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イーザリア王国編
ミゲルの過去
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——俺、ミゲルは妖精と人間のクォーターとしてこの世に生を受けた。
妖精と人間のハーフだった母は俺よりも予知の力が強くて、その力で何度も人々を救ってきた。
魔物暴走、災害、大事故。母の予知で救われた命は多い。
その反面、何もできずに失われた命も少なくない。母が予知する出来事はそれくらい悲惨なものが多かったからだ。
母は予言の巫女と敬われていたが、同時に恨みも買っていた。『なんであいつらは生きてるのに俺の家族は死んだんだ!どうして、どうして!』ほとんど八つ当たりだ。
母もそれは分かっていた。分かっていたけど割り切れなかった。
母は俺が物心ついた時には心を病んでいた。何も話さず、何も見ようとしない。毎日気を失ったように眠るまでずっと窓の外を眺めていた。
何も映さない目で外を見つめる横顔、それが俺の記憶にある母の顔だ。結局母は正気に戻ることがないまま、俺が6歳の時に亡くなった。
12歳になって俺に無属性魔法の適性と予知の能力があると知って、父は嘆いていた。でも俺は泣くほど嬉しかった。
俺は母のことを尊敬している。俺にとって母は大勢の命を救った英雄だ。だから同じ能力があるとわかって歓喜した。だがそれもすぐに終わった。
俺の能力は母と比べるとお粗末なもので、なんとなく何か起こる予感がするという程度だった。
俺はがっかりしたがそれでも諦めなかった。その程度の能力でも母のように人々を救いたい、目の前にある命を救える人になりたい。その思いを胸に俺は冒険者になった。
冒険者になり、縁があって『銀色の風』のメンバーになってたくさんの経験をした。俺の能力を使って何人もの命を救った。でもまだ足りない。母の足元にも及ばない。もっと力が欲しい。もっともっと人々を救うためにこの力を役立てたい——
「というわけで、俺はルカに近づいたっす。アイザックさんが怒るのも当然だと思う……必死すぎてルカのこと、能力をあげるための物扱いしてることに気づかなかった。本当にごめんなさい」
ミゲルが頭を下げて謝ってきた。その話を聞いて僕は
「僕に出来ることなら何でも言って!どうして僕と仲良くなったら予知が強くなるのか、全く分からないけど絶対ミゲルの力になる!約束する」
ミゲルの純粋な思いに心を動かされた。
「ルカ、ありがとう。嬉しいっす。俺を許してくれるっすか?」
「当たり前だよ。そもそも僕は怒ってないし。僕達は今日から友達だ」
「やったー!ルカはいいやつっす!俺も予知でルカを助けるっす!」
「ありがとう」
一段落ついたので、話題を変えてさっきの噂について話を振ってみた。
「ミゲル、3日前にダリオと僕を見たって誰かに話したでしょ。噂になってるよ」
「たしかにそんな話をした覚えがあるけど、噂になるようなことっすか?ルカの魔法にやられたダリオが面白かったって話っすよ」
「ダリオが僕にキスを迫ってフラれたって話になってる。今兄さんがダリオを折檻中」
「うわー、ダリオに悪いことしたっす」
ミゲルが頭を抱えていた。どうやって謝ろうかと考えているようだ。
ダリオに怒られることを確信して泣きそうな顔になってる。
「なんでそんなに話が変わったのかな?」
「あー、俺見聞きしたことを説明するのが苦手で……内容を整理しないでダラダラ話しちゃったかもっす」
そういうことか。恐らくミゲルは見たことをそのまま話したのだろう。
あの日ダリオは僕の肩を組もうと屈んで顔を近づけて、その直後魔法をくらって仰け反った。その光景を分かりにくい説明付きで伝えたことで、ダリオがキスを迫ったと面白おかしく解釈されたのだろう。
その話がさらに捻じ曲がって今回の噂になったのかな。
「そもそも諜報活動だっけ?なんでそんなことしてるの?」
「予知が反応するところに行きまくってたら趣味になっちゃって。ゴシップ集めは諜報活動の一環としてやってる感じっす」
「その趣味は今後も続けるの?」
「たまに事件や事故を防いだりしてるのでやめられないっすね」
「なら止められないね。ミゲルはすごいよ。なかなか出来ることじゃない。応援する」
「ルカは褒め上手っすね!嬉しいっす!」
さっきの泣きそうな顔が嘘のように笑顔に変わった。やっぱりミゲルは笑顔が似合う。
