愚者のオラトリオ

Canaan

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第1章 What's Going On?

03.言い訳の行方

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 ベネディクトは思う。
 ドラゴンは、森に棲む動物なのだろうか。
 ドラゴンには、馬車を犯したいなどという欲望があるのだろうか。

 ベネディクトは考える。
 あのイラストは、いったいどういう層に需要があるのだろう。
 教官長はあれを見て興奮できるのだろうか。

「おい。貴様の本ではないのか?」

 でも、考えている場合ではなかった。
 今は目の前にいる女の質問をどうにかしなくてはいけないのだから。

 ベネディクトは恐々と女と目を合わせた。
 身長は、女性にしてはちょっと高めだろうか。この国の女を全部集めて小さい順に並べたら、わりと後ろの方だろうなというだけで、抜きんでているわけではない。
 だが、彼女が放っているオーラは熟練した武人のような迫力があり、実際の体躯よりも大きく見える気がした。
 加えて彼女は見慣れぬ騎士服を纏っていた。上着にはフェルビア王国軍のバッジがついているからこの国の騎士なのだろう。でもどこの騎士団に所属しているのかまでは分からない。
 そして女は腰にカットラスをぶら下げている。一般的な騎士剣ではなく、船の上で振り回すのに向いていると言われるカットラス。これを身につけるのは、フェルビア海軍独自の慣習だった。
 海軍に所属する女騎士……そこで漸う彼女の正体に思いあたる。
 ステラ・ハサウェイ。
 彼女は、教官長の姪なのではないだろうか。

 彼女のつるんとした額に、ぐぐぐっと皺が寄った。
 ベネディクトが何も言わずにいるものだから、ステラ・ハサウェイは痺れを切らし始めたのだ。
 彼女はめちゃくちゃ怖そうだ。だいたい、女に貴様呼ばわりされたのは二十八年生きてきて初めてである。でも、一時的にだが彼女は自分の上官ということになる。
 この本がベネディクトのものだと知れたら──いや、本当は教官長のものなのだが──命は無いような気がしてきた。
 でも、「あんたの叔父さんの本ですよ」なんて告げても大丈夫なのだろうか。彼女は信じないかもしれない。信じないどころか「見苦しい言い訳をするな」と激怒するのではないだろうか。それに教官長を裏切ることにもなってしまう。

 立場的に逆らえない……。
 怒らせてもいけない……。

「あ、ああー! 俺のじゃないです! ほら、ここ!」
 ベネディクトはそう言って振り返り、同期のヒューイ・バークレイの机をばんばんと叩いた。
「ここに置いてあったんですよ」
 ヒューイ、すまん!
 心の中で詫びながら、ベネディクトは保身に走った。
「……貴様の腕から落ちたところを見たが?」
「うっ……いや、えー……ここにあったのが落ちて……それで、俺が拾ったんですよ! ほら、これで元通りです」
 苦しい言い訳をして彼女から本を受け取り、それをヒューイの机に置いた。教官長を裏切りはしなかったが、同期を裏切ったのである。

 直後、タイミングの悪いことにちょうどヒューイが出勤してきた。
 彼は自分の机の近くにいるベネディクトと見慣れぬ女を目にして不思議に思ったに違いない。ピクリと眉をあげつつ机の上に鞄を置こうとして、そこで本に気づいて目をむいた。
 表紙にはメスのヒツジと思しき動物に群がるオオカミたちが描かれていたからだ。ヒツジは四肢を取り押さえられ、身動きできない状態でオオカミたちに犯されている。
 ヒツジらしくその腹はモッコモコの毛むくじゃらだったが、やはり人間の女のようなふたつの膨らみが描かれていた。しかも感じまくっているようでその表情は人間の女みたいに婀娜っぽいし、正常位というのもやっぱり動物らしくはない。
 奇妙だが、いかがわしいものだということははっきりと見てとれる。

