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アファルータ共和国編

懇願※

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 あれからどれくらいの時間が経っただろうか。閉ざされた窓からは何も見えない。
「あっ……うぅん、もぅ、やめっ」
「どうした?やめてほしいのか?」
 僕は今、四つん這いの状態で後ろから指を突き立てられている。
 兄さんの太く無骨な指がゆっくりとなぞるように中で動き、前立腺を刺激する。三本の指を飲み込んだ窄まりが、意思とは関係なく収縮を繰り返している。浅いところだけを刺激されると、奥の快感を覚えた身体がもどかしさを訴えるように疼き出す。

 イキたい、イかせてほしい
 我慢できず、僕は無意識のうちに腰を揺らしていた。そんな僕の反応を楽しむかのように、兄さんは執拗にそこばかりを刺激してくる。もう何も考えられなくて、なんとか身体を捻り懇願するように兄さんを見つめる。

「お願っ……ぃ、イかせて……んんっ」
「わかった」
 あんなに焦らされたのに、あっさりと承諾された。一瞬嫌な予感が頭をよぎったが、期待と興奮がすぐにそれを押し流す。
 僕の懇願を聞き入れた兄さんが、窄まりから指を抜き僕を仰向けにさせる。
「ひゃっ」
 いきなり指を抜かれたことと視界が変わったことに驚き、声が裏返ってしまった。その様子を見た兄さんがにやりと笑う。

「すまない。驚かせたか」
「あぁっ!ぅ……ぅんっ」
 兄さんが謝りながら僕の陰茎を撫で上げた。たったそれだけなのに、信じられないくらい気持ちいい。先ほどまで焦らされていたせいで敏感になっている。
 先走りと香油で濡れそぼった亀頭をゆるゆると擦られると、もっと激しい刺激を求めて無意識に腰が揺れる。

「それっ……や、めっ……んあっぁあ」
「大丈夫。気持ちよくするから」
 ぐちゅぐちゅと音を立てながら亀頭を撫で回され、竿を上下に擦られる。それでも兄さんが手を動かす速さはゆっくりとしたもので、解放されない熱がぐるぐると身体を駆け巡る。気まぐれに触られる耳や首筋にも快感を覚えてしまって、頭がおかしくなりそうだ。

「んあっ!ぁあっ、は……ゃっ」
 イキたいのにイけない焦ったさに喘いでいると、いきなり乳首を強く摘まれた。求めていた強い刺激に背中が大きく反れる。そのまま乳首をぐりぐりと押されたり捏ね回されたりしていると、限界が近づいてきた。
「あっ……いぃ、もっと…」
 もうわずかな余裕もない。陰茎からは先走りがしとどに流れ落ち、ぐちゅぐちゅと響く卑猥な音がさらに大きくなってくる。

「やあ……っん、もっ、ぅ……イクッ!!ああっ!あっ、イク」
「もう限界そうだな……可愛い」
 兄さんが小さく笑ったと思ったら、絶頂直前の僕の陰茎からパッと手を離した。いきなりのことに思考が止まり、頭が真っ白になる。
「あ……あー……あぁ」
 射精を止められず、鈴口からとろとろと精液が甘く漏れ出す。勢いをなくした精液がじわじわと尿道を通過する未知の感覚に、僕はだらしない声を上げ続けるしかなかった。
 病みつきになりそうな射精感が、穏やかな波となって全身を巡る。

「どうだ?イク直前に刺激をやめると絶頂感が抑えられて連続で射精できるようになるらしいぞ」
 絶頂の渇望が頭を占めて、兄さんが言っていることの半分も理解できない。
 足りない。全然足りない。出したのに絶頂の快感とは程遠い。絶頂前の気持ちよさがずっと身体の中を燻り、解放を求めて腰が勝手に揺れ動く。
 イキたい、もっと気持ちよくなりたい。その欲求に支配されて、縋るように目の前の男を見上げた。

「ああ、この顔だ。俺だけのルカだ」
 兄さんが涙や汗など様々な体液にまみれた僕の顔を愛おしげに眺め、両手で頬を包む。その様子を見ながら、無意識に欲望がそのまま口を突いて出た。

「イかせて!兄さんお願い!イキたいから早く触って!」
 必死になって懇願すると、兄さんの喉が鳴る音がした。
「ひ、ぁあぁぁぁあ!」
 返事の代わりに兄さんの両手が胸の先を強く摘む。わずかな痛みすら快感に繋がるような絶妙な力加減に、大声を上げて限界まで背中を反らす。

