美月 ~芸能界の物語~

鎌倉結希

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【芸能界 デビュタント編】 第五章 ツバサプリンセス

39 美月ドラマ出演決定

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「あの希ちゃんってさ、双子だ」
  「え?」
  「違う組にいるでしょ、だから挨拶したのは妹の渚だった。彼女たちが一緒に歩いてるのを見た瞬間に、あれ!みたいに。みんなもう知ってるから私に言い忘れたと希ちゃんが説明したの……あ、彰くん、彼女たちはどんな人ってわかる?」
  「今?」
  「写真がないけど、彼女たちはいい人かな」
  「……ただ気に入ったら付き合ってもいいでしょ」
  「そうなの。友だちになれそうだけど、東京には変な人が多いね……だってあのオーディションの人たちもそうでしょ」
  最近、映画『Tの罪滅ぼし』の学生証人役のオーディションが終わって、一緒に受けていた女子二人とどこかにあそびに行く約束をしたが、時間が来ても現れず、みんなもう消えて見えなくなった。田舎者だからか彼女たちは避けたがったと美月は思って、出身を島根だけではなく、ド田舎の又渡こうとまで言ったのがミスかとまだ後悔していた。私は言った。「希さん?彼女が初めて美月に話しかけたときってさ、芸能活動のことをまだ知らなかったね」
  「うん」
  「なら、いいよ。彼女はただ美月のことに気に入ったかも。感謝しないと」
  「本当ね」
  次の週、美月が送ったのは五人で撮ったプリクラで、その日原宿であそんでいたそうだ。真ん中の後ろに、ポニーテールの髪型の二人がその双子だそうだが、また美月に双子以外ほかの友だちの性格のことを聞かれ、みんなの顔はきらきらに合成されすぎてあまりわからなかった。
  気が合う人ならどうせ付き合えて、そうじゃないならどうしても一通りの知り合いしかなれなくてほっといてもいいと美月に言ったけど、たまに彼女は学校の人たちの写真をこっそりと撮って送ると意見を聞いた。
  私は真面目に答えたが、多分バイアスか男子なら若干のマイナス点をあげたと気がした。だけど送った写真のなかに学校の人じゃなくて、白石修二の写真ももらった。

  美月のラグーン事務所の社長は、三十代後半でもイケメンで、運動や筋トレのルーチンはみんな知っていた。この前聞いた美月とお母さんが彼と会った話に、スーツ姿で彼はさらに格好よく見えたそうで、ちゃんとポマードでヘアセットして都会の男のイメージだと美月が言ったけど、意外と彼は家で野菜を栽培するのが趣味だった。彼はまだ土のちょっとついた野菜を美月たちにあげて、実はその日に社長室に来た人にもあげたそうだ。
  彼がお母さんにくれたのはトマトとアーティチョーク以外、残っていた長芋ももらって、収穫した野菜の名前を聞くと白石社長の趣味は本格的らしい。そして美月のお母さんは『大きいですね』と言った。「大変だったよ!彰くんはそのとき一緒にいなかったから……お母さんは両手で芋を持つと大きいと言ったでしょ、二人が笑うと社長は『大きくないですよ、まだまだですね』と言って、また笑った。それはどういう意味?」
  「……大きいでしょ」
  「バカだよ!ねえ!お母さんは白石社長のことが好きじゃない?」
  数ヶ月前に白石社長との会話で集中したお母さんは、彼女のいつものことだと美月は思ったが、事務所の電話が来るとたまにかけたのは白石社長本人で、取ったお母さんが珍しくテレビも消した。そのとき私はメッセージで美月に聞いた。『でも社長は?お母さんのこと好き?』
  『わからない。基本的に彼はだれにも丁寧だと思うね、ちゃんと話を聞いて、答えて、好きだとお母さんは勘違いしちゃったかも』
  少しあと美月はまた送った。
  『お母さんはまだきれいだし、こうなったらどうしようか。意外とイケメンに敏感なんだ』
  『そう?』
  『うん、男子アイドルもファンでしょ、普通にかわいがるかと思ったのにね。多分家にいすぎたかな』

  美月の学校が開始した二週後に、彼女は初めて脇役としての撮影があるので学校を休んだ。芸能活動がバレないように彼女は友だちになんと言ったかわからないが。この出演がいい経験になると思うと、三日後彼女のメッセージでほかのオーデションに合格したとわかると、夜電話するとそれが『白いままに走る』というドラマで、だけど一般の同級生などの役ではなく、主人公だと言われた。私は聞いた。「どういう意味?」
  「わからない、間違ったかと思ったけど、工藤さんもそう言ったの……深夜のドラマでも小さいわけじゃないね」
  「全然だよ!」
  「私もそう思う……」
  深夜ドラマは十二時から放送するドラマで、よく若者向けの作品で、この時間帯にもアニメなどを放送している。そして私は聞いた。「でも深夜ドラマってさ、主役はほとんどアイドルじゃない?美月は全然知名度がないのに……いいえ、いいよ。いつ撮影するの?」
  「十一月くらい」
  「監督は美月を気に入ったかな?」
  「全然わからない。いろいろ考えたね、一つ思い出したけど」
  「なに?」
  「元主役の女優がこのドラマで聖地での撮影のせいで呪われて、急に車に跳ねられた。ほかの女優たちは知ってるから避けたけど、新人の私の役となったんだ……え?これ、面白くないの?」

  
  美月はもう女優になったか。



―――――――――――――――――――――
これは一般的な田舎から芸能界で成功する女の子のストーリーに展開するのかな…?

次は宇都宮お姉さんと彰の話です。

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