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グレイセル王国からの逃亡
はじまりの日
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教会の扉を開けた瞬間、ムワッとした空気が押し寄せて思わず顔をしかめる。夏でも過ごしやすい気候のココレ村でここまで暑いのは珍しい。
教会にはすでに人が集まっていた。子ども達は落ち着きなく辺りを見回している。大人達は遠巻きに子ども達の様子を見物している。
「司祭様まだかなあ」
「ハヤクハヤクー!」
どうやら間に合ったようだ。急いで最後尾に座る。
「静かに」
大きくはないのに教会全体に響くような声が聞こえて、子ども達が一斉に目線を向ける。いつも笑顔で優しい司祭様が真剣な顔をしている。
「今から生活魔法を授与します。生活魔法の中には扱い方を間違えると危険な物もあるので私の指示に従うように」
「「「「はい」」」」
あんなに騒がしかった教会が今では呼吸の音しか聞こえないくらいに静まりかえっている。
「私が持っている水晶に右手を置いてください。水晶が淡く光ったら生活魔法の使い方がわかるようになります」
順番に名前が呼ばれる。水晶に触れた瞬間、全員が全く同じ反応をしていて面白かった。
「最後にルカ」
「はい」
「お待たせしました。どうぞ」
水晶に右手を重ねるとすぐに淡く光る。その瞬間、自分の体内にある魔力を感じたと思ったら生活魔法の使い方がわかった。すごい。僕は魔法が使えるようになったんだ!
『なんだ!?勝手に情報が頭に入ってきて気持ち悪いな』
誰?
僕の頭の中で知らない男の人の声が響く。初めて聞いた声なのに、なぜだか聞き覚えがある。気になって辺りを見回してみた。
「ルカどうしました?まさか失敗ですか?」
「っ!何でもないです!ごめんなさい。不思議な感じがして思わず……使い方分かりました」
無事生活魔法の使い方が分かり席に戻ると幼馴染のエギルが話しかけてきた。
「ルカ、キョロキョロしてたけど大丈夫か?」
「エギルありがとう。なんか知らない男の人の声が聞こえた気がして。気のせいだったみたい」
「今から魔法使うのに大丈夫か?しっかりしろよ」
肩の辺りをバチンと叩かれる。地味に痛い。
「魔法についての簡単な説明が終わったら実際に生活魔法を使ってみましょう。長くなりますが大事なことなのでよく聞いて下さいね」
叩かれた肩を擦りながら司祭様の声に耳を傾ける。
「魔法は火水風土聖無の6属性があり、大きく2種類に分けることができます。まずは属性魔法。火属性魔法の《火球》や聖属性魔法の《回復》が有名ですね。
次に生活魔法。生活魔法は8歳になって儀式を受ければ誰でも使えます。
生活魔法には6種類の魔法があり、種火・給水・微風・穴掘・清浄・光球となっています。さっそく種火から使ってみましょう。火傷に注意して下さい」
いよいよだ、緊張する。魔力に意識を向けてみると体内でグルグル回っていることがわかる。今まで何にも感じなかったのに不思議だ。さっそく呪文を唱える。
「《種火》」
魔力が少し減った感覚がすると思ったら右手の人差し指の先に小さな火が灯る。
その火を見た瞬間頭に衝撃が走った。いきなり殴られたみたいに身体がぐらついて真っ直ぐ立てなくなる。頭が燃えるように熱い。熱さがすぐ痛みに変わった。死ぬかもしれないと思うくらいの激痛に耐えていたらあの男の声が頭に響いた。
『さっきからおかしな事が起きてる!ありえない、こんな現象はありえない!だってこんなの俺のいた世界では——』
俺のいた世界?なんの話だ。だってここはココレ村の教会で俺は今日8歳になったから生活魔法を使えるようになってそれから
俺は?違う僕は……
どこか違う世界の記憶が入ってくる。脳みそがぐちゃぐちゃにかき混ぜられたような感覚。
