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グレイセル王国からの逃亡
今後の目標
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目を覚ますと知らない天井、ではなく今世で何百回も見た天井だった。
身体を起こした僕に気がついたのか遠くにいても酒臭いとわかる男性がドタドタと寝室に入ってきた。
「ルカ、目が覚めたんだな!お前生活魔法1回使っただけでぶっ倒れるなんてどんだけ魔力ないんだよ!ゲフッ」
身体もでかいし声もでかいしゲップもでかい。くすんだ金髪に茶色の目、小麦色の肌。この人が今世での僕の父親。
「心配かけてごめんね父さん。なんか急に頭が真っ白になって」
「司祭様が魔力切れだろうから今日は寝てろってよ。しっかし残念だったな。生活魔法1回で魔力切れなんて村でもぶっちぎりの魔力なしだ」
残念だと言いながら父はニヤニヤしてる、と思ったらすぐに耐えきれず腹を抱えて笑ってしまった。
今までの僕だったらショックを受けて泣いていたが、前世を思い出したことで精神年齢が上がったのか冷静になれた。恐らく父は息子がショックを受けるなんて思っていない。村一番の魔力なしが目の前にいるから面白くて笑っただけだ。
少しイラッとしたので父に声をかける。
「笑いすぎだよ父さん!」
「グフッ…でも落ち込むことはないぞ。だって」
次に父が何を言うか嫌でも分かる。毎日のように聞く父の口癖。
「農家の子は農業だけやっていればいいんだから」
ほらやっぱり。予想が当たったことに内心ホッとした。前世を思い出してもルカとして生きた記憶はきちんと残っている。
「生活魔法覚えたてのガキは魔法の練習したいって駄々こねて農作業をサボろうとするからな。ルカはそんなことないから安心だ」
微妙に失礼だと思うが、指摘しても謝罪が返ってくることはないので何も言わずに頷く。
「夕飯前に起こす。寝とけ」
それだけ言うと父は僕に背を向けてさっさと部屋を出る。お酒が飲みたくなったのだろう。
今寝室には僕一人だ。都合がいいのでベッドに横たわりながら現状を整理することにした。
異世界転生したらまずはこれを言わないといけない。僕の中の何かがそう囁いている。
「ステータスオープン」
……何も起きない。すごく恥ずかしい。顔が熱い。
ひとまず現状を確認しよう。僕の名前はルカ。苗字はない。ココレ村出身で農家の息子。6人兄弟の四男。8歳になったので生活魔法を授与された。そこでまさか前世の記憶を思い出すとは思わなかった。これは憶測だが、体内の魔力を感じたことがトリガーだったのだろう。
前世の記憶と言ったが、前世の僕自身については全くわからない。名前、出身地、職業、なぜ死んだのかなど個人的なことが靄がかかったように思い出せないのだ。そのおかげか人格はルカのままだ。前世の知識や常識などは頭に浮かんでくる。今はまだ違和感があるがすぐに慣れるだろう。
前世のことはこれ以上考えても仕方ない。とりあえず今後のことを考えよう。
『前世の記憶があることは誰にもバレないようにする』
これは絶対だ。僕が王族や有力貴族の子息なら知識チートでハーレム展開もあったかもしれないが、今は農家の息子でただのルカだ。何の後ろ盾もないのに派手なことをしても飼い殺しか消されるかのどちらかだろう。もしもの事態に備えて、何が起こっても自分の身を守れるくらいになりたい。
せっかく使えるようになったし、まずは魔法を鍛えたい。生活魔法を使った瞬間に倒れたせいで、魔力がないと父に笑われた。しかし実際は生活魔法を何百回でも発動できるくらい魔力が残っている。この世界の住人の平均的な魔力量を確認する必要はあるが、僕は生まれつき魔力量が多い方なのではと思う。そうに違いない。そうでないと困る。
今できることはふたつ。
ひとつは魔法と身体を鍛えること。強くなるためには両方鍛える必要があるだろう。魔法を鍛えるためには人目を避けなければいけないがそれは追々考えよう。
