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不穏
十五話
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シマトネ「出ねぇなぁ。・・・
ロビーに届けておくか?」
次郎「めんどくせぇけど、届けた方が良さそうだな。」
たった今2階まで上がってきたところだったが、鍵の落とし物を放置する事も出来ず、ロビーまで引き返すことにした
カタッカタッカタッ
ー・ロビー・ー
シマトネ「マキさ~ん。これ!」
マキ「?・・・部屋の鍵ですか?」
次郎「2階の踊り場に落ちていたんですけど、どこのお客さんのかわかりますか?」
マキ「ちょっと待って下さいね・・・
・・・・・
あぁ!お連れ様の部屋の鍵ですね!」
シマトネ「あいつら鍵落としたんだな」
次郎「見つけたのが俺達で良かったよ」
マキ「私は奥に居ますのでまた何かあれば仰って下さい。」
タッタッタッタ
すると廊下の方から温泉から帰ってきた椿達が姿を現した
フェイ「シマトネさっき私に電話されました?」
シマトネ「したよ!ほいこれ!」
フェイ「?・・・・私達の部屋の鍵?
椿さん落としたんですの?」
椿「えぇそんな事ないと思うけど・・・」
椿は色んなポケット中を探したが持っているハズだと思っていた鍵は出てこなかった
椿「ごめぇーん!なんか落としちゃってたみたい・・・」
次郎「俺達が拾って良かったよ。
気付かないままだったら部屋の前で立ち往生だもんな。」
フェイ「椿さん人騒がせですわぁ。」
椿「ごめんごめん!にしても~
落ちるはずないんだけどなぁ。」
シマトネ「どういうことだよ?」
椿「だってぇ、部屋出て鍵を閉めた後
ポケットに入れてから落ちるタイミングなんかないよ?」
シマトネ「階段を降りた時ポケットの中で跳ねたんじゃねーか?」
椿「ん~・・・」
椿はイマイチ納得がいかない表情をしていたが、鍵はあったので良しとした
クス「おやおやまた会いましたな・・
こんな所で何をしているんですか?」
椿「お風呂入って出てきたところです!お爺さんは何してるんですか?」
クス「そうでしたか、暖まったみたいでなによりですな・・・
いやなにたまには食事を摂ってみようかとロビーまで降りてきて悩んでいた所です。」
フェイ「あらそうでしたの?でしたら
一緒に食事されますか?」
椿「それいいね!ベニスさんも誘おうよ!」
シマトネ「まぁ人が多い方が楽しいしな!」
次郎「どうですか?クスさん。
もし良ければですけど・・・」
クス「もし混ざって良いのであれば
是非ご一緒させて頂きたいですな。」
シマトネ「よし決まった!カッさんも
部屋にいるんなら声かけようぜ!」
次郎「もちろん!・・・そういや
ラカンさんもここで寝泊まりはしているんだよな?」
フェイ「まさか呼ぶつもりですの?」
次郎「いや・・せっかくだから声だけかけてみるのもアリかなって・・・」
椿「ん~・・そうだね!フェイちゃんももっと話せば仲良く出来るかもよ?」
フェイ「あり得ませんわね!」
フェイは間髪入れずに言い切ると、
じゃあまた後でとスタスタ自室に戻ってしまった
椿「フェイちゃんがんこだからねぇ~」
次郎「ラカンさんとフェイは昔何かあったのか?」
シマトネ「そんな話聞いたことないなぁ
ていうか、フェイは自分からそんな話しないしな。」
次郎「そうか。とりあえず椿はベニスさんの方頼むよ。
俺はラカンさん探してみようかな・・」
椿「おっけ~!クスさん時間は19時半だから忘れないで下さいね~」
クス「わかりました。
ではまた後で・・・・」
カッカッカッカ・・・
クスさんはゆっくりと踵を返し、自室へと戻っていった
クスさんの様に杖をついている老木には
数少ない1階ロビー奥の部屋が割り当てられている様だった
シマトネ「次郎お前あのラカンって木に声かけんのか?」
次郎「まぁ・・せっかくいるんだし
かけるだけかけてみようかと思ってる」
シマトネ「俺は行かねーよ?」
次郎「大丈夫だよ。カッさんの方に声かけといてくれよ。」
シマトネ「任せとけッッ!」
俺達は時間まで一旦それぞれに分かれて行動することにした
そういえば浜辺で会ってからラカンさんを見かけていないのでロビーのマキさんに居場所を聞くことしよう
チ~ン・・・チンチ~~~ン!
マキ「はいー!・・・・
次郎さんまた何かありましたか?」
次郎「いやラカンさんってどこの部屋に泊まっているのかなって・・・」
マキ「あぁ、ラカンくんは2階の1番
奥の部屋にいますよ。」
次郎「そうですか!ありがとうございます。」
マキ「何か用があるんですか?
あんまり刺激しない方がいいですよ?」
次郎「ちょっと声をかけるだけなんで大丈夫だと思います!」
マキ「そうですか・・・ではまた。」
マキさんはまた奥の方へ消えていった
ラカンさんとはお世辞にも親しいとは
言えないので少し緊張するが、
宿泊客は恐らくそれで全員のはずだし
1人だけ声をかけないのは憚られた
ビュゥゥゥゥウウウウウウウ・・・・
ザァァァァァァァア・・・
マキさんも奥に消え、少し静かになったロビーに強い雨と風の音が聞こえる
クスさんの言っていた通り天気は大荒れになり、窓は風で軋んでいた・・・
階段を上がり、左右を見渡す
奥と言っても左右どちらの奥かを聞き
忘れていたが左側にしか奥の部屋は
ない様だ
外観からはわかりずらいが部屋数はかなり限られていて、代わりに一部屋一部屋
にゆとりを持ったスペースを設けているのだろう
ギシ・・・ギシ・・ギシ・・・・
左奥の部屋の前まで来たが、ノックをするのに少し間が必要だった
間を取っていると、扉越しには何ら
物音がしないので本当にラカンさんがいるのか不安になった
しかし外はこの嵐だし部屋にはいるはずだ
時間的にも就寝するには早すぎる
そんな事を思いながら意を決して
ノックをしてみた
コン・・・コンコン・・・・
・・・・・・・・・
反応がない
もう寝てしまっているのだろうか?
もう一度だけノックをしてみた
コンコン・・・・・・・・
やはり反応がない
これ以上は寝てたとしたら迷惑になるのでラカンさんを誘うのは諦め、自室へ
引き返した
カッカッカッカ・・
ガチャア
シマトネ「おう次郎、ラカンって木は誘えたのか?」
次郎「いや、部屋にいないみたいだったから諦めたよ。」
シマトネ「そうか~残念だったけど、
その方が良かったんじゃないか?
あの木が居たら間違いなく一悶着あるぜ?」
次郎「ん~・・悪い人でもないと思うんだけどな」
次郎「それより、カッさんはどうだった?」
シマトネ「おう、行くってさ!
日中はその辺散歩して、雨降ってからは部屋でずっとタバコ吸ってたんだってよ!」
次郎「カッさんけっこうヘビースモーカーだからなぁ。
そういや今って何時なんだ?」
シマトネ「今は~・・・19時だな!
