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第六章 希《ねが》いのかなう夜
╰U╯ⅩⅩⅣ.帰路、想いを胸に
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ガタゴトと車輪を轍にとられそうになりながら、馬車が行く。
「聖都といえどもこの辺りは行き届いてないな。土木事業を見直さなくては」
ミオリの隣に腰掛けたリュートは、独り言のようにつぶやいた。
監獄でカサハに面会したミオリたちは、馬車に乗り込み王宮への帰途についていた。
「リュート様」
「何? ミオリ」
リュートは窓からミオリへと視線を移した。
「……リュート様が王様になるところ、見られなくて残念だわ」
ミオリが本当に残念そうに言うものだから、リュートは笑いそうになってしまった。
「仕方ないよ。ウォルフス殿も、あまり長く国を空けるわけにはいかないだろうからね」
サウラ=ウルとマ・クバス=イオス。二国間の友好条約に調印したウォルフスは、リュートの即位を見届けずに国へと帰還する。――ミオリを、伴って。
「わかっているの。でも、サウラ=ウルはわたしの故郷だし、新しく生まれ変わるこの国を見てみたかったのよ」
「手紙の遣り取りをしよう、ミオリ。それに我が国が落ち着いたら、私もまたそちらを訪問しようと思う」
「そうね……」
リュートは目を伏せるミオリの手に、そっと自らの掌を重ねた。ミオリは特に警戒することもなく、リュートにされるがままだった。
リュートは苦笑して言った。
「ミオリ。これからはウォルフス殿以外に、気安く触らせちゃだめだよ」
しかしミオリはきょとんとして首を傾げる。
「? だって、リュート様でしょう?」
リュートはさらに苦笑せざるを得なかった。
それだけ信頼されているのか、それともまったく男として見られていないのか――。
「触れさせるのは、抱かれてもいいと思える相手だけにするんだよ」
「え?」
ミオリには彼がどうしてそんなことを言うのかわからない。
リュートは離宮で、ミオリに自らの寝室に侍ることを命じた。そしてミオリもそれを承諾した筈なのだが……。
「ミオリに無理強いしようとした私が言うことではないよね」
リュートは残念そうな表情をして、ミオリの手を離した。幼い頃から慣れ親しんだぬくもりが失われる。
ミオリはリュートを伺い見たが、もう彼はミオリと目線を合わせなかった。王宮に着くまでの間じゅう、彼は窓の外を眺め続けたのだった。
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