僕達は兄さんとダリオが帰ってくるまでいろんな話題で話に花を咲かせた。
妖精と人間のハーフだった母は俺よりも予知の力が強くて、その力で何度も人々を救ってきた。
魔物暴走、災害、大事故。母の予知で救われた命は多い。
その反面、何もできずに失われた命も少なくない。母が予知する出来事はそれくらい悲惨なものが多かったからだ。
母は予言の巫女と敬われていたが、同時に恨みも買っていた。『なんであいつらは生きてるのに俺の家族は死んだんだ!どうして、どうして!』ほとんど八つ当たりだ。
母もそれは分かっていた。分かっていたけど割り切れなかった。
母は俺が物心ついた時には心を病んでいた。何も話さず、何も見ようとしない。毎日気を失ったように眠るまでずっと窓の外を眺めていた。
何も映さない目で外を見つめる横顔、それが俺の記憶にある母の顔だ。結局母は正気に戻ることがないまま、俺が6歳の時に亡くなった。
12歳になって俺に無属性魔法の適性と予知の能力があると知って、父は嘆いていた。でも俺は泣くほど嬉しかった。
俺は母のことを尊敬している。俺にとって母は大勢の命を救った英雄だ。だから同じ能力があるとわかって歓喜した。だがそれもすぐに終わった。
俺の能力は母と比べるとお粗末なもので、なんとなく何か起こる予感がするという程度だった。
俺はがっかりしたがそれでも諦めなかった。その程度の能力でも母のように人々を救いたい、目の前にある命を救える人になりたい。その思いを胸に俺は冒険者になった。
冒険者になり、縁があって『銀色の風』のメンバーになってたくさんの経験をした。俺の能力を使って何人もの命を救った。でもまだ足りない。母の足元にも及ばない。もっと力が欲しい。もっともっと人々を救うためにこの力を役立てたい——
「というわけで、俺はルカに近づいたっす。アイザックさんが怒るのも当然だと思う……必死すぎてルカのこと、能力をあげるための物扱いしてることに気づかなかった。本当にごめんなさい」
ミゲルが頭を下げて謝ってきた。その話を聞いて僕は
「僕に出来ることなら何でも言って!どうして僕と仲良くなったら予知が強くなるのか、全く分からないけど絶対ミゲルの力になる!約束する」
ミゲルの純粋な思いに心を動かされた。
「ルカ、ありがとう。嬉しいっす。俺を許してくれるっすか?」
「当たり前だよ。そもそも僕は怒ってないし。僕達は今日から友達だ」
「やったー!ルカはいいやつっす!俺も予知でルカを助けるっす!」
「ありがとう」
一段落ついたので、話題を変えてさっきの噂について話を振ってみた。
「ミゲル、3日前にダリオと僕を見たって誰かに話したでしょ。噂になってるよ」
「たしかにそんな話をした覚えがあるけど、噂になるようなことっすか?ルカの魔法にやられたダリオが面白かったって話っすよ」
「ダリオが僕にキスを迫ってフラれたって話になってる。今兄さんがダリオを折檻中」
「うわー、ダリオに悪いことしたっす」
ミゲルが頭を抱えていた。どうやって謝ろうかと考えているようだ。
ダリオに怒られることを確信して泣きそうな顔になってる。
「なんでそんなに話が変わったのかな?」
「あー、俺見聞きしたことを説明するのが苦手で……内容を整理しないでダラダラ話しちゃったかもっす」
そういうことか。恐らくミゲルは見たことをそのまま話したのだろう。
あの日ダリオは僕の肩を組もうと屈んで顔を近づけて、その直後魔法をくらって仰け反った。その光景を分かりにくい説明付きで伝えたことで、ダリオがキスを迫ったと面白おかしく解釈されたのだろう。
その話がさらに捻じ曲がって今回の噂になったのかな。
「そもそも諜報活動だっけ?なんでそんなことしてるの?」
「予知が反応するところに行きまくってたら趣味になっちゃって。ゴシップ集めは諜報活動の一環としてやってる感じっす」
「その趣味は今後も続けるの?」
「たまに事件や事故を防いだりしてるのでやめられないっすね」
「なら止められないね。ミゲルはすごいよ。なかなか出来ることじゃない。応援する」
「ルカは褒め上手っすね!嬉しいっす!」
さっきの泣きそうな顔が嘘のように笑顔に変わった。やっぱりミゲルは笑顔が似合う。
僕達は兄さんとダリオが帰ってくるまでいろんな話題で話に花を咲かせた。
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