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番外編

ロックな男 7

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 フェスの観客人質騒ぎは、あの状況で考えられ得るいちばん穏便なやり方で幕を閉じた。と、聞いている。結末を又聞きしたヒューイから聞いた話なので、ヘザーも話から想像するしかない。
 軍の人間がすでに捕まっている頭目の説得に成功し、会場を占拠している手下たちに向かって、頭目が投降を呼びかけたらしいのだ。

 なあ野郎ども。お前らの気持ちは嬉しいが、俺が解放されたところで手配犯という肩書は消えねえぞ。逃げ続けるか、この国を出て行くしかねえだろう。それでこれまでみたいな「仕事」ができると思うか? できねえだろう。
 ここは皆で禊を済ませようじゃないか。おつとめを終えて身ぎれいになって、また集まりゃあいい。次は捕まんねえようにしねえとな!

 ブリキ製の拡声器を使って、頭目はちょっと聞き捨てならないことも言っていたようだが、そこで手下たちは投降をはじめたらしい。日付が変わる少し前のことだった。
 ちなみに、軍は「手下を説得してくれたら、頭目の刑期を短くする」という条件を最初に出した。しかし、彼は首を縦に振らなかった。そこで「数年前に亡くなった頭目の妻のために、立派な墓を建てる」という条件に切り替えると、彼は頷いたのだと聞いている。

 また、人質事件はそこで終わったが、騒ぎは次の日になっても続いていた。
 フェスが中止になってしまったことに文句を言いに来た人たちや、チケットの払い戻しを求める人たちが港へ集まったのだ。だが、もともと出演する予定だったバンドの人たちも集まっていて、急遽、埋め合わせライブが行われた。
 ヘザーも、ファーガスが慌てて迎えに来てくれたので──彼は現場がどうなったのかを確かめるため、野次馬感覚で港へ足を伸ばしたらしい──参加することができた。
 ほかの仕事が入っているバンドや、次の仕事のために王都を発たなくてはいけないバンドも多かったから、規模は当初の予定の半分以下。港の倉庫を一つだけ使って行われたイベントとなったが、だからこそ濃厚で、最高にエキサイティングな時間を過ごすことができたのだった。

 そしてファーガスがカナルヴィルへ帰る日。
 ヘザーは彼を見送るため、乗合馬車が行き交う駅まで出かけた。
 ファーガスは王都に来た時みたいに大きなカバンを背負っていて、ヘザーの姿を見つけると「あれ、お前一人か?」と言った。
「一人っていうか……アイリーンと馬車で来たの」
 ヒューイは仕事だし、彼とファーガスを会わせたくない気持ちがあった。またファーガスがヒューイに絡んだりしたら嫌なのと、「沈黙の墓守」について突っ込まれたりしたらまずいなとも思う。
 駅まで一緒に来たアイリーンは、馬車の中でヘザーを待ってくれている。ウィルクス夫人や上流階級の人間からすればこれはヘザーの「一人行動」と言えるらしいのだが、ヘザーは未だに「どこが一人??」と首をかしげたくなるし、ファーガスにとってもそうだと思う。
 また「こんな朝早い時間でも監視付きなのかよ」みたいなことを言われるのだろうなと予想して、ヘザーはちょっと俯いた。でも、ファーガスは前みたいなことは言わなかった。
 ヘザーの頭にぽんと手を置く。
「あー……いろいろ、悪かったな」
「……悪かった、って?」
 そこでヘザーは顔をあげた。ファーガスは宙のどこかを見て何かを考え、一度唇を結び、それから喋った。
「あのひと、俺が思ってたみたいなつまんねえ男じゃねえわ」
「……あのひとって、ヒューイのこと?」
「まあな。結婚式には来るからよ、お前ら二人、仲良くやれよな」
 やっぱりファーガスは気づいていたのだ。「沈黙の墓守」の中身がヒューイであったことを。
 ヘザーが「うん!」と頷いた時、「マドルカス行きの乗合馬車、出発します」とアナウンスが聞こえた。
「じゃあな」
「うん。伯父さんと……うちの父さんに会ったら、よろしく言っといて!」
「おうよ!」
 彼は親指を立ててヘザーを振り返り、馬車に乗り込んでいった。
 ヘザーは、馬車が見えなくなるまで見送った。