「あ、あっ、あぅ……んっ」
 待ち望んでいた刺激に身体中が歓喜し震える。このまま乳首だけでイけそうなほど高められた身体が、それでもまだ足りないと刺激を求める。
 さんざん弄ばれた後孔がズクズクと疼き続けている。その事に気づいているけれど、挿れてほしいと懇願するのはなんだか悔しい。乳首の刺激だけでは発散できない欲に、焦燥感ばかりが高まっていく。

「んっ、そこ…ばっか、ァ……だめ」
「ここ好きだろ?気持ち良さそうにしてるじゃないか」
 親指と人差し指できつく挟まれたまま小刻みに揺らされる。
「あっ、やめっ……んぅ」
 気持ちいいのに全然足りない。そんな僕を見透かしたように兄さんが笑っていた。その顔は普段の姿からは想像ができないくらい獰猛な笑みだった。

 その後、ゆるゆると陰茎を撫でられたり耳を舐められたりと焦らすような責めが続いていたが、やがて兄さんが手を止めて問いかけてきた。
「なぁ、俺にどうしてほしい?言えよ」
 強い言葉で懇願を促しているのに、その目はどうか自分だけを求めてほしいと不安そうに訴えていて、それが余計に愛おしく思える。
 本当に不器用な人だなぁ。そんなところも含めて好きになったのだから、あまり文句は言えないけれど。

「兄さんの、ほしい。はやくちょうだい」

 僕の言葉に兄さんが泣きそうな顔になって動きを止めたので、ここぞとばかりに鎖骨に吸い付いた。
 初めてだけど上手くできて満足だ。自分で痕を付けたくせに、己の独占欲を見せつけられた気分になって恥ずかしさが込み上げる。
「痕つけちゃった。これで僕だけのアイザックだね」
 恥ずかしいとか嬉しいとかそんな感情がごちゃ混ぜになって、締まりのない顔で兄さんに笑いかける。

「ルカすまない。終わったらまた謝るから」
「あぁっっ!」
 兄さんが僕の両足を肩に担ぎ上げ、覆い被さるように上から陰茎を突き立てた。ぐずぐずに蕩けたそこは痛みを感じることなく易々と先端を飲み込む。そのままゆっくりと奥深くまで挿入された。
「う……あっ、ん」
 兄さんが上から覆い被さることで体重がかかり、陰茎が奥へ奥へと沈み込む。
「ひっ、あっ……いぃ、あぁ」
 陰茎が奥に埋まると密着するように兄さんの身体が近づき、僕の身体がふたつに折り曲がるような体勢になる。
 目が合ったと同時に唇が重なり深く口づけられた。舌を絡めながらも抽送は続いていて、くぐもった喘ぎ声が部屋に響いている。じっくりとかき回すように抜き差しされると、深いところから甘い痺れが広がり内腿が震えた。

 しばらく口づけが続いていたが、兄さんが唇を離したことで終わりを迎える。名残惜しくて思わず吐息を漏らすと、兄さんが目元を緩め柔らかく微笑んだ。
「その顔はよしてくれ。もう少し動くぞ」
 兄さんが僕の足を高く上げて肩に担ぎ、腰を掴んで自分の方へ引き寄せる。宣言通り兄さんの動きが激しさを増し、上から押し付けられるように陰茎が沈んでいくと、亀頭が腸壁をずりずり擦りながら奥へ進む。
「あっ!お、くっ…すご」
 感覚がないはずの腸壁まで性感帯になったのかと錯覚するほど、兄さんの動き全てが甘い刺激に変わり脳を蕩けさせる。
 自分の意思とは関係なく、奥へ誘うように後孔がきゅうきゅうと兄さんを締め付ける。それに逆らうように兄さんが陰茎をゆっくりと引き抜いた。

 ギリギリまで引き抜かれた陰茎の先端が、前立腺をゴリゴリと押し上げながら奥へ進む。引く時も入る時も擦り上げられる前立腺が、絶えず快楽を生み出し射精感が増していく。
「あ、んぅ……きもちぃ……もっとぉ……」
 たまらず自身の陰茎を擦り上げたくて手を伸ばすと、兄さんが抽送を止めてまで僕を制止した。
「やだっ、触りたい。兄さん」
「あと少しだけ耐えてくれ」
「やぁっ……は、ぅあ…」
 全部気持ちいいのにそれが身の内に燻って、ぐるぐると熱が溜まっていく。兄さんの動きも早くなり、呼吸が荒くなっていくのがわかる。お互い絶頂が近い。
 少しでも快感を拾いたくて、目を瞑り感覚を研ぎ澄ませる。ひときわ強く奥に押し込まれた瞬間、白い閃光が瞼の裏に広がった。

