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§ メスお兄さんと、セックスしないと出られない部屋【1】
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「るり花!」
大学内の廊下でたつるに声をかけられたのは、一時限目の講義が終わった頃だった。
「今日の昼メシ、一緒にどうだ? あま兄ぃも来てるし、三人でメシ食おうぜ」
るり花の幼なじみで同級生の枳たつるが、人懐っこそうな笑みを浮かべてるり花を見下ろしている。
「あま兄ぃって……」
「あまね兄ちゃん。るり花、子どもの頃以来会ってないよな。今は休学してるけど、あま兄ぃもウチの大学の学生なんだ。今日、学生課に用があって登校してるから……」
るり花は軽く首を傾げた。
幼なじみで同級生のたつるの長兄・あまねの名前は知っているが、どんな人物だったのか覚えていないくらい縁遠いのだ。たつるの次兄・すぐるもこの大学に院生として籍を置いており、まだすぐるのほうがるり花にとっては馴染みがある。
「すぐるさんも一緒?」
だから、るり花は何の気もなしに尋ねた。だがたつるは僅かに眉を潜め、声を荒げる。
「……っ、すぐ兄ぃのことはどうだっていいだろ! ……あ、いや……」
るり花が驚いたのを見て、たつるはすぐに語調を弱めた。そして頭に手をやり、ばつが悪そうに軽く髪を掻き混ぜる。
「悪い。……昼に迎えに来てもいいか?」
「うん」
「ありがとな。じゃ、また後で」
るり花が頷くと、たつるは一笑したのち手を振り去って行った。そしてるり花も、二時限の教室に向かって歩き出したのだった。
♂ ♀ ♂ ♀
二時限目の講義が終わり、正午過ぎ。
「なんで出ないんだよ、あま兄ぃ。既読もつかないし……」
たつるがスマホを片手に、ため息をつく。
午前の講義が終わったのち、るり花を迎えに来たのはたつる一人だった。どうやらあまねに連絡がつかないらしい。
「俺、ちょっとあま兄ぃ捜してくるわ。悪いけど、少し待っててくれ」
たつるはるり花を学食の前で待たせ、あまねを探しに行った。
ひとりになったるり花は、なんとなく自らのスマホを取り出す。その時、丁度通知が届いた。
画面上で指をスライドさせ、メッセージアプリを開く。そこに表示された差出人に、るり花は思わず目を見開いた。
『差出人:あまね
本文:至急、実験棟の地下、階段すぐの部屋に来て欲しい』
(……!? あまね……さん? どういうこと?)
るり花は『あまね』とメッセージアプリでフレンドになった覚えはない。どういうことだろう。
だけどるり花はしばらく、そのまま学食前に佇んでいた。このメッセージはあまりにも怪しすぎる。たつるが戻ってきたら相談しよう。
しかし、十分ほど待ってもたつるは戻らない。メッセージを送っても既読がつかず、通話も繋がらなかった。
何か、二人ともトラブルに巻き込まれでもしたのだろうか。
(このまま待ってても、お昼休み終わっちゃうし……、学内で危ないこともないよね)
るり花はそう結論づけ、スマホをバッグに仕舞ってから実験棟に向かい早足で歩き出したのだった。
♂ ♀ ♂ ♀
実験棟の地下に辿り着いたるり花は、部屋のドアを叩いた。
「どうぞ」
すると、内部から返事があった。るり花は恐る恐るドアノブを回し、室内へと足を踏み入れる。
窓のない部屋の中だが、きちんと照明で明るく照らされていた。
そこに佇むのは細身の男性だった。長めの髪は襟足が肩につき、振り返ったその顔立ちはなんとも中性的だ。
だが、肩幅があるし胸も薄っぺらく、女性ではありえない。
「るり花さん?」
男性が小首を傾げる。男らしくない仕草だが、不思議とオネエっぽさは感じられなかった。
「はい。あの……あ、あまねさんですか?」
「うん」
あまねだという男性が頷いた、その瞬間だった。
背後でカチャリと音がし、後ろ手にドアノブにかけたままだったるり花の手に、衝撃が伝わる。
この音は――……
「もしかして」
るり花はぎくりとして振り返る。ふたたびドアノブを掴み、回してみる――否、回せない。
(そんな、まさか)
「どいて、るり花さん」
あまねが進み出てるり花と位置を変わった。彼は細く長い指でドアノブを掴み――るり花はその時既視感を覚えたが、それがなんなのか思い出せなかった――そして力を込めて回そうとした。
だが、ドアノブはびくともしない。
あまねはあっさりと諦め手を離し、お手上げというように肩をすくめた。
