嫌われ女騎士は塩対応だった堅物騎士様と蜜愛中! 愚者の花道

Canaan

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番外編

君のためにできること(物理) 1

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※※※
ヒューイの婚約者として正式にお披露目されたヘザー。
新しい友人ができたりトラブルに巻き込まれたり、愛を確かめ合ったりするお話。
※※※



 ジャーヴィス伯爵の屋敷はパーティーの招待客で大いに賑わっていた。
 ダンスホールは熱気が渦巻いているが、テラスへ続く大きな窓からは心地よい夜風がそよいでくる。

「少し……酔ってしまったみたいです」
「それは大変だ。庭へ出て風にあたろうか」

 若いカップルが寄り添いながらヘザーの脇をすり抜け、テラスへと向かっていった。
 ヘザーは彼らの後姿を見送りながら考えていた。
 いいなあ~、と。

 先ほどから周囲の人たちを観察していると、熱愛中とみられる恋人たちは何かと理由を付けて夜の庭へと出て行っている。
 彼らはそうして生け垣や茂みの影に潜み、イチャイチャしているに違いないのである。
 もちろんヘザーも、ヒューイと夜の庭でイチャイチャしてみたかったのである!



 うらやましい気持ちで暗い庭の方を眺めていると、知り合いと話をしていたヒューイが戻ってきた。
「待たせてすまない。どうする、何か食べるか?」
 彼はヘザーの肘に手を添え、立食コーナーの方へ誘導しようとした。が、ヘザーの頭の中は夜の庭のことでいっぱいである。

 ヒューイの方へ寄りかかり、ちょっと言ってみた。
「……あのね、酔っちゃったみたーい」
「君が酔っぱらうだって?」
 一瞬の間もなく疑問の声があがった。
 今日飲んだお酒は軽いシャンパンとワインだけで、彼の言う通り、ヘザーが酔っぱらうほどのものではなかった。
 だがヘザーは食い下がった。
「でも、なんか暑いのよね」

 するとヒューイはヘザーから身を離し、向かい合うようにして立つと顔を覗き込んでくる。
「ひょっとして具合が悪いのか? 熱は?」
 彼は真剣な表情でヘザーを観察し、額や頬、首筋に触れて熱の有無を確かめようとしてきた。
「あ、いえ。その……」
「熱はないようだが……今夜はもう引き上げるか?」
「……。」
 そういうつもりではなかったのだが。
 煩悩にまみれた邪な言動で誤解させ、心配までさせてしまい、悪いことをしたと思った。

「や、やっぱり平気。気のせいだったみたい」
「……本当か? 無理はするなよ」
 ヒューイはかなり心配しているようだ。
 それもその筈、今夜は二人が婚約者同士として参加した初めてのパーティーだからである。
 彼は、緊張のせいでヘザーの調子が悪くなったと考えたらしかった。
 確かにはじめこそは緊張もしたが、たくさんの人に挨拶し、ヒューイの知り合いたちと踊り、いい感じに緊張の糸が解けてきたヘザーは、さっそく夜の庭に興味を持ってしまったのだった。

 さらにヒューイは周囲を見渡し、ヘザーに耳打ちした。
「それとも……誰かに何か言われたりしたのか」
 ヘザーの出自──騎士になる前に、闘技場で剣士をやっていたことだ──は大変珍しがられた。
 感心したように、或いは面白がって話をしに来る者もいたし、話しかけには来ないが遠巻きにちらちらと視線をよこす者も多かった。
 ヒューイはヘザーが苛められたのではないかとも疑っているのだ。
 二人きりになりたかっただけのヘザーはますますきまりが悪くなる。

