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あたたかなるもの
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そこは草の茂る人気のない広い空き地のような場所だった。その端の材木などが置かれているプレハブの屋根がある場所。そこが僕の家だった。
ダンボール箱の中には何日か前までは僕の兄妹たちもいたんだ…
ある日ガサガサと音がして人が訪れた。
順番に僕たちを持ち上げ、1匹ずつマジマジと見つめて兄妹の一匹を連れていった…その後に違う人が来てもう1匹を連れていき、僕はひとりぼっちになった。
何日か前に降った雨のせいで、箱の形が変り、水が染み込んで冷たくなった。
兄妹がいた時は体を寄せ合えばすごく暖かかったのに。
寂しさと空腹で何度も何度も叫んだ…
何よりもこの箱の中の暗闇が怖かったんだ。
そして運命の日がやってきた。
もう動けないくらいお腹が空いて、やみくもに鳴き叫んだ…
どこからか草を踏みつける音が近づいてくる。少し怖かった。
箱を開けられた時、眩しい光りで真っ白になった。そこに映ったのは少年だった。
「まーくん」
後に分かった彼の名前だ…
その時、ぼくは怖くて怖くて震えていた。そんなぼくをヒョイと持ち上げて彼は言った。
「ママー、仔犬がいるよー。早く来てー」
なぜか懐かしい気持ちになったのを覚えてる。
それからのことはあまり覚えていない…
覚えているのは彼が僕を家族にしてくれる為にパパとママに必死で頼んでくれてたこと。
ぼくはね、まーくん。あの時のことは忘れることは出来ないんだ。あの後、君がくれたミルクの味も…
あれから何日経ったのかな…
大嫌いな匂いのする建物に連れていかれて針を刺された。初めて痛いと感じることをされた。なんでママとまーくんはぼくの嫌なことをするんだろう。。
まーくんは朝と夕方ぼくを必ず散歩に連れて行ってくれる。ぼくはまーくんと走ることが大好きで、楽しくて楽しくてずっと一緒に走っていたかった…
まーくんに付けてもらったぼくの名前
「RUN」
走ることが大好きなぼくの名前
本当に嬉しかったんだよ。
まーくんたちと一緒に暮らして沢山言葉も教わった。人の生活というものも分かってきたよ。ぼくの言葉はまーくんたちとは違うけど全部わかってくれてるんだ。
まーくんは学校という所に行っていて夕方まで会えない。家にはいつもママがいてご飯をくれる。ママはよくぼくに話しかけてくるんだ。
パパのこと…
ぼくの小屋はマーくんの家の玄関のすぐ横にあるんだけど、よくパパとママがケンカをして大きな声で怒鳴ってる。
ぼくはこれを聞くのが大嫌いだ…
ママもぼくに話しかけてくるとき、いつも寂しそうな顔をしてる。
ある夜、パパとママの怒鳴る声が響いてきた…何かを倒すような音もして、ぼくも怖くなった。しばらくしてパパが車で出て行った。ぼくは怖くて小屋から出れなかった。その後にまーくんが小屋に入ってきて、僕を抱きしめて震えていた。
今まで見たことがないまーくんにぼくは、何もしてあげられなくて、ただただ悲しくなった…
ぼくには人の解らないところが一つだけある。涙の意味。
その時もまーくんの目から涙が流れていた…
以前ママもぼくに話をしながら涙が流れていたんだ。
ぼくはまーくんの悲しみの雫をそっと舐めてあげた。少しピリっとするけど溢れ出る雫をずっと舐めていた。
ぼくには涙が流れない…
その夜を境にパパは帰って来なくなったんだ。
今までと生活が違うようになった。
まーくんは変わらずぼくを散歩に連れて行ってくれる。ママは仕事というものをするようになり、ぼくはひとりの時間が多くなった。でも夕方まーくんが帰ってくるから、ぼくは嬉しくていつも待ち遠しかった。
ぼくはいつもまーくんが帰ってくると嬉しくて嬉しくて叫んでしまう。
自慢の右曲がりの尻尾は大忙しだ。
そして決まってお腹を撫でてほしくてゴロンする。あまりに嬉しすぎた時はおしっこが漏れたりもする。
これは気をつけなければ。。。
時々まーくんは友達を沢山連れてくる。
そうなるとぼくのテンションは上がるんだ。川の側の土手にみんなで行ってぼくを引っ張る紐を放される。
みんなと追いかけっこが楽しくて、ボールを取りに行く遊びはいつもぼくが1番なんだ。。みんなぼくを優しく撫でてくれるから好き。まーくんは友達がいていいな。まーくんも楽しそうに笑ってる…
少し友達がうらやましくなる。
ぼくと一緒にいる時も楽しいと思ってくれているといいな。
川の光りが反射してキラキラと輝いている。ほんの少しの時間だけぼくは切ない気持ちになったんだ。
次の日もその次の日も、その次もぼくはまーくんと土手の散歩道を走った。
見上げるとまーくんは笑ってた。
この時間がずっと続きますように…
ママとまーくんとぼくの生活は楽しかった。夏のある夜にカミナリが地面に響きわたるほど鳴り響いた。ぼくはカミナリが大嫌いで、ゴロゴロドカーンって恐ろしい光りと音で怖くて怖くて震えてしまうんだ。
震えて小屋でうずくまっていると、ママとまーくんがぼくを連れて玄関に上がらせてくれた。シーツが置かれていて、ここで寝ていいと言ってくれたんだ。それだけじゃなくてまーくんがぼくの側に布団を持ってきてまーくんの手に触れながら一緒に寝てくれたんだ。
それからはカミナリが鳴る日は嬉しくなった。
…ぼくの幸せな時間は過ぎていく…
この頃まーくんは忙しそうだ…
近々修学旅行とかで友達がよくまーくんに会いにくる。
いつもぼくに話しかけてくる時間になっても友達と楽しく話をしてる。
早く帰ってくれないかな。
結局その日はおやすみだけ言いに顔を出しただけだった。。
早くまーくんと遊びたいな…
そして修学旅行の朝、まーくんはいつもより早起きしてた。
まーくんは楽しそうにママと話している。そこへまーくんの友達が迎えにきた。まーくんはママにとびきりの笑顔で
いってきまーすと言って、ぼくの頭を揉みくしゃみに撫でて出て行った。
ぼくは一緒に行きたくて、まーくんが見えなくなっても鳴き続けていたんだ…
そんなぼくを見ていたママが
「RUN、寂しいけど今日はまーくん帰って来ないのよ。今日一日我慢しよーね」
そう言ってママが頭を優しく撫でてくれたんだ。
まーくんのいない初めての夜。
ぼくは寂しくてまーくんの名前を呼んでみる。何度も何度も呼んでみる。
見かねたようにママがぼくの頭を撫でながら、すぐに帰ってくるからと優しく微笑んだ…
次の日の朝ママは仕事に出かけた。
ぼくはひとりでお留守番。
夏も終わりに近づいた頃だけどまだまだ日差しは暑い。
小屋の日陰から門の外をぼんやり眺めていた。するといつもの"あいつ"が塀のブロックをつたってやってきた…
*「よー!今日も番犬ご苦労様だね~」
*「また来たのかい?
君は自由でいいね」
*「紐に繋がれる生活なんてごめんだね。そもそも人間のご機嫌取ってるお前たち犬の気持ちが分からないね~」
*「まーくんはそんな人間じゃない。優しくて、いつも笑って頭を撫でてくれて家族みたいに愛してくれてるんだ」
*「ふん、まぁ精々人間に捨てられないよう愛想振り撒いてりゃいいさ」
黒い野良猫。。
やつはいつもぼくをからかって遊んでいる。ぼくが吠えてもビクともしない。
ぼくが紐で繋がれているのをわかってて自由に歩き回る。そしていつものようにしゃがみ込んでぼくをじっくり眺めてゴロンと寝そべる。
それに飽きたらまたふらりと出ていく。
紐に繋がれていない君が羨ましいよ。。
日がかたむきかけてきた頃ママがいつもより早く帰ってきた。慌てて家に入ったと思ったらぼくの紐を持って散歩に出かけた。あれ、いつもの道じゃない。
もしかして。そうか。きっとそうだ…
ママ、ぼくにはわかるよ、まーくんが帰ってくるんだ。。
何度かまーくんを迎えに行ったことがある道だ。あそこにまーくんがいるんだ!