 ステラが一歩前へ出て、ヒューイと向かい合った。
「おい。この本は貴様のものか」
「あの……貴女は?」
「私はステラ・ハサウェイだ。本日から叔父のジェラルド・ハサウェイの代理を務めることになっている」
「ああ、話は伺っていましたが……貴女がそうでしたか。僕はヒューイ・バークレイです」
「では、バークレイ。質問の続きだ。この本は貴様のものなのか?」
「……僕の? いいえ」
 ヒューイは訳がわからないと言った表情だ。それもそうだろう。出勤してきたら、自分の机に未知のジャンル──彼にとってもそうなのだと思いたい──のエロ本が置いてあるのだ。状況を理解できるわけがない。
 そしてヒューイの態度は何かをごまかしているようにも見えなかった。
 ステラもそう感じたのだろうか。彼女は親指を使ってベネディクトを指した。
「こいつが、貴様のものだと言ったが?」
「うっ……」
 ベネディクトは小さく呻く。ヒューイはもう一度本の表紙を確認し、それからベネディクトを見た。
 目が合った瞬間、ものすごく申し訳なくなってきた。ベネディクトは彼に謝ろうと思った。我が身を案じるあまり、同期であり良き友人でもあるヒューイを生贄にしようとした……これはたいへんな裏切り行為であると、今さらながら気づいたのだ。
「ヒューイ、あの、すまん……」
「……僕の生徒から没収したということか?」
「えっ?」
「こういった類のものは……自室で個人的に楽しむだけならば、僕は何も言わないことにしている。だが、食堂や休憩室など共同の場に持ち込んだ者には、風紀を乱したとしてしかるべき処分を下さねばならん。誰がどこに持ち込んでいたのだ?」
「あ、ああ……」
 なんということだ。
 ヒューイは気高く厳しい男だ。だからこそ、同期であり親友でもあるベネディクトを疑うことなどしない。ベネディクトが自分に罪を押しつけようとしたなんて、彼は思いつきもしないのだろう。申し訳なさのあまり、胸が潰れそうになった。

「ハサウェイ教官長代理ィ!」
 ベネディクトはステラに向かって「気をつけ」のポーズをとり、そのあとで敬礼しながら声を張り上げた。
「すいません、俺のです!」
「……なんだと?」
「この! エロ本は! 俺のものです! すいませんでしたあああ!!!」



 エロ本は自分のものではないが、自分のものだと言わざるを得なかった。
 すると、ステラ・ハサウェイはベネディクトに無言で本を押しつけてよこした。没収や何らかの処分を覚悟したベネディクトであったが、ゴミを見るような視線を浴びせられた以外は何事もなかった。
 ……ドン引きするあまり、言葉が出てこなかっただけかもしれないが。
 大々的にばれてしまったので、もうどうでもいい。
 教官長に本を届けに行くのは、予定通り夕方でいいだろう。
 ベネディクトは午前中の授業をこなし、昼休みになると、教官たちが使う休憩室へ向かった。

