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第四章 スカウト(上)
24 中学校の卒業式に告白されても…
しおりを挟む中学三年生のとき、もし私は美月のことを先に知らなくて、友だちと笑顔でしゃべる彼女を見かけたら、彼女はほかの女の子と違わないと思うかもしれない。元気になってきた彼女がその年入院したのは一回だけだった。だが念のために彼女の両親が長く休める条件で高校を探して、結果としてそれは少し遠くの益田市の益田白成高校となった。
新しい学校に問題があるか、私は彼女と同じ学校に行きたいが、一月にそう話すと美月は答えた。「心配しないで、私は大丈夫よ」
「いじめだけじゃないけど、なんか美月にしがみつく人とか……」
「ナンパ?」
「いいえ、それはいいよ。もしもっと変な人なら、わからない。藪に引いていろいろするって」
「……そんなことあったっけ?」
私はちょっと考えた。「例えただけだ。でも安心できないね、どうしよう」
「いいじゃない?こんな感じ」
「え?」
美月は微笑んだ。「私も彰くんと一緒にいたいけど……高校のときにそんなに会えないなら、また電話できるね。あと彰くんのお陰で私はもう元気になって、なにがあっても私は戦うよ!」
学年末試験も終わり、中学校の卒業式が行われた。
どうせ進学してもこの周辺には二、三校しかないからまた同級生のみんなと簡単に会えると思うけど、卒業式に泣いていた人がいた。約八十人の生徒は学校の体育館の椅子にすわって、順に卒業証書を受け取ったあと先生たちと演壇で将来のアドバイスをもらった。学生のなかから泣き声が聞きこえはじめた。とくに校歌を歌うときに、石のように強く生きていく歌詞自体はあまり感動しないが、メロディーのせいか隣の友だちの橘も涙を流していた。そのあと私は彼に言った。「私たちは同じ学校を通うじゃない?」
彼はうなずいた。「ここには、いい記憶がいっぱいあるからね、楽しかったんだ。これからもよろしく」
式が終わったあと体育館でほかの友だちとしばらく話して、帰ろうとしたときに女子の足立に呼ばれた。二年生のときは同じ組にいて、三年生は違う組になったけど私たちは話すことがあった。合唱部の彼女は、高校でも部活を続けるつもりだと言うと、カバンからプレゼントの箱を取り出した。「これは?」
「私の気持ち……私、私は松島くん……」
「……はい」
「え、えっと」
しばらく彼女の言葉を待つと私は言った。「いいよ」
「え?」
「わかったよ」
「そっか」
体育館の裏にいた私たちは、周りにあまりだれもいないと見ると私は言った。「これ、本当にありがとう。私は足立になにもあげるものがなくてごめん……でも私たちはまた会えるでしょ。そのとき私もなんかあげるよ」
自転車に乗って帰宅する途中で開けると、それは二足の靴下だった。
うん?
四月に美月と私は別々の高校生活がはじまって、美月の通学は彼女のお母さんが運転してあげると聞いた。私の家と新しい学校は七キロ離れていて、また自転車通学なので運動だとたまに考えた。
私の学校で咲いている桜の木はわずかだったが、もらった美月の学校の写真を見ると、私立学校だからか校門の前に桜の木がならんで、ピンク色の森みたいだった。
私の学校の開始は、美月のところより少し遅かった。入学して二日目、正門から自転車を押しながら美月のメッセージを見た。『頑張ってね!』や『地獄が始まった!』と書かれていて、彼女の学校ははじまって二週目で、新しい友だちができたからこんなに明るいのか。美月にも咲く季節が来たかなと思うと、私の携帯の画面はピンク色になった……桜の花びらか。
華やかな枝から歩道に散った淡い色を見て、なぜかこの小さな花びらを落としたくない私は、携帯の画面から取ってズボンのポケットに入れた。
二、三年前に中学校をえらんだときみたいにいろんな高校を考えたが、私は又渡東高校に決めたのは紗季の影響かもしれない。岩橋中学校で紗季に誘われて私は彼女とテニス部に入部した。練習で私たちは毎日会ったし、テニス大会に私も参加して、すぐに負けたのでよく紗季の試合を応援しに行った。
いろんな部と同じように合宿があって、三年生のときなら県内の山間部のホテルで、はっきり覚えているのは朝の集合時間は六時だったけど、五時にトイレに行ったときそとは薄暗くて、でも紗季はもうジャージ姿でジョギングしていた。
紗季は冗談好きな人だが、実は勉強とアクティビティをいつも真剣にして、だからテニス部で有名、しかも三面のテニスコートがある又渡東高校は彼女にとって当然な選択だと思った。
実はほとんどのテニス部の部員はこの学校を受験していた。試験自体はそんなに難しくないから受験したあと私はあまり心配しなかった。もし紗季が電話しなかったら私はもう合格発表日のことを完全に忘れたかもしれない。「彰くん、受験番号なに?」
「待って……今何時?」
「もう八時だよ」
土曜日、彼女はもう又渡東高校にいるのか。早い。デスクの受験者カードを探して番号を伝えると聞いた。「どう?」
「……あ、合格だ!」
「そう?サンキュー」
「彰くんは嬉しくないの?また会えるよ!」
「うーん……いいね」
二度寝して十時に起きると、私はまた彼女に電話してちゃんとお礼を言った。
新しい学校の岩橋中学校より大きく、こんなに地方でも管弦楽団の演奏用ホールもあるし、サッカー場は初めて緑のを見た。高校一年生になると知らない同級生が多くて私はただ地味に日々を過ごしたかったが、ある日、だれかが書類で私の本名を見たのか、セバスチャンのミドルネームのせいで、中学校のときみたいにハーフかと聞かれた。
その上、同級生の女の子の小池は、私は『壁ドン』をよくしたかと聞いた。「壁ドン?どういう意味?」
「えっと、中川がさ、言ったんだ。松島くんは外国出身で、中学校のときに好きな人がいたら遠慮なく壁ドンもしたし、学校でキスすることもあったって。あまり信じないけど」
「……紗季が言ったの?」
「そうそう。あとは松島くんデュッセルドルフに住んでいたの?すごいね、私はドイツに行ったことないよ……ま、松島くん?」
「ドイツじゃなくて、デンマーク」
紗季!またどんな嘘をついたか!
―――――――――――――――
作家のノート
次は第四章(下)になります。登場人物たちの人生は進み、美月は芸能事務所にスカウトされると、それは社長本人からでした!美月の運命は芸能界にあるようですが、体が弱い彼女には難しい決断…
しかも、美月は上京しなければならなくなります。島根にいる彰はどうすればよいのか…
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