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イーザリア王国編
念願のワイバーンステーキ
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スッキリした目覚めだった。ベッドが変わるだけでこんなに違うとは。
トリフェの街を出て宿屋生活に戻る未来を想像するのが悲しくなるくらい快適だった。
「兄さんおはよう」
「おはよう」
「起こしてくれてよかったのに」
「よく寝てたから」
ダイニングに行くと兄さんが座っていた。兄さんはいつも早起きだ。
僕は毎日魔力を使い切ってから寝るため朝は苦手だ。寝るというより気絶だしね。
もう魔力量を増やす必要はないのでは?と思うが習慣になってしまってなんだかんだ続いている。
僕の魔力量はどれくらいなんだろう。対象に直接触れずに魔力を視るには、かなり魔力を使う。しかも自分より魔力量が多い人を視ることはできない。
そのおかげか今まで僕の魔力量を指摘した人はいない。貴重な魔力をわざわざ他人の魔力を視るためだけに使う人がいないからだ。
少なくとも金級相当はあると思うがどうなんだろう。
「ルカ?ボーっとしてるけど寝足りないのか?」
「ごめん、なんでもないよ」
答えが出ないことを延々と考えるのは時間の無駄だ。そんな日があってもいいが今日はやめておきたい。
「兄さん、ワイバーンの肉もう受け取れるかな?」
「まだ早いと思う」
「待ちきれないからさ、もうギルド行かない?」
「ルカらしいな……わかった。ついでに依頼を確認しよう」
ギルドに向かう途中、前方にミゲルを発見した。
ちょうど用事もあったので追いかけて挨拶する。
「ミゲル!おはよう」
「ルカ!おはようっす!朝から元気っすね」
「ミゲルもね。ねえ今日の夜空いてる?」
「空いてるっす」
「ワイバーンのお礼がしたいからさ、酒場で飲もうよ。ご馳走する」
「別にお礼なんていらないのにルカは律儀っすね!ありがたくご馳走になるっす!」
「ミゲルのおかげで拠点もできたからね」
「拠点?」
「家を借りたんだ」
「おお!ついに宿屋暮らし卒業っすね!」
「めちゃくちゃ快適だった。もう宿屋暮らしに戻れないかもしれない」
「いいっすねー!今夜詳しく聞かせてほしいっす」
「うん!引き止めてごめんね。今夜よろしく」
「よろしくっす!」
ミゲルは諜報活動の途中だったのだろう。冒険者ギルドとは別方向に歩いていった。
ちなみに今夜ミゲルを誘うことは兄さんの了承済みだ。
「楽しみだね!」
「そうだな」
ギルドに着いてエイダンさんに昨日の報酬の話をすると気が早すぎだと笑われた。さすがに早かったみたいだ。
適当な依頼で時間を潰すことにした。
いつもより早めに切り上げてギルドに行くと、エイダンさんから報酬とワイバーン肉の塊を渡された。
これがワイバーン肉か。見た目は明るいピンク色をしていて脂身は少なそうだ。どんな味がするのかワクワクする。肉を食べるならやはりステーキだろう。
僕はギルド酒場の厨房にステーキ3人前をお願いした。事前に話は通してある。ミゲルと合流したら焼いてもらうことにする。僕が焼いてもよかったが初めての食材なのでプロにお任せだ。
「ワイバーン肉楽しみだね!早くミゲル来ないかな」
「俺も初めて食べるから楽しみだ」
しばらく兄さんと話しているとミゲルが現れた。
「お待たせしましたっす!」
「ミゲルお疲れ様!」
「お疲れ」
「お疲れ様っす!さっそく始めるっすか?」
「まずは乾杯から」
僕はひとりで酒場のカウンターに行き、飲み物とステーキを注文する。他につまみは頼まない。ステーキは席まで運んでもらえることになった。
「ワイバーン討伐の成功と拠点ができたことを祝して、乾杯!」
「乾杯っす!」
「乾杯」
僕だけ果実水だが雰囲気は大事だ。
「あれ?つまみは注文しなかったっすか?」
「特別なやつを用意してるからもうちょっと待って」
「特別なやつ?」
「お待たせしました!ワイバーンステーキです!」
思ったより早かった。事前に準備を済ませていたのだろう。
ミゲルは目の前に置かれたワイバーンステーキに驚いている。
「俺までご馳走になっていいっすか!?高級食材っすよ!」
「もちろん。美味しいものは皆で食べないとね。今回はさすがに協力者だけになるけど」