ぼくは嬉しすぎて走るようにママを引っ張った。ママが疲れたようにぼくを引っ張り返す。
ママ急いでよ。
ぼくは早足でママを誘導する…
「ちょっと…RUN!そんなに走らないでよ」
大きな道路の先にまーくんが手を振った。 あっ!まーくんだっ
!。。
ぼくは嬉しくて嬉しくて、もう何も見えなかったんだ…
ママの持つ紐を振り解き、真っ直ぐまーくんのいる所に走った。
道路を渡り切る辺りで、まーくんは怖い顔して手をしきりに振っていた。
「えっ」
「ドン!!」
キィィ…………
そしてぼくの視界からまーくんが消えた…
どれくらいの時が経ったのだろう。
一瞬かな…
ぼくはまーくんのいる所からかなり離れた場所に寝そべっていた。
何が起こったのか分からなかったけど、まーくんが駆け寄ってきた。
「RUN!RUN!あぁ…どうしよう。
うぐぅ……」
「まーくん。まーくん…」
飛びつこうと立ちあがろうとした時、右の前足に激痛が走って声を出してしまった。
目の前にまーくんがいる。顔をペロペロしたいのに立ちあがろうとするたびに激痛に声が出る。横になったまま顔だけを上げるとまーくんがぼくをのぞきこんで、涙を流している。
「RUNごめんよ…ごめんよ。うぅ…」
どうしたの、まーくん。
ぼくのせいで泣いているの?
横たわるぼくの所に、ママも慌てて駆け寄ってきて怖い声で大人たちとまーくんで話をしている。
しばらくしてまーくんがぼくを抱えあげてそのまま早足で歩きだした。ママも一緒にぼくに触りながら歩いていく…
まーくんの腕に抱えてもらってぼくはすごく嬉しかったんだよ。
着いた先は、あの嫌な匂いのする建物だった…すぐに中にいる大人たちに引き渡された。まーくんぼく怖いよ…
やっぱり痛い針を刺された。
それよりも右足を動かそうとする度に声が出てしまう痛みを止められなかった。
そのうちに景色がぼやけてきて、目を開けてられなくなった。。
目が覚めた時どこにいるかわからなくて不安になったのを覚えている。
なんだか頭がぼーっとしていて、体中が痛い…包帯で巻かれた右足が明らかに短い。
そうか…あの時ぼくは車にはねられたのか。まーくん。。
まーくんはどうしたかな…
今ぼくは柵の中に閉じ込められている。
体も思うように動かせない。
早くまーくんに会いたい。
またあの土手を一緒に走りたかった。まーくん…
あれから何日か経って、ぼくは自分を受け入れられないでいる…
思うように歩けない。
右足の真ん中から下が失くなっていた。
まーくん、これからぼくはどうすればいい。
今日はまーくんとママがぼくを迎えにきた。二人共ぼくを見るなり涙を流した。
まーくんはぼくを抱きしめて何も言わずに、ただ泣いていた…
そんなまーくんを見てぼくも悲しくなる。体の震えが止まらなかった。
「RUN、ごめんよ。あの時僕が呼んだからこんなことに………
うわぁぁ……僕のせいだぁ……」
「まーくんのせいじゃないのよ。
紐を離してしまったママのせいなの。ごめんね…RUNもごめんね…」
ぼくが怪我したせいで、ママもまーくんも涙を流してる。
どうか僕のせいて泣かないで…
いつも道路は気をつけていたのに、飛び出したぼくが悪いんだ…
。
家に戻ったぼくは、今までのようにはいかなくなった。悔しくて仕方がないのはまーくんと散歩するとき走れなくなった事。走るどころか歩くのも遅くて、見かねたまーくんがぼくを抱きかかえて歩く。ぼくは無性に悲しくなった…
あの時以来まーくんとママはぼくに笑顔をあまり見せなくなった。笑ってくれても、どこか寂しそうなんだ。
ぼくは人の顔の表情をずっとみてきたからわかるんだよ…
ある朝、知らない大人が何人か来て家の荷物を運び出した。ママとまーくんとぼくの家に何をしにきたのだろう。
どんどん運び出される大きな荷物に、ぼくの幸せな日々を奪われる気がして、たくさん声を出した!
日が暮れかかる頃家の中はいつもと違ってた。まーくんとママはいつもにも増して元気がなかった。
何かあったのかな。時々ぼくは人間ではないことに悲しくなる。
何もしてあげられない自分に…
また違う人が二人来た。ぼくの前でママとまーくんとその人たちが話をしてる。
その時まーくんが泣き出した。
ぼくを抱きしめて大きな声で泣きだした…
「うぅ。やっぱり嫌だよー、RUNと離れたくないよー!うわぁ…」
ママも泣いてるようだった。
「まーくん!困らせないで。
今度住むアパートでは動物を飼うことが出来ないの!」
「嫌だよぉ…お願いだからRUNも一緒に連れていってよー」
「まーくん、何度も話したでしょ!無理言わないで…
せめて、同じような怪我や病気の仲間がいる施設でRUNは幸せに暮らすの。だからもうわがまま言わないで…さぁ」
「嫌だ!嫌だ…僕はRUNと一緒にいるんだー…」
「まーくんいい加減にしなさい!
」
ぼくはどうしたらいいか分からず、心の中で必死に"大丈夫だよ""ぼくがついてるから"とまーくんから流れる涙をずっと舐めていたんだ。
どれくらいの時間が経っただろうか。
男の人がママに話しかけて、嫌がるまーくんをぼくから引き離した。
まーくんはママを困らせているようだった。そして男の人はぼくを持ち上げかごの柵に入れた…ぼくは声を上げて鳴いた。怖かったのと、何かが変わってしまうような予感がしたから…
まーくん!まーくん!!
ぼくはずっと鳴いていた。
「RUN、RUN!!うわぁぁーん…………」
車に乗せられ、後ろの窓から見えるまーくんを鳴きながらずっと見ていた……
その家にはたくさんのぼくのようなケガをした犬と猫がいた。最初は怖くてたまらなかった…この建物には広い庭があって走り回ってる犬や猫もいた。
*「はじめまして、わたしはユキって言うの。あなたは足を…
わたしは片目がほとんど見えないの。でも大丈夫よ、ここにいる動物は皆んな怪我をしたり、病気になって人間の家族と離ればなれになってしまったの。だからここでは皆んな仲間なんだよ!
だからわからないことがあったら何でも聞いて。
これからは家族みたいなものだからね」
*「ありがとう…だけどぼくは、まーくんが必ず迎えに来てくれるから」
*「まーくんか…人間の家族のことね。……うん、そうだね。じゃそれまではここで楽しくやっていこう」
*「うん……」
あれから何日か過ぎて、友達も出来たんだ。
ずっと側にいてくれる犬仲間のユキ。極度の人間嫌いで臆病な猫のハナ。ここで一番長くいるという犬のジロじいさん…
みんなからジロじぃと呼ばれている老犬だ。
忘れもしない。ぼくがここに来た日、まーくんが迎えに来てくれるんだと話した途端に……
*「お前は捨てられたんじゃ!人間なんかを信じるなんて馬鹿な奴だ」
*「まーくんはそんな人間じゃない!
絶対探して見つけてくれるんだ」
言い合いになったんだ…
その日からジロじぃは少し苦手だ。
この広い家には三人の人間がぼくたちのご飯を食べさせてくれたり、毛繕いや一緒に遊んだりしてくれてる。週に三回順番に外に出て散歩してくれるんだ。
この時ぼくはいつもまーくんと走った土手を思い出す…
まーくん、まーくんに会いたいよ。
家に着いて皆んなが遊んでいる時、ぼくはまーくんと走った土手を思い出していた。
*「またまーくんを思い出してるの?」
いつもユキはぼくを気にかけてくれていて、優しく声をかけてくれる。
*「ユキは何故皆んなと遊ばないの」
*「んん…なんかRUNを放っておけないというか。応援したくなるというか…へへ 良くわかんないや」
*「ユキは寂しくないの?
人間の家族に会いたくないの」
*「んん…私は少し怖いかな」
*「怖い?人間が?」
*「そうだね…裏切られるのが…かな
ここにいる仲間たちは皆んなそれぞれに人間に裏切られてるの。
ハナなんかは人間に虐待されてここに来たのよ、あちこちに酷い傷を負わされていて。何よりもハナに刻まれた心の傷が今も癒えることはないの…」
「………」
*「ジロじぃもね、昔は人間の家族と十年以上も一緒に暮らしていたみたいなの。人間の家族に子供が生まれてからはジロじぃと一番の友達になったの。その子が十歳になるころにはジロじぃは走ることも辛くなっていて、毛並みもボサボサ。そんな時、小さくて犬とは思えない可愛らしい家族が現れてジロじぃの居場所は無くなった。病気を機にここに移されたんだって…」
*「そんな…ひどいよ」
*「ジロじぃも昔は人間の家族だったのよ。愛した家族がいたの」
*「もう一回会いに行けばいいじゃないか!」
*「もう駄目だよ。私たちは必要なくなったからここに連れて来られたの…」
*「そんなの……きっと何か事情があって……」
*「これが現実よ」
*「ぼくにはわからないよ!