「うあぁぁあ……あっ…」
「くっ……」
 どくんと脈打つ陰茎から熱い精液が注ぎ込まれる。僕も同時に絶頂を迎え、足の先がぴんと伸びる。
 鈴口から白濁液がとろとろと流れ落ちる。射精の勢いがないのは一回目に出した時と同じなのに、蕩けるような深い絶頂が絶え間なく続いて恍惚とする。
「ゃっと……イけ、たぁ。きもちいい」
 強烈な悦びが全身に回り、何も考えられなくなる。兄さんの顔が近くにあるのにぼんやりとしか認識できない。

 多幸感に包まれた頭が、粘膜のふれ合いを求めて舌を出す。
 兄さんも舌を差し出し、お互いの舌が重なり合う。柔らかい舌の感触に夢中になりペロペロと舐めていると、兄さんがなぞるような動きで応えてくれる。
 もっと欲しくなって兄さんの首に手を回して舌に吸い付く。ぴったりと吸い付いた舌を動かしていると、今度は兄さんが僕の舌を吸う。

 しばらく舌だけのふれ合いを楽しんでいると、兄さんの顔が離れ今度は鎖骨に吸い付いた。
「お揃いだね」
「ああ」
 兄さんはそう言いながら次は首筋に痕を残す。他にも腕、お腹、腰、背中に吸い付かれた。その姿にいじらしさを覚えて優しく頭を撫でる。
 小さく笑い合っていると、太ももに兄さんの屹立を感じて目を見張る。兄さんをいじらしいと思う気持ちがどこかにいって、また求め合うようなキスを交わした。



 あれから兄さんは、僕の中で何回果てたのだろうか。もう数え切れないほど身体を重ねたせいでよく覚えていない。
 僕達の身体やベッドはお互いの汗やら体液に塗れてドロドロになっていた。しばらく情事の余韻に浸っていたいけど、どうしても我慢できなくなって魔法で全部綺麗にした。
「ありがとう」
 兄さんからお礼を言われた事に安堵する。これじゃあ雰囲気が台無しだと怒られても、今さらどうしようもないからよかった。

 寝支度を調えると、兄さんがいきなりベッドに正座して頭を下げた。その悲壮な様子に、つられて兄さんと向かい合って正座する。
 なぜ兄さんはこんな行動を?
 頭の中が疑問でいっぱいになっていると、兄さんが恐る恐るといった様子で話を切り出した。

「嫉妬に駆られてルカに無体を働いてしまった。申し訳なかった」
「最初はびっくりしたけど怒ってないよ。そんなに自分を追い詰めないで」
「でもそれだと俺の気がすまない。俺を殴ってくれ」
「えー……」
 解決手段としてそれは強引すぎやしないか。兄さんを殴るとか絶対無理だ。断固拒否する。
 でも兄さんすごく頑固だからな。ここで話を終わらせないと、しばらくこのことを引きずる気がする。それにものすごく身体がだるくて眠いから、早めにこの問題を解決しておきたい。

 兄さんを傷つけることはしたくないが仕方ない。中途半端になってはいけないから、思いっきりいこう。
「兄さん目をつぶって」
「ああ」
 兄さんが歯を食いしばって衝撃に備えている。覚悟を決めて右腕と右手に身体強化をかけ指を弾く。
「えいっ」
「いっ!!……っー」

 兄さんが額を押さえて痛みに悶えている。デコピンの威力調整を間違えたかもしれない。兄さんに気が済まないならもう何発かいっておこうかと提案したら、すごい勢いで拒否された。
 一発で解決して安心した。申し訳なくて回復の魔法を使おうとしたら、兄さんに止められたので様子を見守る。

 なんだろう。情事後の雰囲気が台無しだとかそんなレベルではない気がする。
 でもこれはこれで、僕達らしいのかもしれない。

 兄さんはまだ痛みに悶えている。今なら恥ずかしいことを言っても、軽く流されて終わるだろう。
 僕は兄さんに聞こえるか聞こえないかのギリギリの声量で呟いた。
「強引なのも、たまにならいいよ……気持ちよかったし」
 兄さんが痛みに悶えながら僕を抱き寄せて身体を倒す。そのまま吸い込まれるように、ふたりともベッドに横たわった。

 本格的に眠気が襲ってきた。頭が重くてすぐにでも瞼を閉じたくなる。その前に最後の仕事を終わらせよう。眠気に抗いながらも、ぼんやりと気合いを入れて兄さんに回復魔法をかけた。
 全ての仕事を終えた充足感が、ますます眠気を誘う。今度はそれに逆らうことなく心地よい微睡に身を委ねた。
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