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アファルータ共和国編
休息日の過ごし方
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この街は冬でも穏やかな気候で快適に過ごすことができる。日差しは柔らかいが、洗濯物を乾かす分には問題ない。
今日は休息日だ。天気もいいし、面倒くさいことを一気に終わらせよう。兄さんに手伝ってもらいながらシーツを庭に干した。
「ルカが歌っているのを初めて聞いた。前世の曲か?綺麗な歌声だ」
兄さんにそう言われて、聞かれていたのかと恥ずかしくなった。
以前は前世のことが一切バレないよう気を張っていたのに、恋人の前ではすっかり気が緩むようになった。
「うっかり前世の曲を聞かれたら困るからね。意識して歌わないようにしてた」
「じゃあこの世界では俺だけがルカの歌声を聞けるのか」
嬉しそうな顔で笑う兄さんに、恥ずかしいから聞くなと言えそうにない。
「昔ね、僕が歌う子守唄で弟が寝てくれたんだ。なんかそれを思い出して歌ってた」
前世でどんな人生を送ったのか兄さんには説明済みだ。そのせいか兄さんは気遣わし気な様子で頭を撫でてくれた。
なんだか気恥ずかしくなったのでお返しすることにする。前回の休息日に兄さんを甘やかそうと決めていたのでちょうどいい。
「兄さんも僕の子守唄で寝かしつけてみたいな」
「さすがに無理だろう」
「歌だけじゃ無理だろうね。寝室いこうか。お昼寝しよう」
兄さんの手を引っ張って寝室に誘導する。兄さんは特に抵抗することなく僕の後に続いた。
「おいで」
ベッドの上で横座りになり、自分の膝を軽く叩いて兄さんを呼ぶ。キングサイズのベッドだから出来ることだ。あの時衝動のままにお店で一番大きなベッドを買ってしまったが正解だったようだ。
「ここに頭乗せて」
僕の言葉に反応して兄さんが恐る恐るベッドに横になり、僕の膝に頭を乗せる。いわゆる膝枕ってやつだ。
「逆だよ。こっち向いて」
兄さんの頭を撫でながら、僕の身体側に顔が向くように誘導する。兄さんは最初躊躇していたようだが、やがて勢いよく身体を反転させた。
「いい子、いい子」
僕の言う通りに動いてくれる兄さんが可愛くて頭を撫でる。
「もう勘弁してくれ、何かに目覚めそうだ」
兄さんが弱々しく呟いた。しまった。やりすぎたみたいだ。兄さんの身体が強ばっている。
兄さんの気を逸らすため、以前から気になっていたことを聞くことにした。
「どうして左耳だけピアス穴開けてるの?もう塞がってるみたいだけど」
「昔ちょっとな」
「何かあったの?」
「……ある人物に強請られてな。なんでも左耳だけピアスをするのは守る者の象徴だとか」
「ふーん」
それ元婚約者の話だろうな。濁したということは話したくないのだろうし、これ以上無理やり聞き出すのは申し訳ない。
気まずさを誤魔化すように、また兄さんの頭を撫でる。髪を梳くように撫でていると兄さんの身体の力が段々と抜けてきた。
そういえば子守唄のことを忘れていた。昔弟達のために歌った子守唄を兄さんに披露する。
「これが前世で弟を寝かしつけた歌か」
「そうだよ」
「別の歌が聴きたい。ルカが誰にも聞かせたことがない歌を」
結構難しいリクエストをされた。前世でよく聞いていた曲は大抵カラオケで歌ってるからなぁ。
「じゃあ前世で僕が好きだった曲を歌うね。初めて人に聞かせるから恥ずかしいな」
歌ったのは外国の民謡だ。ゆったりと癒される優しい旋律と、どこか切なさを感じる歌詞が印象的な曲。
歌に合わせるようにゆっくりと優しく兄さんの髪を手櫛でとかす。
最近大型の討伐が多かったせいだろう。さすがに疲れが溜まっていたみたいだ。兄さんがいつのまにか眠っていた。
