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グレイセル王国からの逃亡
ルカの魔法
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僕たちは街から離れた森の中にいた。今日は僕の魔法を兄さんに見てもらうことになっている。
怪我のことがバレないように、兄さんはグレイセル王国を出るまで利き腕を使えない。それまでは僕が戦闘の中心となるので実力を示しておきたい。
しばらく歩いていると探知の魔法に反応があった。
「兄さん、正面80メル先に魔物がいるよ。数は2体、ゴブリンだ」
「了解」
メルは長さの単位で前世の感覚だと1メル=1メートルだ。
木の陰に隠れ警戒していると正面にゴブリンがいた。まだこちらに気づいていない。
「2体ともすぐ気絶させるよ、止めをお願い」
兄さんが頷き動き出す。
ゴブリンに魔法を使うと、程なくして2体とも倒れて動かなくなった。そこへゴブリンに距離を詰めていた兄さんが剣を叩き込む。
愛用の大剣ではなく片手剣で戦っているが、難なく倒せたみたいだ。周りに魔物の気配もないので、兄さんに声をかける。
「僕の魔法はどう?独学だから他の魔法使いの実力が分からなくて。戦いにくいところはなかった?」
「特にない。ルカの魔法の実力はかなり高いと思う。俺も魔法はあまり詳しくないが、少なくとも領内でルカに敵うやつはいないな」
頑張って鍛えたのでその評価は嬉しいが、正面から褒められると照れてしまう。
「探知の精度も異常だが、ゴブリンを気絶させたのは全く意味がわからなかった。どんな魔法を使ったんだ?」
「これは僕のオリジナルの魔法でね、水属性と風属性の複合魔法なんだ」
名付けて《ブレインショック》だ。そのまま過ぎて恥ずかしいので魔法名は言わない。
「なぜゴブリンが気絶したんだ?」
「兄さんは顎に攻撃を受けて気絶した経験ある?」
「俺はないが上官に殴られて気絶したやつはゴロゴロいたな」
「それは衝撃が頭の中に伝わったことが原因。細かい説明は省くけど頭の中を揺すると気絶するんだ」
「つまりルカはゴブリンの頭を揺らして気絶させたと」
「そういうこと。5体同時に気絶させたこともあるよ。もう少しいける気がするけど試したことがないから分からない」
「魔物が複数体いても対応可能か、すごいな。もちろん人にも有効だよな?」
「やったことないけど有効だよ。最悪死ぬからなるべく使わないけどね」
「そ、そうか。恐ろしい魔法だな」
兄さんに引かれた気がする。
「他にはどんな魔法を使うんだ」
「えーっと、気道を水で塞いで窒息させたり、地面から出した返しつきの棘を足に刺して動きを止めたり、電撃でまとめて気絶させることが多いかな」
他にもたくさん使える魔法はあるがよく使っていたのは今挙げた魔法だ。
「敵に察知されずに行動不動にする魔法が得意なんだな。攻撃魔法は使わないのか?」
「魔法使いが目立つことしてもいいことないから派手な魔法なんて必要ないよ。もちろん攻撃魔法もちゃんと使えるよ」
「なるほど。ルカはよく考えて魔法を使っているな」
「ありがとう。今みたいな兄さんが止めをさす前提の魔法を基本使うから!頼りにしてるよ」
「ああ、任せてくれ」
僕はまだ12歳、身体が出来上がっていないから戦う時はどうしても魔法が中心となってしまう。
兄さんがいてくれて助かった。僕たちはいいコンビになれそうだ。イーザリア王国で冒険者登録をする日が待ち遠しい。
「あ、ここから北西に150メルのところに魔物2体、コボルトだ。もっともっと強くなるためにここら辺の魔物を狩りまくろう!次は僕が攻撃魔法で倒してみるね」
「(もう十分強いと思うが……)了解」
この後僕は魔物を氷漬けにしたり、ウォーターカッターで魔物の体を真っ二つにしたり、礫を混ぜた風の渦で何体かまとめて体をズタズタにしたりといくつか攻撃魔法を披露した。
「……ルカの実力はよくわかった。けっこうエゲツない魔法を使うんだな……俺の利き腕が使えるようになったらまた連携の確認をしよう」
兄さんの顔が若干青ざめている。やりすぎてしまった。しばらくは強力な攻撃魔法を封印しようと心に誓った。
「ルカはひとりで魔物を狩っていたと聞いたが気絶させて倒すのは二度手間ではないか?」