 そこではヒューイがランチボックスを広げていた。
 いつものことだがご丁寧にクロスを敷いて、パストラミビーフとレタスとチーズの挟まったサンドイッチ、黒コショウの効いたチキン、揚げたイモ、蒸したブロッコリーにニンジン、カットしてあるオレンジを優雅に食している。
「珍しいな。君も弁当か?」
「いや、あとで食堂に行って食う。午後の一コマ目が空いてるんだ」
 一番混雑する時間帯は過ぎ去っているからゆっくりできるだろうが、人気のメニューは食べ尽くされてなくなってしまっているだろう。
 しかし、まずはヒューイに謝罪するほうが大事である。
「今朝は、悪かった! 咄嗟に、お前の本だって言っちゃってよ……」
「……。」
 ヒューイは観察するようにこちらをじっと見つめていたが、持っていたフォークを置き、声をひそめた。
「……感染症には気をつけたまえよ」
「え?」
「それから、知っているとは思うが。この国の法律では、家畜……誰かの所有物を犯した場合は、罰せられるぞ」
「え? ちょ、ちょっと……ちょっと待てよ」
 ヒューイはとんでもない勘違いをしている。いや、あんなことがあっては、そう思い込むのも無理はないかもしれない。
「あれは、俺の本じゃないんだ」
 するとヒューイの表情が曇った。なんと、可哀想なものを見る目つきになったのだ。
「ベネディクト。僕にまで隠す必要はない。君の性的な趣味を否定するつもりはない。だが……他人にはあまり話さない方がいいと、僕は思う」
 ヒューイは神妙な面持ちで続けている。
「今後、家畜が盗まれたりする事件が起こったら、君が疑われることになるかもしれない。幸い、大勢の前で明るみに出たのは君がいかがわしい本を所持していたところまでだ。司令部の他の人間は、」
「だ、だから、ちょっと待ってくれよ。本当に俺の本じゃないんだって」
 ヒューイはベネディクトが人間を愛せないタイプの男だと考えているらしい。教官長との約束を破ることにはなるが、この先ヒューイに誤解されっぱなしというのもつらい。
 それにあの本の本当の持ち主を、一番知られてはいけない相手……それはステラ・ハサウェイではないだろうか。
 ここはヒューイに味方になってもらった方がいい気がした。
「実はさ……」



「なんと……そういうことだったのか……」
 真相を知ったヒューイはしばらく絶句していた。あの教官長が、まさか。誰だってそう思うだろう。
「俺だって未だに信じられねえよ。教官長の顔、これからまともに見られるかなあ……」
「僕はさっき、君に対してそう思っていたぞ。君は、人間の女性が好きなのだとばかり思っていたからな」
「そりゃそうよ。俺は人間の女が好きだ」
 ベネディクトはヒューイの手元に目をやった。左手の薬指には結婚指輪がしっかりと嵌められている。

 ほんの数年前までヒューイは花嫁探しをしていて、相手の女性については血筋がどうだとか、家の格式や財産がどうだとか、きりがないほど細かい条件を挙げていた。
 ベネディクトはそんなヒューイを半ば呆れつつ見守っていた……気がする。
 しかし彼は、運命の恋に落ちてしまったのだ。相手は貴族でも富豪でもない庶民出身の女、ヘザーだった。
 そして現在、ヘザーは身ごもっている。生まれるのはまだ先だと聞いているが、妻の妊娠がわかって以来、ヒューイは早く帰る。めっちゃ早く帰る。
 ヒューイ本人がはっきり口にすることはないが、とにかく妻が心配らしい。一分一秒でも長く一緒にいたいらしい。妻のことが好きで好きで仕方が無いらしい。
 ベネディクトはそんなヒューイをニマニマしつつ見守っていた……のだが、「お前もそろそろだな」とか「お前も身を固めたらどうなんだ」とか、そういうことを言ってくる輩がだいぶ増えてきた。
 はっきり言って余計なお世話であった。
 ベネディクトは三男で、長兄は結婚していて子供もいる。次兄は修道士になってしまったのだが、長兄家族に万が一のことが起こったとしたら……還俗してもらうという手もある。
 とにかくベネディクトが結婚しなくても、ラスキン伯爵家の血筋が途絶えることはまずないと言って良い。
 それに自分は結婚を急ぐつもりもないのだ。一生ともに過ごすならこの女性しかいない……そんな風に考えられる人と出会いたい。
 相手の家柄や血筋に拘ってもいない。貴族や富豪じゃなくてもいいし、処女じゃなくてもいい。遊びが過ぎる女性はさすがに無理だが、真剣な恋愛の結果として純潔を失ったというのならば、ベネディクトにとっては許容範囲である。

 ヒューイに向かって宣言したとおり、ベネディクトは人間の女が好きだ。だが、女ならば誰だっていいわけじゃない。
 相手は自分で選びたい。
 そして相手にも自分を選んでほしい。
 恋愛結婚がしたいのだ。
 ヒューイが結婚したから、彼に倣って結婚しようとは思わない。
 でも、ヒューイみたいな結婚はしたいと思っている。



