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2章 オレタチの逆襲

第26話 S×7ステータスはオール100万越え

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 ドワーフ族のオメガは空に浮かんでいた流星シルベスタンを眺めていた。
 そこには耳の尖がった偉そうにしているエルフ王とエルフ女王と小生意気そうな青年のその息子と娘がいた。

 彼等はガニーとゲニーが解き放ったスキル:バクサンにより吹き飛ばされたエルフレイク城のかつての支配者であった。

「いやいやいや、やりすぎだろ」

 ふざけた白い髪の毛で天然パーマをしている。右手と左手は焼けただれ、こんな時なのに短パンとTシャツだ。ゴーグルはふかふかの天然パーマに乗っかっているし。

「ふ、ふざけるなードワーフ、お前は、この城がなんと心得るかああああ」

 エルフ王が叫び声をあげる。

「ただの城だろ?」

 オメガがさらりと答えるのだが、魔王ルウガサーがコボルトの姿に戻ったペロンクを抱きしめて戻ってきた。
 ボーン卿はふらふらしているガニーとゲニーをはげましながらこちらにやってきて。
 リナテイクはおろおろしながらオメガの隣にいる。

「お前等、お前等は国罪だ。エルフ総出で潰してやるからな」

「何かお忘れではないかな? お前達は滅びの危機に瀕している。人間によってな、俺はそこに手を差し伸べただけだ」

「それがエルフレイク城の爆破なのか」

「いいじゃねーか城なんてのはあってなくてもいい、てめーらの面構えの象徴だろうがよ、人々はそんなもの望んじゃいない、そうだ。エルフの民は全部保護しよう、残りたい奴は残ればいい、滅びかけたエルフ国にな」

「お、お前何様だ」

「人間を滅ぼすドワーフ様だ」

「滅ぼせる訳がない、たった、たった7人で何が出来ると言うのか? 勇者イルカスの件は何か騙したのだろうが」

「すまないが、7人じゃないぞ」

「は?」

「これから増え続ける。それが傭兵って奴だ。悲劇が生まれれば強い奴が生まれ、強い奴は復讐したくなる」

「復讐? 馬鹿じゃないか」

「なら、何のために生きろというのか」

 流星シルベスタンは口元を緩めながらこちらをじーっと見て、次にエルフ王を見た。

「さて、エルフ王ちゃんよ、ドワーフ王の居場所をおしえてくれんかねぇ」

 その場が凍り付いた。
 エルフ王は初めて狼狽えた。

「なぜ、それを、だから生かしておいたのか」

「そうだよ、ドワーフ王が見つからないんだよねー彼秘宝を沢山持ってるらしいじゃん、子孫だっていない説だけどどっかに子孫をかくまってる説あるしさーどうせエルフ王もおこぼれもらってドワーフ王の居場所隠してるんでしょー」

 オメガの脳裏に色々なものがスパークする。
 全ての始まりはドワーフ王国が落ちた事だった。
 それから人間達はドワーフ村を占拠して多くのドワーフを狂わせて死に追いやった。
 強制労働という奴だ。

 怒りがふつふつと沸き上がり、唇を嚙みちぎった。
 口から大量の血が流れ。

「エルフ王よ交渉しよう、そこの流星シルベスタンを殺害し、エルフレイク城をさらに最強に立て直してやる。その代わりドワーフ王の居場所を教えろ」

「な、なんだとー」

 エルフ王が驚き仰天でこちらを見る。
 オメガにとっては思わぬ収穫だった訳で。

「ならこうしようかねー傭兵団をぶちのめして、エルフ王ちゃんの希望がなくなれば、教えてくれる?」

「く」

「交渉成立だな。お前等は下がってろ」

 オメガがそう呟く。

【はい】

 全員が答え。

 ゆっくりと前に進む。

 目の前に流星シルベスタンが立ち尽くす。
 人間の平均的な背の大きさ。
 しかしドワーフにとっては人間の半分程の大きさしかない。
 人間1人でもドワーフにとっては巨大すぎる存在なのだ。

「なぁ、あんた、俺の能力について鑑定してるんだろう」

「もちろんだ」

【流星シルベスタン】
【スキル:流星落:隕石を落下させる】
【スキル:流星操作:隕石の欠片を操作する】
【スキル:流星強化:《発動条件》対象の3つ目の大事な物を貰う(ステータス+1)事によって対象を強化させる】

