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イーザリア王国編
根に持つタイプ
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「できた!兄さんちょっと僕の手を握ってみて!」
昼食後しばらくして魔法が完成した。武器の手入れをしていた兄さんが手を止めて僕の側に寄る。
「本当に完成したのか。魔法の天才だな。で、ルカの手を握ればいいのか?」
「うん、お願い」
兄さんが恐る恐る僕の手を握る。痛がる様子もない。
「次は僕が目をつぶってるから何も言わずに触って。どこでもいいよ。好きにして」
「ふたりきりの空間でそんなことを言ってはいけない」
「兄さんだからいいじゃん。早く」
はぁーーと大きなため息が聞こえたと思ったら、いきなり両頬をつねられた。びっくりして思わず目を開ける。
「いひゃい、いひゃい」
「で?何か言うことは?」
兄さんが手を離して僕に問いかける。答えはひとつしかない。
「すみませんでした。以後気をつけます」
「よろしい」
実験は大成功だ。完成した魔法をお披露目しようと兄さんをとある場所に誘う。
誰が犠牲になるかってそんなの決まってる。チャンスは今夜、絶対痛い目見せてやる。
僕は冒険者ギルドの入り口付近にいた。扉の側でひとり、ターゲットが来るのを待つ。
昨日、本人が自己紹介で言ってたんだ。ターゲットは必ずここに来る。
かなり渋られたが、兄さんには物影から見守ってもらうことにした。
ほどなくしてターゲットが近くにやってきた。僕は偶然を装って声をかける。
「あれ?ダリオじゃん。今夜はひとり?」
「おー、ルカちゃんこそ!お兄さんはいないの?俺が慰めてあげよーか?」
ダリオは僕を見かけるとニヤニヤ笑いながら近寄ってきた。
そこでやめておけばよかったのに、さらに肩を組もうとして僕に触れようとした瞬間
バチッ
「いって!」
思ったより音が出て驚いた。痛い目を見せるといっても、さすがに可哀想なので威力は弱めにしている。
針で刺されたくらいの鋭い痛みが走って、少しの間指が痺れる程度だ。
ダリオは音と一瞬の痛みに驚いたもののすぐに落ち着きを取り戻した。
「今のルカちゃん?」
バチッ
「ルカちゃんって言ったら痛い目見せるって宣言したからね。新しい魔法を試してみた」
「だから痛いって!こんな地味な報復されるとは思わなかった……普通は殴るとかそっちの方向では?」
「でも地味に嫌でしょ?分かったならもうルカちゃん呼びやめてね」
「……ルカってけっこう根に持つタイプなのね」
弱い威力でこれなら十分だろう。満足したので帰ろうとしたらダリオに呼び止められた。
「3日後空いてる?ミゲルも呼んで酒場で話そうよ。アイザックさんも一緒に」
「俺がどうした」
「うわっ!いつのまに!」
いきなり現れた兄さんにダリオが驚く。僕の魔法をくらった時より驚いていて面白い。
「ダリオは兄さんに用があるの?昨日も話したそうだったよね」
「いやー、気になる噂があって確かめたかったのよ」
「俺の噂?」
「グレートボアをソロで、それも一撃で倒したって噂」
「確かに倒したな」
もうその話が出回ってるのか。この街は規模の割に噂が回るのが早いのかもしれない。ダリオは噂が本当だと知ると目を輝かせた。
「アイザックさん!俺と手合わせしてほしい!」
「断る」
即答だった。兄さんは無駄な戦闘が好きではない。依頼以外で弱い魔物を狩ろうとしない。グレートボアの時は僕に実力を見せようと張り切っていただけで、普段目立つようなことはしない。手合わせとはいえ、人と剣を交えることをしたくないのだろう。
その後もダリオが食い下がって手合わせをお願いしていたが、兄さんが首を縦に振ることはなかった。
「ルカからもお願いしてくれない?そしたらアイザックさん手合わせしてくれるでしょ?」
ダリオは鋭い。たしかに僕からお願いしたら兄さんは頷くだろう。でもそんなことを強要する気はない。
「嫌だよ。3日後に兄さんも連れて行くから、また話したらいいじゃん」
「はぁー、やっぱりだめか。じゃあ3日後の夜、依頼が終わったらギルド内の酒場に集合で」
「了解。兄さんもいいでしょ?」
「わかった」
