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第十二話
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私はまず部屋のトランクを開けようと、しゃがみこんで手を伸ばします。ペトリ辺境伯領からついてきた帆布と革と木のトランクは、実家の倉庫に眠っていた骨董品です。あちこち小さな傷だらけで、手入れもされていなかった——はずなのに、なぜかピカピカです。レーリチ公爵家の使用人の誰かが手入れをしてくれたようで、革はスベスベ、傷跡は隠し隠し、新品同然とはいきませんが見違えるようです。
これはレーリチ公爵家の使用人が親切なのか、それともみすぼらしくて放って置けなかったのか、多分両方でしょう。内心複雑ですが、とっても感謝すべきことです。レーリチ公爵家に来てから、あまりにも尽くしてもらいすぎて、多くの人にお礼をしなくてはならなくなっていて、私はてんてこまいです。
それはそうと、すぐに誰かが部屋の扉をノックしました。
「はい、なんでしょうか?」
私は声をかけて、扉へ向かいます。金メッキのドアノブを回して押し開けると——そこには、ツインテールの可愛らしい少女がいました。私より一つ、二つほど年下でしょう。ツヤツヤの金髪に紫色の細いリボンを何本も編み込んで、感嘆するほどおしゃれです。王都の最新流行なのでしょうか。
ふりふりのフリルドレスの少女は、小さな胸を張ってこう言いました。
「よく来たわね、お義姉様! 私、ペネロペよ!」
何ということでしょう、ヴィンチェンツォの妹のペネロペが挨拶に来てくれました。
自己紹介をされて、私も、と思っている間に、ペネロペは鋭い目つきで私を見て、ふふんと鼻を鳴らして語ります。
「お義姉様、申し上げておくべきことがありますわ!」
「な、なんでしょうか」
「今日のお夕飯、ハッシュドビーフよ! でもね、我が家ではそこにデミグラスソースとサワークリームを加えて、ライスと一緒にいただくの! とっても美味しいわ! 期待していいのよ!」
なんということでしょう。
恐ろしいことです。私は想像してしまいました。
「……ビーフに、デミグラスソース……サワークリーム?」
なんという贅沢。さすがレーリチ公爵家、牛肉だけでなく手間のかかるデミグラスソースも、サワークリームという聞いたことのない高価そうななにかまで食卓に上るなんて。
ペネロペ、一気に私の夕食への期待値を上げてきました。恐ろしい子です。
「ふふーん、我が家は各地の料理人が集まっていて、一流の料理人の腕試しの場でもあるの!」
「つまり、美味しいものが食べられるということですか?」
「違うわ!」
「えっ!?」
「とっても美味しいもの、よ!」
ばちん、とペネロペは私へウィンクをしました。
お茶目な少女ペネロペは、人懐こい笑顔のおもてなし公爵令嬢でした。
これはレーリチ公爵家の使用人が親切なのか、それともみすぼらしくて放って置けなかったのか、多分両方でしょう。内心複雑ですが、とっても感謝すべきことです。レーリチ公爵家に来てから、あまりにも尽くしてもらいすぎて、多くの人にお礼をしなくてはならなくなっていて、私はてんてこまいです。
それはそうと、すぐに誰かが部屋の扉をノックしました。
「はい、なんでしょうか?」
私は声をかけて、扉へ向かいます。金メッキのドアノブを回して押し開けると——そこには、ツインテールの可愛らしい少女がいました。私より一つ、二つほど年下でしょう。ツヤツヤの金髪に紫色の細いリボンを何本も編み込んで、感嘆するほどおしゃれです。王都の最新流行なのでしょうか。
ふりふりのフリルドレスの少女は、小さな胸を張ってこう言いました。
「よく来たわね、お義姉様! 私、ペネロペよ!」
何ということでしょう、ヴィンチェンツォの妹のペネロペが挨拶に来てくれました。
自己紹介をされて、私も、と思っている間に、ペネロペは鋭い目つきで私を見て、ふふんと鼻を鳴らして語ります。
「お義姉様、申し上げておくべきことがありますわ!」
「な、なんでしょうか」
「今日のお夕飯、ハッシュドビーフよ! でもね、我が家ではそこにデミグラスソースとサワークリームを加えて、ライスと一緒にいただくの! とっても美味しいわ! 期待していいのよ!」
なんということでしょう。
恐ろしいことです。私は想像してしまいました。
「……ビーフに、デミグラスソース……サワークリーム?」
なんという贅沢。さすがレーリチ公爵家、牛肉だけでなく手間のかかるデミグラスソースも、サワークリームという聞いたことのない高価そうななにかまで食卓に上るなんて。
ペネロペ、一気に私の夕食への期待値を上げてきました。恐ろしい子です。
「ふふーん、我が家は各地の料理人が集まっていて、一流の料理人の腕試しの場でもあるの!」
「つまり、美味しいものが食べられるということですか?」
「違うわ!」
「えっ!?」
「とっても美味しいもの、よ!」
ばちん、とペネロペは私へウィンクをしました。
お茶目な少女ペネロペは、人懐こい笑顔のおもてなし公爵令嬢でした。
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