あんなに一緒に遊んでくれたのに。
あんなに涙を流してくれたのに。
そんなの嘘だよ… 」
その日ぼくとユキは隅っこにいるハナに声を掛けた。
*「やぁ、ハナ元気?」
ユキの柔らかい話し方に釣られてハナも答えた。
*「まぁね。何か用?」
*「いやねRUNがさ、ハナと話したいって…」
*「私は話すことない」
*「ごめんよ、ユキから聞いたんだ。
人間から酷いことされてここへ来たんだって…。でもね、悪い人間ばかりじゃないからね」
*「呆れるよ…アンタ、ほんっとうに人間が大好きなんだね。
三本足になって捨てられてもまだまーくんを信じてる」
*「ぼくには分かるんだ…
心の中のあったかい場所にね、いつもまーくんがそこに居て、幸せな気持ちになるんだ。まーくんはぼくを忘れていなくて泣きながらぼくを想ってくれてる。上手く言えないんだけど、ぼくたちは絶対に逢えるんだ…」
そこへジロじぃがやってきた。
*「ふん、まだ人間の話をしとるのか。下手な希望を持つな。後で苦しむことになるんじゃからな…」
*「ジロじぃだって昔は人間の家族だったんでしょ?今だって心のどこかじゃ信じて…」
*「バカ言うんじゃない!
ワシが人間なんかを信じてるわけないんじゃ。誰から聞いたが知れんが、お前もワシと一緒でとっくに捨てられたんじゃ!人間は勝手なんじゃ。年老いて醜くなったり、怪我をしたお前さんのように可愛くなくなると簡単に捨ててしまうのが人間じゃ。ワシらは人間の物と一緒で新しい物が出てくると切り捨てられてしまうんじゃよ。
そのまーくんはもうお前を忘れて楽しく過ごしとる…」
*「まーくんはぼくを絶対忘れるもんかー!ただ、ただ今は事情があって…うぅ…」
*「ふん。まだそんなこと言っとるのか!ならばいつ迎えにくるんじゃ。いつじゃ!」
*「それは……その」
*「ジロじぃ!もういいでしょ!
RUNはまだ信じてるの。その気持ちを持っている限り私たちは何も言えないよ。ジロじぃもそうだったでしょ…」
*「ふん。そんな希望を持っていても更に傷つくのはお前さんじゃぞ」
「………」
僕はその頃からある計画を立てていた。
ここに来てからもずっと気になっていること。
まーくん、どうしてるだろう…
まーくんとママは何かの事情があってぼくと少しの間だけ離れてるだけだよね…
あのまーくんがぼくを見捨てるわけがない。あんなに泣いてくれたまーくんがぼくを忘れるわけはずがないんだ。
必ず迎えに来てくれるから。
何ヶ月か過ぎたある日、ぼくは実行に移す時が来た。
皆んなにも計画を伝えている。
勝手にいなくなるのは嫌だったからだ。ここはもう一つのぼくの家族で、もう二度と皆んなを裏切るようなことはしたくなかった…
扉を開けられ、二人の人間が紐でぼくたちを繋ぎ外に散歩する。
この時を狙う。
ぼくたちは足の遅いグループに分けられていた。
老犬のジロじぃ。片目の不自由なユキ。そして片足のないぼくと、
手持ちの猫用バッグに入れられたハナ。
いつも同じ場所を散歩するので、逃げた時に見つかりにくい場所、身を隠せる場所などを確認しておいた。
実行する場所に来た…
僕は立ち止まり、キャイン、キャインと苦しんでる声を出し、その場に座り込んだ。
心配した人間のお姉さんがしゃがんでぼくをさすりながら
「RUN、どうしたの?どこか痛いの…」
懸命に話しかける。
今だ!!
手に持っている紐を威嚇しながら噛み付いた…
「痛い!」
ビックリしたお姉さんはすべての紐から手を離した。
ぼくは三本の足で懸命に走り出した!
*「ごめんよ。お姉さん…」
もうすぐ身を隠せる溝がある。
もうすぐに…グィ!!
*「えっ。。」
もう一人のハナを持っているお姉さんが走ってぼくの紐を捕まえた。
*「もう少しだったのに……畜生!!」
その時、凄い勢いで走ってきたジロじぃとユキが威嚇しながら手の紐を離そうとする。
「こら。ジロ!ユキ!やめなさい。
めずらしいな。どうしちゃったの」
駄目だ。手から紐は離さない……
その時扉のロックを手で開けたハナが「シャー…」と飛びつき、お姉さんの手を爪で引っ掻いた。
キャーと叫びながら紐を離した。
そして注意を逸らすように皆んなで暴れ回り吠えたてる。
*「早く行け!!ワシもお前が本当に会えるのか見てみたくなった。
絶対に会って確かめて来い」
*「あんたの言うあたたかい場所
あるといいねー!さぁ早く」
*「RUN!君がいなくなるの寂しいけど、ずっと寂しい顔みるのつらいから。必ずまーくんに会うんだよ!私たちも家族だからね、忘れないで…」
*「皆んな…うぅ、ありがとう…
絶対忘れないよー」
ぼくは振り返らないで真っ直ぐ走った。三本の足で懸命に。
昨日の夜ジロじぃが言っていた言葉を思いだした。
「………本当に行くのか?ここにいれば食べるものも温かいシーツで寝ることも出来る。外に出ればお前さんの足じゃ生きていくこともままならないんじゃ。それにな、
首輪のない動物は捕まると皆んな殺される。
はっきり言っておくぞ。
たとえお前さんがまーくんに会えたとしても、望んでいたものとは違うかも知れんのだぞ…
憧れは憧れのままのほうが幸せなこともあるんじゃ。それでも行くというのなら止めはせん………」
ジロじぃ。それでもぼくは行くよ…
どんな未来が待っていたとしてもまーくんにもう一度会いたいんだ。。
ぼくには帰らなきゃいけない場所があるんだ…
「まーくん…」「まーくん…」
心の中で何度も呟いた。
右足がある時は、こんな距離なんてあっと言う間に駆け抜けたのにな…
3本の足で懸命に駆ける。
必ずまーくんに会うために。
足の裏の肉が擦り切れて血の跡がついていた。
きっとあの家の人たちはぼくを探して連れ戻すのだろう。だから急いで帰らないと…「まーくん、すぐに帰るから」
急ぐぼくを北風が押し返そうと吹き抜けていた…
ぼくは人目を避けるように早足で急ぐ。溝のトンネルを抜けて薄暗がりをひたすら歩く。
まーくんと最後の日、車に乗せられたぼくは道筋をずっと見ていた。忘れないようにと……
記憶といつもの散歩道の匂いを頼りにひたすら歩いた…
こんなに歩いたことがない。
3本足のために体に負担がかかって疲れ切っていた。
皆んな大丈夫だったかな。普段から優しいお姉さんたちだからきっと分かってもらえてる…
人目を避けて風をしのげる広い空き地を見つけた。
草が茂っていて、古い車が草を生やしている。その下で少し休むことにした。
ふと後ろを見ると血の足跡が出来ていた。足の裏が擦り切れて血が出ている。ぼくはただ舐めることしか出来なかった…
丸まっていると少しは暖かい…
そこへガサガサと何か近づく音がした。
見上げると人に飼われていない犬が2匹うなり声をあげている。
草にかすかに着いていた犬の匂いはこの野犬だったのか。
2匹はぼくに噛み付いた…
必死になって抵抗したけど1匹は大きくて歯が立たない。動くことも出来ないぼくは噛み付いてる相手を噛み付くことが精一杯だった…
その時、大勢の人間の子供たちの声がした。
それに気付いた2匹は警戒するように逃げていった。
「怖かった…」人間に助けられた。。
体を見るとあちこちから血が出ている。
ぼくはもう動くことが出来なくなった…
辺りが暗くなる頃、北風がさらに強くなって、ぼくは傷を舐めていたんだけど、もうそれさえも感覚がなくなってきた。
少し眠っていたみたいだ。
暗闇がそっと朝焼けに変化する青い世界…ふわふわと白い羽が降り注いでいた。雪だ。。
一度だけまーくんと見たことがある。
ぼくはもう動くことは出来ない…
体中が雪の白さに染められていく。
寒い…震えも止まらない。
もう足の感覚もなくなってきた
「寒い」
「駄目だ!!」
皆んなと約束したじゃないか。
必ずまーくんに会うんだ!
