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§ メスお兄さんと、セックスしないと出られない部屋【3】
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「すみません、覚えてなくて」
謝るるり花に鷹揚に頷くと、あまねは説明を始めた。
「ぼくが十五歳の時だから、きみは七歳か八歳かな。ぼくの家にきみが泊まりに来たんだよ」
「そういえば、たっくんの家に――枳さんのお家にお邪魔したことがあったような……」
「うん。ぼくはよく覚えてる。印象的な出会いだったから」
「そう、なんですか……」
るり花は枳家に泊まりに行ったことさえ、今の今まで忘れていたのに。
「きみにとってもぼくは印象的だった筈なんだけどね。……まあ、覚えてないほうがいいよねぇ」
「え?」
あまねは苦笑いに載せて語った。いったいどういうことだろう。るり花は続きを促すが、彼はそれ以上を話す気はないようだった。
「……じゃあ、しよっか」
「え? 何を?」
「だから、セックスでしょ」
「……!!」
るり花がさらに後じさると、あまねは肩をすくめてため息をついた。
「もしかして、たっちゃんに悪いから?」
「どうしてそこでたっくんが出てくるんですか!?」
あまねは意外そうに目を見開き、言った。
「たっちゃんのこと、好きなんでしょ?」
「ちっ違います!」
「そうだったんだ。たっちゃんは、きみがすぐくんを好きだと思ってるみたいだけど」
すぐくんというのはたつるの次兄・すぐるのことか。
「どっちも違います!」
「そうなんだ」
あまねは安堵したように息を吐き出した。
「良かった。さすがのぼくも、弟の恋人と寝るのはどうかと思わないでもないし、ね」
「いやだから、なんで寝……っ、るの、前提なんですかッ!」
「だって、出られないと困るし。……ああそうだ」
あまねが一歩、るり花に向かって踏み出す。
「るり花さん、ぼくたちが初対面同然だから嫌なんだよね。じゃあ、恋人同士だったら?」
「え……そ、そりゃ、考えなくもないですけど……」
るり花たちを閉じ込めた『犯人』に監視されてるのだと思うと怖じ気づくが、他に手段がないのであれば仕方がない。ふたりが恋人同士であったのなら、るり花だって行為を承諾せざるを得なかっただろう。
「じゃあ簡単だ。るり花さん、ぼくと恋人同士になってくれませんか」
「えええ!?」
目を白黒させるるり花にあまねはさらに近づき、手を差し伸べた。
「大丈夫だから……怖がらないで。きっと、気持ちよくしてあげられるよ」
「……っ」
ぶんぶんと首を振るるり花に、あまねは哀しげに微笑み、言った。
「どうしても、嫌?」
るり花が頷くと、あまねは差し出した手を引っ込めた。
「……そっか。仕方がないね」
気落ちしたように呟き、そして彼は辺りを見渡して椅子を見つけ、そこへ腰を下ろした。
「……あの」
「ん?」
「ごめんなさい……。本当にそれしか手段がないって、私もわかるんです。でも……もう少し、考えさせてください」
るり花はなんだか彼をとても落胆させてしまった気がして、謝った。
あまねは、この部屋から出る手段としてだけでなく、るり花と行為をしたがっている――そういう風に、感じられたのだ。
「そうだね。うーん、締め切り、大丈夫かな」
「締め切りって?」
「ああ、うん。ぼく、シナリオの仕事をしてるんだよね」
「シナリオ?」
「うん、ライターなんだ。締め切りは明後日で、まだ時間はあるんだけど……その前にしなきゃならないこともあるし」
息を吐き出しながら、あまねは語った。その後彼は口をつぐみ、密室に沈黙が落ちる。
だがしばらくして、あまねが口を開いた。
「るり花さんが、したくなるようにしちゃおっかな」
「……え?」
「きみが、ぼくとセックスしたくなるようにしてあげる」
「そんなこと、できるわけ……きゃっ」
あまねがおもむろにトップスを脱ぎ始めたので、るり花は悲鳴をあげる。だがあまねは気にせずに左手を抜き、右手も抜き……Tシャツをすっかり脱ぎ去ってしまった。
――仄明かりに、なめらかな白い素肌が曝される。いっさい脂肪の載らない薄い胸板が、ぷっくりと膨らむ桃色の果実で飾り付けられ、そのさまは扇情的でさえあった。
「な、何してるんですか……」
るり花はとっさに目を閉じたが、あまねの最小限の筋肉に覆われたすんなりとした肢体は、すでに瞼の裏に灼き付いてしまっていた。
とても年上の男性だとは思えないほどにあまねの半裸は美しく、そして色っぽかったのだ。
「きみに、発情してもらおうと思って」
「そっ……、し、しませんって」
「……ふふ、どうかな……」
あまねの声音が艶を帯びてきて、るり花はさらに固く目を閉じた。
(見えないから関係ない、関係ないったら……っ)
「ん……」
だがあまねが甘い吐息を漏らし始め、るり花の耳を犯してゆく。そして。
「……ん、は……っ、あァ……っ」
あまねは明確に喘ぎ始めた。室内の温度がぐっと上がったように感じられ、るり花は頬を上気させる。
「気持ち……いいよ、るり花、さん……っ。きみも、一緒に……」
(何してるの、何してるの、何してるの――ッ!!!!)
