淫魔王と堕ちた聖女 あなたの肉の棒をください

空廻ロジカ

文字の大きさ
上 下
26 / 49
第三章 王子の覚悟、聖女の決意

╭በ╮ⅩⅥ.蜜夜の果て、そして(2)

しおりを挟む
「ミオリ……っ」

 苦しいくらいに激しい欲情を身に宿し、ウォルフスはミオリの脚を掴みぐっと押し開いた。

 下袴の前をくつろげ、痛いほどに勃起した熱棒をミオリに押し付ける。
 泥濘ぬかるむ花床がほころぶように彼の雄を包み込み、潤沢な蜜がぬるりと纏わりついた。

 必死に挿入への欲望をこらえながらウォルフスは腰を振り、前後に激しく動かし始めた。

「ウォルフス……っ、あ、熱くて……、ひぁ、あん……っっ」

 身を動かすたびにぬらつく性器と性器が密着し、お互いを貪るようにひくつき喘ぐ。

 舌や指先での愛撫と違い、その刺激は大味である。にもかかわらず、ミオリはかつてない悦楽に翻弄され、その身を淫靡にくねらせた。

「ああ、いっちゃ、いっちゃ……う……っ」

 ミオリは絶頂の予感に眉根を寄せ、甲高く鳴いた。

「く……っ、俺も……っ」

 ウォルフスもまた喉仏を上下させ、密着する部分から全身へと伝播してゆく快楽を味わう。
 彼の首筋からは大粒の汗が伝い、ミオリの胸にぽたぽたと雫を落としてゆく。

「ふ……あっ、はぁ……っ、アァ――――……っ」

 やがてミオリはがくがくと全身を引き攣らせ、法悦の極みを迎えた。
 ウォルフスがなおも擦り上げるとさらなる極みが押し寄せ、ミオリは身を仰け反らせる。

「く、う……っ」

 ウォルフスはミオリの両脚に手をかけ、ぐっと抱え込んだ。彼の雄はミオリの淫肉で挟み込まれ、圧迫されるかたちとなった。

「出すぞ……っっ」
「っふぁ――……っ」

 ウォルフスが低く呻いた瞬間、彼の先端から飛沫が迸った。白く濃厚な液体が、ミオリの胸と腹に散ってゆく。

「……ぁ、あぁ……」

 ミオリが胸を大きく上下させると、白濁がとろりと肌の上を流れる。ミオリはうっとり瞳を閉じ、絶頂の余韻と精の匂いに酔い痴れた。

 挿入こそされていないが、濃密な性交の後のように全身が甘く痺れ、快い疲労感が体中に満ちている。

「……は……っ」

 ウォルフスは荒い息をき、ミオリの隣にごろりと寝転がった。

 全身に力が入らない。今は、すぐに後処理をする気になれなかった。

 ミオリが手を伸ばしてきたので、ウォルフスは彼女の指に自らの指を絡めた。そのま、固く、手を繋ぎ合う。
 汗ばんだ掌同士が重なり、どくどくという脈動をお互いに伝えた。

 ――一体どのくらいの間、そうしていたのか。
 ウォルフスはそっと手を解くと立ち上がった。このままでは、自分はともかくミオリが風邪を引いてしまう。

 布を探し体を拭ってやり、寝台へと運ぶ。自らも着衣を整えると、彼は上掛けの下から見上げるミオリを見つめた。
 ウォルフスを見つめ返すミオリの瞳にも、痛いくらいの想いが込められている。

「…………」

 二人とも、なかなか視線を外すことができない。こんな風に見つめあえるのは、これが最後なのだろうから。

 やがて、睡魔が訪れたミオリはゆっくりと目を閉じ、夢の中へと落ちていった。
 ミオリが完全に眠ってしまってもまだ、ウォルフスは寝台の脇に佇んでいた。

 彼は、誰よりも愛しい聖女の寝顔を、いつまでも見つめていたのだった。



 翌朝。
 リュートとミオリたちは少数の護衛を伴い、マ・クバス=イオスの王都を出立した。

 ウォルフスは晴れやかな笑顔で見送ってくれた。だからミオリも、最高の笑顔で彼にさよならを告げようと努めた。
 果たして上手くできているかは、自信がないけれど……。

「ありがとう、ウォルフス。そして……さようなら」

 馬上で背を預けるリュートに促され、ミオリは前に向き直った。ぎゅっと手綱を握り直す。

 ――もう、振り返らない。これからは、リュートとともに生きてゆくのだから。

   † † †

 ミオリを伴ったリュートは荒野を抜け、街道を避け進んだ。

 ミオリとウォルフスとの二人旅だったマ・クバス=イオスへの逃避行とは違い、護衛もいるため少人数とはいえ目立ってしまう。神殿に嗅ぎつけられないために一行は宿屋をとらず、夜は野宿だった。

 そして辿り着いたのは、聖都チェレステ=ラクイアではなかった。離宮のあるヨアヒネという街だ。

 街道の分岐点であり交易の要所となっているヨアヒネには、異国人の姿も見られる。厳格なサウラ=ウルにあっては比較的自由な気風の街で、神殿からの影響も及びにくいのだ。

「現在サウラ=ウルの国軍は、このヨアヒネを拠点にしている」

 離宮に迎えられたミオリは、リュートの説明を受けながら宮殿内を案内された。国王夫妻にも参謁し、軍の兵士たちとも顔を合わせた。

 これまでであれば聖女はけして表には出ない存在であったから、ミオリの振る舞いはおぼつかなかった。それでも、彼らは聖女をあたたかく迎え入れてくれた。

 だから、ミオリも精一杯に聖女の責務を全うするべく努力した。感傷に浸る余裕がないのは、ミオリにとっても幸いなのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...