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§ メスお兄さんと、セックスしないと出られない部屋【5】

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 あまねは椅子の脇に置いたサコッシュからハンカチを取り出し、右手を拭った。だが、ハンカチを仕舞った後から腕に飛んだ飛沫に気づく。

「ああ……こんなとこにも」

 あまねは右腕を顔の前に持ってくると、白い残滓をぺろりと舐め上げた。赤い舌との対比がなまめかしくて、るり花はくらくらしてしまう。

「ありがとう、るり花さん」
「……は、はい」

 あまねは微笑み、ふたたび椅子に腰掛けた。
 そして、こう尋ねた。

「ねぇ、ぼくのオナニーを手伝ってくれた、ってことは、気持ち悪いとか汚らわしいとか思ってないってことだよね?」
「え?」

 意外な言葉に瞳をしばたかさせたるり花に、あまねは薄く微笑んで視線を合わせた。

「……ほんとはね」

 息をつくとともに、言葉を吐き出す。

「さっきはきみを発情させるなんて言ったけど、ほんとは……こんな姿を見せることに自信はなかった。ぼくは少し他の男とは違うし、嫌悪されたらどうしようって……」
「そんな」

 確かにあまねは男にしては線が細く、行為の際も色っぽいが……。

「でも、よかった。……ありがとう。きみとセックスできなくても、きみがぼくの本性を嫌がらなかった、それだけでぼくは満足だよ」
「……」

 あまねはボトムを引き上げるとジッパーを締め、ベルトに手をかける。
 るり花はぎゅっと掌に力を込め、握りしめた。そして、意を決して口を開く。

「だったら」
「え?」
「……だったら、私も満足させてください。一人だけ満足してそれきりなんて……ずるいです」

 るり花はあまねの色素の薄い瞳をしっかりと見つめ、自らの想いを伝える。

「るり花さん……」
「発情させるだけさせておいて、ほったらかしなんてどうかしてます。責任……とってください!」

 立ち上がりかけたあまねの胸に、るり花は飛び込んだ。
 あまねはるり花をしっかりと抱き留め、その背に手を回す。

「るり花さん」
「私とセックスしてください。してほしいんです……」
「るり花さん……!」

 るり花を抱きしめたあまねは、そのまま彼女を床に座らせた。
 そしてブラウスに手をかけ、ボタンを外してゆく。次に、背中に回した右手で器用にブラのホックを外したところで、るり花が声をあげた。

「あ……っ」
「なに? るり花さん」

 るり花はためらいがちに瞳を揺らした。だけどその後、目を伏せたまま尋ねる。

「あの……私、イけなくてもいいですか?」
「どういうこと? ぼくは、きちんとイかせてあげられると思うけど」
「……その……」

 るり花が話し出すまで、あまねは行為を中断して待ってくれた。その気遣いにるり花は安堵して、自らの過去を話し出す。

「私、セックスでイけないんです」

 あまねは軽く目を見開く。そして言った。

「てことは、オナニーではイけるってこと?」
「……っ」

 るり花は耳まで真っ赤にしたが、やがてこくりと頷いた。

「……そうなんだ。でも、イけないとだめなの?」
「え?」

 るり花は驚いて顔を上げる。

「そりゃあね、イけたほうが気持ちがいいよ。でも、イけなきゃセックスじゃないってわけじゃないし、ぼくは気にしないよ?」
「……っ」

 息を呑み瞳を潤ませたるり花に、あまねは眉根をひそめる。

「……もしかして。今まで、嫌がられたことがあるの」

 るり花は元カレとの一件をあまねに話し出す。

 初めての相手でもある元カレの家に泊まったある夜。セックスをしてもイけないるり花はつい、彼が眠った後にオナニーをしてしまった。果てたるり花が絶頂の余韻に浸っているところで、突然起き上がった彼に怒声を浴びせられたのだ。

『は? お前、ちゃんとイけんじゃん。俺とのセックスの時はどうして……俺が下手だって言うのかよ!!』

 それが原因で、るり花は彼と別れた。その後は怖くて、男の人と付き合っていない。

「そっか……。馬鹿な男だね。こっそりとはいえ、女性が自分の隣でオナニーしてくれるなんて、よっぽど信頼されてると思うんだけど」
「……」
「大丈夫だよ、るり花さん。嫌になったらやめてもいいから、ね」
「はい」
「だから、ぼくとセックスしよう」
「はい……」

 上体を倒されたるり花の喉元に、あまねが口づける。鎖骨の窪み、胸の谷間……そして、勃ち上がった胸の尖りに。
 そのたびに脚の付け根の秘められた場所が甘く疼いて、るり花はせつない吐息を漏らした。

「……ふふ。るり花さん、ぼくのおちんちん触って、興奮しちゃったんだ」
「だ、って……っ」
「かーわいい。すごくえっちで……素敵だよ」

 乳首をくりくりと弄りながらそんなことを言われて、身体の奥からとぷりと蜜が溢れるのを止められない。

「は……あん、あは……ん、ふぁ……っ」

 あまねが赤い舌を出して、るり花の膨らんだ乳首をちろちろと愛撫する。熱く湿った感触が堪らなくて、るり花は腰を仰け反らせた。

 はやく――欲しい。

「下に……欲しい?」

 あまねの問いに、るり花は必死に頷いた。はやく、るり花の熱く蕩ける場所を弄ってほしい。愛してほしいのだ。

 あまねがスカートの中に手を差し入れ、下着に手をかけた。
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