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ストバーラ帝国編
ダンジョン最下層
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ダンジョン初探索の翌日、今日は休息日だ。そして僕の誕生日でもある。
「ルカ14歳の誕生日おめでとう」
「ありがとう兄さん」
今年はふたりきりの誕生日になった。でもこうやって兄さんとふたり、静かに過ごすのも悪くない。
「これを。似合うと思って」
「嬉しい。さっそくつけてみるね」
渡されたのはシンプルな髪紐だった。最近髪が伸びてきたので、そろそろ切ろうと思っていたけど、しばらくこのままでいいか。
「どう?似合う?」
「すごく綺麗だ」
「そうだね、僕も綺麗な緑色だと思う。大切にする」
「ああ」
僕の返答に、兄さんが複雑な顔になった。
さすがに僕も気づいている。兄さんが僕のことを綺麗だと言ったことも、髪紐の色が兄さんの目の色と同じことも。
僕自身そのことをどう思っているのか、言葉に表せない。でも嫌悪や拒絶といった負の感情が一切ないことはわかる。
だからこの気持ちにゆっくり向き合っていこう。時間がかかるかもしれないけど、いつかこの感情に名前を付けたい。そう決意して14歳の誕生日が終わった。
誕生日の翌日、僕達はダンジョン入り口の転移の石柱前にいた。
「地図もあるし、今日で最下層をクリアしたいね」
「そうだな。さっそく地下に行こうか」
転移の石柱に触れると、視界がいきなり見覚えのある空間に変わった。目の前が真っ黒になったと思ったら、地下3階入り口に瞬間移動だ。体験しても全く仕組みがわからない。僕達が使う魔法とは全く違うものなのかもしれない。
地下3階は石造りの通路が続いている。何回か分かれ道があるが、全部二股に分かれているだけなので迷いようがない。
2つ目の分かれ道をしばらく歩いていると、通路の影から魔物が出てきた。
ゴブリンだ。それも武器を持っておらず1匹だけ。久しぶりに武器を使ってみようと思い、メイスでゴブリンの頭を殴ると1発で絶命した。
すごく弱い。だけど僕はミスを犯してしまった。
「ゴブリンの体液が手についちゃった。気持ち悪いー」
「魔法で倒したほうがよかったな」
兄さんが呆れ気味だ。特に何も考えずに武器を振り下ろしただけなので、文句は言えない。
ちなみにドロップはゴブリンの腰蓑だった。完全にハズレだ。ドロップアイテムは放っておくと自然とダンジョンに吸収されるので、拾わずそのままにしておいた。
その後は特に問題なく進み、地下4階に到着した。洞窟のような通路だ。湿度は高いが気温は外に比べると涼しく感じる。それでもあまり快適とはいえないので、早く下に降りたい。
出てくる魔物はスケルトン。聖属性魔法で攻撃するか、頭の骨を砕くと活動を停止してアイテムをドロップする。
聖属性魔法を使って目立つのも嫌なので、ひたすらスケルトンを殴った。
地下5階は石造りの通路だ。ここからは魔物が複数体出てくる。この階はスライムとゴブリンだった。
地下6階はゴブリンの集団が出てきた。魔法を使って倒したので、特に問題なく進んだ。念のため入り口の魔法陣に触った。
サクサク進み、最下層の地下7階に到着した。出現するのはコボルトの集団だ。コボルトは二足歩行の犬型魔物だ。このダンジョンのコボルト集団は機動力を生かし、統率のある動きをする。最下層なので、少しだけ難易度が上がるようだ。それでも僕達にとって脅威ではない。
「よかった。今日中にクリアできそうだ」
「ボス部屋はオークが6体か。ダンジョンに油断は禁物だが、さすがにいけるだろう」
「僕達はオークジェネラルも倒してるからね。じゃあ行こうか」
ボスが落とすドロップアイテムってどんなものだろう?オーク肉の美味しい部位だったりして。
そう油断してたのがいけなかったのか。いや後から思い返しても、あれはどうしようもなかったのだろう。
僕と兄さんが同時にボス部屋の扉に手をかけた瞬間、視界が真っ暗になった。
この感覚はどうして?混乱する。これは転移の石柱に触れて瞬間移動した時の感覚。
気がついたら見たことのない空間にいた。兄さんも一緒にいることに思わず安心する。
何もない空間の中央に、チラチラと淡く瞬きながら宙に浮いている存在がいた。よく見ると透けているが、人の姿をしている。
