美月 ~芸能界の物語~

鎌倉結希

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第四章 スカウト(上)

19 ファーストキス

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その日は、なんとか逃げて美月を無事に家まで送ったが、次の朝、私は職員室に呼ばれ先生が厳しい顔で待っていて、期待した通りに叱られた。夕方も呼ばれ、今度は別の部屋で校長先生とほかの知らない先生と、菅野と彼女のお母さんもいた。菅野を見ると彼女の目の周りは、大きなアザになっていた。そしてお母さんは長広舌で続けた。「私は岩橋に期待していましたが、こんな不良が反乱したらどうやってみんなは勉強できますか」

……それは私の台詞じゃないか。

妙に菅野のスカートは普通に膝下まで長くなって、髪の毛もちゃんと結っていた。お母さんのネックレスは派手な色の石があったせいか、彼女の話より私はそれに集中した。私はぺこぺこと頭を下げていると、彼女は先生に私が外国出身なので暴力に慣れて、しかも日本の文化がわからないせいでこんなことをしたと言った。「日本の社会は繊細ですね。昔からみんなは自分の役割を頑張って、協力するわけで世界的に知られる美しい国となりました。それは簡単にわかることではないかもしれませんが」

私に相当な処罰を与えると先生は菅野側に約束をすると、みんな帰ろうとしたときに、怒ったせいか私はふと言った。「悪いことは目の前にあるのに、見ないふりをしますね。それが自分の原因でもほかの人のせいのように言うなんて、これは日本の美しい文化ですか」

先生たち、菅野とお母さんがこっちを見ると私は続けた。

「もうどのくらい長く続いているのか、このいじめって。浅井は死ぬほど精神が悪くなったのに、だれもなにもしません。逆に菅野さんのことは先生たちは早く対応して、この学校のいじめを応援していますか」
「いえ、そんなことないよ、松島くん」
そう校長先生は言ったが、私は無視した。「先生、もしいじめはいいなら、私もそうしていいですか。私が先輩のデスクに毎朝砂をかけたらどう思いますか。仲間なら私もいますよ、一緒に先輩に嫌がらせをしてもいいでしょう。今までの浅井のことで学校は平気なら、私もやって問題がないですよね」
「浅井くんのことって、私は見逃さなかったよ。落ち着け。君の理由も私たちは考えるから」
そして校長先生に私はお辞儀した。落ち着いてきたが、部屋を出る前に私は菅野の方に向くと言った。「ね、私は怖くないです。浅井のために、暴力や違法なことをするのが必要なら、私はなんでもしますよ」

彼女は少し私を見ると急いで出た。

実は彼女とその仲間に直面する勇気なんてなくて、ただのはったりで脅かすためそれを言ったが、本当に信じたかもしれない、そのあと美月に対するいじめはもうないらしかった。

学校は私の母を呼んだ。大変に謝って、私をちゃんと躾けると深刻そうに先生たちに言ったが、一緒に車に乗って家に帰ると彼女はなにも叱らなかった。「彰くん」
「はい」
「またなんかあったら、力を出すことを遠慮しないでね」

と母は冷静に言った。

職員室の話をだれも知らないと思ったけど、多分先生から聞いたか、ある夜に美月は電話で長く私を叱った。無謀なことをして将来に影響があるかもしれないという叱責に、私は将来なんてないと答えた。「どういう意味?」
「私は、ここに来たくなかったって、言ったでしょ」
私は前のパソコンをいじりながら、美月に答えた。「うん。でも来たからさ」
「……自分はここの人になるなんて、そんなに思えない」
「日本のことにまだ慣れてないね」
「だれが慣れてくるか」
「え?」
「君がいなくなっても平気でいる国なんて、どんなところか」
「……ごめんね」
「ごめんじゃないよ。ただ君に悪いことなんて起こってほしくないの……私ね、あまりしたいことがないから、美月の役に立てたら嬉しいよ」
「だめよ。私のこと……考えてほしくないの」
「なんで」
「私も、私のせいで、彰くんが苦しくなるのなんて見たくないよ」


私は美月が大丈夫になってほしいだけなのに、なぜこんなことをしていたのか。

十月かな、電車に乗って初めて一緒に映画館に行ったときにたまに美月は私と手を繋いだ。それはただこの前のハグみたいな親しみからかと思うと、よく私の家にあそびに来た彼女とある土曜日に二人で宿題をしながら、顔が近かったせいか、私たちはキスした。

……これはキス?

