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イーザリア王国編
雨の日の過ごし方
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ルーザ村から帰還して数日が経った。依頼完了の手続きのためギルドに顔を出したら、エイダンさんが安心したように駆け寄ってきた。今後も美味しいもののためなら、遠出の依頼を受けてもいいかな。
今日は朝から大雨。それは娯楽が少ないこの世界において、徒に時を過ごすことが確定する日となる。
暇だ。すごく暇なのだ。魔法の鍛練も飽きてしまった。兄さんはひたすら武器の手入れをしている。
その時僕は思いついた。そうだ、異世界テンプレというやつを試してみるのはどうだろう。そうと決まれば行動あるのみ。
僕は納戸に立てかけられた木の板を手に取った。
魔法を使い、板に8×8の升目を彫る。そして魔法で板を丸く切り取ったら、裏表を黒と白で塗る。完成だ。
「できた!」
「さっきから何をやってるんだ?」
「遊び道具を作ってた。武器の手入れはいいの?」
「もう終わった」
「じゃあこれで遊ぼうよ!」
「どんなルールだ?」
僕はオセロのルールを一通り説明した。
「オセロか。初めて聞いた。わかりやすいルールなのはいいな」
「兄さんはこの手の遊びをしてたの?」
「兵士時代は軍盤遊戯を暇つぶしにやってたな」
「それはどんなルール?」
兄さんもルールを一通り説明してくれた。なるほど、結構複雑だ。前世でいうチェスに近い遊びかな?
「じゃあ一回やってみようか。僕が白ね。兄さんが先に打って」
「わかった」
「僕の勝ちだね」
「けっこう奥深い遊戯だな。まさかあれが罠だったとは」
兄さんもボードゲーム経験者とはいえ、オセロは初心者。面白いくらいに引っかかってくれた。
「もう一回だ」
「わかった」
「おかしいな。途中までは上手くいってると思ってたが」
「また僕の勝ちだね」
楽しくなってきた。僕が兄さんに完全勝利できることって少ないから、テンションが上がってきた。
たまには異世界テンプレもいいね。その後も何戦か繰り返した。
あれ?兄さんの実力上がってない?
さすがにずっと遊んでいるので、そろそろ飽きてきたと思ったら気づいてしまった。兄さんが戦いの中で成長している。まずい。僕が圧倒的有利だったはずなのに。
今日はもう終わりにしよう。何日か経てば兄さんの勘も鈍っているだろう。
「ルカ、最後にもう1戦だけしないか」
「もう飽きてきたよ」
「最後に賭けをしよう。勝った方が負けた方に1つだけ命令できるというのはどうだ」
「乗った」
どんな命令にしよう。そうだ、牛乳からバターを作る手伝いをしてもらおう。一度魔法で作ってみようと思っていたが、兄さんなら自力で出来そうだ。
勝負を始めて少し経った頃、違和感に気付いた。
「兄さん強くない?」
「そんなことはない」
「いやいや、さっきまでと明らかに違うでしょ」
「何回かやってルカの癖は掴んだからな」
それは初心者のやることじゃない。
「どこにも置けないな」
「ぐっ」
「じゃあまた置かせてもらう」
「うわー!!」
完敗だ。何もできなかった。まさか兄さんが急に強くなるとは。
「参りました」
「やはりこの手の遊戯は、賭け事をしたほうが実力を出せるな」
「え?今まで本気じゃなかったの?」
「本気だったが、賭けるものがあるとさらに燃える。昔は軍盤遊戯で一儲けしてた」
兄さんが対戦相手からお金を巻き上げる光景が頭に浮かぶ。さっきの強さを見るにかなり儲けたに違いない。
「兄さん命令はもう決めたの?」
「ああ」
「どんな命令?僕の出来る範囲でお願いね」
「夕飯はルカの新作料理が食べたい」
「わかった。支度してくる」
「よろしく」
まさか夕飯のリクエストをするために、勝負を持ちかけたとは思わなかった。
いつのまにか外は夕焼けに染まっていた。全く気づかなかった。
何時間兄さんと遊んでいたんだろう。まさか最後に負けるなんて。
