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第二十五話

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 それから一週間後のことです。

 王都に、なぜか今まで話題にもならなかった旧ペトリ辺境伯領のことが、広く噂されるようになりました。ウェンダロスの侵略、ペトリ辺境伯家の奮闘、国王のペトリ辺境伯家の爵位剥奪、レーリチ公爵家ヴィンチェンツォの出兵。それらがまことしやかに、一般市民の情報源である新聞紙にも載るようになったのです。

 おそらくレーリチ公爵が何かしたのだろうと思いますが、おかげで私もレーリチ公爵に故郷やヴィンチェンツォが今どうなっているかを尋ねなくてよくなったため、大助かりです。

 今日も老執事のクォーツさんが、朝食前に新聞を何紙か持ってきてくれました。

「朝食と新聞をお持ちしました、ユリア様。どうぞこちらへ」
「ありがとうございます! 今日はどうなっているかしら?」

 私は新聞を片手に、食べやすいように毎日サンドイッチを朝食に指定して、もぐもぐしながら読みます。行儀はよくありませんが、早く状況を知りたくてクォーツさんに無理を言ってしまいました。クォーツさん、他の方にはこっそりこうした手配をしてくれて、とても親切です。

「戦況はきわめて優勢、ウェンダロス側はレーリチ公爵軍の参戦を予期していなかったのだろう。その上、ウェンダロスの指揮官はレーリチ公爵軍が優先して叩いたため、総崩れになることも珍しくない、と」

 うーん、こういう自国側を褒め称えて、嬉しくなるような記事を書けば売り上げが上がると考えての情報は、私には必要ありません。知りたいのは、被害が出ていないかどうか、みんなが無事かどうかです。

 目を皿にして読んでみましたが、そういうことは紙面の端っこに少しだけ、被害数をちょろっと書いているだけです。数だけではなにも分かりません、人の命は数字ではないので——結局、今日も私が知りたいことすべては載っていませんでした。

「はあ、なにも分からないよりはずっとましですよね……じっと待たなきゃ」

 朝食を食べ終わるころには、新聞紙はすべて読み終えています。インクの付いた手を洗って、それからペネロペの襲来です。

「お義姉様! いい知らせが届きましてよ!」

 元気いっぱいなペネロペが、お茶とお菓子を運ぶメイドを従えてやってきます。

 すぐさま整えられたお茶会の席で、ペネロペは興奮して語りました。

「お父様に報告に来た人たちから聞き出したの! 旧ペトリ辺境伯家の人々は無事よ! それから領民の被害はまだすべて調査できているわけではないけれど、考えられていたよりもずっと少ないと思われるわ。直接数の多い侵略者と戦うよりも、領民を逃すために旧ペトリ辺境伯軍が全土で避難を優先したおかげね」

 ペネロペからのその知らせは、私が一番待ち望んだものでした。

「よかった……!」

 たまらず漏らした安堵の言葉に、ペネロペは「うん、よかったわ! 本当に!」と相槌を打ってくれました。
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