「僕が村で魔物を狩ってたのは肉が目当てだからね。魔物は生きたまま血抜きをしたら肉の臭みが少なくなるんだ」
「うん、すごくルカらしい魔法の使い方だな」
怪我のことがバレないように、兄さんはグレイセル王国を出るまで利き腕を使えない。それまでは僕が戦闘の中心となるので実力を示しておきたい。
しばらく歩いていると探知の魔法に反応があった。
「兄さん、正面80メル先に魔物がいるよ。数は2体、ゴブリンだ」
「了解」
メルは長さの単位で前世の感覚だと1メル=1メートルだ。
木の陰に隠れ警戒していると正面にゴブリンがいた。まだこちらに気づいていない。
「2体ともすぐ気絶させるよ、止めをお願い」
兄さんが頷き動き出す。
ゴブリンに魔法を使うと、程なくして2体とも倒れて動かなくなった。そこへゴブリンに距離を詰めていた兄さんが剣を叩き込む。
愛用の大剣ではなく片手剣で戦っているが、難なく倒せたみたいだ。周りに魔物の気配もないので、兄さんに声をかける。
「僕の魔法はどう?独学だから他の魔法使いの実力が分からなくて。戦いにくいところはなかった?」
「特にない。ルカの魔法の実力はかなり高いと思う。俺も魔法はあまり詳しくないが、少なくとも領内でルカに敵うやつはいないな」
頑張って鍛えたのでその評価は嬉しいが、正面から褒められると照れてしまう。
「探知の精度も異常だが、ゴブリンを気絶させたのは全く意味がわからなかった。どんな魔法を使ったんだ?」
「これは僕のオリジナルの魔法でね、水属性と風属性の複合魔法なんだ」
名付けて《ブレインショック》だ。そのまま過ぎて恥ずかしいので魔法名は言わない。
「なぜゴブリンが気絶したんだ?」
「兄さんは顎に攻撃を受けて気絶した経験ある?」
「俺はないが上官に殴られて気絶したやつはゴロゴロいたな」
「それは衝撃が頭の中に伝わったことが原因。細かい説明は省くけど頭の中を揺すると気絶するんだ」
「つまりルカはゴブリンの頭を揺らして気絶させたと」
「そういうこと。5体同時に気絶させたこともあるよ。もう少しいける気がするけど試したことがないから分からない」
「魔物が複数体いても対応可能か、すごいな。もちろん人にも有効だよな?」
「やったことないけど有効だよ。最悪死ぬからなるべく使わないけどね」
「そ、そうか。恐ろしい魔法だな」
兄さんに引かれた気がする。
「他にはどんな魔法を使うんだ」
「えーっと、気道を水で塞いで窒息させたり、地面から出した返しつきの棘を足に刺して動きを止めたり、電撃でまとめて気絶させることが多いかな」
他にもたくさん使える魔法はあるがよく使っていたのは今挙げた魔法だ。
「敵に察知されずに行動不動にする魔法が得意なんだな。攻撃魔法は使わないのか?」
「魔法使いが目立つことしてもいいことないから派手な魔法なんて必要ないよ。もちろん攻撃魔法もちゃんと使えるよ」
「なるほど。ルカはよく考えて魔法を使っているな」
「ありがとう。今みたいな兄さんが止めをさす前提の魔法を基本使うから!頼りにしてるよ」
「ああ、任せてくれ」
僕はまだ12歳、身体が出来上がっていないから戦う時はどうしても魔法が中心となってしまう。
兄さんがいてくれて助かった。僕たちはいいコンビになれそうだ。イーザリア王国で冒険者登録をする日が待ち遠しい。
「あ、ここから北西に150メルのところに魔物2体、コボルトだ。もっともっと強くなるためにここら辺の魔物を狩りまくろう!次は僕が攻撃魔法で倒してみるね」
「(もう十分強いと思うが……)了解」
この後僕は魔物を氷漬けにしたり、ウォーターカッターで魔物の体を真っ二つにしたり、礫を混ぜた風の渦で何体かまとめて体をズタズタにしたりといくつか攻撃魔法を披露した。
「……ルカの実力はよくわかった。けっこうエゲツない魔法を使うんだな……俺の利き腕が使えるようになったらまた連携の確認をしよう」
兄さんの顔が若干青ざめている。やりすぎてしまった。しばらくは強力な攻撃魔法を封印しようと心に誓った。
「ルカはひとりで魔物を狩っていたと聞いたが気絶させて倒すのは二度手間ではないか?」
「僕が村で魔物を狩ってたのは肉が目当てだからね。魔物は生きたまま血抜きをしたら肉の臭みが少なくなるんだ」
「うん、すごくルカらしい魔法の使い方だな」
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