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イーザリア王国編
ルーザ村②名物料理
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村で1番大きな家に案内され、村長さんから丁寧な挨拶をされた。村長さんはかなり困っていたのだろう。僕達に何度も頭を下げていた。
依頼内容の確認やキングポイズントードの発生地、僕達の宿泊場所などを話してその日は終わった。
てっきり宿屋に案内されると思ったが、宿泊場所は小さな一軒家だった。元々は老夫婦が暮らしていたが、現在は空き家になっているらしい。
村長さんが気を遣って運んでくれたのだろう。寝室にダブルベッドと簡易なシングルベッドがあった。
せっかく運んでくれたのに申し訳ないと思ったが、滞在中シングルベッドを使うことはなかった。
翌日、村から歩いて2時間ほど歩いたらキングポイズントードが目視できる場所まで来れた。
やつらは広々とした草原で悠々と過ごしている。探知の魔法を使って確認すると、報告されたものと同じくらいの数がそこに集まっている。
探す手間が省けて助かった。思ったよりも早く討伐が完了しそうだ。
「俺の剣は使えないようだから、ルカに任せきりになってしまう。すまない」
「大丈夫。魔法であいつらを斬れるようにする」
「そんな魔法があるのか?」
「今までもちょくちょく使ってたよ」
料理でね。戦闘にも使えるとは、かなり便利な魔法だ。これからもどんどん使っていこう。
「火属性魔法《乾燥》」
魔法が発動した瞬間、キングポイズントードの動きが鈍った。粘膜が完全に乾いたようだ。
「兄さん、よろしく!」
「任せておけ」
しばらく様子を見ていたが問題なさそうだ。結局、兄さんが手際よく魔物を倒していくのをただ見守るだけになってしまった。
探知を広げて確認したが、キングポイズントードの気配は一切感じない。討伐完了だ。
「ごめんね。任せきりにしちゃった」
「ルカの魔法のおかげだ。今回は役に立たないと思っていたからよかった」
「いつも頼りきりだから気にしなくていいのに。とりあえず死骸を燃やすのは僕に任せて」
「ああ」
魔物の死骸を放置していると、それを狙う魔物が寄ってくる。放牧されている魔水牛を危険にさらすので手を抜けない。
結局キングポイズントードを倒すよりも、燃やす時間のほうが長かった。
それでも早めに終わったようだ。討伐の様子を確認するため、村長さんが派遣した村人が来た頃には、ほとんどの死骸を燃やし尽くしていた。
「お疲れ様でした。この度は本当にありがとうございました。お礼に村の名物、魔水牛の乳で作ったチーズ料理を用意いたします。ぜひ召し上がって下さい」
村長さんに報告するとまずお礼を言われた。それから、村長さんが今後の予定を話してくれた。
明日村人が討伐完了を改めて確認するので、明後日以降に村を発ってほしいこと。
今日の夜は村人と宴会、明日の夜は空き家に運ぶのでぜひ名物料理を食べていってほしいこと。
明日は兄さんと空き家でのんびり過ごすことにしよう。そのために宿屋じゃなくて空き家を提供してくれたのかもしれない。
魔水牛の乳を使ったチーズか。僕の予想が当たっていたら、かなり美味しいやつなのでは?でもそれは前世の食べ物だからさすがに全く同じものは出ないか。実物を見るまでは何とも言えないな。
空き家でのんびり過ごしていたら、夜になった。さすがに村の人達全員が入るスペースはないので宴会は外でやるらしい。
僕達は先に村長さんの家で名物料理を食べてから、宴会に参加することになった。
「乾杯!」
乾杯の前に村長さんが挨拶をしていたはずだが、すっかり頭から抜けてしまった。
「まずは魔水牛チーズのサラダを召し上がって下さい」
モッツァレラチーズだ!
僕の予想通りだった。むしろ前世と全く同じで驚いた。水牛の乳が原料のフレッシュチーズ。まさかこの世界で味わえるとは。
しかも魔水牛チーズのサラダは見た目が完全にカプレーゼだ。
チーズとトマトとバジルの色味が目を楽しませてくれる。そのなかでも、眩しいほどに真っ白な魔水牛のチーズに期待が高まる。スライスされたチーズの断面からは液体が染み出ている。まずはチーズだけ食べてみる。口に入れて感じるのはその歯応えと瑞々しさ。弾力を感じたと思ったら中はとろけるように柔らかい。濃厚なミルクの風味とほんのりとした塩気。その塩気がチーズ本来の甘味をより引き出している。
サッパリとした中に甘みがあるトマトと、爽やかな強い香りと少し辛みのあるフレッシュバジルがチーズと一緒に合わさり、そこにフルーティーな香りのオリーブオイルがかかっていることで、味のバランスが取れた爽やかなサラダとなっている。
想像以上の味だった。魔水牛のチーズが日持ちするものだったら買えるだけ買っていた。日持ちのしないチーズだからこそ、ルーザ村でしか食せない幻の味として人々の心をより惹きつけているのかもしれない。
「すっごく美味しい!」
「美味いな、ルカ?」
夢中でチーズを食べていたのを兄さんにずっと見られていたらしい。
微笑ましいものを見る目で見られているのが分かるから余計に恥ずかしくなる。
この後、魔水牛チーズを載せたピザ、魔水牛チーズを挟んだ揚げパンなど様々な名物料理をお腹いっぱい食べた。
