【本編完結】異世界まったり逃避行

ストバーラ帝国編

ストレス解消

　オークジェネラルを倒してから数日経った。僕はもう諦めた。現実を受け入れることにした。
　あの後兄さんに、なぜあんなことをしたのかを懇々と話したらすごく同情された。

　こんな時は趣味の料理でストレス解消だ。ちょうど狙ってた食材も手に入った。その名もレッドクローシュリンプ。
　バチードの街近くの海で獲れるエビらしい。見た目は前世のブラックタイガーが赤くなった感じで、味も食感も前世のエビそっくりだった。

　小ぶりな鍋を用意し、オリーブオイル、にんにく、赤唐辛子を入れて火にかける。
　オイルににんにくの風味が移ったら、そこに下処理したエビを入れて火を通したらアヒージョの完成だ。
　他にも具材を入れてよかったが、今回はシンプルにエビだけにしてみた。隠し味にエビミソも入れてみた。

　ストバーラ帝国もオリーブオイルが安いのでつい大量に買ってしまう。あとなぜか卵も安い。
　その組み合わせを見て僕はどうしてもマヨネーズが食べたくなった。でも手作りのマヨネーズは食中毒が怖い。
　だから数日かけて魔法の実験をした。そして今日やっと判明した。殺菌は、生活魔法《清浄》より聖属性魔法《浄化》でやったほうがいい。もともとはアンデッドを死滅させる魔法らしいけど、それが菌にも効いた。原理はよくわからないが、料理に使えるならそれでいい。

　マヨネーズを使ったレシピはたくさんあるが、今日はエビがあるからエビフライを作ってタルタルソースと合わせよう。

　エビの下処理をして下味をつけておく。卵、薄力粉、パン粉の準備に衣をつける。生パン粉を使いたいので、パンにかける乾燥の魔法はほどほどにしておく。
　熱した油にエビを入れて火が通るまで揚げたらエビフライの完成だ。
　くるんと曲がってしまったがご愛嬌ってやつだ。

　次はタルタルソース作りだ。みじん切りにした玉ねぎに程々に火を通し水気を切っておく。そこにみじん切りにした固ゆで卵、自家製マヨネーズ、塩、レモン汁を混ぜ合わせて出来上がりだ。本当は隠し味程度に砂糖も入れたいが高いから買わなかった。
　マヨネーズは魔法を使って撹拌したらあっという間にできた。最初間違えて材料を全て飛び散らせた時は焦ったがなんとかなった。
　後は適当にサラダとパンを用意したら完成だ。

「乾杯！」
「乾杯」
　まずはアヒージョから食べてみる。ガツンとしたにんにくの香りが食欲をそそる。レッドクローシュリンプも噛むと弾力があって口いっぱいに海の旨みが広がる。ピリッとした唐辛子の辛さもちょうどいい。
　エビの旨みが溶けたオイルにパンを浸す。いくらでも食べられそうだ。僕の食べ方を真似た兄さんが、すごい勢いでパンを消費しはじめる。
　エビフライもサクサクで美味しい。生パン粉にして正解だった。タルタルソースは少し酸味が強かったけど、ボリュームのある衣のおかげでむしろちょうどいいと思える。

　全部綺麗になくなった。見事な食べっぷりだった。
「次はパンを今日の倍用意してほしい」
「わかった」
　兄さんも食事に関してずいぶん主張するようになった。良い傾向だ。