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第四章 スカウト(上)
17 学校で美月は私を知らないふりをする
しおりを挟む四月、私の学校生活がはじまった。
いろんな選択のなかに、東京の林ヶ坂学校と浜田市にある有名な学校も考えて、どっちもエスカレーター式だが、友だちの紗季と美月と一緒にいたいと私は主張したから、結局母は岩橋中学校をえらんだ。
帰国子女の私は年齢に相当する学年に編入した。中一をスキップしたおかげで、私は彼女たちと同じ二年生になった。
いつも私服で学校に通っていた私は、ワイシャツとブレーザー姿は初めての経験だった。その制服をもらった日、洗濯する前に着てみるとヘリーンさんやリッケとほかの友だちに写真を送った。それをもらったスヴェンなら私は一、二話目くらいじゃないかと返事した。『なんの話?』
『アニメってさ、これは学校がはじまるシーンでしょ。あとセブはぎこちなく歩きながらなんかの部に誘われて、すると一緒にインターハイに行く』
『これは中学校だよ!』
周りの同級生たちを見ると一年生のときか、多分小学校の時からの知り合いらしい。朝、席にすわると、楽しそうにしゃべっていた彼らに私が入る隙間があるかと考えていた。初日にくじ引きで後ろの窓際の席になると決まった。実は転校生として自己紹介をしたときに、もし先生が『セバスチャン』の名前を読まなければ、私はこんなに注目されなかったかもしれない……「ハーフ?」
「うそ!」
「言ったでしょ!」
そう教室にみんなの声が低く聞こえて、私は日本人だと言った。「この前ずっとデンマークにいて、日本のことにまだ慣れていないですけど。よろしくお願いします」
なんか妙に見られる感じがあったが、私は無事にはじめの二つの授業をこなした。昼は静かに過ごそうと考えながら、私はちょっと離れた机の女子の石田に話しかけられた。いろんなことを答えながら彼女の二人の友だちも参加して、すると私は紗季の友だちじゃないかも聞かれた。「えっと、写真を見たね。あれは松島くんでしょ?」
「え、はい」
「紗季と交際してる?」
は?「ううん」
彼女たちは見合った。「やっぱり!紗季ちゃんはいつも勝手なことをしていたんだ。だめよね。構わないなら松島くんは私たちと友だちになってもいいよ」
「え?」
多分先生が私の日本語はまだ上手くないと思ったかもしれない、国語の科目でよく朗読させた。ミスは当然に多く、でも厳粛な作で『腕』を『胸』と読んで、『合間』も『谷間』と読んだのは、次の日に盗み笑いしそうな人がいた。教科書だと知らない言葉が多くて、いつも隣の人に聞くのはなんか彼が面倒だと思うから、空いているときに語彙を増やすため小説を読んでいた。ある朝、読んでいた本にある『にほー』の意味を友だちに聞くと、それは『にまー』だと彼に言われた。ずっと私は『ま』と『ほ』を間違っていたとわかると、急に『にほー』は私のニックネームになって松島の代わりにそう呼ばれた。しかし、一、二週間経って、みんなはよく聞いたせいか『にほー』は私への揶揄より蔓延して、気づいたら廊下を歩くと……「にほー!今日一緒にあそぼ?」
男子は友だちに言った。もう挨拶の言葉になったか。
たまに紗季に会うため、私は自分の2年B組から隣の2年A組に行ったが、美月に頼まれたのでその組にもいる彼女といつも知らないふりをした。よく美月は一人ですわって、昼に2年A組の前を通るとお弁当も彼女は自分だけで食べていた。想像と違って彼女は同級生と明るくしゃべらない。それに、ある日廊下で美月の後ろを遠くから歩いていると、彼女とすれ違った三年生の女子たちが悪口を言って笑った姿を見かけた。
そのことについて美月は言いたくなさそうだけど、答えを迫るとこういう状況になったのは去年からだった。その前、今三年生の北原という男子は美月と知り合って、誘われたから一緒に下校したりどこかへあそびに出かけたりしていた。彼のことが好きな三年生の菅野という女子に憎まれた。直接、脅迫されたし、デスクに砂もかけられて、いろんないじめがあった。そして美月は言った。「大丈夫よ、彰くん。今あまりなにも起こらないから」
北原って、前にピクニックしていたとき美月にメッセージを送った『シゲ』という人じゃないか。彼と一緒に出かけたことがある?だから私とこんなに平気で会えたのか。彼とキスしたことあるかな……
その瞬間、妙に想像したのは美月のその緑、草むらのどこかに横にして、本当?って彼女は聞くと、あの北原は優しくしてあげるよって答えて、ゆっくりとキスすると……
バカ!なんであんなくだらないこと!
真剣な口調で私は言った。「でも、学校側はなにもしてないの」
「あ、もう先生に話したけど」
「それだけ?処罰とかは、ない?日本でいじめなんて普通じゃないでしょ」
「なんか、いろいろ……難しいね」
キスしたことあるかって聞きたかったが、もし彼女が恥ずかしそうにはいと答えたら、もう優しくされたじゃないかと思ったけど……
美月の家の周りを散歩しながら、私たちは話した。難しいってなんという意味かって、母にこのことを相談してみると、いじめた子を通報するのは簡単にできるけど、保護者に訴えられる問題になった例もあるし、さらに厳しい手段を取ったらいじめがエスカレートする可能性もあるのでいろんな学校は本当に事件にせず、和解するようだ。「……『和解』というと、彰くんは意味わかる?ちょっとここの用語だけど」
私は答えた。「え、両方に、問題にならないようにする、そんなことですか」
「ううん、なにもしないことだ」
「え?」
「それは日常のことだと見たら、なんか対応するのは必要ないでしょう。こういう風に社会は穏やかだ」
「……バカじゃないですか」
母はしばらく考えると言った。「バカだね」
もし大人でも『和解』するなら、美月の事情はこのまま続いたら私もなにもしないかもしれない。だが四月末の放課後、グラウンドで美月はいじめっ子たちにかこまれているところを見かけて、通った人は多いけどみんな無視するように歩いていた。遠くからしばらく見るとまだ彼女たちは解散しないので、私は美月に近づいて彼女の後ろから言った。「家に帰らないの、浅井」
そう大きな声で言うと私は三年生の女子のみんなに見られた。なにしたらいいかと考えながら、なぜかその瞬間私は美月のショルダーバッグを引っ張って歩かせた。彼女たちと離れようとしたときに後ろから呼ばれた。「待って、あんたはあの転校生?」
「はい」
彼女は元凶の菅野だった。結っていない髪の毛は背中くらい長く、逆にスカートは太ももの半分より短くて、実は彼女の仲間もそんな姿だった。そして彼女は言った。「あなたのことを聞いたね。彼女のことも好き?」
「いえ、ただ通っただけです」
彼女はうなずいた。「そう、いいね、バイバイ」
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作家のノート
静かな町に、実は問題が醸し出していた。美月に今までなにがあったのだろうか。
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