「ううん、ほんとに平気。緊張してるせいかしら。それで感覚がおかしいだけかも」
 大嘘であるが、ヒューイを安心させるためにはこう言うしかあるまい。
 彼はまだ訝しげにヘザーを見ていたが、ふと何かに気付いたようだ。そして胸元を指し示す。
「飾りが曲がっているぞ」
「え? ほんと?」
 ヘザーのドレスの胸元にはリボンがついていた。大きな飾りだが、生地と色合いのおかげで、ちゃんと大人の女性に似合うようなシックなデザインになっている。
 自分の胸元を見下ろして軽く手で整えてみるが、正面から見ないことにはどうにもならない。
「直った?」
「右の部分が大きすぎるな」
「右……こっち?」
「いや、そっちじゃない。君から見て……」
 これでは埒が明かないと考えたのか、ヒューイは首を振った。
「来たまえ。僕が整えてやる」

 言われたとおりに前に出て、ヒューイがやり易いようにする。
 ヘザーのお披露目も兼ねたパーティーだからだろうか、今夜の彼はいつも以上に世話焼きだ。何度も首を傾げ、様々な角度から確認しながらリボンを整えてくれている。

 その際、ヒューイの手の甲がヘザーの乳房に触れた。
 触れたというよりは「当たった」に近い無機質な接触だったし、ちょっと当たったくらいで今さら騒ぐような関係でもない。騒ぐような事でもないのだが、身体をくねくねさせながら、つい、言ってしまった。

「もう~。ヒューイはエッチだなぁ~」
「なっ……! 僕はただ……」
 僕は真面目にやっているのにそんなこと考えるなんて信じられない! 心配して損した! とでも言いたげな表情で、ヒューイは唇をわなわなさせた。
「もういい、自分で直したまえ!」
「えへへ。ごめんごめん。だって、」
 怒ってるヒューイは色っぽくて可愛いんだもの。

 彼が真剣な時にからかったりしたら、どういう反応が返ってくるのか当然ヘザーは知っている。知っているうえで、彼を怒らせてその姿に悶えたいと思ってしまったのだ。
 夜のお庭作戦が失敗したのだから、これくらいよいではないかよいではないか……と正直に告げるわけにはいかないので「ごめんごめん」と繰り返す。



「よう、お二人さん!」
 そこに、聞き覚えのある声が背後から響いた。
 ヒューイの同僚のベネディクト・ラスキンである。王宮騎士でありラスキン伯爵家の息子なのだから、彼がこの夜会に参加していても何の不思議もない。

「ベネディクト。君も来ていたのか」
「ああ。今着いたとこだ。教官長も一緒にな」
「何……教官長も」
 ベネディクトは同伴した相手がどこかのレディではなく職場の上官だった事実にややげんなりしていたが、ヒューイは挨拶してくると言ってベネディクトにヘザーの相手を頼むと、人ごみの中を縫うように歩いて行ってしまった。

「それにしても、久しぶり。元気そうだね」
「ええ、ベネディクト殿も」
 彼と会うのはヘザーが騎士を辞めて以来のことだ。
「で、ヒューイとはどうよ。仲良くやってんの?」
「えへ。えへへ……」
「なんだよ、その嬉しそうな顔! うわあ、聞くんじゃなかったぜ……」
 照れやら決まり悪さやらがあって笑ってごまかしてしまったが、ベネディクトにはのろけにしか見えなかったようだ。
 彼はぼりぼりと頭をかいたが、唐突にヘザーに向き直る。
「しかし、ちょっと見ない間にすげえ綺麗になったな」
「ほんと? あのね、エステに通ってるの」
 週に一度か二度、オイルマッサージの店に行っている。それに今日のドレスはウィルクス夫人が一生懸命吟味してくれたものだし、髪だってアイリーンが時間をかけて結いあげてくれたものだ。
 だが、ベネディクトは首を振る。
「いや、そういうんじゃなくてさ。あ、もちろんドレスも髪も綺麗だけど、俺が言ってるのはさ、もっと、こう……内側から湧き出る何かっつうの?」
 そんなことを言われては、ますます照れ笑いでごまかすしかないではないか。だってヘザーはヒューイのことが好きで好きでしょうがないし、そのうえ彼も存分に愛を返してくれて、毎日が幸せで楽しいのだから。

