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第二十一話
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「このあざのことを、お知りになりたいですか?」
「ああ、それは生まれつきなのか? それとも後天的に?」
「幼い頃、事故でついた傷です。あれはガーデンパーティの帰り、夕方のことでした」
私は、今まで記憶の奥底に蓋をしていた過去を思い出しながら語ります。
「パーティが終わって、続々と各家の馬車が集まってきていたときのことです。突然馬が暴れ出し、一台の馬車が暴走しはじめたのです。近くに停めてあった他の馬車にぶつかり、壊れた破片が飛び散りました。大きな破片が私の隣、妹のほうに飛んできたので……私はとっさに、妹の手を引いてかばいました。幸い破片はかすって顔に傷を作っただけで、私にぶつかったりはしなかったのですが、もし体に直接ぶつかっていれば私は生きていなかったかもしれません。そのくらい切迫した状況でした」
アレクは話を聞いて、息を呑んでいました。少し、刺激の強い話だったかもしれません。
「両親は、周囲の大人はいきなりの出来事に立ちすくんで動けませんでした。無理もありません、あの事故は死者も出ていて、大変騒然となったことを憶えています。それだけの大事故で、同時に私の顔にできたあざのことも広く知られることになってしまいました」
事故が広まれば、私のあざのことも広まる。妹をかばって怪我をした、それだけを聞けば美談ですが、その美談を人々が口にするたび、怪我をした私は顔に傷を作ってあざとなって女性としての魅力を損ったと言われるのです。まあかわいそうにと同情する人もいますが、ほとんどはそんな女はこの先結婚できないだろう、と話を締めくくりました。
私はそんな思いをしたのに、嘲笑の対象となってしまっていたのです。
「お前のあざのことは、ワグノリス王国でも知られていることなのか?」
「ええ。私は元貴族で、おそらくワグノリス王国の貴族で私のあざを知らない人はいなかったと思います。だから、腫れ物扱いされていて、なのに婚約が決まったときは嬉しくてしょうがなかった」
私は思い出さないようにしていたのに、あの元婚約者のことを思い出してしまいます。嫌な記憶なのに、忘れることができません。
「その婚約も、このあざのせいでなくなってしまいました。妹は私のあざを気にしていないと思っていたのに、ずっと嫌だったとまで言っていました。私のせいで白い目で見られて、と……私の婚約者は、私を捨てて妹の婚約者となって、今は幸せに暮らしているでしょうね」
私は笑おうとしました。でもぎこちなく顔の筋肉が動いただけで、多分笑えてはいなかったと思います。
そんな私へ、アレクはこう言いました。
「大変だったな、エミー。それで済ませるわけではないが、お前はひどい目に遭って、ここまで何とか生きてこられたのだろう。お前が生きていてくれてよかった、心からそう思う」
「ああ、それは生まれつきなのか? それとも後天的に?」
「幼い頃、事故でついた傷です。あれはガーデンパーティの帰り、夕方のことでした」
私は、今まで記憶の奥底に蓋をしていた過去を思い出しながら語ります。
「パーティが終わって、続々と各家の馬車が集まってきていたときのことです。突然馬が暴れ出し、一台の馬車が暴走しはじめたのです。近くに停めてあった他の馬車にぶつかり、壊れた破片が飛び散りました。大きな破片が私の隣、妹のほうに飛んできたので……私はとっさに、妹の手を引いてかばいました。幸い破片はかすって顔に傷を作っただけで、私にぶつかったりはしなかったのですが、もし体に直接ぶつかっていれば私は生きていなかったかもしれません。そのくらい切迫した状況でした」
アレクは話を聞いて、息を呑んでいました。少し、刺激の強い話だったかもしれません。
「両親は、周囲の大人はいきなりの出来事に立ちすくんで動けませんでした。無理もありません、あの事故は死者も出ていて、大変騒然となったことを憶えています。それだけの大事故で、同時に私の顔にできたあざのことも広く知られることになってしまいました」
事故が広まれば、私のあざのことも広まる。妹をかばって怪我をした、それだけを聞けば美談ですが、その美談を人々が口にするたび、怪我をした私は顔に傷を作ってあざとなって女性としての魅力を損ったと言われるのです。まあかわいそうにと同情する人もいますが、ほとんどはそんな女はこの先結婚できないだろう、と話を締めくくりました。
私はそんな思いをしたのに、嘲笑の対象となってしまっていたのです。
「お前のあざのことは、ワグノリス王国でも知られていることなのか?」
「ええ。私は元貴族で、おそらくワグノリス王国の貴族で私のあざを知らない人はいなかったと思います。だから、腫れ物扱いされていて、なのに婚約が決まったときは嬉しくてしょうがなかった」
私は思い出さないようにしていたのに、あの元婚約者のことを思い出してしまいます。嫌な記憶なのに、忘れることができません。
「その婚約も、このあざのせいでなくなってしまいました。妹は私のあざを気にしていないと思っていたのに、ずっと嫌だったとまで言っていました。私のせいで白い目で見られて、と……私の婚約者は、私を捨てて妹の婚約者となって、今は幸せに暮らしているでしょうね」
私は笑おうとしました。でもぎこちなく顔の筋肉が動いただけで、多分笑えてはいなかったと思います。
そんな私へ、アレクはこう言いました。
「大変だったな、エミー。それで済ませるわけではないが、お前はひどい目に遭って、ここまで何とか生きてこられたのだろう。お前が生きていてくれてよかった、心からそう思う」
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