こんなところで死ぬもんか…」
ぼくは歩き出した。じっとしているよりは動いているほうが温かい。
記憶と匂いを研ぎ澄まして歩いた。
その時グッと首輪に繋がっている紐が住宅街の壁のコンクリートに挟まって身動き出来なくなった。
無理矢理身体を後ろに引っ張っても抜けなかった。
こんなところにいたら人間に見つかってあの家に戻されてしまう。
ぼくは渾身の力を込めて引っ張った!息が出来ないほどに…
首輪ごと外れた。
急ごう。さらに体力を消耗してしまったけど、フラつきながらも歩いていく。
どれくらい歩いただろうか。
もう足の感覚もない…
お腹も空いて目が霞む。
ふと周りを見渡すと、車から見た見覚えのある場所だ。この道を辿ればまーくんの家がある…
もうぼくは足の痛みや空腹さえも忘れてひたすら歩いた。
記憶にある匂い。ぼくは忘れない。ここはまーくんのいる街の匂いだ……
ヨタヨタとまーくんの家を目指していると後ろの塀のブロック上から
*「お前!RUNか??」
*「えっ?あっ君は!」
*「そうよ、オレだよ。よくお前をからかってただろ」
あの黒猫。。なんだか遠い昔のように懐かしくて嬉しかった。
*「お前生きてたのかよ。野良猫仲間からRUNらしき犬が大通りで車に跳ねられたって聞いてたからてっきり……お前足が…」
*「そうなんだ。その事故で前足が失くなったんだ。そう言えば君、まーくんはどうなったか知ってる?」
*「まーくん?あーお前が大好きだった人間の男の子のことか?」
*「そう。そのまーくん!」
「お前もしかして、そんな身体で会いに来たのか。
残念だけどな、あそこの家は空き家になってる…
お前がいなくなってすぐにあの人間親子も居なくなったんだ」
*「えっ……そうなのか。
そうか…もういないのか…」
ぼくはもういく場所がなかった。
せめてまーくんとの想い出のある家へと向かった。
*「おい、RUN。もうそこは誰もいないんだって。そんなとこに行ってどうするんだよ…
そんなフラフラな身体で」
「*いいんだ。僕はあの家に戻りたい。 最後はあの場所がいい…」
想い出がいっぱい詰まった家に辿り着いた。ドアやぼくの小屋があった場所にまだ微かに想い出の匂いが残っていた…ぼくは嬉しくて嬉しくてその場所に横になった。目を閉じるとあの頃のようにまーくんがドアから駆け出してきてぼくの頭を撫でてくれる気がしたんだ。
まーくん………
*「おい、RUN。大丈夫か?怪我もしてるし、腹も減ってるんだろ?
俺がなんか食べるもの持ってきてやるから少し待ってろよ」
虚ろな意識の中で黒猫の声が響いていた…………
起こされた時に黒猫はパンを咥えていた。
*「ほら食べろ。食べないと死んじまうぞ!ほら…」
*「うぅ…身体がもう動かないんだ…」
*「まったくしょうがねぇ奴だな…」
黒猫は泣いているように見えた。
小さく噛み切って口に入れてきた…
*「ありがとう………」
小さく咀嚼した。。
*「しっかり食べろ。そんなんじゃ野良は生きていけねぇぞ。
俺はなぁ昔の記憶がないんだ…
なんとなーく、人間のような記憶もある気がしてさ…
おい、RUN!!しっかりしろ!
息してるか…………………………」
僕は呼吸を止めた
そうだ。最後にまーくんと楽しかったことを思い出そう…
…まーくん、ぼくは君といつまでも走っていたかったんだ。ずっと。ずっと…
君の笑顔が見たくて。
そのためなら何だってする。
この足がもう一度生えてきたなら、ずっと君と走りたいんだ。
あれ。。
これは涙だ…まーくん、ぼくにもついに涙が出たんだよ。
だけどおかしいんだ…
まーくんたちは悲しい時に涙を流してたのに、ぼくは今、こんなに幸せな気持ちなのに涙が出てる。やっぱりよくわからないよ。
さっきからね、あんなに寒かったのに、
あたたかいんだ…
ずっと一緒にいたかったよ。
君がつけてくれたRUNという名前も大好きだった。
ぼくを幸せにしてくれてありがとう。
一緒に遊んでくれてありがとう。
ぼくのために泣いてくれてありがとう。
そしてあの時ぼくを見つけてくれてありがとう…
大好きなまーくん…
ぼくは深い眠りについた………
どれだけ眠ったのだろう…
それとも一瞬だったのかな。
それさえ思い出せない。
今、目を開けているのかな。
真っ暗だ。
生きているのか、死んでしまったのか。
どこにいるんだろうか。
暗闇の中で遠くに光るものを見つけた。
その光に誘われて走った。暗くてよく見えてないけどぼくは4本の足でたしかに走っている…だんだんと辺りが見え始めて驚いた…あらゆる生き物が光る場所へと一斉に向かっていた。
そこには人間がたくさんいる。
薄暗く続く道をみんなが向かう方へと着いて行った。
光の中心に近付くとそこは大きな門だった…みんな一列に並ばされて、人のような形をした動物にそれぞれ違う入り口に案内されているようだった。
ぼくの前には人間の男。
その前にはシカ、その前はトラ、その前はネコ、サル、人間、イヌ…
後ろにもあらゆる生き物が長い列を成している。
ここでは誰も争わない。
そしてぼくの順番になって、その門番らしき生き物を見た。
人の形をした獣のような顔だ…
不思議と怖くはないんだ。ここでは見たことがない異形の生き物がいても普通に思えてしまう感覚になるんだ….
ぼくはいくつかある内の一つの扉を開けられ中に案内された。
その中は薄暗く正面には巨人のように大きい人のような男が座っている。
もう一人立っているのは女の人のようだった。
「あなたにいくつか質問します。
正確に答えるように」
驚いたのは言葉ではなく、頭の中に話しかけてきたんだ。。
「そう、これはあなたの意識に話しかけています」
「名前はRUNですね。雄犬
生命期間3年4ヶ月」
「しかし、辛い生を歩まれましたね、
ここに呼ばれたものは全て辛い生を歩んできた者たち。あなたたちは来世で幸せになる為の転生のために集まったのです」
辛い生って?
「あの、ぼくは幸せだったんです。
まーくんに出会えてとても幸せでした」
「あなたは人間のエゴによって捨てられたのです」
ちがう、まーくんはそんな人間じゃない…悪い人間がいるのは知ってる。
けどまーくんは心の優しい人間なんだ。
ぼくを愛してくれて、泣いてくれて、きっとぼくを忘れてはいないんだ!
どうしようもない理由があって離ればなれになっただけだよ。
「どんな理由があろうともあなたを捨てたことに変わりはない。3本足になったあなたをかわいくなくなったのよ」
「違う!だったらあんなに泣きはしない!
あんな悔しそうにママに怒りをぶつけない!」
「ともかく、あなたは生まれ変わるの。
大抵の生き物は人間を選択するわ」
「人間は傲慢で、自分勝手な生き物だけど、その反面で幸せを与え、与えられる生き物なの」
「ここはあなたを幸せにするための場所。あなたが望むものを叶えるところなのよ」
ぼくが望むものを叶えるところ…
じゃあ、お願いします。
もう決まっているんだ…
もう一度犬に生まれて、まーくんと走りたい。まーくんの笑顔を見たい。
まーくんに会いたい。。
「過去の選択をするのなら、残念だけど同じ経験をすることになるの。同じ苦痛に苦しめられ、筋書きは絶対に変えられないの。また捨てられてしまうのよ」
………それでもいいんだ。
「あなたはわかっていないよ。
ぼくはまーくんと一緒にいれてどれほど幸せだったか…
そこに苦痛がついてきても、やっぱりぼくはまーくんに会いたい。
まーくんと一緒に走りたいんだ」
「ふぅ…そうですか…わかりました。
…承認しましょう。
ではこちらに」
ぼくは連れられて、大きい人間の前に座った。
「さぁ目を閉じて…」
ぼくの頭に大きな手をそっと置いた。
「幸せであらんことを願っています
これは見せないでいるつもりでした。だけどまた転生を望むのでしたらこれを……………
これは貴方が息を引き取った2時間後の情景よ。。
あっ、ぼくだ!うずくまってる隣に黒猫が…
もしかして温めてくれてるんだね。ありがとう。
そこへ自転車に乗って少年がすごい勢いで入って来た!黒猫がサッと塀に飛び移る。
「あぁ、RUN!!うぅ…RUNごめんよー…ごめんよ…」
まーくん!!まーくん……………
まーくんは座りこんでぼくをひざに乗せた。
「ずっとずっとRUNに会いたかった。
ごめんよ…今のアパートで飼ってあげられなくて。
RUNが逃げたと連絡があってずっと探してたんだよ。それでこの家に来る途中にRUNの首輪が落ちていてまさかと思いここに来たんだ」
ぼくはまーくんに会えた。。
