世界緑化大戦

百舌鳥

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邂逅

三話

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次郎「ただいまぁ~、カッさんいる?」

樫「お帰りなさい。いますよ。
G1君の食事はそこに用意してありますので食べておいて下さい。食器は自分で片付けて下さいね。」

次郎「りょ~かい~。今日めちゃくちゃ疲れたよ。」

カッさんは施設から俺に同行してきた
職員で身の回りの世話をしてくれている。

人間の食事についても事前に勉強し、
練習してきたみたいで見栄えは置いといてとても美味しい食事を作ってくれた。

この辺りにカッさんの性格がよく反映されている気がする。

これまでの付き合いでわかった事は
愛想がない様に見えて意外ととっつき
やすいこと。

勉強家で真面目、ジョークが通じなさそうに見えて茶目っ気もある事。

樫「そうでしょうね。慣れない場所というのは疲れるものです。クラスには馴染めそうですか?」

カッさんは食事をしない為代わりに煙草をフカしながらテーブルの反対側の席に
着いた。

次郎「思ってたよりは身構える必要はなかったかな?まぁ実際は俺の事どう思ってるかわからないけど・・」

樫「そうですか。あまり邪推しなくてもいいと思いますよ。種族が違うからそう感じてしまってもしょうがないかもしれませんが。」

確かに必要以上に他者を疑う必要はないのかもしれない。
しかし、種の違いというものはそんなに簡単なものじゃないとも思う。

実際人間はその大半が木達の管理下に
あり、庇護する者と庇護される者に
区別されている。

そこに意識の違いは確かにあり、
実際奇異の目で見てくる者も少数ながらいるのは確かだ。

逆にシマトネや椿の様に分け隔てなく
接してくる者もいるので一概に全てを
一括りに出来るものではないのだろう。

樫「ひとまずG1君には自然体で可能な限り自由に学園生活を送ってもらえればそれで充分です。仲良くなったらクラスメイトを連れてきても構いませんよ?」

次郎「まぁ・・仲良くなったらね。それにしても施設の木達と違ってよく喋るやつが多かったよ。あだ名まで付けられたしな。」

樫「へぇ、良い兆候じゃないですか。なんてあだ名なんですか?」

次郎「次郎だってよ。適当だよな。」

樫「はっはっは、良いじゃないですか。次郎・・いい響きですね。こっちにいる間は私もそう呼びましょう。」

次郎「カッさんまで?まぁ良いけど。ところで俺はいつまで学校生活を送れば良いんだ?・・・【F2】は俺がいなくて大丈夫かな?」

樫「特に期限は決められていませんね。施設の方から通達がない限りはここでの生活は続くと思います。・・F2
・・貴方のバディだった口数の少ない女の子ですか。」

次郎「あぁ、あいつ上手く自己主張が出来なかったから少し心配なんだ。」

樫「なら手紙でも出してあげれば少しは元気付けられるんじゃないですか?それに職員が付いているんだし、そこまで心配しなくても良いと思いますよ。」

次郎「そうだな。ご馳走様。
美味しかったよ。疲れたし風呂に入ったらもう寝るよ。」

樫「そうですね、私ももう寝ます。おやすみなさい。」


諸説あるが樹木種は光合成が必要ない夜は、休眠状態であるという。
人型に進化した樹木も夜は人の様に寝る

そんなちょっとした事に共通点を見出し
種は違えど同じ生き物なんだよなと思う

ジリリリリリリリリリリ・・・・

ジリリリ    バンっ!

次郎「ふぁ~あ・・まだ眠いなぁ。でももう7時か・・そろそろ起きなきゃ間に合わない。」

樫「次郎君!そろそろ起きないと間に合いませんよ?それに朝からお迎えが来ているみたいです。」

次郎「えっ?」


迎え?今迎えって言ったか?まだ寝ぼけているんだろうか・・そんな約束覚えはないし、第一越してきたばかりだからこの家を知っているやつなんかいないはずなんだけど・・

シマトネ「お~い!!次郎~早く起きないと学校遅刻するぞ~!!」


あいつか・・なんで知ってるんだよ・・つーか朝からうるせぇ

距離感近いし、ストーカーかよ。

次郎「わぁかったよ!今行くから少し待っててくれ!」

シマトネ「早くしろよ~」

次郎「はいはい・・」

シマトネ「はいは一回なぁ!」

お前は俺の親かよ・・ていうか耳いいな・・
うぜぇ

樫「次郎君朝ごはんはどうするんですか?」

次郎「朝はパンだけ持っていくよ!行きながら食べる!」

樫「わかりました。弁当なんてもんじゃないですけどこれも持ってって下さいね。」

次郎「ありがとう!じゃあ行ってきます!」

樫「行ってらっしゃいー」

さて雑務をこなして仕事を始めますか。
・・というか弁当を作るのは結構な
重労働ですね。
めんどくさい・・・

次郎「悪い、待たせたな。」


シマトネ「それはいいけどさ、あの人は誰なん?」

次郎「あぁ、あの人は俺が居た施設の人だよ。・・まぁ保護者みたいなもんかな?」

シマトネ「ふ~ん・・まぁ人間だと色々大変そうだな!」

まぁ次郎がこっちに越してきた理由は
知らないけど、施設にいた人間を
保護観察なしで自由にするわけないのか

次郎「それよりお前なんで俺の家知ってるんだよ。朝本当にびっくりしたんだけど・・」

シマトネ「あぁ!そりゃ簡単だよ!住んでる方面聞いたし、人間なんて珍しいからすぐ噂になるよ!村社会みたいなもんだしな。」


個人情報筒抜けなのかよ・・プライバシーなんてあったもんじゃないな

シマトネにわかるって事はかなりの人数
がうちを知っているって事じゃないか?

ザッザッザ・・・

椿「お~い!」

シマトネ「おっ今日は遅刻しなかったんだな!」

次郎「おはよー」

椿「うるさいなぁ昨日はたまたま!おはよう次郎君!」

椿「昨日の今日で一緒に登校って仲良いね」

クスクス・・


次郎「いや、別に仲良い訳ではないんだけど」

コイツが勝手に朝から家に突撃してきただけだしなぁ

シマトネ「えぇ、もうマブダチみたいなもんだろ?」

マブダチの基準がゆるすぎる。

椿「じゃあ私もマブダチね!学校案内したし。次郎君全然聞いてなかったけどね」

次郎「悪かったって、昨日は疲れてたんだよ」

椿「それもそうね。転入初日なんて緊張しちゃいそうだもん」

シマトネ「確かになぁ、この国じゃ学校も限られてるからそんな機会中々ないけど今まで居た環境が変わるっていうのは疲れそうだよ。」

次郎「少しは気持ちがわかってくれたか?」

シマトネ「でももう慣れただろ?」

椿「そうね!」

次郎「あぁ、お陰様でな」

そんなにすぐに慣れるわけはないし、
皮肉も通じてなさそうだ。

あっけらかんとしてケラケラ笑っている
2人の中に過去に失くしてきた何かを
見た気がした。

気のせいかもしれないが・・・

ガラガラガラ

教室の扉を開けるとクラスメイト達も
気さくに挨拶をしてくれる。

やはり緑が多い教室は目に良さそうだ。

椿「そういえば施設には人間は何人くらいいたの?友達とかも居たんでしょう?
変な言い方かもしれないけど、
私達って教科書や、映像として人間を
見てきてはいるけど生で会うことって
少ないから色々教えて欲しいな!」

次郎「そうだなぁ、俺の居た所だと
100人ぐらいは居たと思う。ほとんどは10人程度の班に分かれて生活しているから他の班の連中の事はあまり知らないな。その中でもバディとは付き合いが特に長くなるかな。」