そいつは宙に浮きながら激しく体を上下させ、やがて僕を視界に捉えるとニタッと笑った。
『やっと見つけた』
「ルカ14歳の誕生日おめでとう」
「ありがとう兄さん」
今年はふたりきりの誕生日になった。でもこうやって兄さんとふたり、静かに過ごすのも悪くない。
「これを。似合うと思って」
「嬉しい。さっそくつけてみるね」
渡されたのはシンプルな髪紐だった。最近髪が伸びてきたので、そろそろ切ろうと思っていたけど、しばらくこのままでいいか。
「どう?似合う?」
「すごく綺麗だ」
「そうだね、僕も綺麗な緑色だと思う。大切にする」
「ああ」
僕の返答に、兄さんが複雑な顔になった。
さすがに僕も気づいている。兄さんが僕のことを綺麗だと言ったことも、髪紐の色が兄さんの目の色と同じことも。
僕自身そのことをどう思っているのか、言葉に表せない。でも嫌悪や拒絶といった負の感情が一切ないことはわかる。
だからこの気持ちにゆっくり向き合っていこう。時間がかかるかもしれないけど、いつかこの感情に名前を付けたい。そう決意して14歳の誕生日が終わった。
誕生日の翌日、僕達はダンジョン入り口の転移の石柱前にいた。
「地図もあるし、今日で最下層をクリアしたいね」
「そうだな。さっそく地下に行こうか」
転移の石柱に触れると、視界がいきなり見覚えのある空間に変わった。目の前が真っ黒になったと思ったら、地下3階入り口に瞬間移動だ。体験しても全く仕組みがわからない。僕達が使う魔法とは全く違うものなのかもしれない。
地下3階は石造りの通路が続いている。何回か分かれ道があるが、全部二股に分かれているだけなので迷いようがない。
2つ目の分かれ道をしばらく歩いていると、通路の影から魔物が出てきた。
ゴブリンだ。それも武器を持っておらず1匹だけ。久しぶりに武器を使ってみようと思い、メイスでゴブリンの頭を殴ると1発で絶命した。
すごく弱い。だけど僕はミスを犯してしまった。
「ゴブリンの体液が手についちゃった。気持ち悪いー」
「魔法で倒したほうがよかったな」
兄さんが呆れ気味だ。特に何も考えずに武器を振り下ろしただけなので、文句は言えない。
ちなみにドロップはゴブリンの腰蓑だった。完全にハズレだ。ドロップアイテムは放っておくと自然とダンジョンに吸収されるので、拾わずそのままにしておいた。
その後は特に問題なく進み、地下4階に到着した。洞窟のような通路だ。湿度は高いが気温は外に比べると涼しく感じる。それでもあまり快適とはいえないので、早く下に降りたい。
出てくる魔物はスケルトン。聖属性魔法で攻撃するか、頭の骨を砕くと活動を停止してアイテムをドロップする。
聖属性魔法を使って目立つのも嫌なので、ひたすらスケルトンを殴った。
地下5階は石造りの通路だ。ここからは魔物が複数体出てくる。この階はスライムとゴブリンだった。
地下6階はゴブリンの集団が出てきた。魔法を使って倒したので、特に問題なく進んだ。念のため入り口の魔法陣に触った。
サクサク進み、最下層の地下7階に到着した。出現するのはコボルトの集団だ。コボルトは二足歩行の犬型魔物だ。このダンジョンのコボルト集団は機動力を生かし、統率のある動きをする。最下層なので、少しだけ難易度が上がるようだ。それでも僕達にとって脅威ではない。
「よかった。今日中にクリアできそうだ」
「ボス部屋はオークが6体か。ダンジョンに油断は禁物だが、さすがにいけるだろう」
「僕達はオークジェネラルも倒してるからね。じゃあ行こうか」
ボスが落とすドロップアイテムってどんなものだろう?オーク肉の美味しい部位だったりして。
そう油断してたのがいけなかったのか。いや後から思い返しても、あれはどうしようもなかったのだろう。
僕と兄さんが同時にボス部屋の扉に手をかけた瞬間、視界が真っ暗になった。
この感覚はどうして?混乱する。これは転移の石柱に触れて瞬間移動した時の感覚。
気がついたら見たことのない空間にいた。兄さんも一緒にいることに思わず安心する。
何もない空間の中央に、チラチラと淡く瞬きながら宙に浮いている存在がいた。よく見ると透けているが、人の姿をしている。
そいつは宙に浮きながら激しく体を上下させ、やがて僕を視界に捉えるとニタッと笑った。
『やっと見つけた』
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