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イーザリア王国編
お荷物
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僕達が冒険者登録をした日から2ヶ月が経った。
その間大きなトラブルもなく順調に依頼をこなした。このペースだと春には家を借りることができるだろう。
『銀色の風』とはずいぶん仲良くなった。ミゲルとゴシップ話で盛り上がったり、カミラと魔法談話をしたり、トールとお茶をしながら静かに過ごしたりと楽しくやってる。
ダリオは兄さんと手合わせをした時、強くなるための足掛かりを掴んだらしい。今でもしつこく兄さんに手合わせを頼み込んでいる。5回に1回くらいだけど、兄さんが手合わせを了承してくれるのが嬉しいみたいだ。
今日はどんな依頼を受けようかと悩んでいると、すぐそばにミゲルがいた。
「ルカおはよう!依頼っすか?」
「ミゲルおはよう。今日は何を受けるか迷っちゃって」
「ならこの依頼っすね!俺の予知がいいことがあるって告げてるっす!」
「えっ?この依頼が?」
「本当っす!俺もよくわからないっすが」
『ゴブリン討伐、トリフェ西の草原と森の境目に大量発生、報酬は討伐数に応じて変動』
「わかった。ミゲルを信じるよ。兄さんもこの依頼でいい?」
「ルカがいいならそれでいい」
兄さんはいつも僕の自由にやらせてくれる。
「ありがとうミゲル!」
「お安い御用っす!面白い話があったら聞かせてほしいっす!」
依頼の場所まで来ると冒険者がちらほらいた。皆黙々とゴブリンを狩っている。予想以上に人の数が多い。
人目がある中で魔法を使って、万が一目立ってしまったら面倒だ。どうしたものかと悩んでいると、兄さんが大剣をブンブン振り回してゴブリンを倒していた。
「兄さん任せちゃってごめんね」
「別にこれくらい負担でもない。ルカはやりたいようにやってくれ」
「ありがとう」
久しぶりにメイスの出番かなと思い武器を構えると、何人かの非難めいた視線が突き刺さる。
あいかわらずお荷物に厳しいね
冒険者になって2ヶ月、僕の評価は強いやつに寄生しているお荷物といったところだ。
この世界で魔法といえば、攻撃魔法が主流だ。しかも見た目に分かりやすくダメージを与える魔法が、至高だと考えられている。
一般的な攻撃魔法と比べると僕の魔法は見た目が地味すぎる。そのせいで威力も高が知れているとナメられている。
僕にとってこの世界の攻撃魔法のほとんどが、見た目だけ派手で効率が悪い無駄魔法だ。周りからお荷物扱いされようが意地でも使いたくない。
僕への視線に気がついた兄さんが周囲を睨みつけて威嚇している。
兄さんはグレートボアをソロ討伐した強いやつだと認識されているので、僕を睨んでいた冒険者達は一斉に目を逸らした。
目を逸らすくらいなら僕を睨まなければいいのに。ご苦労なことだ。
「あいつらのことは気にするな」
「僕は気にしてないよ、でもありがとう」
人目のある所で狩りをするのは気を使うし疲れる。
ミゲルの予知がなかったら絶対依頼を受けていなかったなと思っていると、街の方向から冒険者が大声を上げて走ってきた。
「ワイバーンが2匹!1匹は街壁近くで応戦中!もう1匹がこの平原の近くまで来てる!しばらくしたら銅級パーティーが何組かやって来る。死にたくなきゃ鉄級は逃げろ!」
ゴブリン狩りをしていた冒険者達は我先にと逃げ出した。ワイバーンか。特に興味が湧かない。いいことは起こらなかったが撤退でいいだろう。
「兄さん、僕達も撤退する?」
「いいのか?ワイバーンの肉は美味だと聞いたことがあるが」
「よし、狩ろう。無理しない程度に頑張ろうね」
「お前ら頭おかしいんじゃないか!?ワイバーンだぞ!俺は伝えたからな!」
伝達役の人も逃げ出した。ラッキーだ。銅級冒険者達が来る前にワイバーンを倒そう。
「兄さん、いつも通り僕が魔法で援護する!危ないと思ったらすぐ撤退するよ」
「わかった。ルカと一緒なら余裕だ。頼りにしてる」
兄さんにそう言われると嬉しいような恥ずかしいようなソワソワした気分になる。