村長さんが僕の食べる様子を見て嬉しそうな顔をしたので、途中から開き直って夢中で食べていた。
兄さんはそんな僕をとても楽しそうに眺めていた。
依頼内容の確認やキングポイズントードの発生地、僕達の宿泊場所などを話してその日は終わった。
てっきり宿屋に案内されると思ったが、宿泊場所は小さな一軒家だった。元々は老夫婦が暮らしていたが、現在は空き家になっているらしい。
村長さんが気を遣って運んでくれたのだろう。寝室にダブルベッドと簡易なシングルベッドがあった。
せっかく運んでくれたのに申し訳ないと思ったが、滞在中シングルベッドを使うことはなかった。
翌日、村から歩いて2時間ほど歩いたらキングポイズントードが目視できる場所まで来れた。
やつらは広々とした草原で悠々と過ごしている。探知の魔法を使って確認すると、報告されたものと同じくらいの数がそこに集まっている。
探す手間が省けて助かった。思ったよりも早く討伐が完了しそうだ。
「俺の剣は使えないようだから、ルカに任せきりになってしまう。すまない」
「大丈夫。魔法であいつらを斬れるようにする」
「そんな魔法があるのか?」
「今までもちょくちょく使ってたよ」
料理でね。戦闘にも使えるとは、かなり便利な魔法だ。これからもどんどん使っていこう。
「火属性魔法《乾燥》」
魔法が発動した瞬間、キングポイズントードの動きが鈍った。粘膜が完全に乾いたようだ。
「兄さん、よろしく!」
「任せておけ」
しばらく様子を見ていたが問題なさそうだ。結局、兄さんが手際よく魔物を倒していくのをただ見守るだけになってしまった。
探知を広げて確認したが、キングポイズントードの気配は一切感じない。討伐完了だ。
「ごめんね。任せきりにしちゃった」
「ルカの魔法のおかげだ。今回は役に立たないと思っていたからよかった」
「いつも頼りきりだから気にしなくていいのに。とりあえず死骸を燃やすのは僕に任せて」
「ああ」
魔物の死骸を放置していると、それを狙う魔物が寄ってくる。放牧されている魔水牛を危険にさらすので手を抜けない。
結局キングポイズントードを倒すよりも、燃やす時間のほうが長かった。
それでも早めに終わったようだ。討伐の様子を確認するため、村長さんが派遣した村人が来た頃には、ほとんどの死骸を燃やし尽くしていた。
「お疲れ様でした。この度は本当にありがとうございました。お礼に村の名物、魔水牛の乳で作ったチーズ料理を用意いたします。ぜひ召し上がって下さい」
村長さんに報告するとまずお礼を言われた。それから、村長さんが今後の予定を話してくれた。
明日村人が討伐完了を改めて確認するので、明後日以降に村を発ってほしいこと。
今日の夜は村人と宴会、明日の夜は空き家に運ぶのでぜひ名物料理を食べていってほしいこと。
明日は兄さんと空き家でのんびり過ごすことにしよう。そのために宿屋じゃなくて空き家を提供してくれたのかもしれない。
魔水牛の乳を使ったチーズか。僕の予想が当たっていたら、かなり美味しいやつなのでは?でもそれは前世の食べ物だからさすがに全く同じものは出ないか。実物を見るまでは何とも言えないな。
空き家でのんびり過ごしていたら、夜になった。さすがに村の人達全員が入るスペースはないので宴会は外でやるらしい。
僕達は先に村長さんの家で名物料理を食べてから、宴会に参加することになった。
「乾杯!」
乾杯の前に村長さんが挨拶をしていたはずだが、すっかり頭から抜けてしまった。
「まずは魔水牛チーズのサラダを召し上がって下さい」
モッツァレラチーズだ!
僕の予想通りだった。むしろ前世と全く同じで驚いた。水牛の乳が原料のフレッシュチーズ。まさかこの世界で味わえるとは。
しかも魔水牛チーズのサラダは見た目が完全にカプレーゼだ。
チーズとトマトとバジルの色味が目を楽しませてくれる。そのなかでも、眩しいほどに真っ白な魔水牛のチーズに期待が高まる。スライスされたチーズの断面からは液体が染み出ている。まずはチーズだけ食べてみる。口に入れて感じるのはその歯応えと瑞々しさ。弾力を感じたと思ったら中はとろけるように柔らかい。濃厚なミルクの風味とほんのりとした塩気。その塩気がチーズ本来の甘味をより引き出している。
サッパリとした中に甘みがあるトマトと、爽やかな強い香りと少し辛みのあるフレッシュバジルがチーズと一緒に合わさり、そこにフルーティーな香りのオリーブオイルがかかっていることで、味のバランスが取れた爽やかなサラダとなっている。
想像以上の味だった。魔水牛のチーズが日持ちするものだったら買えるだけ買っていた。日持ちのしないチーズだからこそ、ルーザ村でしか食せない幻の味として人々の心をより惹きつけているのかもしれない。
「すっごく美味しい!」
「美味いな、ルカ?」
夢中でチーズを食べていたのを兄さんにずっと見られていたらしい。
微笑ましいものを見る目で見られているのが分かるから余計に恥ずかしくなる。
この後、魔水牛チーズを載せたピザ、魔水牛チーズを挟んだ揚げパンなど様々な名物料理をお腹いっぱい食べた。
村長さんが僕の食べる様子を見て嬉しそうな顔をしたので、途中から開き直って夢中で食べていた。
兄さんはそんな僕をとても楽しそうに眺めていた。
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