シマトネ「人間の友達と離れるのは寂しいだろうね。転入してくるくらいだからしばらく居るんだろ?」

次郎「特に期限がある訳じゃないからなぁ、とりあえず自由に過ごしてればそれでいいらしい。」

実際そう言われているし、外の世界では
かなり自由な行動を許可されているから
実質気持ち的には観光というかそんな
気持ちがない訳ではない。

しかし、研究の代わりとはいえ外の世界である程度の自由を許されているこの状況を施設の同族達はどう思うのだろう。

そんな想いが頭の中をグルグルして、
後ろ髪を引かれる。

椿「じゃあいっぱい遊べるね!
色んな所に行こうよ!」

シマトネ「じゃあさ早速みんなでどっか遊びに行かない?次の休み時間までに行きたい所考えようぜ!」

そんな事を話していると、縦ロールを
揺らしながらフェイが登校してきた。

フェイ「あ~ら!聞きましたわ!
面白そうね!私も混ざってあげるわ!」

シマトネ「今来たばっかなのに何を聞いたんだよ!」

フェイ「次郎との親睦を深める会でしょ?私がいないと始まらないわぁ!そうは思わない?」

シマトネ「いや特に思わねーけど」

椿「フェイちゃんおはよー!次の休み時間までにフェイちゃんも行きたい所考えといて~」

フェイ「任せなさい!私そういうの得意よ!」

次郎「俺は外のこと全然知らないからみんなに任せるけどあんまりお金がかかんないとこにしてくれよ。最低限の小遣いしかもらえないんだから」

失礼だが、メンバー的にマトモな案が出るのか甚だ不安である。

フェイ「あら手持ちがないなら貸してあげても良くってよ?利子はしっかり貰いますけど。」

シマトネ「お前んち金持ってんだから
利子なんてケチ臭いこと言うなよ」

フェイ「庶民はわかっていませんわね!無駄遣いをせず、回収すべきものは
しっかり回収をしているからこそ
うちはお金を持っているのよ!」

椿「フェイちゃんの制服だけ特注でちょっと仕様違うくらいだしね。お父さんが社長さんなんだよね?」

フェイ「えぇそうよ!」

次郎「いや~流石にそこまで困ってる訳じゃないから」

利子なんて付けられた日には返す頃には
いくらになっているかわからん。

シマトネ「とりあえずお金かからなさそうな場所がいいよな!俺だって毎月の
小遣い厳しいし!」

ガラガラガラ

先生「みっみんなぁ・・おはよぉ~・・うぇ」


なんか先生えらい気分悪そうだな、大丈夫なんだろうか。

シマトネ「ああ見えて先生大酒飲みなんだよ。また飲み過ぎたんじゃねーの」


「せんせ~また深酒ですかぁ?」

「吐かないで下さいね~」

先生「大丈夫よぉ・・少し二日酔いなだけだから・・」

「いい歳なんだから程々にしないとダメですよー」

先生「大人の付き合いってもんがあるのよぉ・・」


先生も色々大変そうだなぁ、あの見た目で酒飲みって想像つかないし補導されそうだけど・・

おれなんか施設の管理下にいる限り
お酒を飲む機会なんてないだろうなぁ

シマトネ「お~いお前らちゃんと行きたい所考えたか?」

椿「当たり前でしょ~、私はねー公園でピクニックかなぁ?最近口腔摂取してないし、次郎君に合わせてみんなでお弁当持ち寄るのなんてどう?」

シマトネ「かぁ~またベタだねぇ、フェイは?」

フェイ「まぁ私くらいになると色々と選択肢がありますけど・・
手頃なのだと昔の人間が使っていたプロペラで空を飛ぶ機械で空中散歩なんて如何かしら?」

シマトネ「ブルジョワかよ・・いやブルジョワか」

シマトネ「全くお前ら全然わかってないなぁ!俺が提案するのは街から少し外れた所の山だ!川もあるらしいし、これなら日常の喧騒から離れお金もかからないだろ?」

椿「それなら公園でも良くない?」

次郎「ん~どれも魅力的ではあるなぁ・・」

椿「じゃあくじ引きにする?」

フェイ「それがいいわね!」

シマトネ「じゃあクジ作るか!
・・・っとじゃあこの中から次郎が一枚引いてくれ、そんで出たとこにしよう!」

次郎「オッケー・・・・じゃあ・・これだ!!」

シマトネ「どれどれ・・おっ俺のやつだ!!」

椿「えぇ~山ぁぁ?歩くの大変そうー」

フェイ「まぁでも川に行って庶民の遊びを体験してみるのも悪くはありませんわね」

シマトネ「とりあえずそれぞれ準備して今週末に集まろうぜ!」

次郎「あぁ~もしかしたら俺の保護者的な木も一緒に来るかもしれん、街外れまで行くとなると流石に監視責任もあるしな・・」

実際どこまでが許容範囲なのか明確な
基準がないからイマイチ出歩けないんだよなぁ

シマトネ「朝の木か?いいじゃん!一緒に連れてきなよ!」

椿「私達は全然木が増えても大丈夫だよ!!」

次郎「じゃあとりあえず今週末なー」







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