転生処女は乙女系ノベルのヒロインになりたいんですっ!

空廻ロジカ

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14-2.私、ストーカーと結婚します!〈承前〉

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「ゲラルト……」

 ゲラルトの手が頬から降りてゆき、少しためらってから私の肩に触れた。
 私も腕を上げ、彼の手首に自らの手を添える。人のぬくもりが、恋しかった。

「……ルミリエ。あの……、」
「何?」
「……抱きしめても、いい?」

 ゲラルトはかなり緊張しているようだった。私は涙を拭うと、くすりと微笑んだ。

「そんな弱気じゃ、ヒーローにはなれませんね」

 乙女ノベルのヒーローは、だいたいが強気で強引なものなのだ。

「ヒーロー? なんだよそれ」
「……わたくしも、ヒロインにはなれなかったものね。きっとお似合いなのだわ、わたくしたち」

 そう言って私はみずからゲラルトに歩み寄った。そして、彼の肩に顔を寄せる。

「……!」

 ゲラルトの身体がびくりと震えた。だがそっと手を私の腰に回し、私を引き寄せた。

「ゲラルト」
「ルミリエ……」

 感極まったのか、ゲラルトの言葉は震えていた。私は、そんなゲラルトを愛しいと思い始めていた。それがソルディエントへのそれと、同じ感情かはわからないけれど……。
 アルマはすでに部屋を出て行ったようだ。私はゲラルトに、直球で告げた。

「抱いてください」
「!!」

 ゲラルトは耳まで真っ赤にしてうろたえた。その後、どうしたらいいのかわからないらしく、今度は青くなる。

「なに青くなってるの。わたくしたち、結婚するのでしょう?」
「そう……だけど。でも僕、経験なくて……ルミリエが、その、教えてくれるなら」

 彼はもごもごとそんなことを言う。

「わたくしにだって教えられません。一緒に頑張るしかないわ」
「え? でも彼――ソルディエントと……」
「何もしてないとは言わないけど……でも、わたくしは処女です」
「! ……ほんとに?」
「嘘じゃないわ」

 ゲラルトはごくりと唾を飲み込んだ。

「じゃあ……た、た、試してみても?」

 そのおかしな言い方に、私は吹き出した。

「だから、さっきからそう言ってるでしょう」

 そう言って私はゲラルトの手を引き、ベッドへと誘った。何故ここまで積極的にならなければならないのか――とは思うものの、ゲラルトがこうも消極的では仕方がない。
 花嫁衣装を身につけた状態でこうなるというのは想定外だが、花嫁衣装にしては珍しく前開きのドレスなので、自分でもなんとかなるだろう。

 ――ソルディエントを忘れるためだけに、ゲラルトに抱かれるのではない。私はそう自分に言い聞かせる。
 ゲラルトはストーカーではあるが、確かに私を愛してくれている。それがわかったから、抱かれるのだ。

「ルミリエ……あの、僕が」
「あなたには無理でしょう」

 私が花嫁衣装を苦心して脱いでいると、ゲラルトが口を出してきた。ゲラルトは多少傷ついたようで、眉尻を下げてしゅんとした。

「花嫁衣装は特別だから、普段のドレスとは違うもの。脱がせられなくても恥ずかしくありません」
「……うん。でも、少し残念かもね。もっときみの綺麗な花嫁姿、見ていたかった」
「結婚式の日に、いくらでも見られるでしょう?」
「そうだね」

 ようやく私は花嫁衣装を脱ぎ終わった。下着姿の私は苦心してトルソーに脱いだ衣装を着せ付け、その後ベッドに戻ってきた。
 自分でゲラルトをベッドに引っ張ってきておきながらなんとも間抜けだが、現実とは小説のようにロマンチックにはいかないのだろう。

「お待たせしました」

 そう言って、ベッドに自ら身体を横たえる。

「ルミリエ」

 ゲラルトが、真剣な顔をして覆い被さってくる。私はそっと瞳を閉じた。
 だが。

「……?」

 彼は、ちっとも私に触れてこない。

「ゲラルト?」

 目を開いて彼を見ると、ゲラルトは難しい顔をして私を見つめている。

「どうしたのですか?」
「やっぱり……駄目だ。きみは傷ついてる。そんな時にこんなこと……」

 私は呆れた。どんな手を使ってでも私を手に入れようとしたストーカーが、今更何を言うのか。

「僕たちにはいくらだって時間がある。僕、待つから。……ね、ルミリエ?」

 ゲラルトは健気にも微笑んで言う。だけど。

「わたくしが待てないんですっ!」

 私はそう言って、ゲラルトの首に手を回して彼を引き寄せた。そのまま身体を回転させて、今度は私が彼に覆い被さる形になる。ゲラルトは私とほぼ同身長の上、ガリで膂力もないのだ。

「ストーカーのくせに、なに土壇場で怖じ気づいてんのっ! わたくしはもう、過去の女とかヒーローとかで振り回されるのはうんざり! 今回こそ、何も関係ないあなたと結婚してやるんだからッ!!」
「ちょ、ルミリ……っ」

 私は噛みつくようにゲラルトの首筋に口づけた。そのまま彼の衣服を剥ぎ取ろうとしたとき、窓がガタガタと大きな音をたてた。

「……!」

 慌ててそちらを見ると、何者が窓を壊す勢いでこじ開け、そのまま部屋に飛び込んできた。
 そしてその人物は私とゲラルトに目を留めると、素早く歩み寄って私たちを引き剥がしたのだ。
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感想 4

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みんなの感想(4件)

いかめし
2021.05.15 いかめし

完結して欲しいぃぃ
お願いします

解除
とりっぴー
2020.05.15 とりっぴー

うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
続きがぁぁぁぁ なぁぃ!!!!!!
更新まってまず(´。・д人)シクシク…

解除
眠り猫
2019.10.17 眠り猫

いい所で続きが...!!!!
更新お待ちしていますううううう

解除

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