 数日後。
 ヒューイとの約束の日、王立歌劇場は多くの人で賑わっていた。
 ヘザーはそれほど歌劇に興味はないが、ヒューイに会えるのはすごく嬉しい。さらに、今夜はなんとお目付け役のウィルクス夫人がいないのである。
 夫人は夫人で予定が入っていたらしく、「日付が変わる前にヘザーを送り届けること」を条件に二人での夜の外出を許可してくれた。

「ヘザー、今夜の席はこっちだ」
 ヒューイが肘を差し出したので、ヘザーはべったりと彼にくっついた。しかし、彼はヘザーが予想していなかった方向へ歩いていく。そしてヘザーは通ったことのない通路を歩き、使ったことのない階段をのぼりだした。
「足元に気をつけたまえ」
「うん。でも、あれ? こっちでいいの?」
 この歌劇場には何度か来ているが、いつもはこんなところは通らなかった。
 ヘザーが戸惑っているうちに、ピカピカの大理石の廊下に出る。廊下の真ん中には赤い絨毯が敷かれていて、天井が高くて、所々に置いてある花瓶に活けられた花はやたらとゴージャスだ。明らかにお金のかかった空間だった。
 ヒューイはその廊下に並んでいる扉の一つを開けた。
「今夜はここから歌劇を観る」
「え? え?」
 部屋の中には、ふかふかの長椅子とテーブルが置いてあった。テーブルの上には氷を使って冷やした状態のシャンパンとグラス、それからなんだか贅沢そうなフルーツの盛り合わせが置いてある。キャビアやサーモン、チーズの乗ったクラッカーまで。
「え? これ、どしたの? これって……」
 ただの居心地良さそうな部屋である。そう伝えようとすると、ヒューイは部屋の奥にあったぶ厚いカーテンを開けた。そこはバルコニーのようになっていて、椅子が二つ並べておいてあり、舞台を観ることができるようになっていたのだ。
「ボックス席を契約した」
「ええー! ここがそうなんだ?」
 ヘザーはバルコニーから身を乗り出した。ここからは、いつも──いつもといっても、数えるほどだが──座っていた客席を見下ろすことができる。下の客席に座っていた時は、「あの、高級な集合住宅のバルコニーのような場所は、いったいどうなっているのだろう」と不思議に思っていた。こんなに贅沢な空間だったとは。
「軽食は用意してあるが……ほかに必要なものがあれば言いたまえ」
 ヒューイはそう言って、テーブルの上のメニューを指さした。別のお酒や、サンドイッチなんかが欲しくなったら、頼んでおけば幕間までに届けてもらえるらしい。
「すごーい! こんな贅沢して、ほんとにいいの?」
「ああ。始まるまでにまだ時間があるな。少し……休もう」
 ヒューイを振り返ると、彼はヘザーの肩を抱いて、長椅子へと誘った。その際、カーテンをきっちりと閉めた。カーテンは防音効果に優れているのか、途端に会場のざわめきが小さなものになる。

