17 / 18
不穏
十七話
しおりを挟む・・・・・
次郎「・・・・朝か?」
時間を確認すると朝の7時であったが、
相変わらずの空模様で陽の光が差し込んでこない
一瞬まだ夜中かと勘違いするほど薄暗い
中隣を見るとまだシマトネは眠っていた
昨夜遅くまで騒ぎがあった為シマトネはまだ起きそうもない
俺はシマトネを起こさない様に布団から出て、椿達のいる階へ向かった
カタッカタッカタッカタッ・・・・
ザァァァァァァァアーーーー
ギィィイ
椿達が元々泊まっていた部屋の扉を開ける
昨夜割れていた窓はひとまずテープと布の様な物で穴だけ塞いであった
辺りを見渡し状況を確認する
インテリア等備え付けの品には手をつけられてはいない
次郎「やはり、物盗りではないのか?」
しかし、昨夜椿達の荷物も一緒に移動させているので手荷物の方で何か無くなっているかもしれない
次郎「・・・そっちの確認は意識が戻ってからだな。」
カタッカタッカタッ・・・
自室へ戻るとシマトネもちょうど起きた所の様だった
シマトネ「次郎・・どこ行ってたんだ?」
次郎「昨日騒ぎがあった部屋の様子を見て来たんだ」
シマトネ「何か手がかりはありそうだったか?」
次郎「いや、今のところは特に無いな・・・」
シマトネも布団を出て軽く支度をすると
窓の外を見て雨風の強さにうんざりする様な表情を見せた
次郎「ロビーの方へ行ってマキさんと合流したら椿達の様子を見に行ってみよう」
シマトネ「そうだな・・・アイツら意識取り戻したかな?・・・」
次郎「どうだろうな・・・ひとまず
アイツらが犯人を見ていれば解決なんだが・・・」
カッカッカッカ・・
ー・ロビー・ー
チン~・・チンチン~・・・
ベルを鳴らすとマキさんが慌ただしく
奥の仮眠室から出てきた
マキ「何かありましたか⁉︎」
次郎「いや、もう朝なんで一緒に椿達の様子を見に行かないかと思って」
マキ「そうですね・・・もしかしたら
意識を取り戻しているかもしれません。」
カタ・・・カタ・・・
クス「おはようございます。
今日も生憎の空模様ですなぁ・・・・
ん?・・・みなさん表情が硬い様ですが私の顔に何か付いておりますかな?」
クスさんは昨晩あの場に来なかったが
お年寄りだし寝るのも早かったのだろう
恐らく昨日の騒ぎに気付いていない
しかし、宿泊客も少なく黙っていても何かがあった事は直ぐに知れるはずだ
どちらにせよクスさんの食事後の
行動を把握しておく必要がある
隣にいるシマトネとマキさんに目配せをし、表情から了承を得ると
昨晩の事の顛末を話始めた・・・
クス「・・・そうでしたか。
ところでお2人の容体は?」
マキ「今は上階で寝ております、意識を取り戻して事情を聞ける状態であれば
お2人から昨晩の事を聞くつもりです。
」
シマトネ「軍が動いてくれればいいんだが、恐らく動かないだろうな・・」
次郎「?・・・何でだ?」
シマトネ「人間時代以降諸外国との戦争はあったが、自国での犯罪っていうのは極端に事例が少ないんだよ
だから軍が警邏を兼ねているんだけど、あくまで軍事がメインだから実際はほぼ実働していない・・・」
マキ「あの雨風の中を狙ったとするなら計画性がありそうですね・・・
ちなみにクスさんは食事後どうされていましたか?」
クス「この老木を疑っているのですかな?」
マキ「い、いえそういうわけではないのですが・・・」
次郎「この旅館内にいる宿泊客の昨晩の行動を把握しておく必要があるんです。」
クス「わかっていますよ。少し意地悪でしたかな?・・・・
昨晩は宴会の後、直ぐ自室へ戻り就寝しました。
今朝お話を聞くまでこの様な事態になっている事すら知りませんでした。
それにこの通り足を悪くしております。杖をついている状態でその様な凶行に及ぶ事は物理的に不可能ですな。」
マキ「まぁ、そうですよね。・・・・
まさか昨日から見当たらないラカンくんの仕業って事はないですよね?」
シマトネ「正直今1番怪しいですね。」
ラカンさん・・・・
少なからず悪いところはあったが、
それでもこんな事をする人とは思えない
次郎「ラカンさんがそんな事をするんだろうか?・・・」
シマトネ「もともとフェイとは折り合いが悪そうだっただろ?」
次郎「だからといってこんなやり方で
どうこうしてやろうなんて人じゃない気がするが・・・」
マキ「普段の素行からラカンくんならやりかねない気がします・・・」
