美月 ~芸能界の物語~

鎌倉結希

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第四章 スカウト(上)

21 ……するの?

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『怪しい』ものがあまりない私の部屋には、スヴェンの部屋みたいに女子のフィギュアもないし、週刊漫画の表紙ならグラビアは日本では常識だと思うのでそのままに置いた。だが八時を過ぎ美月は私の部屋にしばらくすわると、なぜか一番に手に取ったものはその週刊漫画だった。

開いて漫画を読むと、美月はグラビアのページも長く見て、そのグラドルが紗季ちゃんと似てないかと彼女は聞いた。「え?そう?」
「こんな笑顔ってさ、紗季ちゃんらしい……二月号?ちょっと古いね。彰くんはこのモデルさんが好き?」
「そんなことないよ」
「いいえ、聞くだけ。好きなら私も嬉しいよ。でもただ彰くんは週刊漫画じゃなくて、ほかの種類の本を読むかと思うけどさ」
「『鉄切てつぎりブレード』の続きを読みたいだけだ」
「そうなの」
「うん、なんで」
「えっと、本屋で、表紙のモデルさんが気に入ったから買ったんじゃない?」

多分表紙の撮影も二月にあって、まだ寒いからか部屋のなかの設定だったけど。このグラドルさんは十七歳でかわいくて、紗季と似てることが強いて言えば曖昧にそうかもしれないが、顔から、首、そして少し下を見ると……全然違う別人じゃないか。私は答えた。「本当に気に入っているなら、名前を覚えてネットで探索した方が写真がいっぱい出るよ」

そう言ったせいか、あとでこのグラドルさんの写真を検索するため美月は私のパソコンを借りた。怪しいファイルは簡単に見れないところに保存したが、心配した私は自分の宿題をしながらたまに彼女の方をチラッと見た。呼ばれたので、彼女と一緒にパソコンの前にすわると画面に水着とかのセクシーな写真がたくさんあって、それを見ながら彼女は言った。「ね、この写真ってさ、本当に紗季ちゃんみたいなの」
そう?「ちょっとね」
「紗季ちゃんに送ってもいいかな」
「え?」
そう言うと美月はデスクに置いた携帯を取ってこのグラドルさんを検索しはじめた。ソファに横になるポーズの写真がいいかと聞くと、私はだめと言った。「なぜ?」
「だってもし送って、紗季がどうして探したかと聞いたら、私からでしょ?週刊漫画なんて美月は読まないから。偶然、本屋で見かけたと言うの」
「あ、そうだね」
「静かにしてよ、私はもう宿題をするから」

九時、順番に私たちはお風呂に入って、一緒にパソコンでMVとほかの面白い動画を見た。実は楽しかったのでもっと遅く寝たかったが、母に叱られるかと心配したので十一時半には就寝した。美月は私のベッドを使って、そばの床に私は布団を敷いて寝て、だけどライトを消しても私たちは長くしゃべった。コンビニで発売したアボカド味のアイスから学校の友だちの話まで。もう何時かわからないけど、少し黙ると、暗闇の中で彼女はまだ起きているかと聞いた。「うん、美月は?」
「私も。なんか寝たくないね」
「そっか」
「彰くんといて嬉しいね、私は全然友だちの家に泊まったことないんだ……でもまた泊まりに来ると怒られちゃうかもね」
「大丈夫でしょ?」
「本当?」
「うん、でも次回、どうやって来れるかわからないね。美月が自分でガラスを割って、鳥がぶつかったせいにしたら?」
彼女は笑った。「ありえないよ、そんな」
「でもどうせまだ普通に会えるから、いいじゃない?」
「そう思うよ……ね、彰くん」
「うん?」
「ちょっと、顔見ていい?」
そう言われて私は向き直って、横の美月の方を向くと彼女の目と合った。「寝ないの」
「寝るよ。ただ、この前彰くんと出会わなかったら、今私はどうなっていたかと思ったの」
「……大丈夫でしょ」
「もういないかも」

そして私はゆっくりと彼女の近くに動いた。息が感じられるくらい近くで、見つめ合った私たちはしばらく笑うと、いつの間にか私は彼女にキスした。

だめだ。

この位置でちょっと唇が変だけど、まだ柔らかい……

暗いからか、現実じゃないみたい。

ちょっと私たちが離れたとき、色が褪せてグレーになった周りのものごとから美月を見ると、キスしたところは血色があって……彼女の明るい瞳が私を見ていた。

ただそれだけで、ごめんと言ってもう寝ると思うと、私たちはまたキスしていた。それで終わらずに、跪いてキスしてから私はベッドに上がって彼女の上になった。

しばらくハグとキスをすると、美月はもう私が部屋を施錠したかと聞いた。「ううん、でもいつもだれも入らないけど」
「そう?なんか疑って、確認したがるじゃない」
「かもね」

施錠するのはもっと怪しいんじゃないのかな……。

だれもいなかった。この部屋で私たちは朝まで時間があるかと思うと、パジャマとして着ている彼女のTシャツをさわるときに、身体が細いってわかっていたけど、なぜ今その細さで私はこう感じたのか。だめだ。寝ないと、でもここ……だれも来ないから大丈夫じゃないかな。一緒に寝て、朝起きて彼女の笑顔を見たらもう十分だと思ったが、私の手は彼女の髪の毛を撫でてからTシャツの下に入って、しばらく素肌に躊躇するとゆっくりと引き上げた。

窓からのほのかな明かりで私は、彼女の顔から下がり白かクリーム色かのブラを見て、それは胸の部分だけのタンクトップみたいだった。すると美月の声が聞こえた。「……するの?」

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