皆んなぼくはまーくんに会えたんだよ。
もう何も望まないよ。神様ありがとう……
「うわぁ………RUNごめんよ。僕のせいで僕のせいでごめんよー
息をしてよー
………………RUN……………………
もうぼくのために泣かないで…
まーくん…
君と出逢えたことはぼくの宝物。
ぼくの一生は君で溢れてる…
君と出逢うためにぼくは産まれたんだよ。
また必ず会おうね…まーくん
目をゆっくり閉じる。
なんだかすごく眠い…
ぼくとまーくんの思い出に溶けていく。。
とてもあたたかくて幸せな気持ちなんだ。
まーくん。
万物創造の神よ、あの犬はこれで3度目の転生ですよ。何度悪く言っても、また過去に戻って…
しかし私たちもまだまだ魂の根源、心のあたたかなるものの謎には理解に苦しみますね…
暗い………
ガサガサと音が近付いてくる
いきなり天井が開けられた。
真っ白な眩しい光りで輝いている…
「ママー、仔犬がいるよー。早く来てー」
その時僕の目から大粒の滴が流れていた……
完
ダンボール箱の中には何日か前までは僕の兄妹たちもいたんだ…
ある日ガサガサと音がして人が訪れた。
順番に僕たちを持ち上げ、1匹ずつマジマジと見つめて兄妹の一匹を連れていった…その後に違う人が来てもう1匹を連れていき、僕はひとりぼっちになった。
何日か前に降った雨のせいで、箱の形が変り、水が染み込んで冷たくなった。
兄妹がいた時は体を寄せ合えばすごく暖かかったのに。
寂しさと空腹で何度も何度も叫んだ…
何よりもこの箱の中の暗闇が怖かったんだ。
そして運命の日がやってきた。
もう動けないくらいお腹が空いて、やみくもに鳴き叫んだ…
どこからか草を踏みつける音が近づいてくる。少し怖かった。
箱を開けられた時、眩しい光りで真っ白になった。そこに映ったのは少年だった。
「まーくん」
後に分かった彼の名前だ…
その時、ぼくは怖くて怖くて震えていた。そんなぼくをヒョイと持ち上げて彼は言った。
「ママー、仔犬がいるよー。早く来てー」
なぜか懐かしい気持ちになったのを覚えてる。
それからのことはあまり覚えていない…
覚えているのは彼が僕を家族にしてくれる為にパパとママに必死で頼んでくれてたこと。
ぼくはね、まーくん。あの時のことは忘れることは出来ないんだ。あの後、君がくれたミルクの味も…
あれから何日経ったのかな…
大嫌いな匂いのする建物に連れていかれて針を刺された。初めて痛いと感じることをされた。なんでママとまーくんはぼくの嫌なことをするんだろう。。
まーくんは朝と夕方ぼくを必ず散歩に連れて行ってくれる。ぼくはまーくんと走ることが大好きで、楽しくて楽しくてずっと一緒に走っていたかった…
まーくんに付けてもらったぼくの名前
「RUN」
走ることが大好きなぼくの名前
本当に嬉しかったんだよ。
まーくんたちと一緒に暮らして沢山言葉も教わった。人の生活というものも分かってきたよ。ぼくの言葉はまーくんたちとは違うけど全部わかってくれてるんだ。
まーくんは学校という所に行っていて夕方まで会えない。家にはいつもママがいてご飯をくれる。ママはよくぼくに話しかけてくるんだ。
パパのこと…
ぼくの小屋はマーくんの家の玄関のすぐ横にあるんだけど、よくパパとママがケンカをして大きな声で怒鳴ってる。
ぼくはこれを聞くのが大嫌いだ…
ママもぼくに話しかけてくるとき、いつも寂しそうな顔をしてる。
ある夜、パパとママの怒鳴る声が響いてきた…何かを倒すような音もして、ぼくも怖くなった。しばらくしてパパが車で出て行った。ぼくは怖くて小屋から出れなかった。その後にまーくんが小屋に入ってきて、僕を抱きしめて震えていた。
今まで見たことがないまーくんにぼくは、何もしてあげられなくて、ただただ悲しくなった…
ぼくには人の解らないところが一つだけある。涙の意味。
その時もまーくんの目から涙が流れていた…
以前ママもぼくに話をしながら涙が流れていたんだ。
ぼくはまーくんの悲しみの雫をそっと舐めてあげた。少しピリっとするけど溢れ出る雫をずっと舐めていた。
ぼくには涙が流れない…
その夜を境にパパは帰って来なくなったんだ。
今までと生活が違うようになった。
まーくんは変わらずぼくを散歩に連れて行ってくれる。ママは仕事というものをするようになり、ぼくはひとりの時間が多くなった。でも夕方まーくんが帰ってくるから、ぼくは嬉しくていつも待ち遠しかった。
ぼくはいつもまーくんが帰ってくると嬉しくて嬉しくて叫んでしまう。
自慢の右曲がりの尻尾は大忙しだ。
そして決まってお腹を撫でてほしくてゴロンする。あまりに嬉しすぎた時はおしっこが漏れたりもする。
これは気をつけなければ。。。
時々まーくんは友達を沢山連れてくる。
そうなるとぼくのテンションは上がるんだ。川の側の土手にみんなで行ってぼくを引っ張る紐を放される。
みんなと追いかけっこが楽しくて、ボールを取りに行く遊びはいつもぼくが1番なんだ。。みんなぼくを優しく撫でてくれるから好き。まーくんは友達がいていいな。まーくんも楽しそうに笑ってる…
少し友達がうらやましくなる。
ぼくと一緒にいる時も楽しいと思ってくれているといいな。
川の光りが反射してキラキラと輝いている。ほんの少しの時間だけぼくは切ない気持ちになったんだ。
次の日もその次の日も、その次もぼくはまーくんと土手の散歩道を走った。
見上げるとまーくんは笑ってた。
この時間がずっと続きますように…
ママとまーくんとぼくの生活は楽しかった。夏のある夜にカミナリが地面に響きわたるほど鳴り響いた。ぼくはカミナリが大嫌いで、ゴロゴロドカーンって恐ろしい光りと音で怖くて怖くて震えてしまうんだ。
震えて小屋でうずくまっていると、ママとまーくんがぼくを連れて玄関に上がらせてくれた。シーツが置かれていて、ここで寝ていいと言ってくれたんだ。それだけじゃなくてまーくんがぼくの側に布団を持ってきてまーくんの手に触れながら一緒に寝てくれたんだ。
それからはカミナリが鳴る日は嬉しくなった。
…ぼくの幸せな時間は過ぎていく…
この頃まーくんは忙しそうだ…
近々修学旅行とかで友達がよくまーくんに会いにくる。
いつもぼくに話しかけてくる時間になっても友達と楽しく話をしてる。
早く帰ってくれないかな。
結局その日はおやすみだけ言いに顔を出しただけだった。。
早くまーくんと遊びたいな…
そして修学旅行の朝、まーくんはいつもより早起きしてた。
まーくんは楽しそうにママと話している。そこへまーくんの友達が迎えにきた。まーくんはママにとびきりの笑顔で
いってきまーすと言って、ぼくの頭を揉みくしゃみに撫でて出て行った。
ぼくは一緒に行きたくて、まーくんが見えなくなっても鳴き続けていたんだ…
そんなぼくを見ていたママが
「RUN、寂しいけど今日はまーくん帰って来ないのよ。今日一日我慢しよーね」
そう言ってママが頭を優しく撫でてくれたんだ。
まーくんのいない初めての夜。
ぼくは寂しくてまーくんの名前を呼んでみる。何度も何度も呼んでみる。
見かねたようにママがぼくの頭を撫でながら、すぐに帰ってくるからと優しく微笑んだ…
次の日の朝ママは仕事に出かけた。
ぼくはひとりでお留守番。
夏も終わりに近づいた頃だけどまだまだ日差しは暑い。
小屋の日陰から門の外をぼんやり眺めていた。するといつもの"あいつ"が塀のブロックをつたってやってきた…
*「よー!今日も番犬ご苦労様だね~」
*「また来たのかい?
君は自由でいいね」
*「紐に繋がれる生活なんてごめんだね。そもそも人間のご機嫌取ってるお前たち犬の気持ちが分からないね~」
*「まーくんはそんな人間じゃない。優しくて、いつも笑って頭を撫でてくれて家族みたいに愛してくれてるんだ」
*「ふん、まぁ精々人間に捨てられないよう愛想振り撒いてりゃいいさ」
黒い野良猫。。
やつはいつもぼくをからかって遊んでいる。ぼくが吠えてもビクともしない。
ぼくが紐で繋がれているのをわかってて自由に歩き回る。そしていつものようにしゃがみ込んでぼくをじっくり眺めてゴロンと寝そべる。
それに飽きたらまたふらりと出ていく。
紐に繋がれていない君が羨ましいよ。。
日がかたむきかけてきた頃ママがいつもより早く帰ってきた。慌てて家に入ったと思ったらぼくの紐を持って散歩に出かけた。あれ、いつもの道じゃない。
もしかして。そうか。きっとそうだ…
ママ、ぼくにはわかるよ、まーくんが帰ってくるんだ。。
何度かまーくんを迎えに行ったことがある道だ。あそこにまーくんがいるんだ!
