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本編 東の妖精姫
出会いは。
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私とライラック殿下が初めてお会いしたのは、幼少時。
自国のパーティにフレイアス国王と王妃そして二人の王子を招いての舞踏会だった。
二人の王子とは年が近く、またライラック殿下とは同じ年ということもあり参加資格のない私ですら初めて参加したパーティだったのでよく覚えている。
髪色と同じラベンダー色のシフォンのドレスを着て、生花で髪を飾った。
お二人とご挨拶をしたときに、ラザルート殿下より、「妖精みたいだね。」と褒められ、ライラック殿下にも「可愛いね」と言われたのが嬉しくてすぐに第2王妃であるお母様に報告をしに行ったものだ。
パーティの後、お父様にライラック殿下と結婚はできないのか純粋に聞いたこともある。
結果は断られたのだけれど、断られた理由がフレイアス王国独自の理由で王太子であるラザルート殿下の婚約者がライラック殿下が成人する年に決まるのでそれまでは、他国から縁談を持ってこられても断っているらしい。
幼いながらに、彼とは結婚できないんだと落ち込んだものだが、
「フレイアス王国の貴族、特に六候爵家と王家は恋愛結婚をするのが普通で政略結婚はありえないの。だから、メリーとライラック殿下がお互い好きになれば結婚はできるのよ。」
と、お母様が教えてくれてそれから振り向いてもらえるように礼儀作法も、勉強も頑張った。
頑張ったからなのか、元々の素質なのか魔力を保有することが珍しいオステン王国で群を抜いて高い魔力量を持っていた。
フレイアス王国の貴族階級と同等レベルらしく、親善交流も含め17才の夏フレイアス王国の学院へ留学することが決まった。
学院へ留学して初日、案内された教室は学年の中でも学力、魔力などのトップが集まるクラスだった。
クラスを見渡すと二つ並んで席が空いていた。
私の席はその並びで、空席の2席の左側に座ることになった。
午前中の授業が終わり昼休み入ると、すぐそばの扉が静かに開かれた。
扉の前に立っていたのは、キャラメル色の男子生徒、ライラック殿下だった。
一瞬目があったがすぐに外らされ、自身の席でから何かを探していた。
この頃の殿下は自分自身と周りの生徒との間にはっきりとした境界線を引いていた様に思う。レティーシア様が言えば、挨拶も仕方なくする様な感じだった。
「突然失礼いたします。メリッサ・ジョセフィーヌ・オステン王女殿下でお間違いないでしょうか?」
そう、声をかけてきたのはオレンジ色の髪にコバルトブルーの瞳を持つ、エレノアール侯爵令嬢レティーシア様でした。
「はい。そうです。」
「よかった。初めまして。レティーシア・フォン・エレノアールと申します。本来であれば朝からメリッサ様にご挨拶をして、学園ないのご案内をする予定でしたのに遅くなり申し訳ございません。」
綺麗にカーテシーをするレティーシア様に対し私も同じく挨拶をする。
「お初にお目に掛かります。オステン王国第4王女、メリッサ・ジョセフィーヌ・オステンと申します。お会いできて嬉しく存じます。」
「ご丁寧にありがとうございます。お食事は取られましたか?」
「いえ。今から食堂に行こうかと思っておりました。」
「では、私も簡単な案内をさせていただくついでに学食までご案内いたしますわ。それと、ご存知かと思いますが、ライラック・ウィル・ヴィ・フレイアス王子殿下になります。ちょっと今虫の居所が悪いみたいですのでお気になさらず。学院に在学中は基本的な身分はお気になさらずお声がけいただいても大丈夫ですよ。何かご不便なことが有りましたら、私にご相談して頂けましたら嬉しいですわ。」
「有難うございます。レティーシア様。」
「・・・・一応生徒会長をしているライラックだ。レティーシアは副会長だから、頼るといい。これから一年間よろしく。」
