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番外編

回顧録06~お父さんは娘の将来が心配です 1

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※※※
女子力のない娘の将来が心配になったヴァルデス。キャシディ家の父娘話。
※※※



 カナルヴィルの闘技場では多くの人間が働いている。剣士はもちろんそうだし、観客たちに軽食や土産物を売る売店の者、敷地内の清掃や修理を行う者たちもいる。剣士たちにマッサージを施したり、彼らの装備を洗ったり磨いたりする者もいた。
 そして有り難いことに、従業員たちのために浴場が設えてあった。主に試合を終えた剣士たちが身体を洗うために存在する施設ではあるが、従業員たちはこれを自由に──ただし、剣士が優先である──使って良いことになっていた。

 ヴァルデス・キャシディは長らくこの闘技場で剣士として働いていたが、娘のヘザーが舞台に上がったのを機に自分は引退をした。引退とはいっても剣士を辞めただけで、従業員は続けている。現在の仕事はチケットを捌いたり行列を整理したり、客同士の揉め事を諫めたり、観客席のゴミを片づけたり……といった雑用が主である。
 外で落ち葉を集めたりしていると、剣士時代の自分を知っている客に「本当に引退してしまったのか」「もう舞台へは上がらないのか」「娘との試合が観てみたかった」などと残念そうに言われるし、正直なところ、まだまだ現役でやっていきたい気持ちは自分にもあった。
 しかし、ヘザーとの試合を組まれてしまったら──観客は「父娘対決だ!」と大喜びだろうし、オーナー側からもそれでやってみないかという打診はあったのだ──ヴァルデスは割り切った試合ができないような気がしていた。
 闘技場での試合は、一般の飛び入り参加がない限りは、戦う前から勝敗が決められていることが殆どだ。剣士の仕事は、派手で華やかな剣技で観客たちを盛り上げることなのだ。だから、明らかに自分より技量が劣っている相手に負けなくてはいけないこともある。それも観客を沸かせるためだからだ。
 ヴァルデスは何度もヘザーとの対決を頭の中に思い浮かべてみた。お互いに承知の上とはいえ、ヘザーに黒星をつけるのはすごく心苦しい。かと言って、娘に負けるのもなんだか嫌だった。仕事が終わった後も引き摺ってしまう気がして、結局ヴァルデスは引退を決めた。
 裏方の仕事の給料は剣士よりも安いのだが、ヘザーの給料──と言ってもこちらもまだ新人剣士の域を出ていないので、それほど貰ってはいない──と合わせれば父娘二人が充分に食べていける金額であった。



 この日仕事を終えたヴァルデスは、闘技場内の浴場で汗を流してから剣士たちの控室にヘザーを迎えに行った。ヘザーも同じころに仕事を終え、湯を使った後は帰る準備をしている筈である。二人はなるべく同じシフトで働くことにしているのだ。そうすれば入浴を済ませ、帰宅がてら何か食べていくことが出来る。家では何もする必要がなくなるのだ。

 廊下の角を曲がった時、背の高い赤毛の持ち主が目に入り、すぐにヘザーだと分かった。
「おう、ヘザー! 帰るぞ! 忘れ物ねえか!?」
「あっ。父さん」
 父親の声に気づくとヘザーは振り向いて、手に持っていた何かを掲げてみせる。それは小さなブーケ、に見えた。
「あ? なんだぁ?」
「見て見て、お花! 貰っちゃったー」
 ヴァルデスにはヘザーの姿しか目に入っていなかったのだが、彼女の近くにはひょろりとした若者が立っているではないか。この男はヘザーのファンで、剣士の控室まで花を持ってきたのだ。自分にも経験があるので瞬時にそこまで理解した。
 しかし若者はヴァルデスの姿を見て、一歩下がる。
「え? ……え? この人、君の……お、お父さんなの?」
「うん。父なの。前はここで剣士やってたのよ」
「あ、ああ……そ、そうなんだ。あの、じゃ、俺はこれで……!」
「えっ? あれ? サインとか、しなくていいのー?」
 若者はヘザーの呼びかけに振り返ることなく、急ぎ足でいなくなってしまった。

「ええー? サイン欲しいって言ってたのに」
「あー、あー、サインなんかいいって。あいつ、純粋なファンじゃねえな」
「え……?」
 追いかけようとしたヘザーを遮ると、彼女は不思議そうに首を傾げた。
「まあ、お前のファンなのは確かだろうけどよ。でも、『あわよくばもっとお近づきになりたい』って下心もムンムンだったな」
「……そうなの?」
「おい、まさか、あの男を好きだとか言うんじゃねえだろうな」
「別に言わないけど。でも、結構イケメンだったよね」
「やめとけやめとけ。父親の登場に尻尾巻いて逃げる男なんか」
「ふーん……」
「『ふーん』じゃねえだろ。お前、ああいう輩には気を許すなよ」
 何も分かっていないようなヘザーの返事に、ヴァルデスは心配になる。

