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第十四話

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 取次のウスターシュがブランシュとリオネルの面会をセッティングし、三日後と指定してきたのは、自分たちが暗殺の用意をする時間を稼いだのではないか。暗殺者の準備、城中の移動の経路手配、そこまでとなればウスターシュだけが関わったわけもなく、父親の財務大臣であるフローケ伯爵も当然グルだろう。企んだ人々は当然悪いとしても、ブランシュもすっかり利用されてしまっていて、何ともいたたまれない。

 ブランシュは実のところ半信半疑ながらも、そこまで説明すると、デルフィーヌとリオネルは深刻な顔を見合わせていた。

「ウスターシュがそんなことを……」

 そうつぶやいて、失望を隠せないリオネルは、その数秒後にいきなりブランシュの両肩を掴んだ。

「ブラン!」
「ひゃい!?」

 ウスターシュはリオネルの身内だ。身内を疑うなどと叱られるのでは、とブランシュは身構える。

 しかし、リオネルはそんなことを言うどころか、全力で頭を下げて謝った。

「すまなかった!」

 耳元でリオネルの大声の謝罪を聞き、ブランシュは両肩を掴まれて塞げなかった耳がくわんくわん鳴っていた。デルフィーヌが間に入ってリオネルを離してくれなければ、ブランシュは固まったまま話を続けなければならなかっただろう。

 リオネルはブランシュの推測を、妥当なものだと思ったらしい。思い当たる節があるのかどうかはさておき、落ち込んだ様子で椅子にしゅんとうなだれながら語る。

「おそらく、ウスターシュの父、財務大臣のフローケ伯爵一派の仕組んだ陰謀だろう。もちろん、ウスターシュも噛んでいるに違いない。それを見抜けず、君を危険に晒したことを、どうか謝らせてほしい」
「いえ、それは殿下の責任ではありませんから……むしろ、殿下も被害者ですもの」
「そう言ってもらえて助かる。だが、やはり俺は君を巻き込んでしまったことが腹立たしい」
「殿下、落ち着いてくださいな。はい深呼吸」

 悔しそうなリオネルは、デルフィーヌに促されて深呼吸をして、ようやく落ち着きを取り戻した。

「しかし、今の段階では疑いにすぎない。トリベール侯爵家の疑いを晴らすだけで精一杯、証拠も乏しい以上フローケ伯爵の責任を追及することは難しいだろうな……ウスターシュにもしらを切られればどうしようもない。暗殺者もあのあと死亡してしまったことだし」

 それは確かに、ブランシュとデルフィーヌにも分かる。そう簡単に財務大臣という大物を疑いだけで糾弾するわけにもいかないし、トリベール侯爵家の仕業ではないことを釈明するまでなら何とかなる。しかし、そのあとはどうなるのか。リオネルはウスターシュとまともに顔を合わせることができるのか。

 ——しかし、リオネルと親しいウスターシュがいるにも関わらず、フローケ伯爵はなぜリオネルの暗殺を企んだのか。
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