 昼食を済ませたベネディクトは、廊下をふらふらと歩いていた。
 あとは午後の授業を済ませ、教官長の屋敷へ向かうだけだ。
 ポケットから懐中時計を引っ張り出して時間を確認する。
「……キン。おい、ダスキン」
 余裕は三十分ほどある。天気がいいから中庭のベンチで仮眠をとってもいいが……教材室に行って紙や文房具の在庫があるかどうかの確認作業をやっておいてもいいだろう。
「ダスキン!」
「ぇえ?」
 近くで怒鳴り声がしたので顔をあげると、ステラ・ハサウェイが立っていた。
「ダスキン。貴様、今は空き時間だろう。少し私に付き合え」
「……。」
 ひょっとして「ダスキン」とは、自分のことなのだろうか。自分の苗字はラスキンであり、ダスキンではない。舌足らずな人に呼ばれると確かにrとdの境界が曖昧に聞こえることもあるのだが、今のところステラ・ハサウェイの滑舌が悪いようには思えない。
「俺の姓はラスキンです……」
「そんなことはどうでもいい。私に付き合え」
「……。」
 勝手に間違えておいてそれはないんじゃないだろうか。
 それに「付き合え」とはいったい。もしかして、エロ本のことで改めて説教されるのだろうか。はっきり言って付き合いたくなかったが、立場上断れない。
「え。えー……なんっすかね」
「叔父が怪我をした現場はどこだ? 案内しろ」
「ああ。こっちですよ」
 説教ではなかったようで、ベネディクトは内心ホッとした。
 そして教官長が怪我を負った場所は、ちょうど今から向かおうとしていた教材室の近くになる。ベネディクトは階段の上を示してからそれをのぼり始めた。

 階段をのぼったところには、教材室と資料室が並んでいる。
「ハサウェイ教官長は、ここから資料を運び出していたんです」
 ベネディクトは資料室の扉を開けた。本やファイルされた書類が引き出しに収納されていたり、棚に並べられていたりする部屋だ。
「教官長は書類を木箱に詰めて、こうやって両手で抱えて……階下に運ぼうとしたらしいです。それで、大きな木箱で視界が遮られてるわけですから。階段を踏み外してしまったみたいですね」
 教官長が怪我をしたその瞬間を目撃したわけではないが、大きな音が聞こえたのでベネディクトはここに駆け付けた。もちろん他の騎士たちも集まって来ていた。足を抱えて蹲る教官長がいて、周囲には壊れた木箱と書類が散乱していた。担架を持ってきたり医師を呼びに行ったり、それなりの騒ぎとなった。
「ふむ……」
 ステラは廊下から資料室の中を覗き、再び階段の方へ向かう。そして階下をじっと見おろした。

 ベネディクトはそんな彼女の横顔に見入った。
 彼女の輪郭が美しいことに気づいてはいたが、横から見た頭の形も均整が取れていたのだ。ぎっちりと結い上げている髪の毛がなんだか勿体ない気もした。でも、こんなに整った輪郭を髪の毛で隠してしまう方が勿体ないとも思った。
 それから腰に佩いた物騒なカットラスを見て……さらに物騒なものを発見した。
 彼女は背中側にごつい短剣を留めていたのだ。背骨と垂直にクロスさせる形で、ベルトに留めてある。
 海軍に所属する騎士たちは、戦闘の機会が非常に多いと聞く。彼女の場合、これは格好だけの武装、あるいは護身用の武器ということになるのだろうか。
 ベネディクトは侯爵令嬢が騎士団長を務めていると聞いた時、それは「お飾り」なのだと決めつけた。
 しかし……彼女は船の上でもこんなふうに横暴に振る舞っているのだろうか? 
 だとしたら、ステラ・ハサウェイがほかの騎士たちの「癒し」や「お飾り」になる存在だとは思えない。副団長が優れていたとしても、団長がこの調子では騎士たちの士気はだだ下がりである。
 ……いや、騎士団全員ドMなのだとしたらどうだろう。
 厳めしいオーラを纏っていることを抜きにすれば、ステラ・ハサウェイは結構な美人だ。美人に罵られると興奮するという男もいると聞く。
 ベネディクトはステラの横顔と身に着けている武具を観察しながら「ひょっとして彼女は騎士団の『女王様』みたいな存在なのかな」と考えた。