ダリオとギルドの入口前で別れる。僕は魔法に成功したことと、3日後のことで頭がいっぱいで気づいていなかった。
その光景をミゲルに見られていたことに。
昼食後しばらくして魔法が完成した。武器の手入れをしていた兄さんが手を止めて僕の側に寄る。
「本当に完成したのか。魔法の天才だな。で、ルカの手を握ればいいのか?」
「うん、お願い」
兄さんが恐る恐る僕の手を握る。痛がる様子もない。
「次は僕が目をつぶってるから何も言わずに触って。どこでもいいよ。好きにして」
「ふたりきりの空間でそんなことを言ってはいけない」
「兄さんだからいいじゃん。早く」
はぁーーと大きなため息が聞こえたと思ったら、いきなり両頬をつねられた。びっくりして思わず目を開ける。
「いひゃい、いひゃい」
「で?何か言うことは?」
兄さんが手を離して僕に問いかける。答えはひとつしかない。
「すみませんでした。以後気をつけます」
「よろしい」
実験は大成功だ。完成した魔法をお披露目しようと兄さんをとある場所に誘う。
誰が犠牲になるかってそんなの決まってる。チャンスは今夜、絶対痛い目見せてやる。
僕は冒険者ギルドの入り口付近にいた。扉の側でひとり、ターゲットが来るのを待つ。
昨日、本人が自己紹介で言ってたんだ。ターゲットは必ずここに来る。
かなり渋られたが、兄さんには物影から見守ってもらうことにした。
ほどなくしてターゲットが近くにやってきた。僕は偶然を装って声をかける。
「あれ?ダリオじゃん。今夜はひとり?」
「おー、ルカちゃんこそ!お兄さんはいないの?俺が慰めてあげよーか?」
ダリオは僕を見かけるとニヤニヤ笑いながら近寄ってきた。
そこでやめておけばよかったのに、さらに肩を組もうとして僕に触れようとした瞬間
バチッ
「いって!」
思ったより音が出て驚いた。痛い目を見せるといっても、さすがに可哀想なので威力は弱めにしている。
針で刺されたくらいの鋭い痛みが走って、少しの間指が痺れる程度だ。
ダリオは音と一瞬の痛みに驚いたもののすぐに落ち着きを取り戻した。
「今のルカちゃん?」
バチッ
「ルカちゃんって言ったら痛い目見せるって宣言したからね。新しい魔法を試してみた」
「だから痛いって!こんな地味な報復されるとは思わなかった……普通は殴るとかそっちの方向では?」
「でも地味に嫌でしょ?分かったならもうルカちゃん呼びやめてね」
「……ルカってけっこう根に持つタイプなのね」
弱い威力でこれなら十分だろう。満足したので帰ろうとしたらダリオに呼び止められた。
「3日後空いてる?ミゲルも呼んで酒場で話そうよ。アイザックさんも一緒に」
「俺がどうした」
「うわっ!いつのまに!」
いきなり現れた兄さんにダリオが驚く。僕の魔法をくらった時より驚いていて面白い。
「ダリオは兄さんに用があるの?昨日も話したそうだったよね」
「いやー、気になる噂があって確かめたかったのよ」
「俺の噂?」
「グレートボアをソロで、それも一撃で倒したって噂」
「確かに倒したな」
もうその話が出回ってるのか。この街は規模の割に噂が回るのが早いのかもしれない。ダリオは噂が本当だと知ると目を輝かせた。
「アイザックさん!俺と手合わせしてほしい!」
「断る」
即答だった。兄さんは無駄な戦闘が好きではない。依頼以外で弱い魔物を狩ろうとしない。グレートボアの時は僕に実力を見せようと張り切っていただけで、普段目立つようなことはしない。手合わせとはいえ、人と剣を交えることをしたくないのだろう。
その後もダリオが食い下がって手合わせをお願いしていたが、兄さんが首を縦に振ることはなかった。
「ルカからもお願いしてくれない?そしたらアイザックさん手合わせしてくれるでしょ?」
ダリオは鋭い。たしかに僕からお願いしたら兄さんは頷くだろう。でもそんなことを強要する気はない。
「嫌だよ。3日後に兄さんも連れて行くから、また話したらいいじゃん」
「はぁー、やっぱりだめか。じゃあ3日後の夜、依頼が終わったらギルド内の酒場に集合で」
「了解。兄さんもいいでしょ?」
「わかった」
ダリオとギルドの入口前で別れる。僕は魔法に成功したことと、3日後のことで頭がいっぱいで気づいていなかった。
その光景をミゲルに見られていたことに。
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