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グレイセル王国からの逃亡
肉は美味しい
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野営地に戻ったので、さっそく夕飯の仕込みをする。時間も設備もないので凝ったものは作れない。ここはシンプルに焼き鳥にしよう。
もも肉を一口大に切り分け鉄串に刺す。味付けは道中拾ったハーブを使う。採れたての瑞々しいハーブに乾燥の魔法をかける。ハーブの水分が少し残るように調整したら細かく砕く。そこに街で買った塩を混ぜ合わせ鍋で軽く煎る。特製ハーブソルトの完成だ。それを絶妙な塩加減になるよう肉にかけて馴染ませたら仕込みは完了。
「兄さん焚き火の準備ありがとう」
「肉串か?」
「うん。ちょっと焚き火を使わせてね」
均一に火が当たるよう焚き火の周りに串を刺す。魔法で土を操り、串が倒れないように土台に固定する。肉の焼け具合を確認しながら魔法で土台をぐるぐる回す。
肉の油が滴り地面に落ちる。食欲を刺激する匂いが辺りに漂い、期待が高まる。魔物を呼び寄せる危険があるので匂いが広がりすぎないよう魔法で空気を操る。
全属性適性があってよかった。外でも比較的楽に料理ができる。
「まだか?」
「待って。もうちょっと」
兄さんが肉を見つめながらソワソワしてる。気持ちはわかる、この匂いは暴力的だ。
「できた!串が熱いから布で巻いてから持ってね」
「わかった」
ふたり同時に齧り付く。
『美味しいっ!』
臭みを一切感じない肉は噛むと程よい弾力を感じる。そして口の中いっぱいに肉汁が溢れる。まず感じるのは肉の旨みとちょうどいい塩味。遅れてハーブの爽やかな香りが鼻に抜ける。ハーブの水分を程よく残したことで完全に乾燥させたものより風味を強く感じる。それが脂身の多い皮付きのもも肉とよく合っていていくらでも食べられそうだ。
我ながら美味しく出来た。
夢中になって食べていたらいつのまにか1本完食していた。兄さんはもう2本目を食べ終わりそうだ。
「兄さん美味しい?」
「美味い。ルカは料理の天才だな」
褒めすぎだと思うがそこまで言われると作った甲斐がある。
「追加で作るよ。何本食べたい?」
「あるだけ全部」子どもか。
「作れるだけ作るけど何本かもらうよ」
「ルカはそんなに食べられるのか?」
「これはちょっとね、彼らに聞きたいことがあるから。おーい!黒いローブの冒険者さん!見てるならこっちおいでよ」
こちらをじっと見ていた集団の中から黒いローブを着た20代前半くらいの男性が慌ててやって来た。
「なんだ坊主気づいてたのか」
「あんなに見つめられたら嫌でも気づくよ。僕らに何か用?」
「いや、肉串が美味しそうでつい……。移動中はどうしても干し肉続きだから飽き飽きしてたところにあれはな」
「なるほどね、僕はルカ。あなたは?」
「俺はグレース。なあ、もし材料が余ってるなら俺らにも分けてくれないか?もちろん金は払う。なんなら相場の倍払う」
「護衛をしてくれる人達から必要以上にお金を取れないよ。肉の代金はいらないからさ、冒険者のこと教えて!僕も冒険者になりたいんだ」
「へへっ!仕事だから当然だと言いたいが、面と向かって言われると嬉しいもんだな!しかし坊主が冒険者に?ああ、いやあの男がいたら大丈夫だと思うが。用心棒か?」
僕の冒険者になる発言に驚いていたが兄さんを見て勝手に納得したようだ。
僕はそんなに弱々しく見えるのだろうか。
「兄だよ。それで?肉串はいるの?いらないの?」
「いるいる!強そうな兄貴がいるなら安心だな。冒険者についてグレース様が直々に教えてやろう」
「ありがとう!鉄串は持ってる?」
「人数分持って来た!出来たら呼んでくれ」
「了解」
兄さんの分も合わせるとかなりの量になる。急いで調理を済ませようと準備をする。ちらっと確認すると兄さんが不機嫌そうだ。
「あの男に聞くことなんてあるのか?魔法のことならあいつはルカより実力がないし参考にならないぞ。冒険者の基本的なことなら俺が教える」
「一般的な魔法使いについてよく知らないから話を聞きたくて。それにグレースは現役冒険者だから、参考になることがあるかもしれない」
「ルカが言うなら仕方ないが、あの男と話す時は距離を取ってくれ」
兄さんはグレースを警戒しているようで、僕と話してる時もずっと睨みつけていた。用心棒かと聞かれたのもそのせいだ。
露骨に嫌そうな表情を浮かべる兄さんには悪いが、せっかくの機会なのでいろいろ話を聞きたい。