次郎「どちらにせよ、まずは椿達の所へ行ってみよう。
意識を取り戻しているかもしれない。」
カタッ・・・カタッ・・・・
クスさんは杖をついて歩いている為歩幅を合わせて階段を上がるのを補助する
ロビーか自室で待っていた方が良いと
言ったのだが行くと言って聞かなかった
クス「すみませんなぁ・・・
無理を言った上、歩行補助までしてもらうなんて。
しかし、孫ほどの年輪の娘達がそんな目にあっていたと聞いては大人しくジッとしているわけにいきませんでして」
次郎「いえ、いいんです。
気持ちはとてもわかります。」
クス「次郎さんは人間ですが、お仲間に深い情があるんですな・・・・
種は違えど眼を見ればわかります。」
次郎「い、いや。」
マキ「まずは樫さんとベニスさんの部屋を訪ねてみましょう。」
コンコン・・・
ガチャー
樫「おはようございます。次郎くんそちらは何か異常ありましたか?」
次郎「いや、こっちは大丈夫だ。
そっちこそ何か変わった事はなかった?」
樫「こっちもその後は雨の音しかしませんでした・・・・
夜通し起きてたもんで・・・
少し眠いですが。」
カッさんは眠そうにしながらタバコを咥えた
シマトネ「後は自分らがいるんで、カッさんは仮眠した方がいいっすよ。」
マキ「ですね。」
樫「では、お言葉に甘えましょうかね。
ちょこちょこ椿さんとフェイさんの様子は見ていたんで問題はなかったと思います。
では・・・」
カッさんは部屋に戻っていった
コンコン・・・
ベニス「おはようさん。・・・
あれから異常はなかったぜ。容体も安定している。」
マキ「ベニスさん急なお願いをしてしまいすみません。」
ベニス「いいんだよ!仕事しないで休んでばっかでもしょうがないしな・・・
それにこういう木を助ける為にアタイらはいるんだよ。」
シマトネ「ベニスさんも休んで下さい。」
ベニス「じゃあ部屋にいるから何か変わった事があれば呼んでくれ」
ベニスさんも部屋に戻っていった
どうやら結局隣部屋の2人は寝ずの番をしていてくれたみたいだった
カチャア
椿とフェイが寝ている部屋の扉をそっと
開け様子をみる
変わったところはない様だ
クス「・・・なんて非道い事を。
ゆるせませんな。」
気付くと、自分でも不思議なことに
椿の頭を撫でており
フェイの顔も穏やかでほっとした
すると・・・・
椿「・・・・んん~」
次郎「椿‼︎」
シマトネ「椿‼︎っ」
椿「あれっ?・・・っタタタタ」
椿は見るからに状況に混乱している様だった
クス「マキさん・・・水を持ってきてあげて下さいな」
マキ「は、はい‼︎」
バタバタと階段を降り、マキさんは急いで水を持ってきた
マキ「椿さん!これを飲んで下さい!」
椿「あ、ありがとうございます~」
ゴク・・・ゴクゴク・・・
椿「あれ?・・・・あっ!フェイちゃんは?」
椿は慌ててフェイを探そうとして
隣にいることに気づきホっとした様子を見せる
椿「・・・よかったぁ。」
次郎「落ち着いたか?・・・
身体で痛い所はないか?」
椿「うん!・・・ちょっと痛い所はあるけど、ほとんど大丈夫だよ!」
マキ「もし・・・落ち着いたらで良いので昨晩何があったのか教えてもらえませんか?」
シマトネ「ホントに落ち着いたらでいいからな?」
椿「シマトネもありがとね。
大丈夫だよ。・・・・・昨日・・・
フェイちゃんと2人で少し話をした後
そのまま寝ちゃったんだ・・・・
しばらくして・・・急に何かで目と両手を縛られた感じがして叫んだの・・・
直ぐに口も塞がれて、フェイちゃんが起きる気配を感じた・・・
たぶんそこで気を失っちゃったんだと思う・・・」
次郎「そうか・・・・」
シマトネ「昨日の叫び声は椿だったんだな」
聞いた感じだと、今のところ全く手がかりがない・・・
後はフェイか
フェイ「ん・・・・」
すると、バッと布団を払ってフェイが起きた
シマトネ「おっ落ち着けフェイ‼︎」
フェイ「奴はっ⁉︎」
マキ「フェイさん落ち着いて下さい!」
フェイ「私は・・・・気を失っていたんですの?・・・ッ!」
クス「フェイさん・・・お身体に障ります。落ち着いて下さい。」
フェイは腰を落とすと頭の痛みに気付いた様で、言われるまでもなく大人しくなった
次郎「マキさん水!」
マキ「大丈夫!持ってきてますよ!
どうぞ。」
ゴクゴク・・・・
フェイ「はぁ・・美味しいですわ~」
椿「フェイちゃん大丈夫?」
フェイ「椿さんこそ大丈夫でしたの?