あと30分ゆっくりしてようぜ!」
次郎「とは言ってもやる事ねーけどな。」
シマトネ「そんな事もあろうかと、
トランプ持ってきたんだよ!」
次郎「トランプ?」
シマトネ「あぁ、次郎トランプ知らないのか。じゃあ教えるから簡単なゲームでもやろうぜ!」
シマトネはトランプというカードの束を
持ってきており、それを使った遊びを教えてくれた
簡単なものだけ教わると早速始めてみたが、あっという間にコンテンパンに負けてしまった
シマトネ「やったぁ~!俺の勝ち~」
次郎「・・・もっかいやろうぜ。」
シマトネ「なんだ悔しかったのか?」
次郎「コツは掴んだ!これは心理戦でもあるんだな。」
シマトネ「そうだぜ!特に2人でやってるからな。
もっと人数を増やしてもやれるから後でみんなでやるってのもいいな。」
何度か挑戦してみたがシマトネは意外と強く、30分の間じゃまだ勝てそうになかった
次郎「あ~クソっ!」
シマトネ「カリカリしてっとまた負けるぜ。」
次郎「お前バカのくせにこういうの強いんだな。」
シマトネ「バカとは失礼だな!お勉強は出来ねーけど、こういうのは俺けっこう強いんだよね~」
そんな事をしているといつの間にか時間は19時半近くになっていた
次郎「おっそろそろ時間だから下降りようぜ。」
シマトネ「ん?・・ホントだな。
せっかく面白くなって来てたけどまた
後にするか!」
2人とも一度落ち着かせてしまった腰を
渋々持ち上げて部屋を出た
ガチャアー
樫「次郎くん海は楽しかったですか?」
次郎「うわぁっ!ビックリしたなぁ。」
ちょうど隣からカッさんも部屋を出てきたところの様だ
次郎「楽しかったよ。色々遊んだけど、椿とフェイの水着がTバックだったのが衝撃だったなぁ。」
樫「何ですって?」
シマトネ「2人ともTバックの水着だったんすよ!」
樫「そりゃあまたけっこう攻めた水着ですねぇ。」
カツカツカツカツ・・・
下らない与太話をしながら俺達は階段を降りてロビー横からの通路を歩き
食堂へ向かった
フワッサァ~
温泉と同じく暖簾をくぐるとさほど広くはない広間に出た
下は客室同様畳になっており、ちょっとした座椅子がある
食堂というよりは狭い宴会場の様であった
フェイ「遅いですわ!」
シマトネ「時間ちょうどだろ!」
クス「そんなに急ぐものでもないですよ。」
シマトネ「ほらな!」
ベニス「よぉ!お前さんら!椿ちゃん達に誘われたから今日はアタイもご一緒させてもらうぜ!」
次郎「よろしくお願いします。」
樫「また随分賑やかになったんですね。」
ベニス「おっ?そっちの兄ちゃんは
昼間見かけなかったな」
樫「私は樫と申します。彼等の保護者の様なものです。」
ベニス「そうかい!で、そっちの爺さんは?」
クス「私はクスです。先程ロビーに居たところ皆さんに誘って頂いたんですよ。
お嬢さんのお名前は?」
ベニス「おっとお嬢さんときたかい。
アタイはお嬢さんなんてぇ
年輪じゃあねーが、若く見られる分には良しとするか。
アタイの名はベニスさ!」
クス「そうでしたかベニスさん。
今日はよろしくお願いします。」
ベニス「こちらこそだ!
ところでこれで全員集まったのかい?」
フェイ「そういえば次郎ラカンに結局声はかけたんですの?」
椿「来てないとこ見るとダメだったの?」
次郎「部屋をノックしたんだけど、反応がなかったから諦めたんだよ」
ベニス「ラカンっつーのはフェイちゃんが昼間浜辺でケンカしかけた奴かい?」
フェイ「そうですわ!あんな粗暴なのが居たら食事会が台無しですわ!」
フェイも品が良さそうに見えてそこそこ
粗暴だと思うが、口に出すのはよしておこう
クス「おや、まだ若い方がいらっしゃるんですか?」
シマトネ「もう1人喧嘩っ早いのがいるんですけど、来ないみたいですよ。」
樫「まぁまぁお話しはその辺にしておいてそろそろ宴会をはじめませんか?」
椿「さんせ~い!てか注文は誰に言えばいいのかな?」
マキ「はいは~い!私が注文を承りますよ!」
あまり大きくはない旅館な為マキさんはロビー業の他にも旅館のかなり大部分の業務を兼務している様だった
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