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第四話
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役職の変わった私は宿舎の部屋を移り、庭師たちと同じ区画の部屋で寝起きすることになった。
メイド時代と違って、食堂ではご飯は食べない。庭師にはそれぞれ作業小屋があって、ご飯を食堂でもらってきてそこで食べる。ただ、私には作業小屋なんてないから、裏庭で一人食べることが日課になった。
幸い、薬師のデ・ヴァレスは優しい人で、雑草と薬草の見分け方を教えてくれたおかげで、私は雑草駆除と落ち葉掃除という重大な任務をこなせるようになった。一週間もすれば薬師のデ・ヴァレスは熟練の庭師を連れてきて、薬草の生育に適した場所の作り方を教わり、裏庭の一角を習ったとおりの土地に作り変えるよう命じられた。
しかし、これが意外と楽しい。飼育舎から厩肥を運び、庭師の管理している倉庫からも腐葉土や石灰をもらってきて混ぜる。日陰を作るために藁の屋根を木に設置し、水やりを欠かさない。初夏になって雑草があちこちに生えてきては抜き、堆肥置き場に持っていく。
日々、肉体労働は確かに疲れるが、メイド時代と違って充実感はとてもあり、薬師のデ・ヴァレスや庭師たちから習うことも多い。特に、薬師のデ・ヴァレスは薬草学の知識を惜しげもなく私へ伝授してくれた。
「いいかい、エイダ。こっちのシダはタカワラビと言って、根や茎を乾燥させて薬にするんだ。主に肝臓や腎臓に効果がある。これは南の高温多湿な場所でしか育たないから、本当は温室を作るべきなんだが、ここは条件が合ったらしくうまく育っている。大切にしてやってくれ」
「はい、分かりました! こっちの草も、シダですか?」
「ああ、それはコモチシダだ。これも南のほうでよく育つ種類で、根茎は腰や膝など関節によく効く。同じシダだが、タカワラビの茎は黄褐色の毛で覆われていてだね」
そんなふうに、毎日が勉強で、毎日が楽しい。薬師のデ・ヴァレスや庭師はときどきお茶会を催してくれるし、そのお茶も薬草茶が多くてどうやって作るのかを尋ねて自分でも作ってみる、というのは今までにない経験で、いいものができたら弟にも送るようになった。
そろそろ私にも作業小屋が必要だろう、なんて話が持ち上がってきたころ。
裏庭に、小さな来客があった。
メイド時代と違って、食堂ではご飯は食べない。庭師にはそれぞれ作業小屋があって、ご飯を食堂でもらってきてそこで食べる。ただ、私には作業小屋なんてないから、裏庭で一人食べることが日課になった。
幸い、薬師のデ・ヴァレスは優しい人で、雑草と薬草の見分け方を教えてくれたおかげで、私は雑草駆除と落ち葉掃除という重大な任務をこなせるようになった。一週間もすれば薬師のデ・ヴァレスは熟練の庭師を連れてきて、薬草の生育に適した場所の作り方を教わり、裏庭の一角を習ったとおりの土地に作り変えるよう命じられた。
しかし、これが意外と楽しい。飼育舎から厩肥を運び、庭師の管理している倉庫からも腐葉土や石灰をもらってきて混ぜる。日陰を作るために藁の屋根を木に設置し、水やりを欠かさない。初夏になって雑草があちこちに生えてきては抜き、堆肥置き場に持っていく。
日々、肉体労働は確かに疲れるが、メイド時代と違って充実感はとてもあり、薬師のデ・ヴァレスや庭師たちから習うことも多い。特に、薬師のデ・ヴァレスは薬草学の知識を惜しげもなく私へ伝授してくれた。
「いいかい、エイダ。こっちのシダはタカワラビと言って、根や茎を乾燥させて薬にするんだ。主に肝臓や腎臓に効果がある。これは南の高温多湿な場所でしか育たないから、本当は温室を作るべきなんだが、ここは条件が合ったらしくうまく育っている。大切にしてやってくれ」
「はい、分かりました! こっちの草も、シダですか?」
「ああ、それはコモチシダだ。これも南のほうでよく育つ種類で、根茎は腰や膝など関節によく効く。同じシダだが、タカワラビの茎は黄褐色の毛で覆われていてだね」
そんなふうに、毎日が勉強で、毎日が楽しい。薬師のデ・ヴァレスや庭師はときどきお茶会を催してくれるし、そのお茶も薬草茶が多くてどうやって作るのかを尋ねて自分でも作ってみる、というのは今までにない経験で、いいものができたら弟にも送るようになった。
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