフもいるらしい。
僕はひたすら土属性魔法《土弾》を生成したと同時に土属性魔法《硬化》を重ね、的に放つ鍛練をしていた。
しかしなかなか上手くいかない。中途半端に硬化された土弾が、的を一切傷つけることなく着弾していく。
「ん……?」
ふと視界の端に見覚えのない人物が映った気がして顔を上げる。視線の先にいたのは、僕と同じ年くらいに見える男の子だった。
緑みがかかった青い髪とエメラルドグリーンの瞳。神経質そうに眉を寄せこちらを値踏みする視線は、高い身長と相まって実年齢よりも大人びて見える。服装は上等そうな白を基調としたローブで、胸元にはシュッツァリア国立魔法学院のブローチが輝いている。
ウォーロックから聞いた特徴とぴったり一致している。この子は間違いなくウォーロックの一人息子のシアンくんだろう。
「おい」
どう挨拶しようかと思案しているとシアンくんの方から声をかけてきた。
「お前が最近父が目をかけている冒険者か」
「はじめまして。君の父親にはお世話になってるよ。銀級冒険者のルカです」
「シアンだ。父が冒険者と付き合うなど珍しいこともあると思ったが……お前の目的は?なんのつもりで父に接近した?」
「それはいろいろあって今の仲になったとしか言いようが……」
さすがにシアンくんを闘技大会で負かすために取引をしただなんて言うつもりはない。誓約魔法を交わしていないとはいえ、そこは僕なりにウォーロックに誠意を尽くしたい。
「その程度の実力しかないのに父が目をかけるなんて……どんな卑怯な手を使った?金輪際この家に近寄るな」
「それは難しいというか……。君も初対面の相手にずいぶんな挨拶だね」
「お前のような貧弱な魔法使いを贔屓していると噂が立ってみろ。父の、ひいては僕の実力まで疑われる」
「そんなことないと思うけど。ウォーロックは素晴らしい魔法使いだからその程度で評価が揺らぐはずがない」
僕の言葉にシアンくんが怒りを露わにして大声を上げた。
「知ったような口を聞くな!お前になにがわかる!」
シアンくんが拳を握りしめて僕を睨みつけている。その様子に近くでずっと警戒していた兄さんが動き出した。僕はそれをアイコンタクトで止めて、シアンくんに問いかける。
「ずいぶんと周りの評価を気にしているみたいだね。誰かに嫌なこと言われた?」
「うるさい!」
次の瞬間、膨大な魔力を感じたかと思うとシアンくんが的に向かって魔法を放った。
「火土複合魔法《火球撃》」
炎を纏った土の塊が的に命中した瞬間、爆音と熱風が僕達を襲う。シアンくんがとっさに魔法で防御したので規模の割にこちらに被害はなかった。興奮しているのか冷静なのかシアンくんの感情はよくわからないが、この状況でこれほどの魔法を発動できるところに才能を感じる。
的は魔法が当たったところを中心に大きくへこんでおり、もう使い物にならないだろう。
「おー、さすが学院生。冒険者してると爆発系の魔法使えないからなぁ。すごい威力だ」
思わず感心していると、兄さんとシアンくんから咎めるような視線を向けられた。
「この程度の魔法も使えないくせに父に近寄るな。さっさとこの家から去れ」
シアンくんが発言した瞬間、ピリついた空気が漂い無意識に背筋が伸びる。発生源の兄さんを見ると、無表情なのに凄みを感じてすごく怖い。
正面からそれを受けたシアンくんは腕を組みながら兄さんを睨んでいたが、その表情は強張っていた。
「ルカ、今は魔法に感心している場合じゃないだろう。シアンと言ったか。この件はお前の父親に、厳重に抗議させてもらう」
「父は関係ない!」
「関係あるに決まってるだろう!シアン!お前は私の友人になんて失礼なことを」
ウォーロックの大声を初めて聞いた。普段は冷静な彼も息子のことになると話は別らしい。暑い中走ってきたのだろう。大量にかいた汗のせいで、いつも綺麗に整えられている髪型が今は崩れている。
