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グレイセル王国からの逃亡
僕の家族
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食事の匂いがする。魔法を鍛えるため、とりあえず体内の魔力をぐるぐる循環させていたら、そこそこ時間が経っていたようだ。
「ルカ!飯だ!早く来い!」
あいかわらず父の声はでかい。
「はーい」
呼ばれたのですぐ食卓に向かう。まごまごしてたら夕食がなくなるかもしれない。
「ルカ、平気か?」
「ありがとうブルーノ兄さん。大丈夫だよ」
テーブルにつくとブルーノ兄さんに話しかけられた。ブルーノ兄さんは僕の5つ上で13歳。寡黙で真面目な人だ。
「おい!ルカお前生活魔法1回使ったら魔力切れでぶっ倒れたらしいな。村じゅうの噂になってたぜ」
ニヤニヤしながら話しかけてきたのはニック兄さん。3つ上の11歳。噂話が大好きで、特に人の弱みを探るのが楽しいらしい。我が兄ながら性格が悪い。
ここは兄が喜びそうな返しをしておくか。
「ひどいやニック兄さん。まだ身体がダルいんだからそっとしておいてよ」
「ハハハ!さすが村一番の魔力なし!腹痛てー」
予想以上に喜ばせてしまった。ニック兄さんはテーブルをバシバシ叩きながら爆笑している。
「ニック兄ちゃんうるさい!ルカはさっさと食事を運んで!」
「わかったよ。リリアナ」
リリアナは僕の2つ下の妹だ。母の影響で僕にだけ高圧的に接するようになった。最近ますます母に似てきたなと感じる。
夕飯はいつもと変わらず麦粥と豆スープだ。家族全員分の配膳が終わると皆黙って食べ始める。
「いた……。」
うっかりいただきますと言いそうになった。危なかった。前世の記憶は便利だが、こういう時は気をつけないといけない。
味の感想は、うん、いつもの味だ。よく味わうとうっすら遠くに塩気を感じるような……。今まで何とも思わなかったが、完食するのは結構辛いな。それでも他に食べるものがないので、頑張って完食した。食事関連だと前世の記憶はけっこう邪魔なのかもしれない。
食事が終わってすぐに母が険しい顔で僕を叱りつけた。
「ルカ!あなたがサボったせいでブルーノが余計に仕事をすることになったのよ!ブルーノに謝りなさい!いつも家族を不快にさせて申し訳ないと思わないの!」
空気が凍る。父と兄達と妹が息を潜めて僕と母を見つめている。
「ブルーノ兄さんごめんなさい」
「ふんっ。もういいから食器を片付けておきなさい!」
ブルーノ兄さんの返事を聞く前に母が話を終わらせてしまった。謝れと言われたから謝ったのに理不尽だ。謝れというのもおかしな話で、そもそも僕は気絶していたのであって仕事をサボっていたわけではない。
でも反論はしない。母から一方的に怒られるのは慣れっこだ。その内容が理不尽なことも、誰も庇ってくれないことももう慣れた。
前世を思い出した今、改めて思うが変わった家族だなと思う。
食器を片付けたらもう寝る時間だ。今日は散々な一日だった。気絶していたのもあってまだ眠れそうにないので、家族について考えることにした。
『今までもうっすら思ってたけど母さんは僕のこと嫌いだよね』
むしろ憎んでいるといってもいい。今までは母が理不尽に怒る理由が分からず、言われるままに従ってきたが、馬鹿らしくなってきた。
『大嫌いな姉に瓜二つってだけで実の息子をそこまで嫌いになるかね』
母から直接言われた訳ではないので正解か分からないが、間違いないだろう。
前世を思い出してなかったらなぜ母が僕に辛く当たるのか、分からないままだったに違いない。
人格は僕のままだが前世の影響は受けているのだろう。
今まで理解できなかったことや、考えつかなかったことが分かるようになった。
しかし、伯母に瓜二つの男ってどうなんだろう。微妙だ。