 デレデレするヘザーを、ベネディクトはなんとも微妙な眼差しで──たぶん、アタマの悪い哀れな動物を見守る生温かい視線なのだろう──見つめていたが、ふと顔を近づけてきて小声になった。
「で、どうやってくっついたんだよ?」
「え」
 くっついた、とはもちろんヘザーとヒューイのことだ。

 あれは、ベネディクトに誘われて参加したキンバリー侯爵家のパーティーの夜だった。
 ヒューイが花嫁──どこかの貴族の令嬢──を選ぶだろうパーティー。
 ヘザーは不毛な恋を諦めようとしていて、彼がどんな女性を選ぶのか、見ておこうと思ったのだ。
 彼の選ぶ女性が自分とは正反対の、若くて可愛らしい娘であれば踏ん切りもつくだろうと、半ば悲壮な期待をしていた。
 それが、いつの間にか怒った顔のヒューイが目の前にやって来ていて……。

 ヘザーは当時のことを思い起こしたが、ベネディクトは詳しい話を知らないようだ。ヒューイが話していないのだ。
 ヒューイは恋の話で盛り上がるような性質ではないし、一方でベネディクトは大騒ぎするようなタイプだ。しかも他人の恋に対して。
 きっとからかわれるのが嫌だから口を噤んでいるのだろう。
 ……となると、ヘザーの口からあれこれ説明するのもまずい気がする。

「んー……」
 曖昧に言葉を濁しながらベネディクトをかわそうとしたが、
「やっぱり侯爵家のパーティーの日に何かあったんだろ? で? で?」
 彼はあきらめる様子もない。それどころかますます身を乗り出してきた。
「それはナイショってことで……」
「なんだよー! 教えてよー!」
「えへへ……」
 小声で話し込んでいたはずが、いつの間にかちょっとした騒ぎとなっていた。
 そこに、

「ヘザー・キャシディ……君は、ヘザー・キャシディじゃないかい?」
 自分の名を呼ぶものがいたので、そちらを振り向いた。
 若い男女が立っている。
 声をかけたのは男の方で、彼はヘザーの顔をまじまじと見つめ、もう一度口を開いた。
「君はヘザー・キャシディ……だよね?」
「ええ。そうだけど……」
 男女のどちらとも知らない顔だった。誰だろうと思いつつも返事をすると、男の顔がぱあっと明るく輝いた。
「やっぱり! そうじゃないかと思ったんだ!」
 嬉しそうにしているところからして、敵意はないのだろう。しかしいったい誰だ……と改めて目の前のカップルを観察する。絵に描いたような美男美女の組み合わせだ。二人とも髪が金色だから、ゴージャスなカップルでもある。
 特に女性の方は、瞳の色に合わせたであろう青い宝石のペンダントが、シャンデリアの明かりにキラキラと反射していて、その容貌に華を添えている。
 それから背格好と服装からして、さっき夜の庭に出て行った二人だと思い当たった。
 もう屋内へ戻ってきているということは、本格的にイチャイチャしに行ったわけではないのだろう。

「まあ。ではこの方が……」
「うん。彼女がそうだよ。私が君によく話して聞かせた……」
 ゴージャスなカップルはひそひそ話をはじめたが、すぐに男の方が気を取り直した。
「あ、これは失礼しました。私、オリヴィエ・グラックと申します。こちらの女性は私の婚約者のシンシア・マードック」
「はあ。ご存知の通り、ヘザー・キャシディです」
「実は昔、カナルヴィルの闘技場で君を見たことがあって」
「えっ。闘技場で?」
「ええ」
 カナルヴィルにいたのはだいぶ昔のことになるが、ヘザーの背の高さや髪の色は結構な強い印象を与える。
 彼……オリヴィエ・グラックもカナルヴィル出身なのだろうかと考えたが、名前や容貌が若干異国風だ。それなりに大きな街だから、移民や二世三世がいてもおかしい話ではなかった。
 彼のことを詳しく訊ねようとしたとき、少し離れたところからヒューイの声がした。