「鍵をかけられた。どうやら、ぼくたちは閉じ込められたみたいだね」
大学内の廊下でたつるに声をかけられたのは、一時限目の講義が終わった頃だった。
「今日の昼メシ、一緒にどうだ? あま兄ぃも来てるし、三人でメシ食おうぜ」
るり花の幼なじみで同級生の枳たつるが、人懐っこそうな笑みを浮かべてるり花を見下ろしている。
「あま兄ぃって……」
「あまね兄ちゃん。るり花、子どもの頃以来会ってないよな。今は休学してるけど、あま兄ぃもウチの大学の学生なんだ。今日、学生課に用があって登校してるから……」
るり花は軽く首を傾げた。
幼なじみで同級生のたつるの長兄・あまねの名前は知っているが、どんな人物だったのか覚えていないくらい縁遠いのだ。たつるの次兄・すぐるもこの大学に院生として籍を置いており、まだすぐるのほうがるり花にとっては馴染みがある。
「すぐるさんも一緒?」
だから、るり花は何の気もなしに尋ねた。だがたつるは僅かに眉を潜め、声を荒げる。
「……っ、すぐ兄ぃのことはどうだっていいだろ! ……あ、いや……」
るり花が驚いたのを見て、たつるはすぐに語調を弱めた。そして頭に手をやり、ばつが悪そうに軽く髪を掻き混ぜる。
「悪い。……昼に迎えに来てもいいか?」
「うん」
「ありがとな。じゃ、また後で」
るり花が頷くと、たつるは一笑したのち手を振り去って行った。そしてるり花も、二時限の教室に向かって歩き出したのだった。
♂ ♀ ♂ ♀
二時限目の講義が終わり、正午過ぎ。
「なんで出ないんだよ、あま兄ぃ。既読もつかないし……」
たつるがスマホを片手に、ため息をつく。
午前の講義が終わったのち、るり花を迎えに来たのはたつる一人だった。どうやらあまねに連絡がつかないらしい。
「俺、ちょっとあま兄ぃ捜してくるわ。悪いけど、少し待っててくれ」
たつるはるり花を学食の前で待たせ、あまねを探しに行った。
ひとりになったるり花は、なんとなく自らのスマホを取り出す。その時、丁度通知が届いた。
画面上で指をスライドさせ、メッセージアプリを開く。そこに表示された差出人に、るり花は思わず目を見開いた。
『差出人:あまね
本文:至急、実験棟の地下、階段すぐの部屋に来て欲しい』
(……!? あまね……さん? どういうこと?)
るり花は『あまね』とメッセージアプリでフレンドになった覚えはない。どういうことだろう。
だけどるり花はしばらく、そのまま学食前に佇んでいた。このメッセージはあまりにも怪しすぎる。たつるが戻ってきたら相談しよう。
しかし、十分ほど待ってもたつるは戻らない。メッセージを送っても既読がつかず、通話も繋がらなかった。
何か、二人ともトラブルに巻き込まれでもしたのだろうか。
(このまま待ってても、お昼休み終わっちゃうし……、学内で危ないこともないよね)
るり花はそう結論づけ、スマホをバッグに仕舞ってから実験棟に向かい早足で歩き出したのだった。
♂ ♀ ♂ ♀
実験棟の地下に辿り着いたるり花は、部屋のドアを叩いた。
「どうぞ」
すると、内部から返事があった。るり花は恐る恐るドアノブを回し、室内へと足を踏み入れる。
窓のない部屋の中だが、きちんと照明で明るく照らされていた。
そこに佇むのは細身の男性だった。長めの髪は襟足が肩につき、振り返ったその顔立ちはなんとも中性的だ。
だが、肩幅があるし胸も薄っぺらく、女性ではありえない。
「るり花さん?」
男性が小首を傾げる。男らしくない仕草だが、不思議とオネエっぽさは感じられなかった。
「はい。あの……あ、あまねさんですか?」
「うん」
あまねだという男性が頷いた、その瞬間だった。
背後でカチャリと音がし、後ろ手にドアノブにかけたままだったるり花の手に、衝撃が伝わる。
この音は――……
「もしかして」
るり花はぎくりとして振り返る。ふたたびドアノブを掴み、回してみる――否、回せない。
(そんな、まさか)
「どいて、るり花さん」
あまねが進み出てるり花と位置を変わった。彼は細く長い指でドアノブを掴み――るり花はその時既視感を覚えたが、それがなんなのか思い出せなかった――そして力を込めて回そうとした。
だが、ドアノブはびくともしない。
あまねはあっさりと諦め手を離し、お手上げというように肩をすくめた。
「鍵をかけられた。どうやら、ぼくたちは閉じ込められたみたいだね」
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