私はどのくらい気を失っていたのかしら?」
マキ「恐らく5時間程度になります。
フェイさん達が倒れていたのは昨晩の出来事です。」
フェイ「そうですの。・・・昨晩
椿さんの悲鳴が聴こえて直ぐに起きましたわ。
椿さんが縛られた状態になっているのを見た後すぐに何かで殴られました・・
辺りは暗かったのでそれが誰だったのか・・・・」
クス「ひとまず、お2人の意識が戻って安心しました。」
次郎「そうか・・・その時窓は割れていたのか?」
シマトネ「2人とも起きたからベニスさん呼んでくる。」
マキ「お願いします。」
カチャー
椿「どうだったんだろ?
私直ぐに縛られたから、わかんないな。」
フェイ「恐らく窓は割れていませんでしたわ。割れていたらその時点で起きているハズです。」
カチャア
ベニス「2人とも起きたか!」
シマトネ「ベニスさんが看病してくれてたんだよ!
あと、カッさんも夜通し見ててくれたみたいだしな!」
フェイ「そうでしたの・・ありがとうございます。」
椿「ありがとうございます‼︎」
マキ「そういえばお2人とも手荷物で何か盗まれた物等はありませんか?」
椿「ん~どうなんだろ?」
ベニス「安静にしてな!荷物は後で確認すりゃあいい。」
クス「ですな・・・
お2人はまだ寝ていた方がいいでしょうから我々は退室しますかな」
2人を部屋に残し、俺達は部屋を出た
引き続き仮眠しているカッさんと、
部屋に戻ったベニスさんを除いた面々は
ロビーに集まり現状知り得ている情報を確認し始めた
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
陽キャグループを追放されたので、ひとりで気ままに大学生活を送ることにしたんだが……なぜか、ぼっちになってから毎日美女たちが話しかけてくる。
電脳ピエロ
恋愛
藤堂 薫は大学で共に行動している陽キャグループの男子2人、大熊 快児と蜂羽 強太から理不尽に追い出されてしまう。
ひとりで気ままに大学生活を送ることを決める薫だったが、薫が以前関わっていた陽キャグループの女子2人、七瀬 瑠奈と宮波 美緒は男子2人が理不尽に薫を追放した事実を知り、彼らと縁を切って薫と積極的に関わろうとしてくる。
しかも、なぜか今まで関わりのなかった同じ大学の美女たちが寄ってくるようになり……。
薫を上手く追放したはずなのにグループの女子全員から縁を切られる性格最悪な男子2人。彼らは瑠奈や美緒を呼び戻そうとするがことごとく無視され、それからも散々な目にあって行くことになる。
やがて自分たちが女子たちと関われていたのは薫のおかげだと気が付き、グループに戻ってくれと言うがもう遅い。薫は居心地のいいグループで楽しく大学生活を送っているのだから。
高校では誰とも関わらず平穏に過ごしたい陰キャぼっち、美少女たちのせいで実はハイスペックなことが発覚して成りあがってしまう
電脳ピエロ
恋愛
中学時代の経験から、五十嵐 純二は高校では誰とも関わらず陰キャぼっちとして学校生活を送りたいと思っていた。
そのため入学試験でも実力を隠し、最底辺としてスタートした高校生活。
しかし純二の周りには彼の実力隠しを疑う同級生の美少女や、真の実力を知る謎の美人教師など、平穏を脅かす存在が現れ始め……。
「俺は絶対に平穏な高校生活を守り抜く」
そんな純二の願いも虚しく、彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。
やがて純二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。
実力を隠して平穏に過ごしたい実はハイスペックな陰キャぼっち VS 彼の真の実力を暴きたい美少女たち。
彼らの心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
最底辺の落ちこぼれ、実は彼がハイスペックであることを知っている元幼馴染のヤンデレ義妹が入学してきたせいで真の実力が発覚してしまう!
電脳ピエロ
恋愛
時野 玲二はとある事情から真の実力を隠しており、常に退学ギリギリの成績をとっていたことから最底辺の落ちこぼれとバカにされていた。
しかし玲二が2年生になった頃、時を同じくして義理の妹になった人気モデルの神堂 朱音が入学してきたことにより、彼の実力隠しは終わりを迎えようとしていた。
「わたしは大好きなお義兄様の真の実力を、全校生徒に知らしめたいんです♡ そして、全校生徒から羨望の眼差しを向けられているお兄様をわたしだけのものにすることに興奮するんです……あぁんっ♡ お義兄様ぁ♡」
朱音は玲二が実力隠しを始めるよりも前、幼少期からの幼馴染だった。
そして義理の兄妹として再開した現在、玲二に対して変質的な愛情を抱くヤンデレなブラコン義妹に変貌していた朱音は、あの手この手を使って彼の真の実力を発覚させようとしてくる!
――俺はもう、人に期待されるのはごめんなんだ。
そんな玲二の願いは叶うことなく、ヤンデレ義妹の暴走によって彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。
やがて玲二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。
義兄の実力を全校生徒に知らしめたい、ブラコンにしてヤンデレの人気モデル VS 真の実力を絶対に隠し通したい、実は最強な最底辺の陰キャぼっち。
二人の心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる