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イーザリア王国編
イーザリア王国入国
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関所を抜けイーザリア王国に入国した。道中びっくりするほど何もなかった。盛り上がったのは兄さんに旅が快適になる魔法、エアークッションを披露した時くらいだ。
「ルカ、あの魔法はいいな。今後もお願いしたい」
「もうあの魔法なしで馬車に座れないよね。揺れないことが、あんなに快適だったとは思わなかったよ」
「ああ、本当に」
今後も快適な旅のため、いろんな魔法を開発しよう。
僕達は目的地を、イーザリア王国北部の街トリフェにすると決めた。グレースや乗合馬車で一緒になった商人さんからトリフェの街をおすすめされたからだ。鉄級の依頼も多いので初心者冒険者も過ごしやすいそうだ。
イーザリア王国は夏は高温で乾燥していて、冬は雨が多く、たまに雪が降ることもある。今は冬直前だ。雪が積もる前に国から出られてよかった。
今僕達がいる関所の街バーチスからトリフェの街までは乗合馬車で8日の距離。明後日の便を逃すと、次はいつ馬車が出るか分からないと聞いて慌てて予約した。
「乗合馬車が間に合ってよかったね。今日は宿を取って休もうか」
「そうだな」
夕食の時間になった。久しぶりにお店で食べる。乗合馬車で移動する時は干し肉か僕が作る肉串かの2択だったのでわくわくする。
「久しぶりにお店で食べるね。楽しみだ」
「イーザリア王国には初めて来たからな。どんな料理が出るのか」
程なくして料理がやってきた。メニューは鶏肉とキノコのリゾットだ。
美味しい。濃厚でもったりしてるように見えるが口に入れたらパラリと米がほぐれる。味は思ったよりあっさりしている。チーズが入っていないからだろう。この国でチーズは流通しているのか気になる。今度調べてみよう。
熱々のリゾットだったがすぐに完食した。トリフェでどんな料理に出会えるか楽しみだ。
「ルカは幸せそうに食べるな」
「美味しかったから。兄さんも美味しかった?」
「たしかに美味かったが俺はルカが作った肉串のほうが好きだ」
僕としては絶対リゾットの方が美味しいと思うが、好みは人それぞれだ。兄さんは凝った料理よりシンプルなものが好きなのかもしれない。
「ありがとう。それなら冒険者生活が軌道に乗ったら、家を借りてもいいかもね。料理するの好きだし」
「それはいいな。春になったら魔物も増えるし、じゃんじゃん依頼を受けよう」
兄さんが今日1番の笑顔を見せた。これは後々家を借りることになるだろう。料理のレパートリーを増やしておこうかな。
乗合馬車は順調に進み、トリフェの街まであと半日といったところか。整備された街道に入り、少し快適になった車内でくつろいでいると馬車が急に止まった。
「ぶべっ!」
「ルカ!大丈夫か!?」
「大丈夫、びっくりしただけ。いったい何が」
「グレートボアだ!全員逃げろ!!」
慌てて外を見ると、80メートルほど先に大きな猪がいた。猪の体長は2メートルくらいだろうか。
「ちょうどよかった」
兄さんがグレートボアを見て口角を上げる。
「兄さんどうしたの?」
「冒険者登録前に、俺の実力を見てもらいたいと思ってたんだ。ルカは魔法を使わず見守ってほしい」
「わかった気をつけてね」
「ああ」
返事が聞こえたと思ったら、もう馬車から飛び出していた。
身体強化を使っているのだろう、兄さんはとんでもない速さでグレートボアに接近していく。
僕は魔法がいつでも発動できるように集中しながら、兄さんを見守った。
やがてグレートボアが兄さんに気づくと、ものすごい速さで兄さんに向かって突進した。
「危ない!」
思わず魔法でグレートボアの動きを止めようとしたその時
ズドンッ
重いものを叩きつけたような音が響いたかと思うと、直後グレートボアが倒れた。
剣の軌道が速すぎて一瞬しか見えなかった。どうやって兄さんがグレートボアを倒したのか……極めて簡単だ。グレートボアの脳天に大剣を振り下ろしただけ。
兄さんから、あの大剣の重さは100キロ以上あると聞いたような。それをまるで木の棒を振るうかのように軽々と振り回した。
兄さんは強い兵士だったと聞いていたがまさかこれほどとは……。
冷や汗が出る。このままだと僕はお荷物になるかもしれない。鍛錬の時間を増やそう。
兄さんがこちらに戻ってくる。その足取りは軽い。
「ルカ、どうだった?」
「すごい!すごい!兄さんかっこよかった!身体強化も上手かった。兄さんの足を引っ張らないように僕ももっと強くなるね」
素直な感想を述べる。本当にすごかった。男として憧れる強さだ。
「そう素直に褒められると恥ずかしいな。ルカはこれ以上強くなる必要はないと思うが」
「僕だって兄さんの弟だからね。今はまだヒョロヒョロだけど、鍛えていけば兄さんみたいにムキムキになるはず!」
「ああ、頑張れよ」
兄さんが目を逸らして応援する。ちょっと傷ついた。いつの日か兄さんより大きくなってグレートボアを片手で投げ飛ばせるようになってやる。
今でも魔法を使ったら投げ飛ばせるかもしれないけど。世の中うまくいかないことだらけだ。
「ルカ、あの魔法はいいな。今後もお願いしたい」
「もうあの魔法なしで馬車に座れないよね。揺れないことが、あんなに快適だったとは思わなかったよ」
「ああ、本当に」
今後も快適な旅のため、いろんな魔法を開発しよう。
僕達は目的地を、イーザリア王国北部の街トリフェにすると決めた。グレースや乗合馬車で一緒になった商人さんからトリフェの街をおすすめされたからだ。鉄級の依頼も多いので初心者冒険者も過ごしやすいそうだ。
イーザリア王国は夏は高温で乾燥していて、冬は雨が多く、たまに雪が降ることもある。今は冬直前だ。雪が積もる前に国から出られてよかった。
今僕達がいる関所の街バーチスからトリフェの街までは乗合馬車で8日の距離。明後日の便を逃すと、次はいつ馬車が出るか分からないと聞いて慌てて予約した。
「乗合馬車が間に合ってよかったね。今日は宿を取って休もうか」
「そうだな」
夕食の時間になった。久しぶりにお店で食べる。乗合馬車で移動する時は干し肉か僕が作る肉串かの2択だったのでわくわくする。
「久しぶりにお店で食べるね。楽しみだ」
「イーザリア王国には初めて来たからな。どんな料理が出るのか」
程なくして料理がやってきた。メニューは鶏肉とキノコのリゾットだ。
美味しい。濃厚でもったりしてるように見えるが口に入れたらパラリと米がほぐれる。味は思ったよりあっさりしている。チーズが入っていないからだろう。この国でチーズは流通しているのか気になる。今度調べてみよう。
熱々のリゾットだったがすぐに完食した。トリフェでどんな料理に出会えるか楽しみだ。
「ルカは幸せそうに食べるな」
「美味しかったから。兄さんも美味しかった?」
「たしかに美味かったが俺はルカが作った肉串のほうが好きだ」
僕としては絶対リゾットの方が美味しいと思うが、好みは人それぞれだ。兄さんは凝った料理よりシンプルなものが好きなのかもしれない。
「ありがとう。それなら冒険者生活が軌道に乗ったら、家を借りてもいいかもね。料理するの好きだし」
「それはいいな。春になったら魔物も増えるし、じゃんじゃん依頼を受けよう」
兄さんが今日1番の笑顔を見せた。これは後々家を借りることになるだろう。料理のレパートリーを増やしておこうかな。
乗合馬車は順調に進み、トリフェの街まであと半日といったところか。整備された街道に入り、少し快適になった車内でくつろいでいると馬車が急に止まった。
「ぶべっ!」
「ルカ!大丈夫か!?」
「大丈夫、びっくりしただけ。いったい何が」
「グレートボアだ!全員逃げろ!!」
慌てて外を見ると、80メートルほど先に大きな猪がいた。猪の体長は2メートルくらいだろうか。
「ちょうどよかった」
兄さんがグレートボアを見て口角を上げる。
「兄さんどうしたの?」
「冒険者登録前に、俺の実力を見てもらいたいと思ってたんだ。ルカは魔法を使わず見守ってほしい」
「わかった気をつけてね」
「ああ」
返事が聞こえたと思ったら、もう馬車から飛び出していた。
身体強化を使っているのだろう、兄さんはとんでもない速さでグレートボアに接近していく。
僕は魔法がいつでも発動できるように集中しながら、兄さんを見守った。
やがてグレートボアが兄さんに気づくと、ものすごい速さで兄さんに向かって突進した。
「危ない!」
思わず魔法でグレートボアの動きを止めようとしたその時
ズドンッ
重いものを叩きつけたような音が響いたかと思うと、直後グレートボアが倒れた。
剣の軌道が速すぎて一瞬しか見えなかった。どうやって兄さんがグレートボアを倒したのか……極めて簡単だ。グレートボアの脳天に大剣を振り下ろしただけ。
兄さんから、あの大剣の重さは100キロ以上あると聞いたような。それをまるで木の棒を振るうかのように軽々と振り回した。
兄さんは強い兵士だったと聞いていたがまさかこれほどとは……。
冷や汗が出る。このままだと僕はお荷物になるかもしれない。鍛錬の時間を増やそう。
兄さんがこちらに戻ってくる。その足取りは軽い。
「ルカ、どうだった?」
「すごい!すごい!兄さんかっこよかった!身体強化も上手かった。兄さんの足を引っ張らないように僕ももっと強くなるね」
素直な感想を述べる。本当にすごかった。男として憧れる強さだ。
「そう素直に褒められると恥ずかしいな。ルカはこれ以上強くなる必要はないと思うが」
「僕だって兄さんの弟だからね。今はまだヒョロヒョロだけど、鍛えていけば兄さんみたいにムキムキになるはず!」
「ああ、頑張れよ」
兄さんが目を逸らして応援する。ちょっと傷ついた。いつの日か兄さんより大きくなってグレートボアを片手で投げ飛ばせるようになってやる。
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