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第十七話
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「だが、お前は誰とも婚約していない」
「は、はい」
「なら、ジーベルン子爵がお前を嫁にすればいい。そうすれば、話は丸く収まる。貴族は隠された平民の娘の顔を暴いたものの、謝って求婚して了承された。そういうことなら、まだ何とかなる」
私は、首を横に振りました。
そんなこと、絶対に無理です。ヒューバートの声が蘇ります、お前との婚約を破棄する、失せろ、顔を治してから……あんなにひどいことを言われて、私は誰かと結婚しなければならないのでしょうか。マギニス先生がおっしゃったように、一人で生きていくことは許されないのでしょうか。
「い、嫌です。私なんかが誰かと結婚なんて、できるわけがありません」
「しかしだ、ジーベルン子爵は本気でお前に求婚してくるぞ。アスタニア帝国の禁忌なのだ、それほどまでに重い」
「それでも、私のこの顔を見て、結婚できるとお思いですか!」
金切り声が店に響きます。
バルクォーツ女侯爵は、それ以上、何も言えなくなっていました。私の顔のあざを見て、何が言えるのでしょう。
「私は、以前、婚約者に捨てられました。私の顔のあざが嫌だから、ずっと嫌だったから、婚約を破棄するって……おまけに妹に奪われて、私は家を捨てた」
震える声で、私は訴えます。今まで受けた仕打ちは、到底忘れられるものではありません。私の顔のあざがあるかぎり、誰が同じことをしないと保証できるのでしょうか。
ましてや、たかが禁忌程度で私に求婚して、ジーベルン子爵が後悔しないわけがありません。そんな思いをしてまで結婚するなどごめんです。不名誉でも何でも被ればいい、そんなことは私には知ったことではないのです。
私はもうそんなことには振り回されない。バルクォーツ女侯爵を睨みつけていても仕方がないと気付くまで、しばらくかかりました。
バルクォーツ女侯爵は、そんな私を責めたりはしませんでした。
「エミー、悪かった。お前がそこまで嫌がるとは思っていなかった、許せ」
バルクォーツ女侯爵は私の頭を撫でて、さて、と思案する顔を作ります。
「では、どうするか。考えねばなるまい。ジーベルン子爵を納得させるようにせねば、というより、とある事情であの男に不名誉を押し付けるわけにはいかないのだ」
「とある事情?」
「ああ、これがまた厄介でな」
どうにも、バルクォーツ女侯爵は頭を悩ませているようです。
そのとある事情とは、一体——。
「あの男はな、今でこそジーベルン子爵だが、いずれはアスタニア帝国第二皇子に列される人間なのだ」
「は、はい」
「なら、ジーベルン子爵がお前を嫁にすればいい。そうすれば、話は丸く収まる。貴族は隠された平民の娘の顔を暴いたものの、謝って求婚して了承された。そういうことなら、まだ何とかなる」
私は、首を横に振りました。
そんなこと、絶対に無理です。ヒューバートの声が蘇ります、お前との婚約を破棄する、失せろ、顔を治してから……あんなにひどいことを言われて、私は誰かと結婚しなければならないのでしょうか。マギニス先生がおっしゃったように、一人で生きていくことは許されないのでしょうか。
「い、嫌です。私なんかが誰かと結婚なんて、できるわけがありません」
「しかしだ、ジーベルン子爵は本気でお前に求婚してくるぞ。アスタニア帝国の禁忌なのだ、それほどまでに重い」
「それでも、私のこの顔を見て、結婚できるとお思いですか!」
金切り声が店に響きます。
バルクォーツ女侯爵は、それ以上、何も言えなくなっていました。私の顔のあざを見て、何が言えるのでしょう。
「私は、以前、婚約者に捨てられました。私の顔のあざが嫌だから、ずっと嫌だったから、婚約を破棄するって……おまけに妹に奪われて、私は家を捨てた」
震える声で、私は訴えます。今まで受けた仕打ちは、到底忘れられるものではありません。私の顔のあざがあるかぎり、誰が同じことをしないと保証できるのでしょうか。
ましてや、たかが禁忌程度で私に求婚して、ジーベルン子爵が後悔しないわけがありません。そんな思いをしてまで結婚するなどごめんです。不名誉でも何でも被ればいい、そんなことは私には知ったことではないのです。
私はもうそんなことには振り回されない。バルクォーツ女侯爵を睨みつけていても仕方がないと気付くまで、しばらくかかりました。
バルクォーツ女侯爵は、そんな私を責めたりはしませんでした。
「エミー、悪かった。お前がそこまで嫌がるとは思っていなかった、許せ」
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「では、どうするか。考えねばなるまい。ジーベルン子爵を納得させるようにせねば、というより、とある事情であの男に不名誉を押し付けるわけにはいかないのだ」
「とある事情?」
「ああ、これがまた厄介でな」
どうにも、バルクォーツ女侯爵は頭を悩ませているようです。
そのとある事情とは、一体——。
「あの男はな、今でこそジーベルン子爵だが、いずれはアスタニア帝国第二皇子に列される人間なのだ」
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