「わかった、グレースにはあんまり近づかないようにするね。なるべく早めに切り上げるから。じゃあ兄さんの分から焼くよ」
「悪いな、頼む」
僕は無心になってひたすら肉を焼いた。
もも肉を一口大に切り分け鉄串に刺す。味付けは道中拾ったハーブを使う。採れたての瑞々しいハーブに乾燥の魔法をかける。ハーブの水分が少し残るように調整したら細かく砕く。そこに街で買った塩を混ぜ合わせ鍋で軽く煎る。特製ハーブソルトの完成だ。それを絶妙な塩加減になるよう肉にかけて馴染ませたら仕込みは完了。
「兄さん焚き火の準備ありがとう」
「肉串か?」
「うん。ちょっと焚き火を使わせてね」
均一に火が当たるよう焚き火の周りに串を刺す。魔法で土を操り、串が倒れないように土台に固定する。肉の焼け具合を確認しながら魔法で土台をぐるぐる回す。
肉の油が滴り地面に落ちる。食欲を刺激する匂いが辺りに漂い、期待が高まる。魔物を呼び寄せる危険があるので匂いが広がりすぎないよう魔法で空気を操る。
全属性適性があってよかった。外でも比較的楽に料理ができる。
「まだか?」
「待って。もうちょっと」
兄さんが肉を見つめながらソワソワしてる。気持ちはわかる、この匂いは暴力的だ。
「できた!串が熱いから布で巻いてから持ってね」
「わかった」
ふたり同時に齧り付く。
『美味しいっ!』
臭みを一切感じない肉は噛むと程よい弾力を感じる。そして口の中いっぱいに肉汁が溢れる。まず感じるのは肉の旨みとちょうどいい塩味。遅れてハーブの爽やかな香りが鼻に抜ける。ハーブの水分を程よく残したことで完全に乾燥させたものより風味を強く感じる。それが脂身の多い皮付きのもも肉とよく合っていていくらでも食べられそうだ。
我ながら美味しく出来た。
夢中になって食べていたらいつのまにか1本完食していた。兄さんはもう2本目を食べ終わりそうだ。
「兄さん美味しい?」
「美味い。ルカは料理の天才だな」
褒めすぎだと思うがそこまで言われると作った甲斐がある。
「追加で作るよ。何本食べたい?」
「あるだけ全部」子どもか。
「作れるだけ作るけど何本かもらうよ」
「ルカはそんなに食べられるのか?」
「これはちょっとね、彼らに聞きたいことがあるから。おーい!黒いローブの冒険者さん!見てるならこっちおいでよ」
こちらをじっと見ていた集団の中から黒いローブを着た20代前半くらいの男性が慌ててやって来た。
「なんだ坊主気づいてたのか」
「あんなに見つめられたら嫌でも気づくよ。僕らに何か用?」
「いや、肉串が美味しそうでつい……。移動中はどうしても干し肉続きだから飽き飽きしてたところにあれはな」
「なるほどね、僕はルカ。あなたは?」
「俺はグレース。なあ、もし材料が余ってるなら俺らにも分けてくれないか?もちろん金は払う。なんなら相場の倍払う」
「護衛をしてくれる人達から必要以上にお金を取れないよ。肉の代金はいらないからさ、冒険者のこと教えて!僕も冒険者になりたいんだ」
「へへっ!仕事だから当然だと言いたいが、面と向かって言われると嬉しいもんだな!しかし坊主が冒険者に?ああ、いやあの男がいたら大丈夫だと思うが。用心棒か?」
僕の冒険者になる発言に驚いていたが兄さんを見て勝手に納得したようだ。
僕はそんなに弱々しく見えるのだろうか。
「兄だよ。それで?肉串はいるの?いらないの?」
「いるいる!強そうな兄貴がいるなら安心だな。冒険者についてグレース様が直々に教えてやろう」
「ありがとう!鉄串は持ってる?」
「人数分持って来た!出来たら呼んでくれ」
「了解」
兄さんの分も合わせるとかなりの量になる。急いで調理を済ませようと準備をする。ちらっと確認すると兄さんが不機嫌そうだ。
「あの男に聞くことなんてあるのか?魔法のことならあいつはルカより実力がないし参考にならないぞ。冒険者の基本的なことなら俺が教える」
「一般的な魔法使いについてよく知らないから話を聞きたくて。それにグレースは現役冒険者だから、参考になることがあるかもしれない」
「ルカが言うなら仕方ないが、あの男と話す時は距離を取ってくれ」
兄さんはグレースを警戒しているようで、僕と話してる時もずっと睨みつけていた。用心棒かと聞かれたのもそのせいだ。
露骨に嫌そうな表情を浮かべる兄さんには悪いが、せっかくの機会なのでいろいろ話を聞きたい。
「わかった、グレースにはあんまり近づかないようにするね。なるべく早めに切り上げるから。じゃあ兄さんの分から焼くよ」
「悪いな、頼む」
僕は無心になってひたすら肉を焼いた。
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