伯母は村でも評判の美人だったらしい。銀にも見える薄いプラチナブランドの髪。陽の光に溶け込みそうな薄紫の瞳。全てを笑って受け入れてくれそうな柔和な顔立ち。ココレ村の妖精と言われていたそうだ。
性格は苛烈で、口を開けば毒を吐き周囲との衝突が絶えなかったと聞いたことがある。
15歳で舞台役者になると言って村を出ていくまでに、散々人間関係を引っ掻き回したみたいで一部の村人から今だに恨まれている。その筆頭が僕の母だ。
前世のことがあるので、最悪の事態に備えて僕は強くならないといけない。
華奢なところまで伯母に瓜二つと言われている僕だが、魔法も剣もできる筋骨隆々の魔法剣士になるつもりだ。
大丈夫だよね?父の遺伝子も入ってるから筋トレしたらいけるはず。魔法は独学で鍛えるしかないが、剣に関しては当てがある。
長兄のアイザック兄さんだ。アイザック兄さんはココレ村にいない。魔物狩りの才能を買われて、わずか8歳でナントカ伯爵様の私兵にとスカウトされて領都にいるからだ。
伯爵様の名前は覚えていないが、国内でも有数のすごい貴族様らしい。
そのアイザック兄さんが10年ぶりに村に帰ってくるとこの前父から聞いた。秋の収穫祭にあわせて帰ってくるらしいので少し先になるが、その時に剣術を教えてもらう予定だ。
初めて会う相手だけど、かわいい弟の頼みだ。剣術の基本の型くらいは見せてくれるだろう。
村にいないといえばもう一人。去年お嫁に行ったアイナ姉さんだ。二つ隣のココリ村に住んでいて、この前妊娠したと知らせがあった。
父:ピーター
母:アナ
長男:アイザック
長女:アイナ
次男:ブルーノ
三男:ニック
四男:ルカ
次女:リリアナ
この8人が僕の家族だ。
長男が兵士になることに父はだいぶ反対したと聞いた。最終的にお貴族様に逆らえないと、家を出ることを渋々認めたらしいが、本当は許せなかったのだろう。
父の口癖「農家の子は農業だけやっていればいいんだ」は兄への当てつけだ。
僕は母に嫌われていて、アイザック兄さんは父に嫌われている。一度も会ったことがない兄に親近感を覚えながら、もう寝ることにした。
「ルカ!飯だ!早く来い!」
あいかわらず父の声はでかい。
「はーい」
呼ばれたのですぐ食卓に向かう。まごまごしてたら夕食がなくなるかもしれない。
「ルカ、平気か?」
「ありがとうブルーノ兄さん。大丈夫だよ」
テーブルにつくとブルーノ兄さんに話しかけられた。ブルーノ兄さんは僕の5つ上で13歳。寡黙で真面目な人だ。
「おい!ルカお前生活魔法1回使ったら魔力切れでぶっ倒れたらしいな。村じゅうの噂になってたぜ」
ニヤニヤしながら話しかけてきたのはニック兄さん。3つ上の11歳。噂話が大好きで、特に人の弱みを探るのが楽しいらしい。我が兄ながら性格が悪い。
ここは兄が喜びそうな返しをしておくか。
「ひどいやニック兄さん。まだ身体がダルいんだからそっとしておいてよ」
「ハハハ!さすが村一番の魔力なし!腹痛てー」
予想以上に喜ばせてしまった。ニック兄さんはテーブルをバシバシ叩きながら爆笑している。
「ニック兄ちゃんうるさい!ルカはさっさと食事を運んで!」
「わかったよ。リリアナ」
リリアナは僕の2つ下の妹だ。母の影響で僕にだけ高圧的に接するようになった。最近ますます母に似てきたなと感じる。
夕飯はいつもと変わらず麦粥と豆スープだ。家族全員分の配膳が終わると皆黙って食べ始める。
「いた……。」
うっかりいただきますと言いそうになった。危なかった。前世の記憶は便利だが、こういう時は気をつけないといけない。
味の感想は、うん、いつもの味だ。よく味わうとうっすら遠くに塩気を感じるような……。今まで何とも思わなかったが、完食するのは結構辛いな。それでも他に食べるものがないので、頑張って完食した。食事関連だと前世の記憶はけっこう邪魔なのかもしれない。
食事が終わってすぐに母が険しい顔で僕を叱りつけた。