「おい、バーキン」
「……。」
「おい、バーキン!」
「え? はいっ?」
 突然声をかけられて、ベネディクトはちょっと焦った。
 ちなみに彼女はまだ姓を間違えているが、これ以上訂正する度胸は今のベネディクトにはなかった。
「貴様らのいる詰所は二階なのに、どうして資料室は三階にあるんだ?」
「ああー、それはですね……昔は新人教育課の詰所は三階にあったらしいんです」
 フェルビア王国軍はたくさんの騎士団や騎士隊から構成されているが、その数多の騎士団の人事問題や予算分配などを請け負うのが司令部である。
「昔は人事課が新人教育もやってたみたいですけど、もっと力を入れるために、実験的に新人教育課ってのを発足させたんですよ」
 実験的なものだったから、その時空いていた三階の部屋を暫定的な詰所として使っていたらしい。らしい、というのはベネディクトが生まれる前の話だからである。
「これも俺が騎士になる前の話ですけど、新人教育課が正式に発足したあと、二階に大規模な改装が入って……」
 新人教育課の教官たちが使う机のスペースは二階に確保されていたが、資料や教材を保管する部屋はそのまま三階になっている、ということだった。
「叔父はなぜ昇降機を使わなかったんだ」
「ああ、昇降機は、めちゃくちゃ遠いんですよ」
 レバーを引くと歯車が回って、荷物を運搬してくれる昇降機が取り付けられてはいる。しかし城の構造上、司令部からはかなり離れた場所にあった。というか、ステラに言われるまで昇降機の存在を忘れていた。そのくらい不便な場所にあるのだ。
「資料室を二階に移すわけにはいかないのか?」
「え? いや、それは……」
 怖いうえに無茶を言う女だと思った。それに、彼女がここにいるのは期間限定の役割である。机は二階。資料や教材は三階。ベネディクトが教官になった時からそう決まっていた。ずっと前からそういうものだったのだ。代理でやって来た人間の気まぐれで引っ掻き回されるのはごめんだとも思った。ただ、反論する度胸はなかっただけで。
 しかしステラはベネディクトが考えもしなかったことを言った。
「このままでは危険だぞ。また叔父のように怪我をする者がでたらどうするんだ? これまで、荷物を持っていたせいで階段から落ちるやつはいなかったのか?」
「それは……」
「貴様に言っても仕方がないな。私がやる」
 彼女は二階で資料室に使えそうな部屋をチェックし、その部屋の所有権を新人教育課に移せるように交渉すると言った。
「戦闘以外で怪我を負うなど、騎士としてそれほど馬鹿らしいことはないだろう?」
 ステラはベネディクトを一瞥し、階段を下りていく。
 腰に下げたカットラス。背中に留めた短剣……よく見てみれば、短剣は、両方のブーツにも挟まっていた。

 ──貴様に言っても仕方がないな
 彼女の言うことは正しい。もっともだ。
 これまで資料室の場所がおかしいと考えたことなどなかったし、上層部やどこかの騎士団と掛け合うにしても、一介の指導教官である自分よりは教官長代理を務める彼女が動いた方が話は早いだろう。
 そして自分はヒューイほど仕事熱心ではないし、出世欲もそれほど無い。プライドが高いほうでもないと思う……いや、思っていた。
 だが、彼女に言われたセリフは、無いと思い込んでいたベネディクトのプライドを抉っていったのだ。
 物騒な女の後姿を見送りながら、ベネディクトは思った。
 ステラ・ハサウェイ。彼女はなんて腹立たしい女なのだろう、と。


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