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本編 東の妖精姫

今、貴方に伝える。

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バラ園に着いたあと、特に何かを話すわけでもなく、庭園の奥の方へ二人で進んでいく。
この庭園は、王城へ来た人間であれば自由に入ることができるらしいのだが、まだ誰にも会っていない。
この王城のゲスト棟にも私と同じく同盟国の国王夫妻だったり王太子夫妻が何組みか宿泊しているのだが、会わないなとは思っていて、婚姻式まではそれぞれ自由に過ごせるので、色々とお忍びで城下街へ行っているのかもしれないな、と思う。
会話は無いけれど、ライラック様は、ちょっとした段差などある時は気遣いをしてくださるので、その優しさに心が暖かくなる。
公の場であっても自分の伴侶や婚約者にさえ細やかな気遣いをする男性は少ないのだが、ライラック様はそんな事は無く、エスコートする相手へは細やかな気遣いをする。

「・・・ライラック様は、女性の扱いというかエスコートされる方へ細やかな気遣いをされますよね?」

ポツリと呟いた言葉を正確に読取たライラック様は意外そうな表情をされた。

「普通は、しないでしょうか?」
「私が見てきた限り、されていらっしゃる方の方が少ないです。」
「お、・・私は父上が母上にされているのを見たり、兄上やルイ叔父上がリリーシア姉上やヴィクトリア姉上にされているように、するのが普通だと育ちましたからね。」
「素敵ですわね。そういう考えがもっと広まれば良いのですが。相思相愛の夫婦より政略結婚の夫婦の方が自分本位といいますか、違和感を感じます。」
「そうですね。利害一致している夫婦もいるようですが、私には理解できない部分が多いです。」
「そうですわね。国によってその辺は変わってまいりますもの。」

ライラック様が着きましたよ。というので視線を同じ方向へ向ければ、木製の八本柱で屋根が支えられた白亜のガゼボがあり、対面になるようにクッションがいくつか置かれた椅子とテーブルが置いてありました。
その周りはピンク色のバラが咲き乱れていた。

「かわいいっ。」

両手を合せ広がる光景に素直に素直な気持ちをこぼした。

「少し休憩しましょうか。」

と、レティに向けるような笑を浮べ、ライラック様に手を引かれながらガゼボまでたどり着くと、設置してあった椅子になぜか横並びで、腰を下ろした。

「このガゼボへは良く来られるのですか?」
「そうですね、一人になりたい時や、レティや兄上と喧嘩したときは良く来てましたよ。」
「お兄様と喧嘩されるのですね。」
「理由は良く覚えてませんがね。メリッサ王女は、兄君と喧嘩はされたことがないのですか?」
「そうですね、私とノアお兄様は10歳離れてますし、一番近いお姉さまとも5歳離れてますので、喧嘩をした記憶がありませんわ。」
「メリッサ王女の所も、仲がいいのですね。」
「ライラック様もでしょう?ラザルート殿下やレティ、ルイ王弟殿下。レティから話を聞く限りとても仲がいいですわよね。」
「顔も知らない婚約者よりも、良いところも悪いところも知っていないと選択もできないという、所でしょうか?」
「そうですわよね。伴侶として選ぶのであれば、お互い気遣える、想い合える相手が良いですわよね。」

と、他愛もない話をしつついつ、どのタイミングでプレゼントを渡そうかと考えつつレティが言うように内側だと言うことを実感してしまった私は、緊張していたのも忘れて楽しいと、思える様になっていました。
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