「久しぶりのワイバーンっす!美味しそうっすー!」
「美味そうだ」
「早く食べよう!」
全員が目の前のステーキに集中する。
ステーキの上には濃厚そうなソースがかかっている。ナイフで切り分けてみると綺麗なピンク色の断面だ。焼き加減はミディアムレアといったところか。
さっそくステーキを口に入れる。まず感じるのはその柔らかさだ。適度な弾力を楽しむとすぐに肉がほぐれていく。
そして強烈な赤身の旨みが口いっぱいに広がり、鼻から抜けていく。臭みは一切感じない。脂身が少ないからか意外と淡白な味わいだ。
それを補うように濃厚なソースを合わせているのだろう。旨みの強い肉と濃厚なソースの組み合わせが、とても美味しい。
「んん~!やっぱりワイバーン肉は美味しいっす!」
「美味いな」
「すっごく美味しい!」
想像以上の美味しさだ。目立つのは嫌だがまたワイバーンを狩りたくなるくらい美味しい。あっという間に完食してしまった。
「そういえば拠点はどんな感じっすか?」
しばらくはワイバーンステーキが話題の中心だったが落ち着いてくると今度は拠点の話になった。
「こじんまりとした一軒家って感じだよ」
「俺は集合住宅暮らしだから一軒家羨ましいっす!今度遊びに行っていいっすか?」
「狭いから『銀色の風』全員は呼べないけどミゲルだけならいいよ」
「今度お土産持って遊びに行くっす!」
「本当は春に家を借りる予定だったからワイバーンの報酬のおかげだよ」
「あー、春は人が増えるから宿屋も混むしちょうどよかったかもっす」
「これ以上ギルドに人が増えるのか?」
兄さんはトリフェ支部の人の多さ、特に男性の多さを気にしていたから反応が早かった。
「冬は依頼の数が少ないから、銀級以上の冒険者を中心にダンジョンに篭るやつらが増えるっす!春になると、戻ってきたやつと元々いたやつとの間で小競り合いが起きて騒がしくなるのが毎年恒例っす!」
「うわぁ……大変そう」
「トリフェは大きな街だから特に人が増えるっす。銀級以上の冒険者は個性的な人が多いから仲介するのも苦労するっす」
たしかにミゲルは人当たりがいいから仲介役を頼まれることも多そうだ。
今後のことを想像してすでにうんざりしてる。
「本当、何事もなければいいっすけど……」
ミゲルの未来を予知したかのような発言が僕の頭から離れなかった。
トリフェの街を出て宿屋生活に戻る未来を想像するのが悲しくなるくらい快適だった。
「兄さんおはよう」
「おはよう」
「起こしてくれてよかったのに」
「よく寝てたから」
ダイニングに行くと兄さんが座っていた。兄さんはいつも早起きだ。
僕は毎日魔力を使い切ってから寝るため朝は苦手だ。寝るというより気絶だしね。
もう魔力量を増やす必要はないのでは?と思うが習慣になってしまってなんだかんだ続いている。
僕の魔力量はどれくらいなんだろう。対象に直接触れずに魔力を視るには、かなり魔力を使う。しかも自分より魔力量が多い人を視ることはできない。
そのおかげか今まで僕の魔力量を指摘した人はいない。貴重な魔力をわざわざ他人の魔力を視るためだけに使う人がいないからだ。
少なくとも金級相当はあると思うがどうなんだろう。
「ルカ?ボーっとしてるけど寝足りないのか?」
「ごめん、なんでもないよ」
答えが出ないことを延々と考えるのは時間の無駄だ。そんな日があってもいいが今日はやめておきたい。
「兄さん、ワイバーンの肉もう受け取れるかな?」
「まだ早いと思う」
「待ちきれないからさ、もうギルド行かない?」
「ルカらしいな……わかった。ついでに依頼を確認しよう」
ギルドに向かう途中、前方にミゲルを発見した。
ちょうど用事もあったので追いかけて挨拶する。
「ミゲル!おはよう」
「ルカ!おはようっす!朝から元気っすね」
「ミゲルもね。ねえ今日の夜空いてる?」
「空いてるっす」
「ワイバーンのお礼がしたいからさ、酒場で飲もうよ。ご馳走する」
「別にお礼なんていらないのにルカは律儀っすね!ありがたくご馳走になるっす!」
「ミゲルのおかげで拠点もできたからね」
「拠点?」
「家を借りたんだ」
「おお!ついに宿屋暮らし卒業っすね!」
「めちゃくちゃ快適だった。もう宿屋暮らしに戻れないかもしれない」
「いいっすねー!今夜詳しく聞かせてほしいっす」
「うん!引き止めてごめんね。今夜よろしく」
「よろしくっす!」