ぼくは嬉しすぎて走るようにママを引っ張った。ママが疲れたようにぼくを引っ張り返す。
ママ急いでよ。
ぼくは早足でママを誘導する…
「ちょっと…RUN!そんなに走らないでよ」
大きな道路の先にまーくんが手を振った。 あっ!まーくんだっ
!。。
ぼくは嬉しくて嬉しくて、もう何も見えなかったんだ…
ママの持つ紐を振り解き、真っ直ぐまーくんのいる所に走った。
道路を渡り切る辺りで、まーくんは怖い顔して手をしきりに振っていた。
「えっ」
「ドン!!」
キィィ…………
そしてぼくの視界からまーくんが消えた…
どれくらいの時が経ったのだろう。
一瞬かな…
ぼくはまーくんのいる所からかなり離れた場所に寝そべっていた。
何が起こったのか分からなかったけど、まーくんが駆け寄ってきた。
「RUN!RUN!あぁ…どうしよう。
うぐぅ……」
「まーくん。まーくん…」
飛びつこうと立ちあがろうとした時、右の前足に激痛が走って声を出してしまった。
目の前にまーくんがいる。顔をペロペロしたいのに立ちあがろうとするたびに激痛に声が出る。横になったまま顔だけを上げるとまーくんがぼくをのぞきこんで、涙を流している。
「RUNごめんよ…ごめんよ。うぅ…」
どうしたの、まーくん。
ぼくのせいで泣いているの?
横たわるぼくの所に、ママも慌てて駆け寄ってきて怖い声で大人たちとまーくんで話をしている。
しばらくしてまーくんがぼくを抱えあげてそのまま早足で歩きだした。ママも一緒にぼくに触りながら歩いていく…
まーくんの腕に抱えてもらってぼくはすごく嬉しかったんだよ。
着いた先は、あの嫌な匂いのする建物だった…すぐに中にいる大人たちに引き渡された。まーくんぼく怖いよ…
やっぱり痛い針を刺された。
それよりも右足を動かそうとする度に声が出てしまう痛みを止められなかった。
そのうちに景色がぼやけてきて、目を開けてられなくなった。。
目が覚めた時どこにいるかわからなくて不安になったのを覚えている。
なんだか頭がぼーっとしていて、体中が痛い…包帯で巻かれた右足が明らかに短い。
そうか…あの時ぼくは車にはねられたのか。まーくん。。
まーくんはどうしたかな…
今ぼくは柵の中に閉じ込められている。
体も思うように動かせない。
早くまーくんに会いたい。
またあの土手を一緒に走りたかった。まーくん…
あれから何日か経って、ぼくは自分を受け入れられないでいる…
思うように歩けない。
右足の真ん中から下が失くなっていた。
まーくん、これからぼくはどうすればいい。
今日はまーくんとママがぼくを迎えにきた。二人共ぼくを見るなり涙を流した。
まーくんはぼくを抱きしめて何も言わずに、ただ泣いていた…
そんなまーくんを見てぼくも悲しくなる。体の震えが止まらなかった。
「RUN、ごめんよ。あの時僕が呼んだからこんなことに………
うわぁぁ……僕のせいだぁ……」
「まーくんのせいじゃないのよ。
紐を離してしまったママのせいなの。ごめんね…RUNもごめんね…」
ぼくが怪我したせいで、ママもまーくんも涙を流してる。
どうか僕のせいて泣かないで…
いつも道路は気をつけていたのに、飛び出したぼくが悪いんだ…
。
家に戻ったぼくは、今までのようにはいかなくなった。悔しくて仕方がないのはまーくんと散歩するとき走れなくなった事。走るどころか歩くのも遅くて、見かねたまーくんがぼくを抱きかかえて歩く。ぼくは無性に悲しくなった…
あの時以来まーくんとママはぼくに笑顔をあまり見せなくなった。笑ってくれても、どこか寂しそうなんだ。
ぼくは人の顔の表情をずっとみてきたからわかるんだよ…
ある朝、知らない大人が何人か来て家の荷物を運び出した。ママとまーくんとぼくの家に何をしにきたのだろう。
どんどん運び出される大きな荷物に、ぼくの幸せな日々を奪われる気がして、たくさん声を出した!
日が暮れかかる頃家の中はいつもと違ってた。まーくんとママはいつもにも増して元気がなかった。
何かあったのかな。時々ぼくは人間ではないことに悲しくなる。
何もしてあげられない自分に…
また違う人が二人来た。ぼくの前でママとまーくんとその人たちが話をしてる。
その時まーくんが泣き出した。
ぼくを抱きしめて大きな声で泣きだした…
「うぅ。やっぱり嫌だよー、RUNと離れたくないよー!うわぁ…」
ママも泣いてるようだった。
「まーくん!困らせないで。
今度住むアパートでは動物を飼うことが出来ないの!」
「嫌だよぉ…お願いだからRUNも一緒に連れていってよー」
「まーくん、何度も話したでしょ!無理言わないで…
せめて、同じような怪我や病気の仲間がいる施設でRUNは幸せに暮らすの。だからもうわがまま言わないで…さぁ」
「嫌だ!嫌だ…僕はRUNと一緒にいるんだー…」
「まーくんいい加減にしなさい!
」
ぼくはどうしたらいいか分からず、心の中で必死に"大丈夫だよ""ぼくがついてるから"とまーくんから流れる涙をずっと舐めていたんだ。
どれくらいの時間が経っただろうか。
男の人がママに話しかけて、嫌がるまーくんをぼくから引き離した。
まーくんはママを困らせているようだった。そして男の人はぼくを持ち上げかごの柵に入れた…ぼくは声を上げて鳴いた。怖かったのと、何かが変わってしまうような予感がしたから…
まーくん!まーくん!!
ぼくはずっと鳴いていた。
「RUN、RUN!!うわぁぁーん…………」
車に乗せられ、後ろの窓から見えるまーくんを鳴きながらずっと見ていた……
その家にはたくさんのぼくのようなケガをした犬と猫がいた。最初は怖くてたまらなかった…この建物には広い庭があって走り回ってる犬や猫もいた。
*「はじめまして、わたしはユキって言うの。あなたは足を…
わたしは片目がほとんど見えないの。でも大丈夫よ、ここにいる動物は皆んな怪我をしたり、病気になって人間の家族と離ればなれになってしまったの。だからここでは皆んな仲間なんだよ!
だからわからないことがあったら何でも聞いて。
これからは家族みたいなものだからね」
*「ありがとう…だけどぼくは、まーくんが必ず迎えに来てくれるから」
*「まーくんか…人間の家族のことね。……うん、そうだね。じゃそれまではここで楽しくやっていこう」
*「うん……」
あれから何日か過ぎて、友達も出来たんだ。
ずっと側にいてくれる犬仲間のユキ。極度の人間嫌いで臆病な猫のハナ。ここで一番長くいるという犬のジロじいさん…
みんなからジロじぃと呼ばれている老犬だ。
忘れもしない。ぼくがここに来た日、まーくんが迎えに来てくれるんだと話した途端に……
*「お前は捨てられたんじゃ!人間なんかを信じるなんて馬鹿な奴だ」
*「まーくんはそんな人間じゃない!
絶対探して見つけてくれるんだ」
言い合いになったんだ…
その日からジロじぃは少し苦手だ。
この広い家には三人の人間がぼくたちのご飯を食べさせてくれたり、毛繕いや一緒に遊んだりしてくれてる。週に三回順番に外に出て散歩してくれるんだ。
この時ぼくはいつもまーくんと走った土手を思い出す…
まーくん、まーくんに会いたいよ。
家に着いて皆んなが遊んでいる時、ぼくはまーくんと走った土手を思い出していた。
*「またまーくんを思い出してるの?」
いつもユキはぼくを気にかけてくれていて、優しく声をかけてくれる。
*「ユキは何故皆んなと遊ばないの」
*「んん…なんかRUNを放っておけないというか。応援したくなるというか…へへ 良くわかんないや」
*「ユキは寂しくないの?
人間の家族に会いたくないの」
*「んん…私は少し怖いかな」
*「怖い?人間が?」
*「そうだね…裏切られるのが…かな
ここにいる仲間たちは皆んなそれぞれに人間に裏切られてるの。
ハナなんかは人間に虐待されてここに来たのよ、あちこちに酷い傷を負わされていて。何よりもハナに刻まれた心の傷が今も癒えることはないの…」
「………」
*「ジロじぃもね、昔は人間の家族と十年以上も一緒に暮らしていたみたいなの。人間の家族に子供が生まれてからはジロじぃと一番の友達になったの。その子が十歳になるころにはジロじぃは走ることも辛くなっていて、毛並みもボサボサ。そんな時、小さくて犬とは思えない可愛らしい家族が現れてジロじぃの居場所は無くなった。病気を機にここに移されたんだって…」
*「そんな…ひどいよ」
*「ジロじぃも昔は人間の家族だったのよ。愛した家族がいたの」
*「もう一回会いに行けばいいじゃないか!」
*「もう駄目だよ。私たちは必要なくなったからここに連れて来られたの…」
*「そんなの……きっと何か事情があって……」
*「これが現実よ」
*「ぼくにはわからないよ!