黒く染まる盤面が目に飛び込む。
勝敗は明らかなのに、つい数えてしまった。
52対12
異世界テンプレはもうこりごりだ。僕はオセロを納戸に封印した。
今日は朝から大雨。それは娯楽が少ないこの世界において、徒に時を過ごすことが確定する日となる。
暇だ。すごく暇なのだ。魔法の鍛練も飽きてしまった。兄さんはひたすら武器の手入れをしている。
その時僕は思いついた。そうだ、異世界テンプレというやつを試してみるのはどうだろう。そうと決まれば行動あるのみ。
僕は納戸に立てかけられた木の板を手に取った。
魔法を使い、板に8×8の升目を彫る。そして魔法で板を丸く切り取ったら、裏表を黒と白で塗る。完成だ。
「できた!」
「さっきから何をやってるんだ?」
「遊び道具を作ってた。武器の手入れはいいの?」
「もう終わった」
「じゃあこれで遊ぼうよ!」
「どんなルールだ?」
僕はオセロのルールを一通り説明した。
「オセロか。初めて聞いた。わかりやすいルールなのはいいな」
「兄さんはこの手の遊びをしてたの?」
「兵士時代は軍盤遊戯を暇つぶしにやってたな」
「それはどんなルール?」
兄さんもルールを一通り説明してくれた。なるほど、結構複雑だ。前世でいうチェスに近い遊びかな?
「じゃあ一回やってみようか。僕が白ね。兄さんが先に打って」
「わかった」
「僕の勝ちだね」
「けっこう奥深い遊戯だな。まさかあれが罠だったとは」
兄さんもボードゲーム経験者とはいえ、オセロは初心者。面白いくらいに引っかかってくれた。
「もう一回だ」
「わかった」
「おかしいな。途中までは上手くいってると思ってたが」
「また僕の勝ちだね」
楽しくなってきた。僕が兄さんに完全勝利できることって少ないから、テンションが上がってきた。
たまには異世界テンプレもいいね。その後も何戦か繰り返した。
あれ?兄さんの実力上がってない?
さすがにずっと遊んでいるので、そろそろ飽きてきたと思ったら気づいてしまった。兄さんが戦いの中で成長している。まずい。僕が圧倒的有利だったはずなのに。
今日はもう終わりにしよう。何日か経てば兄さんの勘も鈍っているだろう。
「ルカ、最後にもう1戦だけしないか」
「もう飽きてきたよ」
「最後に賭けをしよう。勝った方が負けた方に1つだけ命令できるというのはどうだ」
「乗った」
どんな命令にしよう。そうだ、牛乳からバターを作る手伝いをしてもらおう。一度魔法で作ってみようと思っていたが、兄さんなら自力で出来そうだ。
勝負を始めて少し経った頃、違和感に気付いた。
「兄さん強くない?」
「そんなことはない」
「いやいや、さっきまでと明らかに違うでしょ」
「何回かやってルカの癖は掴んだからな」
それは初心者のやることじゃない。
「どこにも置けないな」
「ぐっ」
「じゃあまた置かせてもらう」
「うわー!!」
完敗だ。何もできなかった。まさか兄さんが急に強くなるとは。
「参りました」
「やはりこの手の遊戯は、賭け事をしたほうが実力を出せるな」
「え?今まで本気じゃなかったの?」
「本気だったが、賭けるものがあるとさらに燃える。昔は軍盤遊戯で一儲けしてた」
兄さんが対戦相手からお金を巻き上げる光景が頭に浮かぶ。さっきの強さを見るにかなり儲けたに違いない。
「兄さん命令はもう決めたの?」
「ああ」
「どんな命令?僕の出来る範囲でお願いね」
「夕飯はルカの新作料理が食べたい」
「わかった。支度してくる」
「よろしく」
まさか夕飯のリクエストをするために、勝負を持ちかけたとは思わなかった。
いつのまにか外は夕焼けに染まっていた。全く気づかなかった。
何時間兄さんと遊んでいたんだろう。まさか最後に負けるなんて。
黒く染まる盤面が目に飛び込む。
勝敗は明らかなのに、つい数えてしまった。
52対12
異世界テンプレはもうこりごりだ。僕はオセロを納戸に封印した。
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