 二人で並んだ状態で長椅子に落ち着いたところで、ヒューイは語りだした。
「通常の座席では、君は後ろの人間に気を遣わなくてはいけないだろう?」
「あ、うん。まあ」
 ヘザーは、女にしては飛びぬけて背が高い。歌劇場の客席にはそれなりの段差が付いているから、他の女性たちは髪の毛を高い位置で派手に結い上げたり、お洒落な帽子を被ったまま観劇している。しかし、ヘザーはそれを遠慮しなくてはならないくらい、規格外であった。
 今夜の髪型も、サイドを持ち上げて後ろで留めただけのシンプルなものだ。ドレスに対して髪型が貧相になったので、アイリーンがコテを使ってカールさせてくれた。
「ボックス席ならば、誰にも気兼ねせずに観劇できるのではないか」
「う、うん……」
 ヘザーは改めて部屋の中を見渡した。ここはきっと、すごく高級な席だ。ヒューイは金銭管理をしっかりしているから、この席を契約したせいでバークレイ家が傾くことはないのだろうけれど、ヘザーが「その日のヘアスタイルに気を使う必要がない」という理由だけで契約したのだろうか。
「ヘザー。僕は君に不自由なく暮らしてほしいと思っている……そう言ったはずだが、」
「う、うん」
 しかしこれは不自由がないどころか、とんでもない贅沢に思えた。
 ヒューイはそこでテーブルの上に置いた皿から、大きな粒の連なったブドウを手に取った。その皮を、手早く綺麗に剥いていく。
「言い換えれば、僕は君を甘やかしたくてたまらないのだろうな」
「……え?」
「だが、不自由させたくないと言いながら、君に窮屈な思いを強いることもある。君を妻に迎えるためには、この真逆の二つの要素はどうしても切り離すことができないと、僕は判断した」
 ヒューイは剥き終わったブドウを何粒か乗せた皿を手に取り、小さなフォークでそれを突き刺すと、ヘザーの口へ運ぶ。
「わかってもらえるだろうか」
「う、うん……!」
 彼は返事をしたヘザーの口に、そっとブドウを入れた。そして残りの粒が乗った皿をヘザーに持たせる。
 ヘザーはブドウをもぐもぐしながら思った。
 自分たち二人の身分差や、育った環境の違い、そこから生じたであろう価値観の違いはこれまでに何度か話し合ってきたと思う。しかしそれは飽く迄も二人の中ではじまり、そして終わったことだった。
 今回ヒューイは第三者──それも身分的にはヘザー側──のファーガスに言われたことを気にしていて、でも自分なりに考えて、そういう結論に至ったのだろう。
「うん。ヒューイの言ってること、わかるよ」
 ヘザーの夢は、ヒューイと結婚して一生イチャイチャラブラブエロエロすることだから、彼の妻になるためにクリアしなくてはいけない課題は、すべて乗り越えるつもりだ。
「ヒューイが応援してくれるなら、頑張れる……」
「ああ。もちろんフォローはする」

 嬉しい。コスプレして脇目もふらずヘザーのもとに来てくれたのも嬉しかったけれど。
 君を甘やかしたい。ヒューイが口にしたその言葉は、「好きだ」とか「愛している」とかよりも、ヘザーの心に甘く優しく響いた。
 彼はつまらない人なんかじゃない。こんなにもヘザーの心を揺さぶることができるのは、ヒューイただ一人だけ。最高に情熱的で、ロックな人だと、ヘザーは思っている。

「あっ」
 最後のブドウを口に運んだとき、フォークから粒がぽろりと外れて、ヘザーの胸元に落ちた。胸の谷間とドレスの襟ぐりの三角の隙間に、それはスポッと嵌まった。
「ブドウが落ちちゃった」
「……うん?」
「ねえ、取って」
 ヒューイはナプキンで指を拭いていたが、ヘザーの言葉に顔をあげる。
 ヘザーは左右から自分の胸をぎゅっと挟んで、持ち上げた。
「ねえねえ、取って~」
「なっ……!?」
 彼はブドウが落ちた位置を知って目を見開き、長椅子から腰を上げかける。
「取ってえ。」
「…………。」
 ヘザーが追い打ちをかけると、ヒューイはそこに指を伸ばしかけ、一度動きを止めてカーテンと扉が閉まっているかを確認した。カーテンは分厚いから、会場のざわめきは遠くのものに聞こえる。
 ここは二人だけの空間。
 ヒューイもそう考えたのだろうか。彼は指を引っ込め、ヘザーの胸元に顔を近づけたのだった。