 親のひいき目かもしれないが、ヘザーはなかなかの美人だと思う。ちょっとばかり背が高すぎるが、明るくてさっぱりしていて、性格もいい。だが、もうすぐ十七になるというのにまったく色気がない。異性に対する警戒心もそれはそれは薄いものだった。恋人がいる気配もなければ、好きな男がいる様子もない。
 道行く男のイケメンチェックなどはしている模様だが、それは男が女を見て「美人だ」「胸がでかい」などと、好意や愛情とは全く別の次元で騒いでいるのと同じものであろう。
 父親としては安心すべきなのかもしれないが、ここまで色気も浮いた話もないと、彼女の将来が心配になってくるのだ。
 かといって変な男に惚れられても困る。交際を反対する羽目に陥った場合「父さんに言われたくない」とか「父さんだって女のシュミ悪いじゃない」とか反論されると、ヴァルデスは何も言えなくなってしまうのだから。

 はっきり言って、ヘザーは一人でも生きていけるタイプの女だ。剣士を辞めたとしても何か別の仕事を探して、自分の口を自分で養うくらいのことはやってのけるだろう。
 しかし、やはり親としては、好きな男を見つけて一緒になってほしいと思う。ヘザーが一方的に好きなだけではだめだ。ヘザーに敬意と愛情を注いで尽くしてくれる男でなくては。
 ただ、そんな男はどこにいるというのだろう。
 このまま剣士を続けるならば、気の合う仲間の誰かと深い仲になるのかもしれない。そこでヴァルデスは現在闘技場で働いている若い男の顔を思い浮かべてみる。あまりピンと来ないが、まあ、闘技場仲間が無難なところだよな、と考えた。
 そして闘技場の男──剣士でも、他の従業員でも──と一緒になるとしたら、たぶん、ヘザーは家庭に入って相手の仕事をサポートしたり、母親になったりする。となると……。
 ヴァルデスは顔を顰めた。
 家庭に入ったら、家事というものをしなくてはいけない。これまで気ままに総菜を買ってきたり外に食べに行ったりしていたが、結婚後もそれではさすがにまずいだろう。それに、裁縫や洗濯もある。非常にまずい。今の状態で嫁に出したら、姑に苛められるか追い出されるかするのではないか。家庭に入った女の仕事を全うできなければ、好き合って一緒になった筈の男の愛情だって、目減りする可能性があるのではないか。

「おう、ヘザー」
「うん?」
「次の休みによ、一緒にメシ作ってみねえか」
「なに? どうしたの、急に」
「……いや、たまには、そういうのもよくねえか?」
「別にやってみてもいいけど……」
「よし、じゃ、決まりだな!」
 戸惑うヘザーを押し切る形で約束をしつつ、闘技場の出入り口に向かって歩いていると、売店の前でヘザーが足を止めた。
「ねえ、父さん。ビール飲みたい。買ってー」
 こうして自分の袖を引っ張り、目をきらきらさせながら甘えてくるヘザーは本当に可愛い。が、それは十六歳の女の子がねだるものではない。
「わかった、わかった。買ってやるから」
「やったあ。仕事終わりのビールはほんと最高なんだよね」
 娘がオッサン化しつつあることにも不安を覚えたが、まずは二人で料理を勉強しよう。娘が嫁に行った先でやって行けるようにするのも親の役目だ。後で本屋にも寄って、料理の本を買わなくては。そう計画を立てつつ、娘にビールを買ってやるために財布を取り出した。



「あつ! あっつうぅうう!!」
「いやあああ、こわいー!」

 初めての料理は熾烈を極めた。

 ヘザーに何が作ってみたいかを訊ねると、彼女は「挽き肉とチーズの入った揚げパイ」と答えた。ヘザーの好物の一つである。しかし本を読んでみると、パイ生地を作るところから始めなくてはならないらしい。パイ生地は難しいと、昔どこかで聞いたような気がした。ヴァルデスは「別のにしてくれ」と頼んだ。
 するとヘザーは「じゃあ、でっかい肉団子!」と言った。挽き肉と刻んだ玉ねぎやら何やらを捏ねて熱した油に入れればよいようだ。ヴァルデスは「じゃあ決まりだ」と頷いた。揚げパイに比べたら容易に思えてしまったのだ。
 それにヴァルデスは家庭料理を作ったことはないが、職場の仲間と遊びに行った先で串に刺した肉を焼いた事ならばある。今回の料理もそれの延長上にあるものだと決めつけていたが、大間違いであった。

「ちょ、なんだこりゃ……アチッ!」
 刻んだ玉ねぎと調味料と挽き肉を混ぜ、団子にするところまでは良かった。玉ねぎは「みじん切り」とはとても呼べない大きさだったし、団子の形もかなりいびつではあったが、そこまではよかったのだ。
 熱した油の鍋に団子を投入した後に問題は起こった。
 バチッ、ボン、ボンッとものすごい音がして、油や肉片が飛び散り始めたのである。中身を取り出すか火を消すかした方が良いのではないかと思うのだが、鍋は狂ったように破裂音を奏でながら灼熱の破片をまき散らしている。かまどには最早近づくことが出来なくなっていた。

