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第六章 希《ねが》いのかなう夜
╭በ╮ⅩⅩⅠ.今宵、あなたの熱で貫いて(1)
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リュート率いるサウラ=ウル国軍は回天を成し遂げ、聖都チェレステ=ラクイアの王宮へと凱旋した。
ミオリの両親は別働隊が保護しており、無事だった。ミオリは十四年ぶりに、父母との再会を果たしたのだった。
聖都の奪還に協力した淫魔国マ・クバス=イオスの王ウォルフス。彼は王宮に招かれ、しばらく滞在することとなった。そして。
ミオリはもはやサウラ=ウルの聖女ではなく、ウォルフスの侶伴として遇された。
ふたりに与えられた部屋はひとつ。ミオリは事実上、ウォルフスの妃として扱われているのだ。
その夜、聖都奪還を祝して宴が開催された。ウォルフスとミオリも参会したが、ミオリは先に宴を辞した。
「ふぅ。こういうのは気疲れするな」
湯を使ったウォルフスが、やっと部屋へ戻ってきた。彼はどかりと長椅子に身を預けると、瞳を閉じため息を吐く。
簡明直裁でくだけた淫魔王にとって、外交の場は疲れるらしかった。
「ねぇ、ウォルフス」
「なんだ」
ミオリは疑問に思っていたことを尋ねることにした。
「長い間、国を空けていても大丈夫なの?」
「ああ、それはな」
ウォルフスは片眉を上げ、それからわずかに口の端を引き上げて答えた。
「俺は人質なんだよ」
「人質?」
穏健でない言葉に、ミオリは目を見開く。
「これまでマ・クバス=イオスとサウラ=ウル、二国間に友好関係はなかったし、サウラ=ウルに限ったことじゃねぇが、マ・クバスは人間の国からは恐れられてる」
ミオリはウォルフスの言葉に頷いて、先を促した。
「条約に調印するまで、あちらは安心できないってこった。俺も昔は好戦的だったし、向こうがどこまで把握してるかは知らねぇが、こちらには戦をしたがっているエルシオもいるしな」
「……そう」
「ま、あんまり気にするな」
ウォルフスは長椅子から立ち上がり、銀の髪ををくしゃくしゃと掻き混ぜた。
そして、寝台の脇に置かれた小さな灯り皿のみを残し、灯りの火を消してしまう。
「ミオリも疲れたろう。寝るぞ」
「え、ええ」
彼は寝台に寝転がり、褥を撫でてミオリを誘う。ミオリもまた寝台に上がり、上掛けを引き上げた。
「……」
ふたり並んで安臥する。
ミオリはそっとウォルフスの様子を伺うが、彼は黙って目を閉じていた。
「…………」
(もしかして、このまま寝てしまうのかしら)
ミオリがまんじりともせず天蓋を見つめ続け、しばらく経った時。
ウォルフスが目を閉じたまま、口を開いた。
「ミオリ。いいのか?」
「……?」
彼はミオリのほうに顔を向けると、ようやく目を開いて言う。
「肉の棒が欲しいなら、欲しいって言え」
「……!」
ミオリは肩を上下させた。思わず、ウォルフスから目を逸らしてしまう。
「ったく」
ウォルフスは上体を起こし、ミオリの頭の横に手をついた。そして半身を回転させ、ミオリの上にのし掛かってきた。
「以前はあんなに正直だったのに、何遠慮してんだよ」
「だ、だって……」
ミオリにだって、世間のことや、男女のことがわかってきたのだ。それに。
はっきりとウォルフスを愛していると意識し、彼もまたそうであると実感した今、却って気恥ずかしい。
ウォルフスは顔を赤らめるミオリの手を取ると、やおら自らの股間へ導いた。
「……!」
そこはすでに、わずかな熱を宿している。
「今夜こそ、お前を貫いてやる」
ウォルフスが一方的に宣言し、ミオリのくちびるに自らのくちびるを押し付けた。
ミオリの両親は別働隊が保護しており、無事だった。ミオリは十四年ぶりに、父母との再会を果たしたのだった。
聖都の奪還に協力した淫魔国マ・クバス=イオスの王ウォルフス。彼は王宮に招かれ、しばらく滞在することとなった。そして。
ミオリはもはやサウラ=ウルの聖女ではなく、ウォルフスの侶伴として遇された。
ふたりに与えられた部屋はひとつ。ミオリは事実上、ウォルフスの妃として扱われているのだ。
その夜、聖都奪還を祝して宴が開催された。ウォルフスとミオリも参会したが、ミオリは先に宴を辞した。
「ふぅ。こういうのは気疲れするな」
湯を使ったウォルフスが、やっと部屋へ戻ってきた。彼はどかりと長椅子に身を預けると、瞳を閉じため息を吐く。
簡明直裁でくだけた淫魔王にとって、外交の場は疲れるらしかった。
「ねぇ、ウォルフス」
「なんだ」
ミオリは疑問に思っていたことを尋ねることにした。
「長い間、国を空けていても大丈夫なの?」
「ああ、それはな」
ウォルフスは片眉を上げ、それからわずかに口の端を引き上げて答えた。
「俺は人質なんだよ」
「人質?」
穏健でない言葉に、ミオリは目を見開く。
「これまでマ・クバス=イオスとサウラ=ウル、二国間に友好関係はなかったし、サウラ=ウルに限ったことじゃねぇが、マ・クバスは人間の国からは恐れられてる」
ミオリはウォルフスの言葉に頷いて、先を促した。
「条約に調印するまで、あちらは安心できないってこった。俺も昔は好戦的だったし、向こうがどこまで把握してるかは知らねぇが、こちらには戦をしたがっているエルシオもいるしな」
「……そう」
「ま、あんまり気にするな」
ウォルフスは長椅子から立ち上がり、銀の髪ををくしゃくしゃと掻き混ぜた。
そして、寝台の脇に置かれた小さな灯り皿のみを残し、灯りの火を消してしまう。
「ミオリも疲れたろう。寝るぞ」
「え、ええ」
彼は寝台に寝転がり、褥を撫でてミオリを誘う。ミオリもまた寝台に上がり、上掛けを引き上げた。
「……」
ふたり並んで安臥する。
ミオリはそっとウォルフスの様子を伺うが、彼は黙って目を閉じていた。
「…………」
(もしかして、このまま寝てしまうのかしら)
ミオリがまんじりともせず天蓋を見つめ続け、しばらく経った時。
ウォルフスが目を閉じたまま、口を開いた。
「ミオリ。いいのか?」
「……?」
彼はミオリのほうに顔を向けると、ようやく目を開いて言う。
「肉の棒が欲しいなら、欲しいって言え」
「……!」
ミオリは肩を上下させた。思わず、ウォルフスから目を逸らしてしまう。
「ったく」
ウォルフスは上体を起こし、ミオリの頭の横に手をついた。そして半身を回転させ、ミオリの上にのし掛かってきた。
「以前はあんなに正直だったのに、何遠慮してんだよ」
「だ、だって……」
ミオリにだって、世間のことや、男女のことがわかってきたのだ。それに。
はっきりとウォルフスを愛していると意識し、彼もまたそうであると実感した今、却って気恥ずかしい。
ウォルフスは顔を赤らめるミオリの手を取ると、やおら自らの股間へ導いた。
「……!」
そこはすでに、わずかな熱を宿している。
「今夜こそ、お前を貫いてやる」
ウォルフスが一方的に宣言し、ミオリのくちびるに自らのくちびるを押し付けた。
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