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イーザリア王国編
拠点
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結局、ワイバーンは兄さんが単独で討伐したと冒険者ギルドに報告した。
今回の討伐についてエイダンさんがいろいろ説明してくれた。
まず兄さんが倒したのは幼体のワイバーンだったこと、幼体のワイバーン1体なら銅級パーティーでもなんとか討伐可能であったこと、今回の討伐で兄さんは階級が銅級に上がること。
そこまで目立つことはないみたいで安心だ。兄さんも目立ち過ぎるのはあんまりよくないからね。
それなら僕が魔法でサポートしたと言っても大丈夫そうだが、後々カミラに聞いたら、たとえ幼体であってもワイバーンの翼に魔法で穴を開けるのは異常だと言われた。黙っておいて正解だったみたいだ。
エイダンさんに報酬とワイバーンの肉は明日渡すと言われたので冒険者ギルドを後にする。ちなみにワイバーン肉は5キロ貰うことになった。
僕の魔法で凍らせたらしばらく腐ることもないだろう。
「微妙に時間余っちゃったね。どうする?」
「今回の報酬は期待していいとエイダンに言われた。予定を前倒しして家を借りないか?」
「賛成!今すぐ不動産屋に行こう」
やっとだ。やっと僕達の拠点が出来る。
春まで無理だと思っていたが、ミゲルのおかげで予定が早まった。今度ミゲルにお礼をしないとね。
不動産屋のカウンターで家を借りたい旨を伝えると、希望する条件に近い物件をいくつか見せてくれた。
しかし兄さんの熱烈な希望で拠点となる物件がすぐに決定した。
「お客様、本当にこの物件でよろしいのでしょうか?広いとはいえ寝室が1部屋しかありませんが」
「かまわない」
「似た条件で寝室が2部屋ある物件もありますよ。狭いといってもそこまで気になるものでもありませんし、内覧で確認されては?」
「内覧はいらない。先ほど決めた物件にする。さっさと契約の手続きをしてくれ」
「ひっ……か、かしこまりした。少々お待ちくださいませ」
契約書を取りに行くため席を外したのだろう。兄さんに睨まれて顔が青くなっていたが、あの店員さんは大丈夫だろうか。
店員さんの気持ちもわかるから同情してしまう。
兄弟で住むのに寝室1部屋にダブルベッド付きの物件はなぁ……。それは何度も確認するよ。
宿屋では料金の関係で仕方なく2人部屋を取っていたが、まさか借家でも一緒の部屋で寝たいと思っていたとは。
せっかく店員さんが候補をいくつか見せてくれたのに、寝室が1部屋しかないのがあの物件だけだったから即決だった。
青い顔のままの店員さんが戻ってきたので契約を進める。契約金は金貨10枚、賃料は1ヶ月で金貨5枚と銀貨7枚、賃料は毎月不動産屋に支払いすること等、契約書の内容を確認してサインする。契約者は兄さんだけだ。僕は未成年だから契約できない。
「ルカ、これからも一緒の部屋で寝られるな。宿屋と違ってベッドも一緒だ」
いつもの3割増しくらいの笑顔で僕を見つめる兄さん。
同じベッドで寝られることにすごくはしゃいでいる。
「うん、そうだね」
「ひぃ……」
ドン引きだ、ドン引き。僕ではない。店員さんがだ。
僕は兄さんが嬉しそうだから同じベッドで寝るのも悪くないと思っている。
兄さんは世間的にどんな人物だと思われているのだろう。
弟思いのお兄さん?行き過ぎたブラコン?まぁ、どちらでもいいか。
契約金と1ヶ月分の賃料を払い借家の鍵を受け取る。今日から僕達の拠点だ。不動産屋を出て急いで向かうことにした。
歩いて30分程で拠点に到着した。拠点から冒険者ギルドまでは歩いて20分の距離だ。商店が並ぶ通りにも近い。
冒険者生活に不便がない立地だ。外観はこじんまりとした一軒家といったところか。元々は夫婦向け物件だしね。小さいけど裏庭もある。
「思ったより立地がよかったね」
「そうだな」
「家具付きの物件だし細々としたものは明日揃えて、後でシーツとか必要なものだけ買おうか」
「了解。まずは家に入るぞ」
玄関を開けるとすぐ右手のところがトイレだ。すぐ横の個室に小さな洗い場がある。お風呂はないようだ。
奥に進むと台所とダイニングだ。ダイニングには大きめのテーブルと椅子が4脚備え付けられている。空いているスペースは納戸かな。
ダイニングのさらに奥が寝室だ。寝室に入ると存在感のあるベッドが目に入る。
ダブルベッドだと聞いていたがクイーンサイズくらいに見える。兄さんは大柄だからちょうどいいね。
「ここが僕達の拠点か。いい感じだね。すごく気に入った」
「俺もだ、必要なものを買いに行くか」
シーツや今日の夕食など必要なものを買ったらすっかり夜になった。朝はワイバーンを倒してそれから引越し、なかなかハードな1日だった。
夕食後まったりしてたらもう寝る時間だ。兄さんと同時にベッドに入る。一緒に横になっていると兄さんが正面から抱きついてきた。
「兄さんどうしたの?冒険者ギルドにいた時からちょっと様子が変だった」
「ああ」
「なにか不安なことがあった?」
「ルカは誰にも渡さない」
さらにぎゅっと抱きしめられた。兄さんの声が不安気に震えている。
「僕が貴族に目をつけられるかもって話を聞いたから?」
「すまない」
「謝らないで。大丈夫だから。僕と兄さんはずっと一緒だよ」