「ね、ねえ、父さん。こわいよー」
「お、おう。ちょっと待て、今……うお、アッツウ!」
「ぎゃあああ、大丈夫、父さん? ねえ、もう、やだ。料理やめたい……」
「わかった、わかったから待ってろ。今、火を……あち! あっちい!」
「うわあああ、父さーん!!!」
 かまどに近づいては撃退されるということを繰り返していると、
「ちょっと、キャシディさん? 何かあったのかい!?」
 激しいノックの音と隣に住むおばさんの声がした。二人が大騒ぎしているのが聞こえ、非常事態でも起こったのかと心配して来てくれたらしい。確かに非常事態であった。彼女はキャシディ家のキッチンを見て目を剥いた。
「ちょっと! 早く火を止めないと、火事になるよ!」
「ぁあ? まじか!!」
 さすがにヴァルデスもこれ以上なくらいに焦った。濡らした布巾で鍋の取っ手を掴むと、ヘザーに「かまどの火を消しとけ!」と叫んで、自分は裏口から外に抜け、地面に鍋を置いた。

 飛び散った油や肉片で、ヴァルデスは顔と腕にやけどを負った。いくつかは水ぶくれになっているが、目に入らなかったのは不幸中の幸いである。
 肝心の肉団子は大部分が破裂によって失われていた挙句、僅かに残った方は焦げて黒くなっていて、食べられる代物ではなかった。
 油まみれになったかまど周辺の掃除も、他の洗い物も大変だった。
 仮に肉団子が成功していたとしても、準備と後片付けに時間がかかりすぎる。それでいて食べるのは一瞬である。
「料理って割に合わねえなあー」
「うん。怖かった。もうやりたくない……」
「そうだよなあ」
 もう一度キッチンに立とうとはもちろん思えず、外食に出かける気力もなく、この日は家にあったビスケットを二人で齧り、ぐったりとしたまま寝床に入ったのだった。



 自分たちに料理は無理だと悟ったが、ヴァルデスは裏庭で燻製を作るようになった。
 職場に燻製作りを趣味にしている男がおり、彼に料理の失敗談を話したところ、「外で燻製を作れば火事の心配はないし、油が飛んでくることも無い。何より酒のつまみになる。燻製はいいぞ」と、燻製作りを薦められたのである。時間はそれなりにかかるものの、揚げ物のようなスリルと恐怖が伴わないところが気に入った。
 それに、ヘザーと一緒に作った燻製を食べ、酒を飲みながらその日の出来事を語り合う時間をヴァルデスはもっと気に入った。

「ねえねえ、今度はさ、魚の燻製作ってみようよ」
「ああ、魚もいいなあ」
 ヘザーはテーブルの上にあったナッツとチーズの燻製を口の中にぽいと放り込むと、今度はウイスキーの入ったグラスを傾けた。
「かーっ。最高!」
「……。」
 娘と過ごす時間はとても楽しい。が、燻製作りを覚えたことで、彼女のオッサン化は激しく進行してしまったようだった。

 これでは本格的に貰い手が無くなってしまうのではないか……。そう心配し始めた矢先、またヘザーが花を貰っているところに出くわした。



「見て見て父さん! ほら、こんなおっきい花束!」
 控室前の廊下で、両手で抱えなくてはいけないほどの花束を持って、ヘザーは花の贈り主と楽しそうに喋っている。相手の男はきちんとした身なりの、金持ちっぽい若者であった。しかも、彼はヴァルデスの登場にも怯むことはなかった。
「ヴァルデス殿ですね! うちの両親があなたのファンだったんです」
「お? おお、そうか。そりゃありがてえ。よろしく伝えといてくれよ」
「はい、もちろんです!」
 ヴァルデスは彼と握手をしながら考える。父親相手にも礼儀正しく振る舞うということは、彼は、下心のない純粋なヘザーのファンなのかもしれない。こういう男なら、ヘザーの相手としてどうだろう……? 金持ちならヘザーが家事をする必要もない。ファンならば、ヘザーを崇めるように大切に扱ってくれるのではないか……?
 だが考え直す。ヘザーはどういう男が好みなのかは知らないが、一方的に崇めて尽くしてくれる男は、なんだかヘザーには似合わないように思えるのだ。ヘザーには……もっと、対等に振る舞える相手が似合っている気がしてならない。

 ヘザーのファンだという青年が去った後、ヴァルデスはヘザーの抱えていた花束を持ってやった。かさばって、歩く時に前が見えなくなりそうだからだ。そして娘を小突いた。
「お前、結構モテるんじゃねえのか」
「エヘン」
 ヘザーは腰に手を当てて胸を張った。
「あのな、照れるとか恥じらうとか……もうちょっと、そういうのはねえのか」
「なんで?」
「……いや、いい……」
 ヘザーの反応はまるで十歳の男の子である。日常においてはオッサン化していながら、異性関係が十歳男児。娘の生まれ持った性質を嘆くべきなのだろうか。それとも、荒っぽく育てすぎてしまったのだろうか。ヘザーの手本になるような女性を見つけて再婚しておくべきだったのだろうか?
 この時ヘザーは十七になったばかりだったが、ヴァルデスの頭の中には早くも「手遅れ」という文字が浮かんでいた。


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