子どものようにあどけない顔で眠る兄さんから目が離せない。
あ、いけない。僕も何かに目覚めそうだ。
今日は休息日だ。天気もいいし、面倒くさいことを一気に終わらせよう。兄さんに手伝ってもらいながらシーツを庭に干した。
「ルカが歌っているのを初めて聞いた。前世の曲か?綺麗な歌声だ」
兄さんにそう言われて、聞かれていたのかと恥ずかしくなった。
以前は前世のことが一切バレないよう気を張っていたのに、恋人の前ではすっかり気が緩むようになった。
「うっかり前世の曲を聞かれたら困るからね。意識して歌わないようにしてた」
「じゃあこの世界では俺だけがルカの歌声を聞けるのか」
嬉しそうな顔で笑う兄さんに、恥ずかしいから聞くなと言えそうにない。
「昔ね、僕が歌う子守唄で弟が寝てくれたんだ。なんかそれを思い出して歌ってた」
前世でどんな人生を送ったのか兄さんには説明済みだ。そのせいか兄さんは気遣わし気な様子で頭を撫でてくれた。
なんだか気恥ずかしくなったのでお返しすることにする。前回の休息日に兄さんを甘やかそうと決めていたのでちょうどいい。
「兄さんも僕の子守唄で寝かしつけてみたいな」
「さすがに無理だろう」
「歌だけじゃ無理だろうね。寝室いこうか。お昼寝しよう」
兄さんの手を引っ張って寝室に誘導する。兄さんは特に抵抗することなく僕の後に続いた。
「おいで」
ベッドの上で横座りになり、自分の膝を軽く叩いて兄さんを呼ぶ。キングサイズのベッドだから出来ることだ。あの時衝動のままにお店で一番大きなベッドを買ってしまったが正解だったようだ。
「ここに頭乗せて」
僕の言葉に反応して兄さんが恐る恐るベッドに横になり、僕の膝に頭を乗せる。いわゆる膝枕ってやつだ。
「逆だよ。こっち向いて」
兄さんの頭を撫でながら、僕の身体側に顔が向くように誘導する。兄さんは最初躊躇していたようだが、やがて勢いよく身体を反転させた。
「いい子、いい子」
僕の言う通りに動いてくれる兄さんが可愛くて頭を撫でる。
「もう勘弁してくれ、何かに目覚めそうだ」
兄さんが弱々しく呟いた。しまった。やりすぎたみたいだ。兄さんの身体が強ばっている。
兄さんの気を逸らすため、以前から気になっていたことを聞くことにした。
「どうして左耳だけピアス穴開けてるの?もう塞がってるみたいだけど」
「昔ちょっとな」
「何かあったの?」
「……ある人物に強請られてな。なんでも左耳だけピアスをするのは守る者の象徴だとか」
「ふーん」
それ元婚約者の話だろうな。濁したということは話したくないのだろうし、これ以上無理やり聞き出すのは申し訳ない。
気まずさを誤魔化すように、また兄さんの頭を撫でる。髪を梳くように撫でていると兄さんの身体の力が段々と抜けてきた。
そういえば子守唄のことを忘れていた。昔弟達のために歌った子守唄を兄さんに披露する。
「これが前世で弟を寝かしつけた歌か」
「そうだよ」
「別の歌が聴きたい。ルカが誰にも聞かせたことがない歌を」
結構難しいリクエストをされた。前世でよく聞いていた曲は大抵カラオケで歌ってるからなぁ。
「じゃあ前世で僕が好きだった曲を歌うね。初めて人に聞かせるから恥ずかしいな」
歌ったのは外国の民謡だ。ゆったりと癒される優しい旋律と、どこか切なさを感じる歌詞が印象的な曲。
歌に合わせるようにゆっくりと優しく兄さんの髪を手櫛でとかす。
最近大型の討伐が多かったせいだろう。さすがに疲れが溜まっていたみたいだ。兄さんがいつのまにか眠っていた。
子どものようにあどけない顔で眠る兄さんから目が離せない。
あ、いけない。僕も何かに目覚めそうだ。
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