僕も抱きしめ返す。温かい。兄さんの体温が好きだ。ポカポカしててずっとそばにいたくなる。
「そうだな。ずっと一緒だ」
今回の討伐についてエイダンさんがいろいろ説明してくれた。
まず兄さんが倒したのは幼体のワイバーンだったこと、幼体のワイバーン1体なら銅級パーティーでもなんとか討伐可能であったこと、今回の討伐で兄さんは階級が銅級に上がること。
そこまで目立つことはないみたいで安心だ。兄さんも目立ち過ぎるのはあんまりよくないからね。
それなら僕が魔法でサポートしたと言っても大丈夫そうだが、後々カミラに聞いたら、たとえ幼体であってもワイバーンの翼に魔法で穴を開けるのは異常だと言われた。黙っておいて正解だったみたいだ。
エイダンさんに報酬とワイバーンの肉は明日渡すと言われたので冒険者ギルドを後にする。ちなみにワイバーン肉は5キロ貰うことになった。
僕の魔法で凍らせたらしばらく腐ることもないだろう。
「微妙に時間余っちゃったね。どうする?」
「今回の報酬は期待していいとエイダンに言われた。予定を前倒しして家を借りないか?」
「賛成!今すぐ不動産屋に行こう」
やっとだ。やっと僕達の拠点が出来る。
春まで無理だと思っていたが、ミゲルのおかげで予定が早まった。今度ミゲルにお礼をしないとね。
不動産屋のカウンターで家を借りたい旨を伝えると、希望する条件に近い物件をいくつか見せてくれた。
しかし兄さんの熱烈な希望で拠点となる物件がすぐに決定した。
「お客様、本当にこの物件でよろしいのでしょうか?広いとはいえ寝室が1部屋しかありませんが」
「かまわない」
「似た条件で寝室が2部屋ある物件もありますよ。狭いといってもそこまで気になるものでもありませんし、内覧で確認されては?」
「内覧はいらない。先ほど決めた物件にする。さっさと契約の手続きをしてくれ」
「ひっ……か、かしこまりした。少々お待ちくださいませ」
契約書を取りに行くため席を外したのだろう。兄さんに睨まれて顔が青くなっていたが、あの店員さんは大丈夫だろうか。
店員さんの気持ちもわかるから同情してしまう。
兄弟で住むのに寝室1部屋にダブルベッド付きの物件はなぁ……。それは何度も確認するよ。
宿屋では料金の関係で仕方なく2人部屋を取っていたが、まさか借家でも一緒の部屋で寝たいと思っていたとは。
せっかく店員さんが候補をいくつか見せてくれたのに、寝室が1部屋しかないのがあの物件だけだったから即決だった。
青い顔のままの店員さんが戻ってきたので契約を進める。契約金は金貨10枚、賃料は1ヶ月で金貨5枚と銀貨7枚、賃料は毎月不動産屋に支払いすること等、契約書の内容を確認してサインする。契約者は兄さんだけだ。僕は未成年だから契約できない。
「ルカ、これからも一緒の部屋で寝られるな。宿屋と違ってベッドも一緒だ」
いつもの3割増しくらいの笑顔で僕を見つめる兄さん。
同じベッドで寝られることにすごくはしゃいでいる。
「うん、そうだね」
「ひぃ……」
ドン引きだ、ドン引き。僕ではない。店員さんがだ。
僕は兄さんが嬉しそうだから同じベッドで寝るのも悪くないと思っている。
兄さんは世間的にどんな人物だと思われているのだろう。
弟思いのお兄さん?行き過ぎたブラコン?まぁ、どちらでもいいか。
契約金と1ヶ月分の賃料を払い借家の鍵を受け取る。今日から僕達の拠点だ。不動産屋を出て急いで向かうことにした。
歩いて30分程で拠点に到着した。拠点から冒険者ギルドまでは歩いて20分の距離だ。商店が並ぶ通りにも近い。
冒険者生活に不便がない立地だ。外観はこじんまりとした一軒家といったところか。元々は夫婦向け物件だしね。小さいけど裏庭もある。
「思ったより立地がよかったね」
「そうだな」
「家具付きの物件だし細々としたものは明日揃えて、後でシーツとか必要なものだけ買おうか」
「了解。まずは家に入るぞ」
玄関を開けるとすぐ右手のところがトイレだ。すぐ横の個室に小さな洗い場がある。お風呂はないようだ。
奥に進むと台所とダイニングだ。ダイニングには大きめのテーブルと椅子が4脚備え付けられている。空いているスペースは納戸かな。
ダイニングのさらに奥が寝室だ。寝室に入ると存在感のあるベッドが目に入る。
ダブルベッドだと聞いていたがクイーンサイズくらいに見える。兄さんは大柄だからちょうどいいね。
「ここが僕達の拠点か。いい感じだね。すごく気に入った」
「俺もだ、必要なものを買いに行くか」
シーツや今日の夕食など必要なものを買ったらすっかり夜になった。朝はワイバーンを倒してそれから引越し、なかなかハードな1日だった。
夕食後まったりしてたらもう寝る時間だ。兄さんと同時にベッドに入る。一緒に横になっていると兄さんが正面から抱きついてきた。
「兄さんどうしたの?冒険者ギルドにいた時からちょっと様子が変だった」
「ああ」
「なにか不安なことがあった?」
「ルカは誰にも渡さない」
さらにぎゅっと抱きしめられた。兄さんの声が不安気に震えている。
「僕が貴族に目をつけられるかもって話を聞いたから?」
「すまない」
「謝らないで。大丈夫だから。僕と兄さんはずっと一緒だよ」
僕も抱きしめ返す。温かい。兄さんの体温が好きだ。ポカポカしててずっとそばにいたくなる。
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