「・・・こ、こちらこそよろしくお願い致します。」
はっきりと境界線を引かれた挨拶に、少し心が傷んだ。
自国のパーティにフレイアス国王と王妃そして二人の王子を招いての舞踏会だった。
二人の王子とは年が近く、またライラック殿下とは同じ年ということもあり参加資格のない私ですら初めて参加したパーティだったのでよく覚えている。
髪色と同じラベンダー色のシフォンのドレスを着て、生花で髪を飾った。
お二人とご挨拶をしたときに、ラザルート殿下より、「妖精みたいだね。」と褒められ、ライラック殿下にも「可愛いね」と言われたのが嬉しくてすぐに第2王妃であるお母様に報告をしに行ったものだ。
パーティの後、お父様にライラック殿下と結婚はできないのか純粋に聞いたこともある。
結果は断られたのだけれど、断られた理由がフレイアス王国独自の理由で王太子であるラザルート殿下の婚約者がライラック殿下が成人する年に決まるのでそれまでは、他国から縁談を持ってこられても断っているらしい。
幼いながらに、彼とは結婚できないんだと落ち込んだものだが、
「フレイアス王国の貴族、特に六候爵家と王家は恋愛結婚をするのが普通で政略結婚はありえないの。だから、メリーとライラック殿下がお互い好きになれば結婚はできるのよ。」
と、お母様が教えてくれてそれから振り向いてもらえるように礼儀作法も、勉強も頑張った。
頑張ったからなのか、元々の素質なのか魔力を保有することが珍しいオステン王国で群を抜いて高い魔力量を持っていた。
フレイアス王国の貴族階級と同等レベルらしく、親善交流も含め17才の夏フレイアス王国の学院へ留学することが決まった。
学院へ留学して初日、案内された教室は学年の中でも学力、魔力などのトップが集まるクラスだった。
クラスを見渡すと二つ並んで席が空いていた。
私の席はその並びで、空席の2席の左側に座ることになった。
午前中の授業が終わり昼休み入ると、すぐそばの扉が静かに開かれた。
扉の前に立っていたのは、キャラメル色の男子生徒、ライラック殿下だった。
一瞬目があったがすぐに外らされ、自身の席でから何かを探していた。
この頃の殿下は自分自身と周りの生徒との間にはっきりとした境界線を引いていた様に思う。レティーシア様が言えば、挨拶も仕方なくする様な感じだった。
「突然失礼いたします。メリッサ・ジョセフィーヌ・オステン王女殿下でお間違いないでしょうか?」
そう、声をかけてきたのはオレンジ色の髪にコバルトブルーの瞳を持つ、エレノアール侯爵令嬢レティーシア様でした。
「はい。そうです。」
「よかった。初めまして。レティーシア・フォン・エレノアールと申します。本来であれば朝からメリッサ様にご挨拶をして、学園ないのご案内をする予定でしたのに遅くなり申し訳ございません。」
綺麗にカーテシーをするレティーシア様に対し私も同じく挨拶をする。
「お初にお目に掛かります。オステン王国第4王女、メリッサ・ジョセフィーヌ・オステンと申します。お会いできて嬉しく存じます。」
「ご丁寧にありがとうございます。お食事は取られましたか?」
「いえ。今から食堂に行こうかと思っておりました。」
「では、私も簡単な案内をさせていただくついでに学食までご案内いたしますわ。それと、ご存知かと思いますが、ライラック・ウィル・ヴィ・フレイアス王子殿下になります。ちょっと今虫の居所が悪いみたいですのでお気になさらず。学院に在学中は基本的な身分はお気になさらずお声がけいただいても大丈夫ですよ。何かご不便なことが有りましたら、私にご相談して頂けましたら嬉しいですわ。」
「有難うございます。レティーシア様。」
「・・・・一応生徒会長をしているライラックだ。レティーシアは副会長だから、頼るといい。これから一年間よろしく。」
「・・・こ、こちらこそよろしくお願い致します。」
はっきりと境界線を引かれた挨拶に、少し心が傷んだ。
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