ミゲルは諜報活動の途中だったのだろう。冒険者ギルドとは別方向に歩いていった。
ちなみに今夜ミゲルを誘うことは兄さんの了承済みだ。
「楽しみだね!」
「そうだな」
ギルドに着いてエイダンさんに昨日の報酬の話をすると気が早すぎだと笑われた。さすがに早かったみたいだ。
適当な依頼で時間を潰すことにした。
いつもより早めに切り上げてギルドに行くと、エイダンさんから報酬とワイバーン肉の塊を渡された。
これがワイバーン肉か。見た目は明るいピンク色をしていて脂身は少なそうだ。どんな味がするのかワクワクする。肉を食べるならやはりステーキだろう。
僕はギルド酒場の厨房にステーキ3人前をお願いした。事前に話は通してある。ミゲルと合流したら焼いてもらうことにする。僕が焼いてもよかったが初めての食材なのでプロにお任せだ。
「ワイバーン肉楽しみだね!早くミゲル来ないかな」
「俺も初めて食べるから楽しみだ」
しばらく兄さんと話しているとミゲルが現れた。
「お待たせしましたっす!」
「ミゲルお疲れ様!」
「お疲れ」
「お疲れ様っす!さっそく始めるっすか?」
「まずは乾杯から」
僕はひとりで酒場のカウンターに行き、飲み物とステーキを注文する。他につまみは頼まない。ステーキは席まで運んでもらえることになった。
「ワイバーン討伐の成功と拠点ができたことを祝して、乾杯!」
「乾杯っす!」
「乾杯」
僕だけ果実水だが雰囲気は大事だ。
「あれ?つまみは注文しなかったっすか?」
「特別なやつを用意してるからもうちょっと待って」
「特別なやつ?」
「お待たせしました!ワイバーンステーキです!」
思ったより早かった。事前に準備を済ませていたのだろう。
ミゲルは目の前に置かれたワイバーンステーキに驚いている。
「俺までご馳走になっていいっすか!?高級食材っすよ!」
「もちろん。美味しいものは皆で食べないとね。今回はさすがに協力者だけになるけど」
「久しぶりのワイバーンっす!美味しそうっすー!」
「美味そうだ」
「早く食べよう!」
全員が目の前のステーキに集中する。
ステーキの上には濃厚そうなソースがかかっている。ナイフで切り分けてみると綺麗なピンク色の断面だ。焼き加減はミディアムレアといったところか。
さっそくステーキを口に入れる。まず感じるのはその柔らかさだ。適度な弾力を楽しむとすぐに肉がほぐれていく。
そして強烈な赤身の旨みが口いっぱいに広がり、鼻から抜けていく。臭みは一切感じない。脂身が少ないからか意外と淡白な味わいだ。
それを補うように濃厚なソースを合わせているのだろう。旨みの強い肉と濃厚なソースの組み合わせが、とても美味しい。
「んん~!やっぱりワイバーン肉は美味しいっす!」
「美味いな」
「すっごく美味しい!」
想像以上の美味しさだ。目立つのは嫌だがまたワイバーンを狩りたくなるくらい美味しい。あっという間に完食してしまった。
「そういえば拠点はどんな感じっすか?」
しばらくはワイバーンステーキが話題の中心だったが落ち着いてくると今度は拠点の話になった。
「こじんまりとした一軒家って感じだよ」
「俺は集合住宅暮らしだから一軒家羨ましいっす!今度遊びに行っていいっすか?」
「狭いから『銀色の風』全員は呼べないけどミゲルだけならいいよ」
「今度お土産持って遊びに行くっす!」
「本当は春に家を借りる予定だったからワイバーンの報酬のおかげだよ」
「あー、春は人が増えるから宿屋も混むしちょうどよかったかもっす」
「これ以上ギルドに人が増えるのか?」
兄さんはトリフェ支部の人の多さ、特に男性の多さを気にしていたから反応が早かった。
「冬は依頼の数が少ないから、銀級以上の冒険者を中心にダンジョンに篭るやつらが増えるっす!春になると、戻ってきたやつと元々いたやつとの間で小競り合いが起きて騒がしくなるのが毎年恒例っす!」
「うわぁ……大変そう」
「トリフェは大きな街だから特に人が増えるっす。銀級以上の冒険者は個性的な人が多いから仲介するのも苦労するっす」
たしかにミゲルは人当たりがいいから仲介役を頼まれることも多そうだ。
今後のことを想像してすでにうんざりしてる。
「本当、何事もなければいいっすけど……」
ミゲルの未来を予知したかのような発言が僕の頭から離れなかった。
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