 ヒューイの唇がブドウを受け止めたかと思うと、彼の指はドレスの襟ぐりにかかった。そこをくいっと引き下げられて、ヘザーの胸が露わになる。
「あ……」
 正直、ここまで期待していたわけではなかったヘザーだ。
 自分がちょっとエッチないたずらをして、ヒューイが慌てふためく。そういうやり取りになるだろうと思っていたのだ。
 ヒューイの手がヘザーの肩にかかって、身体は長椅子に押し倒されていった。
「あ。こんな……あっ、ああ、」
 嬉しい。ヒューイからのサプライズエロはすごく嬉しい。けど、こんなことまでしちゃっていいの? そう訊ねたかったが胸の先を吸われて言葉が続かない。
「……はじめたのは、君だぞ」
「ん、うん……」
 ヒューイが耳元で囁いたので、ヘザーはうっとりとなった。ああ、はじめてよかった~とも思った。すっかりその気になって、彼の首に腕を回す。

 第三者──たとえばファーガスとか──から見た自分たちは、ヘザーのほうが頑張って背伸びして、ヒューイに合わせようとしているみたいに見えるらしいけれど、でも、ちっともそんなことはない。
 今みたいに、ヒューイが、ヘザーのところまで降りてきてくれることのほうがずっと多いのだ。

 口づけを交わして互いの舌を絡ませているとき、「あれ? でも、最後まではできないんじゃない?」と、ふと思った。準備をしていないし、ヒューイが避妊薬なしで性行為するとも思えない。
 どこかで止めないと、ほんとうに止まらなくなってしまう。
「あっ、ヒュ……ああっ」
 ヒューイの舌がヘザーの首筋を滑って、再び胸の頂を口に含む。もう片方の乳首を指で弄られて、ヘザーは足を開いて彼の腰を絡めとる。そしてヒューイの硬くなった部分に、自分の敏感な場所をぐいぐい押しつけた。
「っ……ヘザー……!」
「んん、あふっ、」
 これもう止めるの無理だ。ヒューイとヤリたい。入れるのが無理なら、せめていかせてほしい。
 ヘザーはそう思って懸命に腰を押しつけたが、
「ヘザー、」
 ヒューイが諭すように名前を呼んで、自分の身体を起こす。
 ここで止めるのはちょっと、いや、かなりつらい。
「やめちゃヤダ……」
「ああ」
 涙声で訴えると、ヒューイは「わかっている」とでも言いたそうに頷いて、ヘザーのドレスを捲って下穿きを脱がせにかかる。その後、ヘザーの足の間で膝立ちになって、自分のベルトを外し始めた。
 ひょっとして、避妊薬の準備があるのだろうか。ヘザーが驚いて少し身体を起こすと、ヒューイは首を振る。
「ねえ、もしかして……」
「いや、最後まではしない」
「え、でも、」
 使うとこ思い切り出しといて、最後までしない?
 疑問を口にしようと思ったが、ヒューイがヘザーの足を掴んで、思い切り開かせる。そして濡れた襞に添わせるようにして、自身をヘザーのお腹の上に置いた。
「……?」
 まだヒューイの意図がつかめずにいると、今度は彼はヘザーの足を閉じさせた。ヘザーの位置からは、自分の足の間からヒューイのものが生えているように見える。
「!! こ、これ……」
「君がよく濡れているから、これで互いに満足できると思う」
 ヒューイはそう言って、ゆっくりと腰を引き、また戻す。ヘザーは彼のものが往復する様子に見入った。
「あっ、あん……」
 こ、これは。これはえっちだ……。
 ヒューイは自身に濡れた蜜を纏わせ、淫らな音を立てながら、腰を動かしている。彼の先端がヘザーの突起をしつこく擦ったかと思うと、また足を開かされ、違ったかたちで刺激された。
「あっ……それいい、それいいっ」
「……これか?」
「ちが、あっ、でもそれもいい、それもいいっ」
「ど、どれだ?」
「あっ、うん。全部いい、全部……あっ、イく! イっちゃう!!」
「!? こ、こら、ヘザー! シッ……」
「むぐ。」
 彼はヘザーに覆い被さってその口を塞いだ。
 ふたり、無言で見つめ合う。カーテンの向こうからは、美しい歌声が聞こえた。
 夢中で気づかなかったが、すでに歌劇が始まっていたのだ。
「ヘザー」
 ヒューイは人差し指を自分の口元にあてる。それはとても優しい諭し方で、ヘザーは胸がいっぱいになる。ヘザーが小さく頷くと、彼はもう一度動き出した。