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「シアン」
ウォーロックが有無を言わさぬ迫力で息子の名前を呼ぶ。シアンくんは悔しそうに唇を噛み締めながら頭を下げた。
「……申し訳ございませんでした」
シアンくんが謝罪した後もウォーロックは淡々とした、だけど心にくる説教をしていた。そばで聞いているだけで胃が痛くなる。その光景にいたたまれないものを覚え、つい口を挟んでしまった。
「もう本人から謝罪されたからそれで十分だよ。兄さんもそうだよね」
「ああ」
兄さんも同じ気持ちのようだ。あんなに怒っていたのに今はすっかり落ち着きを取り戻している。
ウォーロックは渋々といった様子で引き下がったものの、厳しい目つきのままだ。これは僕達が帰った後も、しばらく説教が続くかもしれない。そして何故かシアンくんからも鋭い眼差しを向けられている気がする。
今のウォーロックと大金のやり取りができるように思えず、後日改めて訪問することにした。
ウォーロックの家への帰り道、自然と話題は今日の出来事になった。
「なんか複雑な事情を抱えてそうだね。闘技大会で関係が変わればいいんだけど」
「それはあの親子次第だろう」
「兄さん怒ってる?」
「ああ。ルカが無防備にあいつの魔法を眺めていたからな。何か発見があったのだろうが、せめて身を守る魔法を使ってほしかった」
兄さんは鋭い。実はシアンくんが魔法を発動させた時、魔力循環の観察に夢中になって防御をシアンくん任せにしてしまったのだ。
もちろん兄さんに被害がいく前に防御魔法を発動させる予定だったが、シアンくんのおかげで不発に終わった。
「ごめんなさい。つい観察に夢中になって」
「あの時ルカが怪我をしていたらと思うと冷静でいられなかった。ウォーロックの叱責が思った以上に厳しかったから身を引いただけで、俺もシアンに言いたいことは山ほどあったぞ」
「本当にごめんなさい」
「反省してくれればそれでいい。ただ今後は気をつけてくれ」
「はい」
兄さんに心配をかけてしまった。大切な人が、自分の身を顧みない行動をしていたらと想像すると怒るのも当然だ。
逆の立場で考えたらすぐ理解できるのに、夢中になるとそのことが頭から抜ける自分が情けない。
申し訳なくて反省しながら歩いていると、兄さんが気まずそうに声をかけた。
「……すまない。半分八つ当たりだ。ルカがあれくらいで怪我をしないのはわかっているのに、冷静になれなくて。ルカを守りたいのに、魔法では守れない現実を突きつけられて焦ってしまった」
申し訳ないと思う反面、兄さんが僕を心配する言葉をかけてくれたことが嬉しくて顔が緩んでしまう。
ハイエルフ以上の魔力量がある魔法使いと知っていてなお、僕のことを守りたいと思ってくれる。そのことに僕がどれだけ救われているか、兄さんは知らないだろう。
「兄さん」
「どうした?」
「ありがとう。大好きだよ」
少しでも僕の気持ちを伝えたくて兄さんの手を握る。兄さんが嬉しそうに力強く握り返してくれるから、離すタイミングを失ってしまった。
探知の魔法を拠点まで広げて人の気配を確認する。この様子だと、誰にも目撃されずに帰ることができそうだ。
今日は兄さんの手を離してやれないかもしれない。とりあえず拠点に帰るまで誰にも見つからなければ僕の勝ちということにしよう。
僕は兄さんと手を繋いだまま走り出す。兄さんは突然のことに驚きながらも一緒に走ってくれた。
「ルカ?突然どうした」
「今なら誰にも見つからずに帰れそうだから。なんとなく今は手を離したくなくて……だから急いで帰ろう」
「わかった」
帰ったら何をしてもらおうか。勝利のご褒美について考えると自然と笑みが溢れる。ここからしばらくは木陰が続く道だ。涼しげな風が僕達を応援してくれたような気がして、さらに走る速度を上げた。
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