「まぁ、君達には流星強化はあまり意味がなかったようだねぇ」

「そのようだな」

「あれには対象の3つ目の大事な物を貰う事が出来るんだけどさ、ステータス+1なんだよね、俺さ今までの人生で色々あったけどさ。ステータスも鑑定したんでしょ、でも隠蔽使ってたから解除してあげる」

 オメガの眼前に叩きこまれる流星シルベスタンのステータス表。
 オールS×7。
 これは数値にすると100万と言う事。

 オメガはふぅと息を吐く。

「どう? 絶望級でしょ?」

「そうでもない」

 だが、流星シルベスタンのレベルは90どまり。
 こちらはレベル10000で、あちらから見たらレベル0という事。

 ステータスに換算してもこちらが少し負けている程度。

「さて、久しぶりに互角って奴を楽しめるな」

「へぇ、余裕なんだ。君のステータスは見る価値もないね、レベル0だろ、でも見てあげた。異常な数値だけど、俺にはまだぁー勝てないねー」

「口で喋るのは飽きた。行くぞ」

「エルフ王ちゃんとその家族ちゃん、離れたほうがいいよー、じゃないと死ぬから」

 ドワーフ族の種族スキルであるイベントリを発動させる。

【レベル9999:雷撃の鎧:《効果》雷のようになれる】
【レベル9999:世界樹の斧:《効果》圧倒的破壊力】

 今装備している高速の剣、無敵の鎧、破壊の弓、創造の矢筒をイベントリに収納する。

 オメガの体はバチバチと雷が輝く。
 右手と左手で持つ事が出来る世界樹の斧は世界終の木が枯れているのを見つけたので、幸運の石を使い、スキル:幸運製造を使用して製作した武器。

「人間を殺すには剣が相応しいと思っていた。だけどお前は剣じゃ倒せない気がするんだ」

「……」

「なぁ、流星シルベスタン、いつから人間は異種族を嫌いになったのだろうか」

「さぁ、知るかよねー」

 2人はそれを合図に地面を蹴り上げて、流星シルベスタンの右手に握られていた武器は杖のようでありながら岩のようであった。
 それで世界樹の斧がぶつかりあい衝撃が生まれる。
 辺り一面が破壊され、竜巻風のように吹き飛ばしていく。

「なぁ、シルベスタン、なぜ人間は異種族を嫌いになる。それは異種族が優れているからなのか」

「だから、知るかよ」

「皇帝陛下は異世界からの異種族侵攻の危機で今の異種族を滅ぼそうとしている。なぜ話し合わない」

「だからよーオメガちゃんよーそんなのは上の奴等がなんとかやって、下の奴等は殺しを楽しむだけだぜ」

「そうか、奇遇だな、俺はお前を殺したいんだよ」

「そうか?」

「隕石で沢山のエルフを蒸発させた。あそこにいるリナテイクの家族もだ」

「ああ最初の隕石ね、そういうのはたーくさん降らせるぜ」

 その時頭上に無数の隕石が飛来した。
 その数200個。

 世界の終わり。

 まさにその通り。
 リナテイクはフラッシュパックを起こしたようで悲鳴をあげた。

 オメガは世界樹の斧を地面に叩き落とし、上に持ち上げると、頭上に放り投げる。
 そこには雷撃の鎧の雷付与があり。
 空高く舞い上がる世界樹の斧は雲間も上で隕石を全て吹き飛ばした。
 雲と雷が融合され、雨がぽつりぽつりと落下してくる。

 高速で持ち主の手に着地した世界樹の斧。
 体をひねり右横から左横にぐるりと斧を振り回す。
 流星シルベスタンは人差し指と中指で斧を掴み持ち上げてオメガを地面に叩き落とす。
 地面に亀裂が走る。
 何度も何度もオメガは地面に叩き落とされる。

「はぁはぁ、この斧、めちゃくちゃおもてー」

「そうか?」

 鼻から鼻血を垂れ流し、全身が土埃に包まれながら。
 ゆったりと立ち上がる。
 雷撃の鎧が体を守ってくれたようだ。
 
「そろそろ本気と行くか」

 雷撃の鎧は雷を操る事が出来る。
 それは雷を体にぶち込む事が出来る。
 全神経を研ぎ澄まし、雷付与という効果により、体そのものをプラズマ化できる。

「10秒で蹴りつける」

「奇遇だな、俺は5秒で蹴りつけるぜいー」

 目にも止まらない斧と杖のぶつかり合いが始まった。
 ステータスオール100万の力をドワーフのオメガは身をもって受ける事になった。

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