「ヘザー! こちらへ来たまえ。ウィルクス夫人のところへ案内する」
「え、もう帰るの?」
「……いいから来たまえ」
 ヘザーを迎えに来ることもなくオリヴィエたちに挨拶することもなく「こちらへ来い」とは、ヒューイにしてはずいぶんと失礼なふるまいだと思った。
 だがウィルクス夫人が呼んでいるようだから、急いだほうがいいだろう。ヘザーはベネディクトとオリヴィエたちに暇を告げて、ヒューイのところへ向かう。



「ウィルクス夫人、もう帰るって言ってた? それとも……」
 今夜はヘザーの付き添い役で夫人も参加している。彼女は知り合いに挨拶を済ませた後は、同じく付き添いでやって来ている女性たちと、休憩所でゆっくりと過ごす予定だと聞いていた。
 ヒューイは質問には答えてくれず、ヘザーの手を引っ張って早足で進む。なんだか怒っているようだ。しかも、彼の進む方向は休憩所とは別だ。
「ねえ、そっちじゃなくない?」
 そう言ってもやはりヒューイは何も答えてくれなかった。
 やっぱり彼は怒っている。自分が何をしたというのだ。オリヴィエがいつどうやって自分を知ったのか答えを知りたかったのに、あんなに失礼な形で邪魔をされたことに、今さらながら腹も立ってきた。

 何か一言言ってやろうとしたが、ひと気のない一角にたどり着いた途端、ヒューイはアルコーブの窪みの部分にヘザーを押しやった。
「ベネディクトと何を話していた。それにあの金髪の男は誰だ」
 ヘザーが口を開く前に、ヒューイが凄むような口調で言った。
「……え?」
「ベネディクトと必要以上に顔を寄せ合って、何を話していたと訊いているんだ」
 ようやくヘザーは気がついた。ヒューイは怒っているのではない、へそを曲げまくっているのだと。

 自分がいない間のヘザーの相手をベネディクトに頼んだのはヒューイであるというのに、思ったよりも親密そうに喋っていたのが気に入らないらしい。
 確かに遠目には楽しそうに見えたのかもしれないが、ヘザーは終始ヒューイのことでデレデレしていて、それを揶揄されていたようなものだ。
 ヒューイが気を揉む要因なんて何一つない。

「それからあの金髪の男は誰なんだ」
 オリヴィエの隣には可愛らしい婚約者がいたはずなのだが、ヒューイは気づかなかったようだ。彼女は小柄な女性であったから、ヘザーの陰になって見えなかっただけかもしれない。
「名前しか聞いてない。それに、彼には婚約者が……んっ」
 説明しようとしたが、腰を抱かれ、壁に押し付けられた状態で口づけを受ける。

 いつもの口づけとは違った。
 情熱的なのは同じだが、今回は力強くて執拗だ。
 口づけだけで「君は僕のものだ」と訴えているのがわかる。

 すごい。
 ヒューイのやきもち、すごい。

 彼が嫉妬深くて独占欲が強いことは知ってはいたけれど。
「んっ……こんなに、」
「君から離れるんじゃなかった」
 そう言ってヒューイは再びキスを続ける。

 彼の独占欲がこんなに激しいものだったなんて……嬉しい! ヒューイが独占欲丸出しになるのは嬉しい! イエーイ! もっとして!!

 嬉しいが、ただ妬かせるだけでは可哀想なので、ヘザーも試みる。
 ヒューイの首に腕を絡め、キスだけで「そんなに心配しないで」「私には貴方だけなのに」と、伝えられるかどうかを。

 婚約してから初めて参加したパーティーでは、夜の庭でいちゃつくことはできなかったが、アルコーブで熱く激しい口づけを交わすことができた。
 最高の夜だった……イエーイ!


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