激痛は去ったが気持ち悪くて倒れそうだ。司祭様や大人達の焦った声が遠くで聞こえる。彼らを安心させるために大丈夫だと応えようとしたがそこで頭が真っ白になった。意識がなくなる直前、僕は確信した。
『これって異世界転生ってやつだ』
教会にはすでに人が集まっていた。子ども達は落ち着きなく辺りを見回している。大人達は遠巻きに子ども達の様子を見物している。
「司祭様まだかなあ」
「ハヤクハヤクー!」
どうやら間に合ったようだ。急いで最後尾に座る。
「静かに」
大きくはないのに教会全体に響くような声が聞こえて、子ども達が一斉に目線を向ける。いつも笑顔で優しい司祭様が真剣な顔をしている。
「今から生活魔法を授与します。生活魔法の中には扱い方を間違えると危険な物もあるので私の指示に従うように」
「「「「はい」」」」
あんなに騒がしかった教会が今では呼吸の音しか聞こえないくらいに静まりかえっている。
「私が持っている水晶に右手を置いてください。水晶が淡く光ったら生活魔法の使い方がわかるようになります」
順番に名前が呼ばれる。水晶に触れた瞬間、全員が全く同じ反応をしていて面白かった。
「最後にルカ」
「はい」
「お待たせしました。どうぞ」
水晶に右手を重ねるとすぐに淡く光る。その瞬間、自分の体内にある魔力を感じたと思ったら生活魔法の使い方がわかった。すごい。僕は魔法が使えるようになったんだ!
『なんだ!?勝手に情報が頭に入ってきて気持ち悪いな』
誰?
僕の頭の中で知らない男の人の声が響く。初めて聞いた声なのに、なぜだか聞き覚えがある。気になって辺りを見回してみた。
「ルカどうしました?まさか失敗ですか?」
「っ!何でもないです!ごめんなさい。不思議な感じがして思わず……使い方分かりました」
無事生活魔法の使い方が分かり席に戻ると幼馴染のエギルが話しかけてきた。
「ルカ、キョロキョロしてたけど大丈夫か?」
「エギルありがとう。なんか知らない男の人の声が聞こえた気がして。気のせいだったみたい」
「今から魔法使うのに大丈夫か?しっかりしろよ」
肩の辺りをバチンと叩かれる。地味に痛い。
「魔法についての簡単な説明が終わったら実際に生活魔法を使ってみましょう。長くなりますが大事なことなのでよく聞いて下さいね」
叩かれた肩を擦りながら司祭様の声に耳を傾ける。
「魔法は火水風土聖無の6属性があり、大きく2種類に分けることができます。まずは属性魔法。火属性魔法の《火球》や聖属性魔法の《回復》が有名ですね。
次に生活魔法。生活魔法は8歳になって儀式を受ければ誰でも使えます。
生活魔法には6種類の魔法があり、種火・給水・微風・穴掘・清浄・光球となっています。さっそく種火から使ってみましょう。火傷に注意して下さい」
いよいよだ、緊張する。魔力に意識を向けてみると体内でグルグル回っていることがわかる。今まで何にも感じなかったのに不思議だ。さっそく呪文を唱える。
「《種火》」
魔力が少し減った感覚がすると思ったら右手の人差し指の先に小さな火が灯る。
その火を見た瞬間頭に衝撃が走った。いきなり殴られたみたいに身体がぐらついて真っ直ぐ立てなくなる。頭が燃えるように熱い。熱さがすぐ痛みに変わった。死ぬかもしれないと思うくらいの激痛に耐えていたらあの男の声が頭に響いた。
『さっきからおかしな事が起きてる!ありえない、こんな現象はありえない!だってこんなの俺のいた世界では——』
俺のいた世界?なんの話だ。だってここはココレ村の教会で俺は今日8歳になったから生活魔法を使えるようになってそれから
俺は?違う僕は……
どこか違う世界の記憶が入ってくる。脳みそがぐちゃぐちゃにかき混ぜられたような感覚。
激痛は去ったが気持ち悪くて倒れそうだ。司祭様や大人達の焦った声が遠くで聞こえる。彼らを安心させるために大丈夫だと応えようとしたがそこで頭が真っ白になった。意識がなくなる直前、僕は確信した。
『これって異世界転生ってやつだ』
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