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第一章 淫魔の王と淫夢《ゆめ》みる聖女
╭በ╮Ⅸ.官能のその先に(1)
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マ・クバス=イオスに帰還したその夜、ウォルフスは溜まりに溜まった政務を片付けていた。
かなりの仕事を宰相であるエルシオに任せてはいるが、それでも王自身が目を通し、決裁しなければならない事項は山とある。
本当のことを言うと、そろそろ『食事』――淫魔としての――をしたかった。
ウォルフスは摂生には慣れているし、前回の食事が九日前ということを考えれば余裕で保ってもいい日数だった。だが、ミオリにさんざん煽られたことで腹が減ったようだ。
馴染みの娼婦の元を訪れようかとも思ったが、さすがに愛人を迎えたその夜に別の女を訪ねるのは怪しまれるだろう。
集中できないのはなにも、空腹のせいだけではなかった。
寝台のほうからの物音――ウォルフスの寝台の中で、苦し気に寝返りをし、はぁはぁと息を吐くミオリの存在だ。
「おい」
ウォルフスは堪りかねて声をかけた。脇からミオリを覗き込む。
ミオリはぱちりと目を開き、潤んだ瞳でウォルフスを見上げた。
「なんだ、起きてんのかよ。起きてるなら自分で処理できるだろ? 俺は少し出てるから……」
踵を返そうとしたウォルフスだったが、寝間着の裾をはしとミオリに掴まれ立ち止まる。
「ウォルフスにして欲しい……」
「なんでだよ。昨日俺がしたみたいに、自分ですればいいだろう」
「淫夢、見てないの。この寝台、あなたの匂いがして……昨夜のこと、思い出しちゃって……」
「俺のせいで発情したって言うのかよ」
ミオリはじっとウォルフスを見つめたのち、やがてこくりと頷いた。
相変わらず息は荒く、苦しそうだ。
「今は駄目だ。俺もな、溜まってんだ。お前を襲っちまうかもしれねぇ」
「襲う?」
「お前が嫌がることや、痛いことをするかもしれねぇ、ってことだよ」
「……」
「だから、わかったら自分でなんとかしろ」
だが、ミオリは頑として譲らない。
「嫌」
「どうしてだよ」
「……なら、そこに居て」
「あ?」
ウォルフスは意味を掴みかね、ミオリに訊ねた。
ミオリはわずかに瞼を伏せて語る。繊細な睫毛がミオリの心模様のように揺れた。
「ウォルフスにしてもらったこと、気持ちよかったけど……とても怖かった。自分が自分じゃなくなるみたいで……。だから、傍に居て、見ててほしい……」
「――」
思いもかけないことを言われて、ウォルフスは面食らった。
だが、ミオリのような少女にとっては官能は恐ろしい側面を持っているのかもしれないとも思い至る。しかし。
どう答えたものかと思案するウォルフスを、ミオリがひしと見つめる。
どのくらいの間見つめ合ったのか、ウォルフスはついに根負けした。
「……わかったよ、見てるくらいなら俺がしてやる」
ウォルフスは観念した。
限界まで理性を試される羽目になるだろうが……。
「ありがとう、ウォルフス」
微笑むミオリから上掛けを剥ぎ取り、前の夜のように圧し掛かった。少し躊躇ったが、顎を引き寄せくちづける。
どうせもう――馬車の中でくちびるを奪ってしまった。
「ふぁ……ん……」
くちびるを重ね、角度を変えて何度も啄む。舌を差し入れて歯列の裏側をなぞってやると、ミオリの体がぴくん、と震えた。
「ん……ん、んぅ……っ」
舌を絡め、ねっとりと咥内を探る。ミオリの体が熱を帯びてきた。
くちびるを離し、問いかける。
「くちづけは好きか?」
「……うん。ウォルフスのしてくれること、ぜんぶ好き……」
「――」
もう、止められなかった。
ウォルフスはミオリの喉元に噛みつくようにくちづけると、両手を忙しなく動かし、夜着を性急に剥ぎ取った。そのまま、くちづけを体に落としてゆく。
ミオリの白く柔らかい肌は、軽く吸うだけで花が咲くように赤く色づいた。
「はぁ、ん……ウォルフス……好き……」
「何が好きなんだ?」
ミオリはうっとりと目を閉じ、素肌を愛撫するウォルフスの掌を味わう。
「触られるの、好き……。気持ちいいの……」
「このどすけべが」
ウォルフスは煽られるようにミオリの脚を押し開いた。その付け根には、すでに透明な蜜が滴っている。
もはや、ミオリの為だなんて言えない。ウォルフスは欲望に突き動かされ、ミオリの秘部にくちづけた。
「ひゃ、あ……っ!?」
驚き、腰をびくつかせるミオリを押さえる。そして宣言する。
「――舐められるのも、好きにしてやるよ」
「そ――んな、とこ……っ、は、ひぁん……っっ」
淫核の辺りを舌で覆い、押し付けるように刺激してやると、呼応して敏感な肉粒が量感を増してゆく。
ぴくぴくと震える肉の芽を、たっぷりの唾液を絡めた舌でつつく。そして根元から舐め上げ、皮を剥くように舌先で押し上げた。
「は……っ、あぁ、ウォル、フス……っ」
「本当に感じやすいな、ミオリは」
「だって、きもちい……っ」
ミオリはいやいやをするようにかぶりを振り、鳴き声で答えた。
「そうだな。いやらしいことは気持ちいいよな、ミオリ」
指先で腹側の根元を押しつぶし、露出した赤い肉粒にふぅと息を吹きかける。ミオリはこくこくと頷きながら、好き、好き……と繰り返した。
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