周囲の評価は全く気にならないのに、兄さんの言葉ひとつで心が躍る。不思議な気分だ。
浮かれていると頭上に大きな生き物が現れた。そいつは僕達のことは歯牙にもかけず、餌となるゴブリンに意識を向けていた。
その間大きなトラブルもなく順調に依頼をこなした。このペースだと春には家を借りることができるだろう。
『銀色の風』とはずいぶん仲良くなった。ミゲルとゴシップ話で盛り上がったり、カミラと魔法談話をしたり、トールとお茶をしながら静かに過ごしたりと楽しくやってる。
ダリオは兄さんと手合わせをした時、強くなるための足掛かりを掴んだらしい。今でもしつこく兄さんに手合わせを頼み込んでいる。5回に1回くらいだけど、兄さんが手合わせを了承してくれるのが嬉しいみたいだ。
今日はどんな依頼を受けようかと悩んでいると、すぐそばにミゲルがいた。
「ルカおはよう!依頼っすか?」
「ミゲルおはよう。今日は何を受けるか迷っちゃって」
「ならこの依頼っすね!俺の予知がいいことがあるって告げてるっす!」
「えっ?この依頼が?」
「本当っす!俺もよくわからないっすが」
『ゴブリン討伐、トリフェ西の草原と森の境目に大量発生、報酬は討伐数に応じて変動』
「わかった。ミゲルを信じるよ。兄さんもこの依頼でいい?」
「ルカがいいならそれでいい」
兄さんはいつも僕の自由にやらせてくれる。
「ありがとうミゲル!」
「お安い御用っす!面白い話があったら聞かせてほしいっす!」
依頼の場所まで来ると冒険者がちらほらいた。皆黙々とゴブリンを狩っている。予想以上に人の数が多い。
人目がある中で魔法を使って、万が一目立ってしまったら面倒だ。どうしたものかと悩んでいると、兄さんが大剣をブンブン振り回してゴブリンを倒していた。
「兄さん任せちゃってごめんね」
「別にこれくらい負担でもない。ルカはやりたいようにやってくれ」
「ありがとう」
久しぶりにメイスの出番かなと思い武器を構えると、何人かの非難めいた視線が突き刺さる。
あいかわらずお荷物に厳しいね
冒険者になって2ヶ月、僕の評価は強いやつに寄生しているお荷物といったところだ。
この世界で魔法といえば、攻撃魔法が主流だ。しかも見た目に分かりやすくダメージを与える魔法が、至高だと考えられている。
一般的な攻撃魔法と比べると僕の魔法は見た目が地味すぎる。そのせいで威力も高が知れているとナメられている。
僕にとってこの世界の攻撃魔法のほとんどが、見た目だけ派手で効率が悪い無駄魔法だ。周りからお荷物扱いされようが意地でも使いたくない。
僕への視線に気がついた兄さんが周囲を睨みつけて威嚇している。
兄さんはグレートボアをソロ討伐した強いやつだと認識されているので、僕を睨んでいた冒険者達は一斉に目を逸らした。
目を逸らすくらいなら僕を睨まなければいいのに。ご苦労なことだ。
「あいつらのことは気にするな」
「僕は気にしてないよ、でもありがとう」
人目のある所で狩りをするのは気を使うし疲れる。
ミゲルの予知がなかったら絶対依頼を受けていなかったなと思っていると、街の方向から冒険者が大声を上げて走ってきた。
「ワイバーンが2匹!1匹は街壁近くで応戦中!もう1匹がこの平原の近くまで来てる!しばらくしたら銅級パーティーが何組かやって来る。死にたくなきゃ鉄級は逃げろ!」
ゴブリン狩りをしていた冒険者達は我先にと逃げ出した。ワイバーンか。特に興味が湧かない。いいことは起こらなかったが撤退でいいだろう。
「兄さん、僕達も撤退する?」
「いいのか?ワイバーンの肉は美味だと聞いたことがあるが」
「よし、狩ろう。無理しない程度に頑張ろうね」
「お前ら頭おかしいんじゃないか!?ワイバーンだぞ!俺は伝えたからな!」
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周囲の評価は全く気にならないのに、兄さんの言葉ひとつで心が躍る。不思議な気分だ。
浮かれていると頭上に大きな生き物が現れた。そいつは僕達のことは歯牙にもかけず、餌となるゴブリンに意識を向けていた。
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