「ルカ!あなたがサボったせいでブルーノが余計に仕事をすることになったのよ!ブルーノに謝りなさい!いつも家族を不快にさせて申し訳ないと思わないの!」
空気が凍る。父と兄達と妹が息を潜めて僕と母を見つめている。
「ブルーノ兄さんごめんなさい」
「ふんっ。もういいから食器を片付けておきなさい!」
ブルーノ兄さんの返事を聞く前に母が話を終わらせてしまった。謝れと言われたから謝ったのに理不尽だ。謝れというのもおかしな話で、そもそも僕は気絶していたのであって仕事をサボっていたわけではない。
でも反論はしない。母から一方的に怒られるのは慣れっこだ。その内容が理不尽なことも、誰も庇ってくれないことももう慣れた。
前世を思い出した今、改めて思うが変わった家族だなと思う。
食器を片付けたらもう寝る時間だ。今日は散々な一日だった。気絶していたのもあってまだ眠れそうにないので、家族について考えることにした。
『今までもうっすら思ってたけど母さんは僕のこと嫌いだよね』
むしろ憎んでいるといってもいい。今までは母が理不尽に怒る理由が分からず、言われるままに従ってきたが、馬鹿らしくなってきた。
『大嫌いな姉に瓜二つってだけで実の息子をそこまで嫌いになるかね』
母から直接言われた訳ではないので正解か分からないが、間違いないだろう。
前世を思い出してなかったらなぜ母が僕に辛く当たるのか、分からないままだったに違いない。
人格は僕のままだが前世の影響は受けているのだろう。
今まで理解できなかったことや、考えつかなかったことが分かるようになった。
しかし、伯母に瓜二つの男ってどうなんだろう。微妙だ。
伯母は村でも評判の美人だったらしい。銀にも見える薄いプラチナブランドの髪。陽の光に溶け込みそうな薄紫の瞳。全てを笑って受け入れてくれそうな柔和な顔立ち。ココレ村の妖精と言われていたそうだ。
性格は苛烈で、口を開けば毒を吐き周囲との衝突が絶えなかったと聞いたことがある。
15歳で舞台役者になると言って村を出ていくまでに、散々人間関係を引っ掻き回したみたいで一部の村人から今だに恨まれている。その筆頭が僕の母だ。
前世のことがあるので、最悪の事態に備えて僕は強くならないといけない。
華奢なところまで伯母に瓜二つと言われている僕だが、魔法も剣もできる筋骨隆々の魔法剣士になるつもりだ。
大丈夫だよね?父の遺伝子も入ってるから筋トレしたらいけるはず。魔法は独学で鍛えるしかないが、剣に関しては当てがある。
長兄のアイザック兄さんだ。アイザック兄さんはココレ村にいない。魔物狩りの才能を買われて、わずか8歳でナントカ伯爵様の私兵にとスカウトされて領都にいるからだ。
伯爵様の名前は覚えていないが、国内でも有数のすごい貴族様らしい。
そのアイザック兄さんが10年ぶりに村に帰ってくるとこの前父から聞いた。秋の収穫祭にあわせて帰ってくるらしいので少し先になるが、その時に剣術を教えてもらう予定だ。
初めて会う相手だけど、かわいい弟の頼みだ。剣術の基本の型くらいは見せてくれるだろう。
村にいないといえばもう一人。去年お嫁に行ったアイナ姉さんだ。二つ隣のココリ村に住んでいて、この前妊娠したと知らせがあった。
父:ピーター
母:アナ
長男:アイザック
長女:アイナ
次男:ブルーノ
三男:ニック
四男:ルカ
次女:リリアナ
この8人が僕の家族だ。
長男が兵士になることに父はだいぶ反対したと聞いた。最終的にお貴族様に逆らえないと、家を出ることを渋々認めたらしいが、本当は許せなかったのだろう。
父の口癖「農家の子は農業だけやっていればいいんだ」は兄への当てつけだ。
僕は母に嫌われていて、アイザック兄さんは父に嫌われている。一度も会ったことがない兄に親近感を覚えながら、もう寝ることにした。
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