あんなに一緒に遊んでくれたのに。
あんなに涙を流してくれたのに。
そんなの嘘だよ… 」
その日ぼくとユキは隅っこにいるハナに声を掛けた。
*「やぁ、ハナ元気?」
ユキの柔らかい話し方に釣られてハナも答えた。
*「まぁね。何か用?」
*「いやねRUNがさ、ハナと話したいって…」
*「私は話すことない」
*「ごめんよ、ユキから聞いたんだ。
人間から酷いことされてここへ来たんだって…。でもね、悪い人間ばかりじゃないからね」
*「呆れるよ…アンタ、ほんっとうに人間が大好きなんだね。
三本足になって捨てられてもまだまーくんを信じてる」
*「ぼくには分かるんだ…
心の中のあったかい場所にね、いつもまーくんがそこに居て、幸せな気持ちになるんだ。まーくんはぼくを忘れていなくて泣きながらぼくを想ってくれてる。上手く言えないんだけど、ぼくたちは絶対に逢えるんだ…」
そこへジロじぃがやってきた。
*「ふん、まだ人間の話をしとるのか。下手な希望を持つな。後で苦しむことになるんじゃからな…」
*「ジロじぃだって昔は人間の家族だったんでしょ?今だって心のどこかじゃ信じて…」
*「バカ言うんじゃない!
ワシが人間なんかを信じてるわけないんじゃ。誰から聞いたが知れんが、お前もワシと一緒でとっくに捨てられたんじゃ!人間は勝手なんじゃ。年老いて醜くなったり、怪我をしたお前さんのように可愛くなくなると簡単に捨ててしまうのが人間じゃ。ワシらは人間の物と一緒で新しい物が出てくると切り捨てられてしまうんじゃよ。
そのまーくんはもうお前を忘れて楽しく過ごしとる…」
*「まーくんはぼくを絶対忘れるもんかー!ただ、ただ今は事情があって…うぅ…」
*「ふん。まだそんなこと言っとるのか!ならばいつ迎えにくるんじゃ。いつじゃ!」
*「それは……その」
*「ジロじぃ!もういいでしょ!
RUNはまだ信じてるの。その気持ちを持っている限り私たちは何も言えないよ。ジロじぃもそうだったでしょ…」
*「ふん。そんな希望を持っていても更に傷つくのはお前さんじゃぞ」
「………」
僕はその頃からある計画を立てていた。
ここに来てからもずっと気になっていること。
まーくん、どうしてるだろう…
まーくんとママは何かの事情があってぼくと少しの間だけ離れてるだけだよね…
あのまーくんがぼくを見捨てるわけがない。あんなに泣いてくれたまーくんがぼくを忘れるわけはずがないんだ。
必ず迎えに来てくれるから。
何ヶ月か過ぎたある日、ぼくは実行に移す時が来た。
皆んなにも計画を伝えている。
勝手にいなくなるのは嫌だったからだ。ここはもう一つのぼくの家族で、もう二度と皆んなを裏切るようなことはしたくなかった…
扉を開けられ、二人の人間が紐でぼくたちを繋ぎ外に散歩する。
この時を狙う。
ぼくたちは足の遅いグループに分けられていた。
老犬のジロじぃ。片目の不自由なユキ。そして片足のないぼくと、
手持ちの猫用バッグに入れられたハナ。
いつも同じ場所を散歩するので、逃げた時に見つかりにくい場所、身を隠せる場所などを確認しておいた。
実行する場所に来た…
僕は立ち止まり、キャイン、キャインと苦しんでる声を出し、その場に座り込んだ。
心配した人間のお姉さんがしゃがんでぼくをさすりながら
「RUN、どうしたの?どこか痛いの…」
懸命に話しかける。
今だ!!
手に持っている紐を威嚇しながら噛み付いた…
「痛い!」
ビックリしたお姉さんはすべての紐から手を離した。
ぼくは三本の足で懸命に走り出した!
*「ごめんよ。お姉さん…」
もうすぐ身を隠せる溝がある。
もうすぐに…グィ!!
*「えっ。。」
もう一人のハナを持っているお姉さんが走ってぼくの紐を捕まえた。
*「もう少しだったのに……畜生!!」
その時、凄い勢いで走ってきたジロじぃとユキが威嚇しながら手の紐を離そうとする。
「こら。ジロ!ユキ!やめなさい。
めずらしいな。どうしちゃったの」
駄目だ。手から紐は離さない……
その時扉のロックを手で開けたハナが「シャー…」と飛びつき、お姉さんの手を爪で引っ掻いた。
キャーと叫びながら紐を離した。
そして注意を逸らすように皆んなで暴れ回り吠えたてる。
*「早く行け!!ワシもお前が本当に会えるのか見てみたくなった。
絶対に会って確かめて来い」
*「あんたの言うあたたかい場所
あるといいねー!さぁ早く」
*「RUN!君がいなくなるの寂しいけど、ずっと寂しい顔みるのつらいから。必ずまーくんに会うんだよ!私たちも家族だからね、忘れないで…」
*「皆んな…うぅ、ありがとう…
絶対忘れないよー」
ぼくは振り返らないで真っ直ぐ走った。三本の足で懸命に。
昨日の夜ジロじぃが言っていた言葉を思いだした。
「………本当に行くのか?ここにいれば食べるものも温かいシーツで寝ることも出来る。外に出ればお前さんの足じゃ生きていくこともままならないんじゃ。それにな、
首輪のない動物は捕まると皆んな殺される。
はっきり言っておくぞ。
たとえお前さんがまーくんに会えたとしても、望んでいたものとは違うかも知れんのだぞ…
憧れは憧れのままのほうが幸せなこともあるんじゃ。それでも行くというのなら止めはせん………」
ジロじぃ。それでもぼくは行くよ…
どんな未来が待っていたとしてもまーくんにもう一度会いたいんだ。。
ぼくには帰らなきゃいけない場所があるんだ…
「まーくん…」「まーくん…」
心の中で何度も呟いた。
右足がある時は、こんな距離なんてあっと言う間に駆け抜けたのにな…
3本の足で懸命に駆ける。
必ずまーくんに会うために。
足の裏の肉が擦り切れて血の跡がついていた。
きっとあの家の人たちはぼくを探して連れ戻すのだろう。だから急いで帰らないと…「まーくん、すぐに帰るから」
急ぐぼくを北風が押し返そうと吹き抜けていた…
ぼくは人目を避けるように早足で急ぐ。溝のトンネルを抜けて薄暗がりをひたすら歩く。
まーくんと最後の日、車に乗せられたぼくは道筋をずっと見ていた。忘れないようにと……
記憶といつもの散歩道の匂いを頼りにひたすら歩いた…
こんなに歩いたことがない。
3本足のために体に負担がかかって疲れ切っていた。
皆んな大丈夫だったかな。普段から優しいお姉さんたちだからきっと分かってもらえてる…
人目を避けて風をしのげる広い空き地を見つけた。
草が茂っていて、古い車が草を生やしている。その下で少し休むことにした。
ふと後ろを見ると血の足跡が出来ていた。足の裏が擦り切れて血が出ている。ぼくはただ舐めることしか出来なかった…
丸まっていると少しは暖かい…
そこへガサガサと何か近づく音がした。
見上げると人に飼われていない犬が2匹うなり声をあげている。
草にかすかに着いていた犬の匂いはこの野犬だったのか。
2匹はぼくに噛み付いた…
必死になって抵抗したけど1匹は大きくて歯が立たない。動くことも出来ないぼくは噛み付いてる相手を噛み付くことが精一杯だった…
その時、大勢の人間の子供たちの声がした。
それに気付いた2匹は警戒するように逃げていった。
「怖かった…」人間に助けられた。。
体を見るとあちこちから血が出ている。
ぼくはもう動くことが出来なくなった…
辺りが暗くなる頃、北風がさらに強くなって、ぼくは傷を舐めていたんだけど、もうそれさえも感覚がなくなってきた。
少し眠っていたみたいだ。
暗闇がそっと朝焼けに変化する青い世界…ふわふわと白い羽が降り注いでいた。雪だ。。
一度だけまーくんと見たことがある。
ぼくはもう動くことは出来ない…
体中が雪の白さに染められていく。
寒い…震えも止まらない。
もう足の感覚もなくなってきた
「寒い」
「駄目だ!!」
皆んなと約束したじゃないか。
必ずまーくんに会うんだ!