なにか特別な感じより、ただ彼女の唇はやわらかいと思っていた。いつか彼女は退屈になって離れると期待したが、まだそのやわらかさを感じて、彼女からの香も微かに嗅げた。

本当に美月か?

そのあと私たちは離れた。しばらく黙ると私は言った。「ごめん」
「い、いいえ」

告白する前に、もうキスしたか。恋文をあげたり、廊下で呼ぶと二人きりになるときに『付き合ってください』と言ったりして、学校でほかの人たちは交際しているじゃないか。今さら私が告白なんてしたら彼女になんと見られるか。「わ、私は……」

「彰くんのことが好き」

え?

そばにすわっていた彼女は私を見なかった。声が弱かったのでひとり言を言うみたいに、彼女は続けた。「彰くんは……私のことが好きじゃないと思うけど」
「え、そんなこと」
「私、ずっと彰くんのことを思って……恥ずかしいけど、もし彰くんはもう私と会いたくないならいいよ」
「いえいえ!私も美月のことが好きだ」
「本当?」
「うん」
彼女は眉をひそめた。「で、でも、松島くんは紗季ちゃんのことが好きじゃないの?だって彼女の写真がそんなにあったから」

え……

一週間前くらい、料理をするのが好きだからその日の放課後美月は夕食を作って、出来上がったかき揚げの写真を撮るため彼女は私の携帯を借りると、フォルダを開いたときにSNSからの紗季の写真が数枚あった。私は削除し忘れていてそれは、なに用か説明できない私は、ほかの友だちの写真もあると弁解すると、紗季の写真はなんかかわいいのばかりあると美月に言われた。

またこの話を持ち出しか、私は答えた。「だって、もしこれが美月の写真ならもっとまずいよ!」
「え、そんな写真って、会いたいと思うときに見るためじゃないの。なんかカップルみたい」
「いいえ、ちょっとあのとき……だけ」
「いつ?」
「……お、お、おと……」
「お、なに?」
「……男が」
「男」
もう聞かないでよ!「なんでもないよ!美月、私と付き合ってくれない?」
「え?」
振り向くと、彼女は私を見ないまま答えた。
「付き合いたくないよ」

そう聞いて、多分意味がわかる前に私の心は空白になったようだった。なにを答えたらいいかと考えると、美月はそんなことじゃないと私に早く言い直した。「どういう……?」
「私は彰くんと会いたいけど、そろそろもういないから、彰くんはほかの人と付き合った方がいいんじゃないかなって……私にはなんでもいいけどさ」
「美月は元気だよ!」
「いいえ……だから私たちはこのままで、どうかな」

美月はそれを本気で言ったら、多分『好き』って、前みたいに一緒にいたい感じかなと思った。二人きりでなんでもしゃべれて、なにしても大丈夫で楽しかった。もし男女の関係にしようとしたら私の身勝手なことじゃないか。

もう彼女に触れないつもりだったが、三日後また美月と彼女の家の周りで花を探しながら、だれもいない隙にしばらく見合うと私はまた彼女にキスした……



――――――――――――
作家のノート

―「君がいなくなっても平気でいる国なんて、どんなところか」

彰の台詞は普通に受け取ってもいいし、または美月が人ではなく神様で、『日本』自体の意味として、この『神様』を見捨てるのはどのようなところか、という意味にも取れます。(彰は外国人のよう感性で『美月』を見ることができるのに、なぜ菅野などのキャラみたいに見られないのか、ということです)

ここでの『神様』や『日本』は本来よりも広い意味で使われています。この先、その意味が明らかになっていきます。

『お、男』のパーツは偶然思いつきました(笑)
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