「これで大丈夫だと思うが……」
「うん、ありがとう」
 ふたりで果てたあと、ヒューイはヘザーの乱れた髪の毛を直してくれた。
 今夜のヘアスタイルには編み込みなどが無く、シンプルに一か所を留めただけだったからヒューイにもなんとか直すことができたようだった。
 それからシャンパンを飲んで、満足のため息をついて、長椅子に背中を預けた。
「歌劇、始まっちゃったね……」
「ああ」
 カーテンの向こうから聞こえてくるのは、自分の仕える王女に恋心を抱く騎士のことを歌った曲のようだ。王女の輿入れの護衛に抜擢され、騎士はここで思いを断ち切らねばと、悲壮な決意をする。身分が違い過ぎるから、ただ想うことしかできない、切ない曲。
「少し休んだら、帰るか……」
 ヒューイの言葉に、ヘザーは頷いた。たしかにあんなことをした後で、しれっと観劇するのは気が引ける。それに観劇するための集中力も、絶頂と一緒にどこかに行ってしまった。
「なんか、ごめんねえ……」
「……何がだ?」
「せっかくの歌劇……」
「君のせいだけではないだろう。君が始めて、僕も乗った……そういうことだ」
「うん……」
 ヘザーを気遣ってなのか、彼の腕が肩に回された。ヘザーはそのまま頭を傾け、ヒューイと寄り添う。
 自分たちの身分差など、王女と騎士に比べたら障害と呼べるレベルではないだろう。その点は歌劇の二人に比べてかなりの幸せ者だ。
 でも、イチャイチャが終わった後のこの空気が切ない。早く結婚して、朝まで抱き合って一緒に眠りたい。
 あれほど濃密な空気を分かち合ったのに、これから別々の場所に帰らなくてはいけないなんて、淋しくて涙が出てきそうだった。

 歌はまだ聞こえている。観客のざわめきはこもって聞こえたのに、プロの歌手の声は歌詞まではっきりと聞き取れるからすごい。
 だから、歌劇が急展開を迎えているのもわかった。
 騎士が惚れていた王女……実は、本物の王女は幼いころに亡くなっていたらしい。だが、政略結婚によって強国と縁を結ぶため、王女がいなくては国が困ったことになる。そこで国王夫妻や宰相たちによって王女の死は伏せられ、替え玉が用意されていたのだ。つまり、騎士が片想いしていたのは、ほんとうは王女ではない女性。それは、どこの誰なのか。そして王女が嫁ぐことになっていたはずの国は……。
 その歌詞を聴き取ったヘザーはぱっと顔をあげた。
「え? え? 気になるう!」
「たしかに気になるな」
 ヒューイも椅子から身体を起こす。そして二人、見つめ合った。
「あははは!」
「フッ……」
 なんだか、すごくおかしかった。
 ヘザーが気になった俗っぽい展開が、ヒューイも気になったということ。そして、先ほどまでの名残惜しくて切ない空気がどこかへ吹き飛んでしまったこと。
 ヘザーは声をあげて笑い、ヒューイもまた肩を揺らした。
「では、最後まで観て行くか」
「うん!」
 カーテンを開ける前に、口づけを交わした。
 それは性的な熱いものではなく、二人の気持ちが同じだということを確認するような、軽い、でも確かな口づけだった。



(番外編:ロックな男 了)

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