こんなところで死ぬもんか…」
ぼくは歩き出した。じっとしているよりは動いているほうが温かい。
記憶と匂いを研ぎ澄まして歩いた。
その時グッと首輪に繋がっている紐が住宅街の壁のコンクリートに挟まって身動き出来なくなった。
無理矢理身体を後ろに引っ張っても抜けなかった。
こんなところにいたら人間に見つかってあの家に戻されてしまう。
ぼくは渾身の力を込めて引っ張った!息が出来ないほどに…
首輪ごと外れた。
急ごう。さらに体力を消耗してしまったけど、フラつきながらも歩いていく。
どれくらい歩いただろうか。
もう足の感覚もない…
お腹も空いて目が霞む。
ふと周りを見渡すと、車から見た見覚えのある場所だ。この道を辿ればまーくんの家がある…
もうぼくは足の痛みや空腹さえも忘れてひたすら歩いた。
記憶にある匂い。ぼくは忘れない。ここはまーくんのいる街の匂いだ……
ヨタヨタとまーくんの家を目指していると後ろの塀のブロック上から
*「お前!RUNか??」
*「えっ?あっ君は!」
*「そうよ、オレだよ。よくお前をからかってただろ」
あの黒猫。。なんだか遠い昔のように懐かしくて嬉しかった。
*「お前生きてたのかよ。野良猫仲間からRUNらしき犬が大通りで車に跳ねられたって聞いてたからてっきり……お前足が…」
*「そうなんだ。その事故で前足が失くなったんだ。そう言えば君、まーくんはどうなったか知ってる?」
*「まーくん?あーお前が大好きだった人間の男の子のことか?」
*「そう。そのまーくん!」
「お前もしかして、そんな身体で会いに来たのか。
残念だけどな、あそこの家は空き家になってる…
お前がいなくなってすぐにあの人間親子も居なくなったんだ」
*「えっ……そうなのか。
そうか…もういないのか…」
ぼくはもういく場所がなかった。
せめてまーくんとの想い出のある家へと向かった。
*「おい、RUN。もうそこは誰もいないんだって。そんなとこに行ってどうするんだよ…
そんなフラフラな身体で」
「*いいんだ。僕はあの家に戻りたい。 最後はあの場所がいい…」
想い出がいっぱい詰まった家に辿り着いた。ドアやぼくの小屋があった場所にまだ微かに想い出の匂いが残っていた…ぼくは嬉しくて嬉しくてその場所に横になった。目を閉じるとあの頃のようにまーくんがドアから駆け出してきてぼくの頭を撫でてくれる気がしたんだ。
まーくん………
*「おい、RUN。大丈夫か?怪我もしてるし、腹も減ってるんだろ?
俺がなんか食べるもの持ってきてやるから少し待ってろよ」
虚ろな意識の中で黒猫の声が響いていた…………
起こされた時に黒猫はパンを咥えていた。
*「ほら食べろ。食べないと死んじまうぞ!ほら…」
*「うぅ…身体がもう動かないんだ…」
*「まったくしょうがねぇ奴だな…」
黒猫は泣いているように見えた。
小さく噛み切って口に入れてきた…
*「ありがとう………」
小さく咀嚼した。。
*「しっかり食べろ。そんなんじゃ野良は生きていけねぇぞ。
俺はなぁ昔の記憶がないんだ…
なんとなーく、人間のような記憶もある気がしてさ…
おい、RUN!!しっかりしろ!
息してるか…………………………」
僕は呼吸を止めた
そうだ。最後にまーくんと楽しかったことを思い出そう…
…まーくん、ぼくは君といつまでも走っていたかったんだ。ずっと。ずっと…
君の笑顔が見たくて。
そのためなら何だってする。
この足がもう一度生えてきたなら、ずっと君と走りたいんだ。
あれ。。
これは涙だ…まーくん、ぼくにもついに涙が出たんだよ。
だけどおかしいんだ…
まーくんたちは悲しい時に涙を流してたのに、ぼくは今、こんなに幸せな気持ちなのに涙が出てる。やっぱりよくわからないよ。
さっきからね、あんなに寒かったのに、
あたたかいんだ…
ずっと一緒にいたかったよ。
君がつけてくれたRUNという名前も大好きだった。
ぼくを幸せにしてくれてありがとう。
一緒に遊んでくれてありがとう。
ぼくのために泣いてくれてありがとう。
そしてあの時ぼくを見つけてくれてありがとう…
大好きなまーくん…
ぼくは深い眠りについた………
どれだけ眠ったのだろう…
それとも一瞬だったのかな。
それさえ思い出せない。
今、目を開けているのかな。
真っ暗だ。
生きているのか、死んでしまったのか。
どこにいるんだろうか。
暗闇の中で遠くに光るものを見つけた。
その光に誘われて走った。暗くてよく見えてないけどぼくは4本の足でたしかに走っている…だんだんと辺りが見え始めて驚いた…あらゆる生き物が光る場所へと一斉に向かっていた。
そこには人間がたくさんいる。
薄暗く続く道をみんなが向かう方へと着いて行った。
光の中心に近付くとそこは大きな門だった…みんな一列に並ばされて、人のような形をした動物にそれぞれ違う入り口に案内されているようだった。
ぼくの前には人間の男。
その前にはシカ、その前はトラ、その前はネコ、サル、人間、イヌ…
後ろにもあらゆる生き物が長い列を成している。
ここでは誰も争わない。
そしてぼくの順番になって、その門番らしき生き物を見た。
人の形をした獣のような顔だ…
不思議と怖くはないんだ。ここでは見たことがない異形の生き物がいても普通に思えてしまう感覚になるんだ….
ぼくはいくつかある内の一つの扉を開けられ中に案内された。
その中は薄暗く正面には巨人のように大きい人のような男が座っている。
もう一人立っているのは女の人のようだった。
「あなたにいくつか質問します。
正確に答えるように」
驚いたのは言葉ではなく、頭の中に話しかけてきたんだ。。
「そう、これはあなたの意識に話しかけています」
「名前はRUNですね。雄犬
生命期間3年4ヶ月」
「しかし、辛い生を歩まれましたね、
ここに呼ばれたものは全て辛い生を歩んできた者たち。あなたたちは来世で幸せになる為の転生のために集まったのです」
辛い生って?
「あの、ぼくは幸せだったんです。
まーくんに出会えてとても幸せでした」
「あなたは人間のエゴによって捨てられたのです」
ちがう、まーくんはそんな人間じゃない…悪い人間がいるのは知ってる。
けどまーくんは心の優しい人間なんだ。
ぼくを愛してくれて、泣いてくれて、きっとぼくを忘れてはいないんだ!
どうしようもない理由があって離ればなれになっただけだよ。
「どんな理由があろうともあなたを捨てたことに変わりはない。3本足になったあなたをかわいくなくなったのよ」
「違う!だったらあんなに泣きはしない!
あんな悔しそうにママに怒りをぶつけない!」
「ともかく、あなたは生まれ変わるの。
大抵の生き物は人間を選択するわ」
「人間は傲慢で、自分勝手な生き物だけど、その反面で幸せを与え、与えられる生き物なの」
「ここはあなたを幸せにするための場所。あなたが望むものを叶えるところなのよ」
ぼくが望むものを叶えるところ…
じゃあ、お願いします。
もう決まっているんだ…
もう一度犬に生まれて、まーくんと走りたい。まーくんの笑顔を見たい。
まーくんに会いたい。。
「過去の選択をするのなら、残念だけど同じ経験をすることになるの。同じ苦痛に苦しめられ、筋書きは絶対に変えられないの。また捨てられてしまうのよ」
………それでもいいんだ。
「あなたはわかっていないよ。
ぼくはまーくんと一緒にいれてどれほど幸せだったか…
そこに苦痛がついてきても、やっぱりぼくはまーくんに会いたい。
まーくんと一緒に走りたいんだ」
「ふぅ…そうですか…わかりました。
…承認しましょう。
ではこちらに」
ぼくは連れられて、大きい人間の前に座った。
「さぁ目を閉じて…」
ぼくの頭に大きな手をそっと置いた。
「幸せであらんことを願っています
これは見せないでいるつもりでした。だけどまた転生を望むのでしたらこれを……………
これは貴方が息を引き取った2時間後の情景よ。。
あっ、ぼくだ!うずくまってる隣に黒猫が…
もしかして温めてくれてるんだね。ありがとう。
そこへ自転車に乗って少年がすごい勢いで入って来た!黒猫がサッと塀に飛び移る。
「あぁ、RUN!!うぅ…RUNごめんよー…ごめんよ…」
まーくん!!まーくん……………
まーくんは座りこんでぼくをひざに乗せた。
「ずっとずっとRUNに会いたかった。
ごめんよ…今のアパートで飼ってあげられなくて。
RUNが逃げたと連絡があってずっと探してたんだよ。それでこの家に来る途中にRUNの首輪が落ちていてまさかと思いここに来たんだ」
ぼくはまーくんに会えた。。
皆んなぼくはまーくんに会えたんだよ。
もう何も望まないよ。神様ありがとう……
「うわぁ………RUNごめんよ。僕のせいで僕のせいでごめんよー
息をしてよー
………………RUN……………………
もうぼくのために泣かないで…
まーくん…
君と出逢えたことはぼくの宝物。
ぼくの一生は君で溢れてる…
君と出逢うためにぼくは産まれたんだよ。
また必ず会おうね…まーくん
目をゆっくり閉じる。
なんだかすごく眠い…
ぼくとまーくんの思い出に溶けていく。。
とてもあたたかくて幸せな気持ちなんだ。
まーくん。
万物創造の神よ、あの犬はこれで3度目の転生ですよ。何度悪く言っても、また過去に戻って…
しかし私たちもまだまだ魂の根源、心のあたたかなるものの謎には理解に苦しみますね…
暗い………
ガサガサと音が近付いてくる
いきなり天井が開けられた。
真っ白な眩しい光りで輝いている…
「ママー、仔犬がいるよー。早く来てー」
その時僕の目から大粒の滴が流れていた……
完
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