もうひとつは読み書きを覚えること。情報を集めるためには必須だ。今から字を覚えられるか不安だがやるしかない。何とかして時間を取って司祭様から読み書きを教えてもらおう。
身体を起こした僕に気がついたのか遠くにいても酒臭いとわかる男性がドタドタと寝室に入ってきた。
「ルカ、目が覚めたんだな!お前生活魔法1回使っただけでぶっ倒れるなんてどんだけ魔力ないんだよ!ゲフッ」
身体もでかいし声もでかいしゲップもでかい。くすんだ金髪に茶色の目、小麦色の肌。この人が今世での僕の父親。
「心配かけてごめんね父さん。なんか急に頭が真っ白になって」
「司祭様が魔力切れだろうから今日は寝てろってよ。しっかし残念だったな。生活魔法1回で魔力切れなんて村でもぶっちぎりの魔力なしだ」
残念だと言いながら父はニヤニヤしてる、と思ったらすぐに耐えきれず腹を抱えて笑ってしまった。
今までの僕だったらショックを受けて泣いていたが、前世を思い出したことで精神年齢が上がったのか冷静になれた。恐らく父は息子がショックを受けるなんて思っていない。村一番の魔力なしが目の前にいるから面白くて笑っただけだ。
少しイラッとしたので父に声をかける。
「笑いすぎだよ父さん!」
「グフッ…でも落ち込むことはないぞ。だって」
次に父が何を言うか嫌でも分かる。毎日のように聞く父の口癖。
「農家の子は農業だけやっていればいいんだから」
ほらやっぱり。予想が当たったことに内心ホッとした。前世を思い出してもルカとして生きた記憶はきちんと残っている。
「生活魔法覚えたてのガキは魔法の練習したいって駄々こねて農作業をサボろうとするからな。ルカはそんなことないから安心だ」
微妙に失礼だと思うが、指摘しても謝罪が返ってくることはないので何も言わずに頷く。
「夕飯前に起こす。寝とけ」
それだけ言うと父は僕に背を向けてさっさと部屋を出る。お酒が飲みたくなったのだろう。
今寝室には僕一人だ。都合がいいのでベッドに横たわりながら現状を整理することにした。
異世界転生したらまずはこれを言わないといけない。僕の中の何かがそう囁いている。
「ステータスオープン」
……何も起きない。すごく恥ずかしい。顔が熱い。
ひとまず現状を確認しよう。僕の名前はルカ。苗字はない。ココレ村出身で農家の息子。6人兄弟の四男。8歳になったので生活魔法を授与された。そこでまさか前世の記憶を思い出すとは思わなかった。これは憶測だが、体内の魔力を感じたことがトリガーだったのだろう。
前世の記憶と言ったが、前世の僕自身については全くわからない。名前、出身地、職業、なぜ死んだのかなど個人的なことが靄がかかったように思い出せないのだ。そのおかげか人格はルカのままだ。前世の知識や常識などは頭に浮かんでくる。今はまだ違和感があるがすぐに慣れるだろう。
前世のことはこれ以上考えても仕方ない。とりあえず今後のことを考えよう。
『前世の記憶があることは誰にもバレないようにする』
これは絶対だ。僕が王族や有力貴族の子息なら知識チートでハーレム展開もあったかもしれないが、今は農家の息子でただのルカだ。何の後ろ盾もないのに派手なことをしても飼い殺しか消されるかのどちらかだろう。もしもの事態に備えて、何が起こっても自分の身を守れるくらいになりたい。
せっかく使えるようになったし、まずは魔法を鍛えたい。生活魔法を使った瞬間に倒れたせいで、魔力がないと父に笑われた。しかし実際は生活魔法を何百回でも発動できるくらい魔力が残っている。この世界の住人の平均的な魔力量を確認する必要はあるが、僕は生まれつき魔力量が多い方なのではと思う。そうに違いない。そうでないと困る。
今できることはふたつ。
ひとつは魔法と身体を鍛えること。強くなるためには両方鍛える必要があるだろう。魔法を鍛えるためには人目を避けなければいけないがそれは追々考えよう。
もうひとつは読み書きを覚えること。情報を集めるためには必須だ。今から字を覚えられるか不安だがやるしかない。何とかして時間を取って司祭様から読み書きを教えてもらおう。
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