「るり花さんは、オナニーってする……? ぼく、かなり小さい頃からオナニーしてて……。気持ちいいこと、大好きなんだよね」
「……!!」
謝るるり花に鷹揚に頷くと、あまねは説明を始めた。
「ぼくが十五歳の時だから、きみは七歳か八歳かな。ぼくの家にきみが泊まりに来たんだよ」
「そういえば、たっくんの家に――枳さんのお家にお邪魔したことがあったような……」
「うん。ぼくはよく覚えてる。印象的な出会いだったから」
「そう、なんですか……」
るり花は枳家に泊まりに行ったことさえ、今の今まで忘れていたのに。
「きみにとってもぼくは印象的だった筈なんだけどね。……まあ、覚えてないほうがいいよねぇ」
「え?」
あまねは苦笑いに載せて語った。いったいどういうことだろう。るり花は続きを促すが、彼はそれ以上を話す気はないようだった。
「……じゃあ、しよっか」
「え? 何を?」
「だから、セックスでしょ」
「……!!」
るり花がさらに後じさると、あまねは肩をすくめてため息をついた。
「もしかして、たっちゃんに悪いから?」
「どうしてそこでたっくんが出てくるんですか!?」
あまねは意外そうに目を見開き、言った。
「たっちゃんのこと、好きなんでしょ?」
「ちっ違います!」
「そうだったんだ。たっちゃんは、きみがすぐくんを好きだと思ってるみたいだけど」
すぐくんというのはたつるの次兄・すぐるのことか。
「どっちも違います!」
「そうなんだ」
あまねは安堵したように息を吐き出した。
「良かった。さすがのぼくも、弟の恋人と寝るのはどうかと思わないでもないし、ね」
「いやだから、なんで寝……っ、るの、前提なんですかッ!」
「だって、出られないと困るし。……ああそうだ」
あまねが一歩、るり花に向かって踏み出す。
「るり花さん、ぼくたちが初対面同然だから嫌なんだよね。じゃあ、恋人同士だったら?」
「え……そ、そりゃ、考えなくもないですけど……」
るり花たちを閉じ込めた『犯人』に監視されてるのだと思うと怖じ気づくが、他に手段がないのであれば仕方がない。ふたりが恋人同士であったのなら、るり花だって行為を承諾せざるを得なかっただろう。
「じゃあ簡単だ。るり花さん、ぼくと恋人同士になってくれませんか」
「えええ!?」
目を白黒させるるり花にあまねはさらに近づき、手を差し伸べた。
「大丈夫だから……怖がらないで。きっと、気持ちよくしてあげられるよ」
「……っ」
ぶんぶんと首を振るるり花に、あまねは哀しげに微笑み、言った。
「どうしても、嫌?」
るり花が頷くと、あまねは差し出した手を引っ込めた。
「……そっか。仕方がないね」
気落ちしたように呟き、そして彼は辺りを見渡して椅子を見つけ、そこへ腰を下ろした。
「……あの」
「ん?」
「ごめんなさい……。本当にそれしか手段がないって、私もわかるんです。でも……もう少し、考えさせてください」
るり花はなんだか彼をとても落胆させてしまった気がして、謝った。
あまねは、この部屋から出る手段としてだけでなく、るり花と行為をしたがっている――そういう風に、感じられたのだ。
「そうだね。うーん、締め切り、大丈夫かな」
「締め切りって?」
「ああ、うん。ぼく、シナリオの仕事をしてるんだよね」
「シナリオ?」
「うん、ライターなんだ。締め切りは明後日で、まだ時間はあるんだけど……その前にしなきゃならないこともあるし」
息を吐き出しながら、あまねは語った。その後彼は口をつぐみ、密室に沈黙が落ちる。
だがしばらくして、あまねが口を開いた。
「るり花さんが、したくなるようにしちゃおっかな」
「……え?」
「きみが、ぼくとセックスしたくなるようにしてあげる」
「そんなこと、できるわけ……きゃっ」
あまねがおもむろにトップスを脱ぎ始めたので、るり花は悲鳴をあげる。だがあまねは気にせずに左手を抜き、右手も抜き……Tシャツをすっかり脱ぎ去ってしまった。
――仄明かりに、なめらかな白い素肌が曝される。いっさい脂肪の載らない薄い胸板が、ぷっくりと膨らむ桃色の果実で飾り付けられ、そのさまは扇情的でさえあった。
「な、何してるんですか……」
るり花はとっさに目を閉じたが、あまねの最小限の筋肉に覆われたすんなりとした肢体は、すでに瞼の裏に灼き付いてしまっていた。
とても年上の男性だとは思えないほどにあまねの半裸は美しく、そして色っぽかったのだ。
「きみに、発情してもらおうと思って」
「そっ……、し、しませんって」
「……ふふ、どうかな……」
あまねの声音が艶を帯びてきて、るり花はさらに固く目を閉じた。
(見えないから関係ない、関係ないったら……っ)
「ん……」
だがあまねが甘い吐息を漏らし始め、るり花の耳を犯してゆく。そして。
「……ん、は……っ、あァ……っ」
あまねは明確に喘ぎ始めた。室内の温度がぐっと上がったように感じられ、るり花は頬を上気させる。
「気持ち……いいよ、るり花、さん……っ。きみも、一緒に……」
(何してるの、何してるの、何してるの――ッ!!!!)
「るり花さんは、オナニーってする……? ぼく、かなり小さい頃からオナニーしてて……。気持ちいいこと、大好きなんだよね」
「……!!」
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