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グレイセル王国からの逃亡
プロローグ
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やってしまった。僕は頭を抱えた。今後起こるであろうことを考えると血の気が引く。気が遠くなりかけたが、いきなりものすごい力で肩を掴まれた。
「俺の怪我は奇跡が起きない限り治らないと言われていたのに!どういうことだ?ルカ、いや貴方様は女神プリシア様の生まれ変わりでしょうか?」
「アイザック兄さん落ち着いて!……って痛い痛い痛いっ!肩!」
「っ!すまない!」
兄さんが大げさな動きで肩から手を離し僕と距離を取る。肩の骨が折れるかと思った。折れても僕の魔法で治せると今さっき判明したけど。
「僕が女神の生まれ変わりってそんなわけないでしょ。僕はピーター父さんの息子でアイザック兄さんの弟。ただのルカだよ。初めて使った魔法で兄さんの怪我を治せたのはちょっとびっくりしたけど」
「ちょっとびっくりどころではない!高位の聖職者でも治せなかった怪我だぞ!?それを治せるなんて、やはり貴方様は…」
「そう言われても僕にだってわからないよ。治そうと思ったら治せたんだ。あと兄さんに貴方様って言われると気持ち悪いから止めて。それより今後のことを考えないと…」
「今後のこととは?」
「兄さんの怪我は高位の聖職者の魔法でも治せなかったんだよね?」
「ああ」
「兄さんの怪我が治ったことが知られたら誰が治したんだって話になるよね」
「そうなるな」
「その場で話を誤魔化しても僕が治したことがバレる可能性はあるよね。バレたら僕はどうなると思う?」
「即神殿に召し上げられて聖者様と人々から傅かれることになるだろうな。そうなったら一生神殿から出られないだろう」
「一生軟禁なんて冗談じゃない!神殿は絶対に嫌だ!」
「神殿が嫌なら怪我のことは、ほとぼりが冷めるまで隠しておかないとな。俺はすぐに村を発つことにしよう」
「僕も一緒に村を出るよ。あと怪我のことを隠すならこの国から出たほうがいいと思う」
「なんでルカまで?それに国?俺が村から出ていくだけではだめか?」
「兄さんは領内で敵う人はいないって言われるくらい強くて有名だったんでしょ?怪我のことがバレたら即連れ戻されるよ。そしたら芋づる式に僕のことがバレるかもしれない」
「たしかにな。俺はもう兵士に戻るつもりはない」
「だからさ——僕と一緒に逃げようか」
この一言がきっかけになって始まった逃避行。
どうしてこうなったんだろう。兄さんの怪我を治したことに後悔はない。それでもどうしてと走馬灯のように今までの出来事が頭に浮かぶ。僕は全ての始まりとなった8歳の誕生日に思いを馳せた。
「俺の怪我は奇跡が起きない限り治らないと言われていたのに!どういうことだ?ルカ、いや貴方様は女神プリシア様の生まれ変わりでしょうか?」
「アイザック兄さん落ち着いて!……って痛い痛い痛いっ!肩!」
「っ!すまない!」
兄さんが大げさな動きで肩から手を離し僕と距離を取る。肩の骨が折れるかと思った。折れても僕の魔法で治せると今さっき判明したけど。
「僕が女神の生まれ変わりってそんなわけないでしょ。僕はピーター父さんの息子でアイザック兄さんの弟。ただのルカだよ。初めて使った魔法で兄さんの怪我を治せたのはちょっとびっくりしたけど」
「ちょっとびっくりどころではない!高位の聖職者でも治せなかった怪我だぞ!?それを治せるなんて、やはり貴方様は…」
「そう言われても僕にだってわからないよ。治そうと思ったら治せたんだ。あと兄さんに貴方様って言われると気持ち悪いから止めて。それより今後のことを考えないと…」
「今後のこととは?」
「兄さんの怪我は高位の聖職者の魔法でも治せなかったんだよね?」
「ああ」
「兄さんの怪我が治ったことが知られたら誰が治したんだって話になるよね」
「そうなるな」
「その場で話を誤魔化しても僕が治したことがバレる可能性はあるよね。バレたら僕はどうなると思う?」
「即神殿に召し上げられて聖者様と人々から傅かれることになるだろうな。そうなったら一生神殿から出られないだろう」
「一生軟禁なんて冗談じゃない!神殿は絶対に嫌だ!」
「神殿が嫌なら怪我のことは、ほとぼりが冷めるまで隠しておかないとな。俺はすぐに村を発つことにしよう」
「僕も一緒に村を出るよ。あと怪我のことを隠すならこの国から出たほうがいいと思う」
「なんでルカまで?それに国?俺が村から出ていくだけではだめか?」
「兄さんは領内で敵う人はいないって言われるくらい強くて有名だったんでしょ?怪我のことがバレたら即連れ戻されるよ。そしたら芋づる式に僕のことがバレるかもしれない」
「たしかにな。俺はもう兵士に戻るつもりはない」
「だからさ——僕と一緒に逃げようか」
この一言がきっかけになって始まった逃避行。
どうしてこうなったんだろう。兄さんの怪我を治したことに後悔はない。それでもどうしてと走馬灯のように今までの出来事が頭に浮かぶ。僕は全ての始まりとなった8歳の誕生日に思いを馳せた。
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